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消費者庁を徳島県に、文化庁を京都市に移す構想が現実味を帯びてきた。河野…
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消費者庁を徳島県に、文化庁を京都市に移す構想が現実味を帯びてきた。河野太郎消費者相と馳浩文部科学相が移転を前提に検討を進める考えを示し、3月までにまとめる政府の基本方針に盛り込まれる見通しだ。
中央省庁の地方移転は東京一極集中是正を目指す安倍政権の地方創生の目玉だ。各省庁はこぞって及び腰だが、政治主導で突破口を開こうとする政権の姿勢そのものは評価できる。
ただ移転にあたっては、国全体にどれだけプラスになるかという観点からの検討が不可欠だ。とりわけ消費者庁の徳島移転は効果がいま一つはっきりしない。消費者団体や日本弁護士連合会も反対を表明している。最終判断を急がず、移転の是非を慎重に見極めるべきだ。
今回の省庁移転は、政府が自治体に提案を募る形で進められた。伝統文化の先導役を自負する京都府が文化庁を、先駆的な消費者行政に取り組んできたとする徳島県が消費者庁の誘致に、それぞれ名乗りを上げた。
ただ、省庁をどこに配置するかは本来、政府が国全体の利益を考え、主体的に判断すべき課題だろう。地方に手を挙げさせるやり方は正道といえるか。
移転する場合も、省庁の業務の特性や、移転先との相乗効果をよく考える必要があろう。
消費者庁は09年に発足した。中国製冷凍ギョーザ事件などで行政の縦割りが被害を拡大させた教訓を踏まえ、消費者行政の「司令塔」と位置づけられた。他省庁との連携や働きかけが大きな役割だ。
大半の職員が他省庁や自治体、民間の出向組だ。法律上は他省庁に被害防止措置を要求できる権限を持つが、行使した例はまだない。
東京を離れることで、消費者庁の存在感がさらに弱まるのではという懸念はぬぐえない。徳島県は「高速ネット回線の活用で距離の壁は克服できる」とするが、他省庁にその環境が整っているわけではない。
河野氏は、3月にも消費者庁長官らを1週間程度派遣するという。実務上の課題を検証するのはもちろん、反対意見もよく聴いて判断する必要がある。
文化庁も、保護に取り組むべき文化財が全国にあるなか、京都に移す効果を疑問視する声がある。多くの国民が納得できる説明が求められる。
省庁移転が、動かしやすいところだけを動かすといった政権の実績づくりがねらいでは困る。東京一極集中の是正という大方針のもとで、全体として筋が通るものにしてほしい。
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