初々しく可憐。
ドキッとするほど妖艶。
女たちに目を奪われる。
それが…そこには思いがけない仕掛けが満載。
この女性がどこを見てるのかとても気になります。
気になる視線を読み解くと知られざるドラマが見えてきます。
更に美女は江戸庶民の心の奥まで映し出しました。
あの巨匠が腕を振るった謎の美女も…。
この小さな掛け軸の中になんかぎゅっと全部…そして天才絵師が舌を巻いた知られざる女流画家も登場します。
スーパー絵師たちの傑作が勢ぞろい。
時を超え私たちを魅了する美女の秘密をひもといていきましょう。
お客さんお客さん歌麿の新作だよ〜!花のお江戸。
美人画といえば江戸中期に活躍したこの浮世絵師。
物思いにふける女性のため息まで聞こえてきそうな歌麿の代表作です。
この絵の魅力は簡潔な線で複雑な心境まで表したところにある。
そう考えるのが…既婚者の女性がですね恐らく旦那さん以外の恋人を思って重苦しい気持ちになる。
そういったものを目と鼻と唇という3つだけの要素でですねそれを完璧にこの形の中へ配置してる。
当時は結婚し子供ができたら眉を落としたといいます。
道ならぬ恋に落ちた女性の心情を目と鼻そして唇の配置だけで表しきった驚異の傑作。
この絵を切って福笑いをやってみると分かるんですね。
どうつなげるか。
それによってへんてこな顔になったりですねなかなか微妙なんですよ。
どうやると物憂い形になるのか。
その位置が少しでもずれると…。
全く印象が変わります。
恐ろしいほどに少ない要素で豊かな情感を生む。
歌麿はまさに美人画の名手でした。
そんな歌麿の魅力が更に詰まった傑作。
話題の美人が集まるいわば人気アイドルグループの写真のような作品。
皆実在の人物です。
中央の娘は吉原芸者富本豊ひな。
右は浅草の水茶屋難波屋のおきた。
そして左は煎餅屋の高島おひさ。
それにしてもこの3人三姉妹のようにとてもよく似ています。
それにはわけがありました。
江戸の女性たちの美を研究する村田孝子さんがその秘密を解く貴重な資料を見せてくれました。
江戸後期に記された…今でいうと総合美容読本というものですね。
主には化粧の事が中心なんですけれども当時の女性たちはほとんどこの本を見て手本にしたと思います。
江戸の美の指南書にはこうあります。
白い肌が美人の第一条件だったのです。
ではやってみましょう。
まずおしろい。
肌の色を感じるくらいうっすらと塗ります。
江戸ではこれくらいの薄化粧が粋でした。
鼻が低い人は鼻筋におしろいを厚く塗りました。
鼻が高く見えるそうです。
そして唇。
江戸の女性たちも紅を塗りました。
ただし中心部分のみ。
いわゆるおちょぼ口になるように。
あまり大きいと「大口をたたく」とか女性らしからぬ口の形なのでなるべく小さくかわいらしく見せるというのがありますね。
そして目。
目の大きい人は少し下を向き細く見せました。
おとなしく上品なイメージを作るといいます。
細い目高い鼻小さな口。
時代が求めた美を歌麿はしっかり捉えていました。
もちろん歌麿は3人の美女を巧みに描き分けています。
じっくりと見比べてみましょう。
まず目。
一番大きいのが豊ひな。
おきたの目は切れ長です。
鼻はおきたがわし鼻。
おひさは少し大きめ。
おひさだけは歯を出さず上品に笑っています。
細部まで徹底的に心血注いでそれぞれの魅力を映し出す。
歌麿の美人画にはそんな絵師としての心意気まで刻まれていました。
「日曜美術館」です。
さあ今年最初の「日曜美術館」はあでやかに華やかに江戸の美人画を取り上げます。
ゲストをご紹介いたしましょう。
イッセー尾形さんです。
(3人)よろしくお願いします。
美人の専門家という事で。
はい。
今日はそうならざるをえないなと。
実はイッセーさんは1月から浮世絵師の写楽をテーマにした舞台にご出演されていて。
ミュージカルでございます。
江戸の絵画にも興味をお持ちでいらっしゃるという事ですがさあまずはこの歌麿の「三美人」の魅力どうご覧になりますか?ず〜っと見ててね目が小さくて口が小さいって事は目はいろんな事を語るって言いますけれども語ってる情報量が少ない。
細いから。
だから男としては「何なの?もっともっとその心の中見たいよ」っていう気持ちにもなるしちっちゃい口だからポツリとひと言しか言わないかもしれないけれどもその言葉を輝く滴のように受け止めたいとかねなんかいろいろな事がねコミュニケーション…コミュニケーションよりもうちょっと艶っぽいですけれどもそんな関係が成り立つんじゃないかな。
読みづらいからミステリアスに感じていくという。
そうそう。
こちら側もいろんな事を想像してしまう…。
しちゃう。
壁に掛けたりどっかに飾ってたわけじゃないような気がして。
ああやって町で売ってるからね買ってで…なんか1人で奥さんをちょっと向こうへ…なんかね台所やってる間にちょっとこうやって見るとかね。
なんかそういう秘密めいたもの。
あとほら大工さんこんな箱…蓋の裏に貼ってるとかね。
それで今日一日仕事頑張るぞとかね。
もう見てきたかのような。
それぐらい身近なもの…。
身近だと思いますね。
観賞というよりはもっと。
これもとても色っぽいし。
正面じゃないんですよねやっぱしこう見て…。
視線が必ず絵の外にある。
…って事は手にした男が想像してね「この先に俺がいるんだ」と思って。
ほぉ〜ほぉほぉ…。
なるほど。
続いてはですねちょっと話にも出ましたが目視線に注目して江戸の美人画を見ていきたいと思います。
今から50年ほど前の切手ブーム。
懐かしい方もいらっしゃるのでは?人気だったのが切手好きにおなじみのあの美人。
歌麿より100年ほど前江戸前期の作品。
人気の着物を見せるためこうした姿で描かれたと言われますが視線の先も気になります。
この絵が大好きな人がいます。
時代劇で数々の女性を演じてきた…そのポーズに惹かれるという森口さん。
実際にやってみます。
するとなんと顔はほとんど見えません。
できそうにないポーズを描いた師宣。
しかしこの横顔この視線があるからこそ更に魅力的になっている事に森口さんは気付きました。
この女性がどこを見てるのかというのがやはりとても気になります。
急いで歩いている最中のような気もするのでその歩いている最中にちょっとすてきな方がいてハッと振り返った一瞬なのかな。
もしくはこれ実は過去の自分に会ってしまった…。
たったこれだけのちょっと振り返ってる絵でこれだけの事が…もっともっと想像できますけれども。
これよく見るとパッと見た時気が付いていなかったんですが手も足も見えてないんですよね。
見えてるのがこの首の上だけ。
そしてその顔が振り返って何かを見ている。
何を見ているかが分からないから気になる。
というのがやはり見ている人の…というような気がします。
そして次も視線が印象的な傑作。
江戸中期の作品です。
冬雪の降りしきる中傘を差して歩く若い2人。
黒い頭巾が男で白が女です。
それにしても2人の顔はそっくり。
なのに男女の逢瀬である事がしみじみと伝わってきます。
それは一体なぜ?森口さんに読み解いてもらいました。
この視線もすごく面白いなと思うんですが男性の方は女性をそっと優しい目で見ているように見えるんですが女性は何ですかね…ちょっと恥ずかしそうに伏し目がちに歩いてるという感じがします。
視線から感じる男の情愛と女の恥じらい。
更に森口さんは2人の顔が似ている事から想像を膨らませました。
この女性がこれから先に出会えるであろう男性を夢みて想像の世界か実際に寝て見た夢の世界が描かれてるような感じ。
2人の視線が浮かび上がらせる物語。
無限に広がります。
春信のあと革新的な美人が登場します。
清長は全く新しいすらりと伸びた8頭身の美人を生み出しました。
さまざまなポーズをとらせ新し物好きの江戸っ子を魅了しました。
そしてここでも視線がドラマを作り出していました。
それぞれどこを見てるんだろうってやはり思いますね。
こちらお客さんですね。
男性は。
目がこちらのお店の方を見て何かをおっしゃってるので「お酒もうちょっと持ってきて下さい」ぐらいな感じですかね。
で「はいかしこまりました」ってお店の方が言っていて。
こう1人はくつろぎながら海を眺めていて。
こちらの3人はこの立っている女性が何か面白いお話をしてらしてこの黒いお着物の方が「そうそうそう」って相づちを打ってらしてこの従業員の方が多分それにつられて「まあそんな事があったんですかオホホ」って一番大きな声で笑ってるんじゃないかなというような。
それぞれの描かれてる人たちの交わす視線で今にも動きだしそうな躍動感や本当にここにいるのではないかという臨場感みたいなものがとても伝わってくるので。
見て下さい。
はっきりと視線を交わしているのが分かります。
巧みに計算された美人たちの群像画です。
私もお芝居をする時に台詞がなくても目だけで何かを伝えるというような事がよくあるんですが美人画の中でもこの視線というのがほんとに大きな魅力の一つになっているんだなっていう事を実感いたしました。
江戸の美人は目で語る。
今度江戸の美人に出会ったらそっと視線を追ってみて下さい。
う〜んいいですね。
師宣も春信もいいですねぇ。
しみじみ。
うんすごい。
この「雪中相合傘」。
(イッセー)この2人これからどうなるんでしょうね。
そんな感じがしますね。
決して祝福された形ではない事をあえて2人が選んでるんでしょうか。
道ならぬ恋?なんかほんとに言葉数は少ないけれどこの2人が持っている傘の手元が少し触れ合っている事で会話をしているような。
かじかんだ手がねちょっと触れ合ってる感じがして。
あと…そう私これ好きですね。
なんかだんだん女性がかっこよくなっていく感じが。
すぐ下に何か…船頭さんでもいるんですかね。
なるほど!男性が。
ちょっとかっこいい男性が。
奥行きですよね視線による。
遠近法ではなくて視線遠近法。
ほんとですね。
奥の方にいる誰かを見ているっていう確かに空間の奥行き一枚から感じますね視線によって。
芝居などではどうですか?目線の芝居っていうのは。
この間やったので言うとまあ好き勝手やらせてもらったんですけど…大事にしましたねいつ見るかいつ外すか。
で…。
こうやって見るかあとは…こうやって見るかとか。
それによって意味合いが変わってくるとか。
なんかそんなのを自分でその時思いついてやってました。
日本ってほら視線がとってもこまやかな…フフフフッ。
…のような気がするんですよ。
外国たまにねなんか仕事で行ったりすると町歩いてても絡ませませんからね。
あの〜日本人は例えばちょっと目で合図しようとか目を伏せるとかとってもこの視線の行き先行かせなさみたいなすごく視線文化があるような気がね時々海外行ったり帰ってきたりすると感じますね。
おっ出ました。
出ました。
切手ありました。
もうね振り向けなかった。
今まで見てきた美人画はどちらかというと斜め45度で両目がしっかり見えてる中でこの師宣の「見返り美人」は真横ですよね。
そうですね。
それもなんかちょっと…妙な違和感みたいなものを感じるところかもしれないですね。
なんか引っ掛かるって。
はい。
この不自然さにね。
不自然さ。
結構ありえるかなと思っちゃって見ますけれどじっくり見てるとありえない!みたいなね。
自然だと興味をそそらないんじゃないですかね。
見てる側が。
あくまでも見られてなんぼの世界。
やっぱりこうよりは「ちょっと顔見せい!」みたいなね。
「チラッと見せるんじゃ」みたいな。
「そっちの方がウケるぞ」みたいな。
「だって首曲がりませんよ」「いいんだよ絵の中では!」。
う〜んやり取りが聞こえてきそうな。
およそ300年前に造られた大名庭園…天下太平の江戸時代。
優雅な武士たちの暮らしを象徴するような場所です。
ここを舞台にした美人画があるといいます。
江戸中期の作品です。
庭園に面した屋敷に華やかに着飾った女性たちが集まっています。
鶴の掛け軸をじっと見つめる女性。
ゆったりとした時間が流れています。
庶民を描く事が多かった一般的な浮世絵とは違い春章は武家の人々を題材に雅なる世界を生み出そうとしました。
春章を研究する内藤正人さんはこう評します。
まあ言ってみればこれはこの世の楽園というか一つの理想郷ですね。
それを絵画化していくと。
ここには男の気配は全く感じられません。
女性だけが穏やかに楽しげな時間を過ごしています。
本当に穢れがない一片の傷もない清らかな理想的な女性像を作り上げるという。
穢れなき美人たち。
春章にとってそれは平穏な武家社会が生んだかけがえのないものだったのかもしれません。
しかし時代は大きく変わります。
1700年代の末以降続々と現れる異国船の脅威。
更に飢饉。
各地で一揆や打ちこわしが続発。
絶対的な権力を握っていた幕府は弱体化していきます。
そんな時代の転換に生まれた作品。
女性が蚊帳の中に紛れ込んだ一匹の蚊を焼こうとしています。
抜けるような白い肌。
胸元をはだけ蚊を殺す女性にちょっとドキッとします。
この絵を大胆な見方で読み解く人がいます。
江戸の歴史を研究する…私ねこれ見た時に悪徳の美とユーモアを感じるんですよ。
絵の内容を見ますとねまずうちわに描かれた男が蚊帳の中から女の世界へちょこっと入ってきてるわけですよ。
しかしここへ入ったらどうなるのかというと蚊が火で焼かれて身を焦がしてるんですよ。
つまりこの暗い女の少し股の間をチラッと肌を見せたこの世界に入ってくれば身を焦がして蚊のようにやけどをして死んでしまう滅びてしまうっていう事を言ってるんですよね。
妖艶な悪い女のような感じのものが描かれててそこへ引き付けられていかざるをえない人間の性のようなものを画面に描き込むという点では更に奥深い気味の悪い世界そこへ絵が入ろうとしていくそういう時代なんじゃないかと思うんですよね。
更にディープな美人画。
月夜に立つ3人の女です。
派手な装いに切れ長の目。
そしてなぜかほつれた髪。
のけぞるようなポーズは挑発的です。
周りを飛ぶのはこうもり。
美人画なのに不気味です。
この頃幕府が続けてきた鎖国政策が綻び武士の力も衰え始めていました。
それはまさに価値観が大きく変わった時代でした。
この時代の民衆たちっていうのはもう既に武士の社会お侍のやる事への不信感がかなりあるような気がしますね。
これはおかしいんじゃないかと。
人間って悪なところあるよねと。
しかし…こう民衆が思ってきて。
そうなってくると今までの上品な美人画とは違う真逆と言っていい退廃的で妖しげな女の姿っていうのがやはり現れてきたんだろうと。
美人画きっての悪の香り漂う女。
さあどんどん楽しい世界に入っていってますよね。
イッセーさんどうですか?この蚊帳の中に入ってみたくなりますか?どうでしょう?子供の時に見ちゃいけない大人の雑誌の挿絵。
それをまず思い出しましたね。
見たものは何だったのかよりもその時にあっ見ちゃいけないものを見たというそっちのが強くてそういう意味で怖いですね。
怖さ…。
また子供の罪悪感のとこに引き戻される。
まずそれ思いましたね。
どうもこの美人画の人たちの目は細くてどうにでもなりますね。
妖艶になったり恐ろしくなったり。
蚊帳はいい舞台ですよねこれ。
ほんとですね。
そこですか。
蚊帳。
やっぱりこう閉じ込められた世界。
外は見えるけれどもいつだって開けようと思えば開けられるけれども今は空気性のある密室だみたいなね。
それがなんかこう匂いが出てきそうですねなんか…。
蚊の焼いた匂いも出てきそう。
あ出たこうもり。
なんか悪〜い感じしますねすごい。
このかご乗ったらえらいとこ…。
連れてかれそうですね。
真ん中の女性のポーズとかもすごい挑発的ですよね。
これリーダー格でしょうね。
ですよね。
これもなんかもちろん悪の美徳みたいなものを感じますけどこの3人からしてみればこれが日常ですもんね。
いわゆる生活のためのというふうに考えるとやっぱり生活臭みたいなものも感じますね。
なんか必死に力強く生きているそんな時代に一生懸命必死に生きている女性の姿がだんだんと美人画の流れが変わってきたのかなあとも。
確かにそうだ。
基本的にこの細目おちょぼ口は変わらずいろんな時代を経ていってる。
顔が固定点で。
そうやって見ると江戸そのものですね美人画って。
そうですね。
東京上野。
ここに海外から美人たちが里帰りしてきました。
訪れたのは井浦新さん。
アメリカシカゴのコレクターが集めた美人画展。
版画ではなく一点ものの肉筆画ばかりです。
あっ。
目玉の一つがあの天才絵師の作品。
北斎かぁ…。
高価な絵の具を使いひときわ腕を振るって描いた肉筆画。
猫を抱いた女性の姿です。
肉筆だからこそ北斎…やっぱここすごいなって思うところはこの描線の力強さ。
髪の毛なんか見ればもう一目瞭然ですけどものすごくきれいに描けるにもかかわらず場所によってはもう勢いでライブ感でバーッて入れてるところもたくさんありますし。
右手でぐっとこうたくし上げてますよね。
そこに生まれている線なんか他の描き方とものすごい対比があるぐらい素早さライブ感ありますよね。
で極端に太い線が突然生まれてたりとか。
ほんとに繊細さと大胆さがこの小さな掛け軸の中にぎゅっと全部…猫なんかものすごい細かく描いてますから。
女性の胸に抱えられた猫。
その表情は…。
鬼の…いわゆるほんとにきれいな女性を描いているのになぜそこで左手で持っている猫がちょっと怖さを感じるんだろう。
その疑問を探ろうとする新さん。
視線に注目しました。
猫もそうですしこの女性もそうですけど下を見てますね。
ここに何かあるんでしょうねやっぱり。
何を見てるんでしょうね。
女性の表情をじっと見ていた新さん。
着物見ると随分はだけてますよね胸元とか。
だからこの前っていうのは何らかの情事があったかもしれないですよね。
情事があってもしかしたらここには男性が一人寝ていて。
その男性には妻子があってかなわぬ恋にどこかため息をついた一瞬なのか。
だからあの右手確かに小指がちょっと立って女性的ではあるけれど実はものすごい力が入って何か自分の気持ちをどこか押し殺してるある感情を何か押し殺してるようにも想像できますよね。
その女性の思いを知ってか知らずかあの猫の表情。
さっき鬼のような顔つきにも見えるみたいなふうにも言ったんですけどもしかしたら女性のその心を猫が表してるのかもしれないですね。
世界の北斎。
美人画も突き抜けています。
そんな北斎が一目置いていた絵師がいました。
その絵師の物語が2015年映画として公開されました。
原作は杉浦日向子の漫画。
主人公は北斎の娘です。
父の助手を務めるかたわら美人画を描きました。
最後の傑作。
北斎の三女飾応為の肉筆画…灯籠の明かりの下で筆を執る女性。
若くして俳句に才能を発揮した女性がモデルだといいます。
才能あふれる様を応為は光の当たる顔だちで見事に表しました。
更に驚きの技を炸裂させたのが星空です。
この絵のすばらしさは何といっても光の表現でですね星空を見上げると星の等級によって光を変えてるんですね。
よくよく細部を見ますと胡粉を打ったものと胡粉に赤い点を入れたもの青い点を入れたものという星の等級によってですね光り方が違うんだという事を認識して描いてる。
そういった満天の空の中に女性が人工的な光で浮かび上がってその女性の顔がとても美しく映えてくるんですね。
そういった非常に演劇的な空間を思わせるような劇的な美しさ。
それを表してるところだと思うんですね。
女性の絵師が渾身の筆で女性を輝かせた稀有な美人画です。
北斎の美人画すばらしかったですね。
普通の美人画は俺は描かないぞというようなそういう北斎の心根みたいなものを感じましたね。
ほんとにね。
一般大衆的じゃないですよね。
大衆的じゃないですよね。
俺はこう見るっていう作家が前面に立ってる。
最初見た時女の体から猫が出てきてる。
見えますよねほんとに。
うわ〜すげえなあと思ったら猫は猫なんですね。
でも一体化しているように見える。
ちょうど心から飛び出していく。
そうそう先ほどおっしゃってた代弁してるんじゃないかみたいなこの表情が。
確かにそう思います。
なんで猫なんでしょうね?化け猫とかあるじゃないですか。
ああそっかそっか…。
猫の爪とかが妙に出ててやはりどこか怖さってはらんでるなあって。
その北斎の娘さん。
ポツリと新さん「俺これ一番」と。
ポツリとつい言っちゃった。
僕この北斎の娘の応為僕すごい興味がありますね。
父親に全てを捧げてきたから自分自身の作品が少ない中で残したのがこれってちょっと普通じゃないですよね。
うわ〜…。
すごい。
完全に照明がちゃんと光が当たってる…。
やっぱり星。
星がすごいですね。
星すごかった。
ここですよね。
やはり当時は街灯も少ない中で今とは全く星の見え方も違いますね。
空気もきれいだったですから。
ほんと瞬いてますもんね。
キラキラキラッて。
なんか別格ですねこの絵は。
すごいですよね。
美人画では娘の応為はもう間違いなく父親超えしてるっていうか全く違う事をしっかりやってるんだなっていうのが分かりますよね。
イッセーさん今回贅沢な江戸の美人たちを…。
たっぷりと。
新年早々たっぷりと堪能してきましたけれども江戸という時代を軸にさまざまな美人画描かれてきてその江戸美人画の魅力って改めて何でしょうね?ざっと見渡すとみんな凛としてて一人で生きていけますっていう女性ばっかし。
時代が幕末になっても。
そうすると明らかに男に対するメッセージだと私は思いたいですね。
男に対するメッセージですか?自主性を持って生きなさいよあんたみたいなね。
なんかそんな…男性に対してね。
ただ美しいだとか華やかというだけでは決してない。
なくて意思というかね自分の持ってる。
それが一番大事なんだよみたいな。
時代をこう貫いて。
なんかそんな気がしました。
確かにイッセーさんがおっしゃられたようにどんな状況時代でもちゃんと立って何かを見ているっていうその姿の…あっての美人画なのかもなというふうに。
それこそが美人であると。
今ふとこうもりの絵がまた浮かんできましたけれどもあんな時でもすっと…。
すっと立ってるわけじゃない寄っかかってるんですけど。
ねぇどんな時代でも。
強い女性像なんですねやっぱり。
どうもありがとうございました。
こちらこそありがとうございました。
2016/01/17(日) 20:00〜20:45
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出演者
【出演】イッセー尾形,森口瑤子,美術史家、前板橋区立美術館館長…安村敏信,ポーラ文化研究所・主任研究員…村田孝子,慶応義塾大学文学部教授…内藤正人,静岡文化芸術大学教授…磯田道史,【司会】井浦新ほか
ジャンル :
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
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