このおやじ単なるたき火好き…ではない。
これは調子いいわ。
これは上出来。
一応うちのカクモの鍛冶屋の伝統という事で。
よそにないものね。
よそにない商品。
燃える哲学で数々の製品を生み出した。
(スタッフ)社長のお気に入り…。
(茂木さん)お気に入り。
とにかく炎が大好き。
どんなものでも完全燃焼。
オンリーワンの薪ストーブを作り出した。
『日本のチカラ』今週は信州で完全燃焼にこだわり続ける燃えるおやじの哲学に迫ります。
長野県千曲市。
ここにたき火が趣味のおやじが一人。
よしオッケー。
これ放っといてもいいねもう。
ただのおやじじゃありません。
周りは彼を「火と語る男」なんて呼びます。
載せ方がいいねこれね。
こうに。
こうにね穏やかにね。
たき火歴65年茂木国豊72歳。
燃やす事にこだわり続ける燃焼おやじです。
う〜ん…。
燃焼おやじの正体。
それは世界最後発を自負する薪ストーブメーカーモキ製作所の社長。
100年以上の長い歴史を持つ海外メーカーに比べてモキ製作所が手掛けるようになったのはこの10年ほど。
しかし他にはない特徴で注目を集めています。
火持ちがよい広葉樹しか薪に使えないという薪ストーブの常識を覆したのです。
それが燃焼哲学と銘打ったシリーズです。
薪ストーブなどのヒットで10年で業績は7倍。
会社は急成長しました。
(茂木さん)音立ててるね。
音聞こえる?燃える音ね。
すごいね。
この中のここの温度が高温になるって事です。
まあよく燃えるという。
高温燃焼っていう事ですね。
煙は出ないし灰も少ない。
どんな木材でも薪に出来る。
秘密はたった1枚の鉄の板。
その名も日本だけでなくアメリカドイツ中国でも特許を取得している薪ストーブの心臓部なのです。
板1枚で一般的な薪ストーブよりも300度も高い800度もの温度で完全燃焼出来る。
そんな薪ストーブを燃焼おやじは独学で発明したのです。
木を燃やせば煙が出る。
茂木さんはそんな当たり前の事が嫌だった。
薪ストーブの中に何もなければよく燃えるが煙突からは煙が出る。
そこで一般的な薪ストーブでは触媒の酸化反応で煙を出さない方法が取られている。
しかし数年ごとに触媒の交換が必要でこれも茂木さんの考える完全燃焼じゃない。
そこでストーブの内部で空気を対流させてプレートの奥で煙やすすを完全燃焼出来る方法を思いついた。
手前では対流が続き薪がゆっくり燃える。
構造がシンプルなので交換部品もない。
急激に高温になってしまう針葉樹や竹でも薪として使えるようになった。
煙突の手前につけたからですね燃焼を妨げて燃えないと思ったんですね。
ところが驚くなかれ1号機を売ったお客さんからですね雨にあった薪が燃えるよとぜひ見に来てくれやっていう話で私も驚いたんですね。
なぜそんなに完全燃焼にこだわるのか。
それは茂木さんのルーツにありました。
昭和19年。
茂木さんは鍛冶職人の4代目として今の長野県千曲市に生まれました。
町の中心部にあった店はカクモの鍛冶屋と呼ばれ大層繁盛したのだといいます。
炎を扱い見事に道具を作り出す姿は憧れでした。
ところが不思議な事に父親が扱う炎からは煙が出ません。
高い温度でコークスが燃えて完全燃焼していたためです。
その記憶がずっと刻み込まれているのです。
茂木さんのもの作りには職人としてのこだわりもあります。
だからヘタな人にはやらせない。
うまくなってから作らせてる。
1人が1台ずつ仕上げてくの。
(スタッフ)なんでですか?
(茂木さん)本人…この方が仕事とすれば面白いわけ。
やりがいと…。
誰が作ったんだ?って言ったら俺だよって言えるものを…ね。
茂木さんは根っからの職人なのです。
現在開発中の新製品はキャンプで明かりと暖が取れるアウトドアグッズ。
若手社員たちが試作品でテスト中。
(茂木さん)おい小松。
ちょっとねここほうきで掃いてあそこにさ…なんだっけな?
(小松さん)あっはいわかりました。
一体どういう事?
(スタッフ)なんでしょう?ちょっと僕状況わからないです。
えーっとええ…そうですね…。
石器時代からかがり火っていうのがありましてですね今の時代に使えるかがり火を作ろうと思って。
これは例の有名な十日町の火焔土器なんですね。
なんていうのかな?まあ火焔すればね…。
これを見ながらねこれを作り出せという事です。
だから言葉でですねかがり火を作ろうって言ったら出来っこないんですね。
で古代から学ぶという…まあ歴史かな。
歴史とか古代から学ぶっていう事を考えてる。
最近のもんじゃなくてね。
とおっしゃられても社員の皆さんはイメージがつかめないようで…。
しかも炎の先端からは不完全燃焼の証しの黒い煙。
(茂木さん)燃焼で見るとねあれ未燃のカーボンっていうのかな?未燃ガスがあるから煙が黒いと思うわ。
(土屋さん)はい。
(茂木さん)比べればね。
はい。
(土屋さん)これ以上強度的に…穴を細かくしてしまうと弱くなっていってしまうという事で…この穴のピッチとサイズで…。
向こう穴が少ないわけだ。
はい。
小さくて少ない。
明らかにな。
はい。
(茂木さん)あれ見えねえもんね。
(土屋さん)はい。
はい。
改善します。
(茂木さん)ダメだね。
初めて若手に開発を任せた新製品。
まだまだ合格には至りません。
こんなふうに茂木さんは誰も思いつかない自由な発想で色んな製品を生み出してきました。
(スタッフ)これってなんなんでしょうか?無煙炭化器です。
えーそうですね枯れ枝とか竹を燃やして炭を作るという機械です。
(スタッフ)これだけなんですか?たき火好きの茂木さんだから出来た究極のたき火グッズとでも申しましょうか。
シンプルですが見た目以上の性能を引き出すのが茂木流のもの作り。
ご覧に入れましょう。
一気に燃やす事30分。
空気を取り込みながら渦を巻くように炎が上がり器の底では蒸し焼きの酸欠状態。
仕上げに水をかければ…。
(スタッフ)せーのはい。
炭の出来上がり!
(茂木さん)これで終わり。
完了。
ひと山完了。
出来ました。
素晴らしい。
一気に高い温度で燃えてしまうために薪ストーブやボイラーの燃料には不向きな竹。
茂木さんの手にかかればお湯が沸かせる立派なエネルギーに早変わり。
(茂木さん)確かですね竹3本で18リッターの灯油のエネルギーを出しますけど…。
竹やぶが油田っていう考え方どうでしょうか?2015年10月。
千葉県で開催された国内最大級の農業資材の展示会。
日本だけでなく海外からも350社を超える企業が販路拡大に繋げようとイチオシの製品を持ち込んでただ今売り込みの真っ最中!竹を燃やせるモキ製品に注目が集まっていました。
(展示スタッフ)こっちの方が移動して…しかも楽しく使える。
タケノコやるのに竹林持ってるけどまさかこれであれでしょ。
1本燃すのに何日もかかっちゃうもんな。
量を燃やすんであればこれで30リッターなんで…。
どうせ燃すんであれば両方兼ねたいわけじゃん。
(展示スタッフ)何とですか?焼却…。
焼却したいものとその熱を利用したいもの。
(スタッフ)竹林はお持ちなんですか?栗やなんか枯れちゃうじゃない。
そうするとある程度…。
(スタッフ)結構困ってるんですか?竹林には。
やっぱり毎年伐採しなきゃタケノコ出ないもんね。
森を荒らす竹。
茂木さんが目をつけた竹は里山の厄介者なのです。
全国で竹が侵食した森は今や東京都よりも広く拡大の速さのあまり放置され荒廃が進んでいるのです。
長野県飯田市。
茂木さんの作った製品で竹と戦うもう一人のおやじがいます。
皆さんビニールのご用意をお願い致します。
天竜川で20年舟下りの船頭をしている曽根原宗夫51歳。
渓谷にかつての美しさを取り戻すべく奮闘しています。
(曽根原さん)まあこういう雑木林モミジがあったりケヤキがあったりそれがやっぱり1回何かで竹がついちゃうとどんどんどんどん拡大していくんですね。
鵞流峡。
秋には美しい紅葉で多くの人を楽しませてきた天竜川の渓谷です。
赤や黄色で一面に染まっていた谷を今では青々とした竹が覆っています。
地面には日が当たらなくなり人の近づかない竹やぶは不法投棄の現場になっていたのです。
こういうふうになってくんだよね。
むちゃくちゃに。
枯れた竹から何から…。
何千本っていうか何万本あるんだろうね?これ。
ずっと向こうまで続くからね。
でこっちもそう。
ずっと。
もう結局見て見ぬふりするしかねえわけで。
そうするともっと朽ちますね。
もっと朽ちるしもっとゴミ捨てられるし。
いい事なんにもないよね。
楽しめば可能性広がるし見て見ぬふりすると本当に悲惨な状態になっちゃうし。
まあ本当すごいなでも。
久々に来たけどすごいなやっぱり。
頑張ってやんなきゃ。
自分一人の力だけでは竹やぶはどうにもならない。
曽根原さんにチャンスが訪れました。
「ただ今より平成27年度竜丘地区文化祭を開催致します」
(演奏)爆ぜるでね。
竹の侵食に気づいたのは3年前の事。
手始めに伐採した竹でいかだを作り始めたものの壊れればゴミになる。
さらなる活用方法を探していて竹ボイラーと出会いました。
(スタッフ)燃料には事欠かない…。
(曽根原さん)そうそうそうそう。
周りにあるものがみんな燃料。
竹で沸かしたお湯を足湯として舟に乗ったお客さんに振る舞うようになりました。
ああいいお湯だ。
入っちゃえ。
循環のサイクルは見つかったもののお客さん相手だけでは地域の人を巻き込めない。
そこで地元の文化祭に乗り込んで竹を燃料にしてかまどストーブでご飯を炊き焼肉をしてアピールする事を思いついたのです。
(曽根原さん)肉が焼けましたよ!竹の可能性を知ってもらい渓谷の整備を手伝ってくれるチームを作ろうというのです。
(曽根原さん)皆さんおはようございます。
(一同)おはようございます。
(曽根原さん)いよいよ今日から竹林伐採バスターズ始動という事で…。
安全になおかつこれからここがどんどんどんどん日が差し込んで生き返っていく様をみんなで楽しみながら共有していけるようなそういう展開を作っていきたいと思っておりますので。
であとここにあります炭化器。
無煙炭化器っていうんですがそこでとにかく枯れ竹をまず炭化させる事を進めていかないと次から次へと切ったものがどんどんどんどん山になっていくと作業場がなくなっていきますので…。
楽しんでやっていきたいと思いますのでよろしくお願いします。
(メンバーたち)お願いします。
下は中学3年生上は70代。
総勢27人のメンバーが集まりました。
竹が成長を始める春までに2.2ヘクタールを伐採し美しい渓谷を取り戻す。
竹との戦いの始まりです。
あっ倒れる。
倒れます。
よいしょ。
ここら辺は山奥なので色々と山が汚いみたいな。
色々とゴミ捨てられたりとかそこら辺がちょっと思ってた部分があったので。
山が好きなので…。
こういう作業嫌いじゃないんで参加してもいいかなって思いました。
(スタッフ)ありがとう。
ありがとうございます。
ああすいません。
(スタッフ)大丈夫ありがとう。
(男性)まだまだだから計算どおりでいい…。
いけ!これもいけ!次もいけ。
この日の作業はおよそ6時間。
伐採した竹およそ500本。
自然エネルギーを作り出すためにはふるさとを大切に思う人たちの力が必要でした。
厄介者だった竹でしたが炭になった事で畑といった活躍する場所も生まれました。
そして少しずつ開けてきた渓谷に50年間人目に触れる事がなかったあるものが姿を現しました。
かつてこの地で多くの人を癒やしてきた温泉宿の跡です。
これからどんどんね向こうへ向こうへこう明るくなっていくと広がってって…。
皆さんそうだと思います。
(曽根原さん)じゃあいきますよ。
曽根原さんたちが活動を始めて数日後。
速いなおい。
すごい。
飯田市の天竜川に燃焼おやじの姿がありました。
実は2人はこの日が初対面。
曽根原さんの活動を知った茂木さんが訪ねて来たのです。
さあそれじゃあこれから渓谷鵞流峡です。
波も本番ですよ。
鵞流峡か。
(曽根原さん)ちょっと衝撃ありますよ。
ブレーキだな。
ブレーキ…止めたって…。
竹の伐採を通じて温泉宿の跡を見つけた曽根原さんは夢を抱いていました。
いいな?じゃあ。
いくよ。
よいしょ。
(曽根原さん)あそこにちょっとピカピカッと光るものが見えます?竹の奥に。
あれね無煙炭化器です。
うん。
夢は絶えない竹は。
そうですそうです。
切りやすいんだよね?うん。
切りやすい。
切りやすいし持って軽いんだよね。
で燃えれば火力が高いんだよね。
ねえ。
(曽根原さん)で次の年にはまたすぐ伸びるというね。
そうそうそうそう。
すごい事だわ。
(曽根原さん)そうですね。
(曽根原さん)循環型が一番ですやっぱり。
糸口を。
本当足湯作りますからね。
期待しててくださいね。
はいわかりました。
よろしくお願いします。
期待してます。
熱い思いを持つ熱い2人の出会いが新たなエネルギーを生み時代を変えていくのかもしれません。
長野県千曲市。
薪ストーブメーカーモキ製作所。
茂木さんが求める火焔土器のような炎を目指して若い社員たちが実験を繰り返していました。
(茂木さん)はいおはよう。
(社員たち)おはようございます。
それ何してるだ?それ。
(土屋さん)あっこれこれから火をつけます。
まああの…穴を大きくしたものと少し改良を入れた…。
あのヘッドはいるだか?
(土屋さん)あの…一応煙を消す方法として一応収束させて…。
(茂木さん)あった方がスピード上がるわな。
それ…それちょっとふた取って…。
それで1個だけ逆さにしてみ。
どういう炎になるか。
(茂木さん)ああそれでもいいわ。
でやってみたかというのが答えだから。
(茂木さん)これはこれでいいな。
(土屋さん)そうですね。
うん。
(小松さん)そうですね。
(茂木さん)こういうところ面白いね。
炎がね。
炎踊るのがね。
これ渦巻いてるから非常に素晴らしいね。
本当に火焔土器っぽくねこういうふうに。
職人魂と独創的なアイデア。
そして完全燃焼。
これこそが燃焼おやじの燃える哲学。
炎っていうのはこれあの…石器時代からの憧れだよね。
どこかでたき火してたら恐らくみんな寄ったもんでしょ。
たき火…憧れねえ。
だってこれでほら食かな?食と住をやってたわけだから。
『日本のチカラ』次回は北海道。
日本一のそばの産地で驚きのプロジェクトに密着しました。
2016/01/17(日) 06:00〜06:30
ABCテレビ1
日本のチカラ[字]
パチパチと静かに語りかける薪ストーブ…この魅力にとりつかれた熱き男たち…独創的な薪ストーブを次々と生み出す「燃焼オヤジ」とは!?鍛冶職人の魂をお届けします!
詳細情報
◇番組内容
キーワードは完全燃焼。「世界最後発」を自称する長野県千曲市の薪ストーブメーカーが次々に独創的な製品を生み出しています。独自の技術を応用したことで、雑草から長野県特産のキノコ培地、広葉樹の間伐材、針葉樹、竹まで何でも燃やせるようになったのです。その核にあるのは、「完全燃焼」にこだわり続ける“燃焼おやじ”72歳の存在。明治41年から受け継がれた鍛冶職人の魂…。
◇番組内容2
燃焼おやじの夢は、日本から海外へ、そして「世界を変えたい」…。さらに時代を飛び越え、壮大なスケールで独創的な製品開発を進めています。“完全燃焼”にこだわり続ける燃焼おやじの夢…。熱き男の姿をみつめます。
◇番組内容3
全国各地の「魅力あふれる産業」を通して、地域の歴史や文化・人々の英知や営みを学び、日本の技術力・地方創生への道・温かいコミュニティー、生きるヒントを描き出す、教育ドキュメンタリー番組。
◇ナレーション
宮入千洋(信越放送アナウンサー)
◇音楽
高嶋ちさ子「ブライト・フューチャー」
◇制作
企画:民間放送教育協会
制作著作:信越放送
協力:文部科学省/中小企業基盤整備機構
◇おしらせ
☆番組HP
http://www.minkyo.or.jp/
この番組は、朝日放送の『青少年に見てもらいたい番組』に指定されています。
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
趣味/教育 – 生涯教育・資格
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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日本語
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