マシンを背負い高速で自由に大空を飛ぶ。
その夢は何十年もの間私たちの想像力をかき立ててきました。
点火。
ロケットエンジンを背負いさっそうと空へ。
しかし問題があります。
多くの場合飛行時間が非常に短いのです。
突然落下します。
命懸けですね。
その実用性は?宇宙空間で重力の小さな小惑星に接近するのには最適です。
開発者たちは新たなアイデアや技術を駆使して飛行マシンの性能を向上させようとしています。
もしかしたら誰もが気軽に空を飛べる日がやってくるかもしれません。
アメリカワシントンD.C.の中心街でロケットエンジンを搭載した飛行マシンのデモンストレーションが行われようとしています。
みんなが尻込みするような事に挑戦したいんです。
ニック・マコンバーは自ら組み立てたマシンを使ってこれまで200回以上の飛行を行ってきました。
(マイケル)「ではカウントダウンです。
54321」。
(拍手と歓声)
(マイケル)ホールの中を自在に飛ぶのを見たのは初めてです。
見物客の歓声を聞いたでしょう?みんなまねしてみたいと思ったはずです。
僕も飛んでみたいですね。
SF映画のスクリーンから抜け出してきたみたい。
最長飛行時間は?この機種なら25〜26秒かな。
どこで買えるの?これは自分で作ったんだ。
人間がロケットエンジンを背負って空を飛ぶ。
そのようなアイデアが登場したのは今から50年以上前の事でした。
当時は騒音がひどく高価で操作が難しくしかも30秒ほどしか飛べませんでした。
実は50年たった今も何一つ変わっていません。
私たちはロケットの技術を利用してジェットパックというマシンを開発しています。
ワシントンでのデモ飛行に用いられたのは彼らの新型機でした。
何にでも挑戦したいタイプなんです。
人間が空を飛べる可能性を僕自身が知りたいし世界にも示したいですね。
本来人間は空を飛べません。
だから重力に逆らって飛ぶためのマシンが必要だしむちゃな事でも挑戦したくなるんです。
これまで200回以上の飛行を達成したマコンバーも伝説的なパイロットビル・スーターの記録には及びません。
1964年から2012年までほぼ半世紀の間に1,000回以上の飛行を行いました。
(アナウンス)「ビル・スーターが空高く舞い上がります。
デモ飛行開始です」。
ビル・スーターは生ける伝説です。
彼は人が飛行マシンで自由に飛ぶ夢を実現し半世紀にわたって活躍し続けたんです。
ビル・スーターが1960年代に使用したマシンの1つは歴史的な資料としてスミソニアン国立航空宇宙博物館に展示されています。
あれはロケットベルトというマシンでした。
推進力はロケットエンジンです。
基本的な作りはマコンバーたちのジェットパックと同じです。
1960年代にもてはやされたロケットベルト。
ビル・スーターは開発者のウェンデル・ムーアに選ばれたテストパイロットの一人でした。
SFのヒーローバック・ロジャースが背負っていた装備は当時実際に軍事用に開発されつつありました。
戦場の兵士がさまざまな障害物を飛び越えるための装備としてです。
ロケットベルトのアイデアは多くの人を魅了し1961年にはケネディ大統領やアメリカ軍の関係者たちの前でデモ飛行が実施されました。
ビル・スーターは一般の人がどのくらいの訓練をすれば飛べるようになるかを実証する役目を担いました。
命綱をつけて60回飛行し操作のコツをつかみました。
スロットルレバーで噴射口を調節。
この調節が飛行する上で難しい部分でした。
コツをつかみ自由に飛べるようになると自信がついてきました。
だんだんリラックスして周りを眺める余裕も出てきました。
マシンを背負っている事を忘れました。
鳥のように空を飛べる気がしたものです。
しかし大きな課題がありました。
飛行時間が30秒にも満たなかったのです。
地上から飛び立つには推進力が必要です。
推進力を生むのは燃料で燃料が多いほど長時間飛べます。
しかし燃料が重すぎると飛び立てなくなります。
この推進力と重量のバランスはいまだに難問です。
以前より素材が軽量になった現代のマシンジェットパックも飛行時間を延ばすには至っていません。
燃料を使い切るまで26秒間飛んでいられます。
でも26秒たつと突然落下します。
地面へ真っ逆さまにね。
最低でも3秒の余裕をみて着陸します。
飛び方を大きく左右するものの一つがエンジンの作りです。
容器の中には燃料に化学反応を起こさせる触媒が入っています。
触媒の大きさやタイプ格納の方法など最適な組み合わせを見極めるのが難しいんです。
ジェットパックの触媒は100枚以上の銀のシートを4トンの力で圧縮したものです。
燃料が触媒シートに触れると化学反応が起き1,300度という高温の蒸気が放出されます。
触媒の僅かな調整の差によって飛び方や飛行の効率は大きく異なってきます。
マコンバーたちは前人未到の挑戦を計画し始めました。
26秒という限られた時間内で世界初の記録を目指すのです。
怖いのは想定外の不具合や燃料切れの危険だ。
パイロットとしてのキャリアを広げたいんです。
そしてジェットパックの可能性もね。
ジェットパックによる大きな記録の一つは2008年パイロットのエリック・スコットが達成したコロラド州ロイヤル峡谷の横断飛行です。
勇気ある挑戦でした。
同じパイロットとして彼の成し遂げた事に敬意を表します。
峡谷の幅はおよそ460メートル。
飛行時間は21秒でした。
燃料に十分な余裕を残して着陸。
(歓声)すばらしかった。
峡谷を渡り終えたエリックはひざまずいて地面にキスをしました。
その気持ちがよく分かります。
ニュージーランドにある南半球で最も高い建物だ。
スカイタワーだね。
新たな飛行記録を打ち立てるにはロイヤル峡谷よりも人目を引く舞台が必要です。
ここなら挑戦しがいがある。
スカイタワー上空を飛べばジェットパック史上最も危険で大胆な試みを成功させる事になるでしょう。
デッキから離陸して塔の周りを100メートルほど回るんだ。
これまで誰もやってのけた事のない事をしたいんです。
今回僕たちが狙うのは地上から最も離れた上空での飛行記録です。
デッキの外に出てへりから飛び立ちタワーの周りを飛ぼうと思うんだ。
選ばれた舞台はニュージーランドのオークランドにあるスカイタワー。
展望デッキは地上からおよそ190メートルの高さにあります。
マコンバーは港を一望するデッキから飛び立ち26秒以内でタワーを1周する計画を立てました。
ミスをすれば命がありません。
挑戦がどんどんエスカレートする事に私は反対です。
スカイタワーでの挑戦は風との闘いになるでしょう。
飛行中は常に上昇するパワーが必要です。
飛行経路は直線ではなく弧を描きます。
曲がりながら高度を保つにはより多くのパワーを必要とします。
つまり燃料を多く消費するんです。
私たちが最も恐れるのは燃料切れによる墜落です。
不確定な要素も多くロイヤル峡谷での飛行よりもずっと危険です。
危険だからこそ誰にもまねできない挑戦です。
特別な訓練を行うためマコンバーはスカイダイビングのトレーニング施設を訪れました。
よろしく。
やあ。
ちょっと飛ばせてもらえる?体の重心を下げながら安定して飛ぶ感覚をつかみたいんだ。
いいよ。
行こう。
ああ。
訓練に用いるのは風洞と呼ばれる装置。
これを使って上空の大気の流れを再現します。
風洞を利用して重力や風の抵抗に逆らう方法を体に教えこみます。
体をどう動かせばどう向きを変えられるか。
そういった感覚を磨くための訓練です。
どんな風にさらされても体の重心をつかみバランスを保たなければなりませんから。
しかし熟練のパイロットでも事故を免れる事はできません。
訓練中地上から7.5メートルの高さでスロットルレバーが壊れた事がありました。
パワーを抑える事も操縦もできなくなり風船のように翻弄されました。
命綱があって良かった。
常に命懸けなんです。
実際に空を飛ぶ時にはさまざまな危険が付きまといます。
墜落だけじゃありません。
急ターンした途端操縦不能になったりスロットルが動かなくなったり。
あらゆる事故を想定しどう対処するかを考えているうちに眠れなくなる夜もあります。
これまでジェットパックのパイロットに死者は出ていません。
マシンの安全を支えているのはエンジニアたちの熟練の技です。
やあまた来たよ。
やあニック。
今日は何だい?エンジンの部品なんだけどこの穴から燃料を送り込む時にもっと均一に分散させられるようにしたいんだ。
納得できなくて。
だからこのマシンを修正しておきたいんです。
大きな挑戦をする前にね。
よしいいかな。
どう?しっかり溶接しないと。
ええ。
既製の部品がない時は一から作ってもらいます。
できた。
これをセットしよう。
熟練のエンジニアが協力してくれるのは心強いですね。
彼が作るものは精度が高いんです。
ありがとう。
ジェットパックもロケットベルトも燃料は共に過酸化水素です。
過酸化水素は「オキシドール」の名で消毒薬としても使われますが消毒薬の濃度は2〜3%。
ジェットパックの燃料は濃度が90%で基本的にロケット燃料と同じです。
ロケットの燃料は過酸化水素の他にもあります。
エンジニアのニノ・アマリーナは独自のマシンを使ってさまざまな燃料の長所と短所を調べました。
問題は強力な燃料ほど毒性が強い事です。
毒性の強いロケット燃料は人が背負って飛ぶのには向きません。
過酸化水素は比較的人体に安全な燃料です。
放出される熱はノズルから出て1メートル以内で消え去るので何かが燃えたりする危険性はありません。
パイロットのズボンが途中で燃えてしまうような心配はしなくてもいいでしょう。
もちろん危険が全くない訳ではありません。
(アマリーナ)高い濃度の過酸化水素が直接有機体に触れると有機体は触媒と同じ反応を示して分解し始めます。
すると熱が生じ発火点に達して燃えだす事もあるのです。
現時点ではジェットパックに最適の燃料といえる過酸化水素。
しかし開発者たちは今一つの難題に直面しています。
過酸化水素の燃料は恐ろしく値段が高いんです。
そのため使う事が現実的ではなくなりつつあります。
新たな燃料開発には技術革新が必要です。
マコンバーたちはネバダ州のブラックロック砂漠へと向かいました。
彼らが協力する民間のロケット製作チームが完成機の打ち上げを行うからです。
宇宙開発競争は1950年代に始まりました。
NASAの初期の試みが示すようにロケットの宇宙への打ち上げは容易ではありません。
多くのアマチュアグループも宇宙への到達を目指して何度も挑戦してきました。
その中で最初に成功したのがジェリー・ラーソンのチームです。
2004年に最初の打ち上げに成功しました。
その時に到達した高度は115キロでした。
今回は115キロを更に上回る記録を目指しています。
ロケットの重量は340キロ。
その半分以上が燃料です。
燃料は僅か12秒で全て燃え尽きます。
加速度は16G。
つまり重力の16倍の力がかかりますから生身の人間には耐えられません。
この加速度が成功の鍵を握っています。
ロケットの燃料はスペースシャトルのものとほぼ同じです。
固体燃料で燃料と酸化剤が一緒に入っています。
ジェットパックは液体燃料ですが燃焼の原理は同じですね。
固体燃料のロケットは比較的構造が単純です。
点火後は燃料が尽きるまで燃焼し続けます。
このタンクいっぱいに燃料が詰まっています。
燃料は最初どろどろの状態でタンクに注がれ中で固まります。
中心の芯を引き抜くと燃焼を継続させる事ができ推進力が生まれます。
民間人があんなロケットを作るなんてすごい事です。
記録を打ち立てたいという情熱があらゆる難題を克服し技術革新を可能にしました。
全ては情熱から始まるんです。
マコンバーが意欲を燃やすのはジェットパックによる記録の樹立です。
ロケットの打ち上げに先立ち改良した部品を使ったテスト飛行が行われました。
タワーを想定し周回飛行を行います。
飛行時間は25秒。
テストは成功です。
(拍手と歓声)いよいよロケットの打ち上げが始まります。
(アナウンス)「打ち上げ30秒前。
準備よし」。
秒読みが始まります。
(アナウンス)「10987654321。
点火」。
(歓声)成功だ。
数秒後補助エンジンが切り離されました。
見えなくなった。
ロケットは2004年の記録を超える高度117キロメートルに達しました。
最高スピードは時速およそ6,000キロ。
アマチュアロケットの世界記録も塗り替えました。
(拍手と歓声)宇宙開発競争は技術革新の競争でもありました。
1965年ソビエトの宇宙飛行士が人類初の宇宙遊泳を達成するとその3か月後にはアメリカも宇宙空間に人を送り出しました。
(宇宙飛行士)「最高の気分です」。
宇宙遊泳は命綱をつけて行われました。
アメリカの宇宙飛行士は動きを制御するためにロケットエンジンのついた小型の装置を持っていました。
空気がない場所でジェットエンジンは作動しません。
使えるのはロケットエンジンだけなのです。
その装置はジェットパックのミニチュア版のようなもので今も博物館に保管されています。
当時のまま腐食もしていません。
2つのタンクの中には圧縮酸素が入っていました。
とても大きなハンドルです。
操縦するのにこの大きなスイッチを使っていたからです。
作動させると圧縮酸素がハンドルの内部を通ってアームに流れます。
一方のスイッチを押すと片側のアームのノズルから圧縮酸素が噴射され前に進む事ができます。
そして反対側のスイッチを押すともう一方のノズルから噴射され後ろに下がる事ができます。
この推進装置は宇宙空間で実際に役立ちました。
そこでNASAは背負うタイプの推進装置の開発に着手します。
1960年代半ばアメリカでは飛行マシンの人気が最高潮に達していました。
カリフォルニア州のイベントで初めてデモ飛行を行いその数か月後にはテレビドラマの撮影のために呼ばれました。
ジェームズ・ボンドの映画007シリーズにも参加しました。
子供たちの憧れが実現したかのように思われました。
子供は誰でも空を飛びたいと夢みています。
飛行機のように空を飛んだりジャンプしてみたり翼を付けてみたり。
とにかく重力から解放されたいんです。
重力に逆らうすべは見つかりました。
次の目標は飛行時間を延ばす事です。
ロケット燃料は強力ですが30秒ほどしか飛べません。
より長く飛ぶためにアメリカ軍が注目したのがジェット燃料でした。
しかし当時ジェットエンジンは巨大で複雑なものしかありませんでした。
その問題を打ち破ったのが1968年に登場した超小型のジェットエンジンです。
直径30センチ重さ27キロほどしかありません。
テスト飛行では燃費の向上が証明され次世代の飛行マシンとして大きな期待が寄せられました。
デモ飛行では操縦性や飛行時間の長さに注目が集まりました。
20分近く飛行する事ができたのです。
しかし結局アメリカ軍はこれを採用しませんでした。
音がうるさく重たく高価だというのがその理由でした。
将軍たちは「ありがとう。
これで終わりだ」と言いました。
まるで目の前でバタンとドアを閉じられたようでした。
マシン自体は廃棄されましたが軽量のエンジンは別の形で進化を遂げます。
改良されたエンジンは現在もミサイルなどに使われています。
この技術の価値は極めて高くアメリカ軍の重要な軍事機密となっています。
あのエンジンをもう一度使ってみたいのですが手に入りません。
軍の支援を失ったあと新たな飛行マシンの開発は停滞しました。
一方宇宙では大きな進展がありました。
1970年代NASAはロケットエンジンを用いた着用型の「有人飛行ユニット」を開発。
その目的は命綱なしの船外活動を可能にする事でした。
1984年には宇宙でのテスト飛行が行われました。
数百時間に及ぶ訓練をへて宇宙飛行士たちはスペースシャトルチャレンジャーで宇宙へ飛び立ちました。
あれは私にとって初めての宇宙飛行でした。
何年間も待ち望み何百時間もかけて訓練してきたミッションについに出発したのです。
それは人類が初めて命綱なしで宇宙空間に踏み出す瞬間でした。
私たちは船外活動用の服を着て外の空間に出ていきました。
まず船体に命綱を取り付け次に自分の生命維持システムをそこにつなぎました。
そのあと体から命綱を外して前方に踏み出したのです。
「よし行くぞ」。
突然宇宙に浮かんでいました。
ほんの短い距離がとてつもなく大きく感じられ歓声をあげました。
「了解ブルース」。
人類史上初の命綱なしの宇宙遊泳でした。
宇宙に浮かぶ感覚は何ともすばらしいものでした。
どこまでも自由でどんな姿勢も思いのままです。
私は衛星のように時速2万9,000キロもの速さで飛び続けていたのです。
有人飛行ユニットの重量は150キロもあります。
しかし宇宙空間では浮遊するのに重さは関係ありません。
およそ1時間半の遊泳でした。
同じ年更に2度有人飛行ユニットを用いた宇宙でのミッションが行われました。
宇宙飛行士たちは人工衛星の回収などに向かいました。
その後スペースシャトルの操縦精度が上がり命綱を外す必要のある船外活動はなくなりました。
有人飛行ユニットを着用し命綱なしで宇宙空間に出たのはこれまでに僅か8人だけです。
しかし命綱をつけた現在の宇宙飛行士も万が一の場合に備え簡単な推進装置を身につけています。
いわば次世代型の宇宙飛行ユニットです。
有人飛行ユニットは現在更なる改良が進められています。
これが今開発中の推進装置です。
操作は全て手を使わずにできるようになっています。
動かしてみますか?ええ是非試したい。
操作は足の動きか音声によって行います。
私たちが目指しているのは今後小惑星の探査などで使える飛行ユニットを作る事です。
地球の近くの小惑星は衝突の危険があると同時に貴重な資源の宝庫でもあります。
今後小惑星の周囲でさまざまなミッションを行うためには自由に動く事のできる飛行ユニットが必要となります。
(ポンシア)小惑星は重力が小さいので近くにとどまるためには推進装置が必要です。
近くにとどまれれば探査やサンプルの採取ができます。
停滞していた地上での飛行マシンの開発も1990年代に再び勢いを取り戻しました。
スイスのイブ・ロッシーは独自のマシンでジェットエンジンによる飛行を追及し始めました。
今彼はジェットマンとして知られています。
彼が13年かけて開発したマシンは幅2メートルの翼に4基の小型ジェットエンジンがついています。
2006年初めて飛行に成功。
最高時速300キロ近くを出して5分40秒間飛びました。
燃料はジェット燃料と同じ「ケロシン」です。
しかしこのマシンには弱点もあります。
それは自力で離陸するパワーがない事。
ある程度の上空からスカイダイビングのように飛び立たなければなりません。
そして着陸にはパラシュートが必要です。
今では飛行時間は10分を超えました。
ジェットマンの挑戦は更に続いています。
一方全く異なる発想で空に飛び上がる装置を作った技術者もいます。
燃料ではなく水で推進力を得るのです。
もともと空を飛んでみたいという思いが強かったんです。
水を使って飛び上がる力を得るというアイデアは何年も前に初めてジェットスキーを体験した時に思いつきました。
使用するのはジェットスキーのエンジンに手を加えたもの。
ポンプがくみ上げた水を2つのノズルから噴出させます。
これもまた空に飛び立つスリルと快感を味わう事のできるマシンです。
やあアレハンドロ。
ようこそテイラーです。
よろしく。
リッキーです。
そんなに難しくありません。
インストラクターの指導を受ければ大概はすぐに高く飛べるようになります。
ワクワクする。
さあ行こう。
ではシートに座って。
落ち着いて。
動く時は小さく少しずつ。
安全ですよ。
最年長の方は75歳でした。
123。
では少しパワーを上げますので下に下がってみてください。
(アメンド)水のパワーはこちらで制御します。
(テイラー)その調子。
(アメンド)高さや方向はアームの操作で自由に変えられます。
(テイラー)頑張って。
インストラクターが手助けをするので心配はありません。
(テイラー)良くできました。
誰でも安全に楽しめます。
(テイラー)もう飛べますね。
こちらへUターンして。
このマシンのいいところは全ての人を笑顔にする事だと思います。
見事でしたよ。
じゃ装置を外しましょう。
思い出に残るすばらしい体験ができますよ。
楽しんだ?ええありがとう。
上級者は更に高度な技を使う事ができます。
時速50キロで水面すれすれを飛んだり10メートル近く上昇する事もできます。
今後スポーツとしての可能性は更に広がっていくでしょう。
もっとすごい技ができるような製品も開発されようとしています。
ではレジャーやスポーツ以外の使い道は?残念ながら何もなさそうです。
通勤に使う事はできません。
移動手段としての実用性がないのが弱点ですね。
マコンバーたちのジェットパックも今はまだ30秒ほどしか飛行できません。
それでも彼らは挑戦する事に価値があると考えています。
確かに危険があるし高価だし僅かな時間しか飛べません。
なぜそんなものに関わり続けるのかって?モテたいからです。
冗談です。
ジェットパックで飛ぶ姿は最高に美しい。
飛ぶのを見るだけで努力が全て報われる気がするんです。
その緩衝材を取って。
ハンドルを入れよう。
マコンバーたちはまもなくニュージーランドのスカイタワーでジェットパックの飛行世界記録に挑もうとしています。
輸送中にマシンが損傷しないよう慎重に荷造りを行います。
よしできた。
こん包は完了。
無事に届けよ。
しかし突然問題が発生しました。
スカイタワーで飛行できなくなりました。
許可する側がおじけづいたんです。
万が一事故が起きた場合の影響を恐れたんでしょう。
みんな僕ほどジェットパックを信頼していないんですね。
発送は取りやめ。
一から出直しです。
僕は諦めません。
他をあたります。
新たな挑戦の舞台を超高層ビルの中から捜し出す事にしました。
2007年パイロットのエリック・スコットは41階建てのビルの屋上から飛行に成功しました。
これが過去最高の記録です。
41階より高いビルで飛びます。
新たな候補を見つけました。
スカイタワーほど高くはありませんがデンバーにある45階建てのビルです。
いいね。
すごい眺めだ。
45階建ての屋上から飛び立ちビルのアンテナの周りを飛ぶ計画です。
まず現場を下見して飛ぶイメージを固めます。
ここから外側に出よう。
ここから飛び立ちここに戻る。
離陸と着陸の場所を決めたら次に飛ぶ経路を計画します。
その際高度や速度風障害物など全てを計算に入れなければなりません。
歩幅で距離を確かめます。
この屋上の広さは横に13歩縦に30歩だ。
向こう側も幅は13歩くらいだろう。
同じくらい?幅はこっちの方が広い。
ああ。
緊急時の不時着地点も探します。
下りるなら東側か西側だ。
大きくそれなければいいが。
風に流されて隣のビルに降りるなんて失敗はしたくないな。
あらゆる事態を想定します。
どんな問題がいつ起きるかによって対処方法は異なります。
誰もまだ飛んだ事のない高さです。
記録への挑戦とは自らに厳しい基準を課しそれを打ち破る事です。
高い場所には特有の危険があります。
最大のリスクは風です。
前もって予測できません。
その時になってみないと。
しかしジェットマンのようなパラシュートは装備されていません。
大きな理由の1つは重くなるからです。
それにいつも飛んでいる地面に近い場所でも墜落の危険はあります。
同じ事です。
高く飛び上がろうとする時にパラシュートやパラグライダーの重さは確かに記録への足かせになるでしょう。
(マコンバー)僕はこう思います。
墜落する時のためにパラシュートを持とうなんてそう思うくらいならそもそも飛ぶべきではないんです。
つまり予測できない未知の要素に備え安全に飛びきる事が僕の挑戦なんです。
正直なところ心配です。
誰にでもできる事ではありません。
私も若いころは自分のしている事が危険だなんて思いもしませんでした。
高さ90メートルのナイアガラ峡谷の崖から飛んだ時少しでも時間を稼ぎたいとエンジンを作動させる前に飛び出したりもしました。
無謀な行いを今は反省しています。
若い人たちには熱くなりすぎないよう忠告したいですね。
挑戦は人生にとって大切な事です。
リスクのない挑戦なんてありません。
もちろんあらゆる事を慎重に注意して行います。
必要な注意を怠ってケガをしたり命を落としたりしたくありませんからね。
今回の挑戦はかなりリスクの大きいものですが最大限の慎重さで臨みます。
挑戦するのがとても楽しみです。
午前5時30分。
準備が始まりました。
いよいよだね。
もう誰も中止はできないよ。
ジェットパックはある意味繊細なマシンです。
部品1つが欠けても動きません。
全ての部品がきちんとかみ合っていなくてはならないんです。
燃料を取り付けたらきちんと動くかどうか集中力を高めて念入りに総点検します。
あらゆる管や弁ケーブル小さなネジに至るまで全て確認します。
1か所でも不具合があったら大変な事になるからです。
緊張しますか?本人よりね。
準備は全て整いました。
始めよう。
成功です。
ジェットパックによる世界最高高度の飛行が達成されました。
うまくいった。
大満足です。
風向きと同じ方向に飛んだのが勝因でした。
思ったより風が強かったけどね。
また一つ記念すべき偉業が成し遂げられました。
ジェットパックは僕にとって最高の刺激と興奮を与えてくれるものです。
挑戦とは可能性を開く事です。
人間が空を飛ぶ事の可能性を僕自身が知りたいし世界にも示したいんです。
空を飛びたいという情熱はさまざまな技術を生み出してきました。
そこには無限の可能性が秘められています。
将来やってみたい事を想像する事は進歩への鍵だと思います。
もう一度ジェットエンジンを使った飛行マシンの開発に取り組めば更なる進歩が望めるでしょう。
ジェットパックで更なる高みを目指すために僕らは新たな技術を追い求めます。
自由なアイデアと挑戦の精神が人類をはるか上空へと押し上げました。
楽しみのため科学のためそして夢を実現するために飛行マシンは今も日々進化を続けているのです。
何を燃やしているの?2016/01/16(土) 19:00〜19:45
NHKEテレ1大阪
地球ドラマチック「飛行マシンで大空へ」[二][字]
空飛ぶヒーローのようになりたい!その夢をかなえてくれるマシンがある。空飛ぶパワーの源はロケットエンジンから水力までさまざま。誰もが気軽に空を飛べる日も近い?
詳細情報
番組内容
ロケットエンジンを背負い、高速で自由に大空を飛ぶ—。映画の中だけの話だったものが今、実用化されつつある。ロケット技術を利用したジェットパックというマシンを背負って最高高度を目指す若者に密着しながら、さまざまなアイデアで空を飛ぼうとする試みを紹介。飛び立つためには推進力が必要だが、燃料が重いと長時間飛行はできない。果たして世界最高高度記録への挑戦は成功するのか!?(2014年アメリカ)
出演者
【出演】渡辺徹
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 宇宙・科学・医学
ドキュメンタリー/教養 – スポーツ
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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