真田丸(1)(新番組)「船出」 2016.01.16


(足音)
(矢沢三十郎頼幸)源次郎様これ以上は危のうござる!
(真田信繁)せっかくここまで来たんだ。
敵に見つかったらえらい事ですぞ!見つからなければいい事ですぞ!
(いななき)徳川勢だ。
戻りましょう!大将は誰だろう名のある人かな?源次郎様!あっ!
(滑り落ちる音)何者!失礼。
葵の旗に追い立てられひたすら逃げるこの若者は…。
これより33年後大坂夏の陣において徳川家康を自害寸前まで追い込み日の本一の兵とうたわれる事となる。
だが今はひたすら逃げるのみ。
うわ〜!そのころ武田信玄の息子勝頼は織田信長の侵攻に備え諏訪上原城にいる。
北に上杉東に北条西に織田南に徳川と有力大名に囲まれ勢力挽回の機会をうかがっていたが勝頼の義理の弟木曽義昌らが突如織田方に寝返った。
信長はこの機を逃さず一気に兵を進めたのである。
穴山様!駿河におられたのでは?浮き足だっているおぬしらに活を入れに舞い戻ってきたわ。
(武田勝頼)頼もしいぞ梅雪。
御屋形様松尾城の小笠原信嶺も織田に下り申した。
(勝頼)何?小笠原が?あの恩知らずめが!すぐに兵を出して小笠原を成敗致しましょう!御屋形様。
ぐずぐずはしておられませんぞ。
これ以上裏切り者を出さぬためにも一刻も早く…。
いやここは一旦新府城に戻るべきである!穴山様何を仰せか?織田の軍勢は既に天竜川まで押し寄せております。
直ちに我らが本拠地新府に帰りお味方を立て直すが肝要かと。
(信茂)織田勢の前に尻尾を巻いて逃げろと仰せか!そなたらの無策を責めておるのじゃ!何だと!やめよ!安房守おぬしはどう思う?おそれながら申し上げます。
ここは穴山様が申されるとおり一旦新府へお戻りになるべきでございましょう。
おじけづいたか安房守!西の守りの要であった木曽義昌が寝返ったという事はご領地の西側が丸裸になったも同じでございます。
義昌が織田勢を素通りさせてしまえばお味方は総崩れになります。
今は一旦新府へ引くが上策かと存じます。
潮を読むのでござる。
今は引き時。
力をためて待つのです。
(跡部)木曽はどうする?木曽討伐は後に取っておきまする。
その時はこの真田安房守が先陣を切り信玄公直伝の軍略をもって義昌の首を取ってごらんに入れましょう。
小笠原の謀反は痛いのう。
これ以上裏切り者が増えぬように手を打たねばなりませんな。
あれほどの結束を誇った武田の家中も今や見る影もなし。
それだけ信玄公が偉大だったという事でござる。
安房守。
たとえ我らだけになったとしても御屋形様をお守りし武田家の御為に力を尽くそうぞ。
もちろんの事。
正念場だ頼むぞ。
心得ておりまする。
真田昌幸。
関ヶ原の戦いにおいて僅かな手勢で信州上田城に立てこもり3万8,000の徳川軍を翻弄した戦国きっての名将である。
しかしその昌幸も今はまだ武田家の一家臣にすぎない。
源三郎。
(真田信幸)はっ。
お前は一足先に新府へ戻れ。
かしこまりました。
西も大事じゃが南が心配じゃ。
そろそろ徳川が駿河口に兵を進めてくる頃だ。
なるほど…。
様子探ってまいります!この時期真田昌幸の家族たちは武田の本拠地甲斐の新府で暮らしている。
戦国大名たちは家臣の裏切りを防ぐためその家族を預かり自らの城下に住まわせていた。
いわゆる人質である。
気を付けよ!高価なものゆえそ〜っと早う。
そ〜っと丁寧に。
それは京の近衛様から頂いた大事な打ち掛けです!もっと丁寧に!
(侍女)はい。
何です?・
(鈴の音)ねえ織田信長ってどのくらい強いのかしら。
あまり大きな声では言えないけど日の本一じゃないかな。
武田よりも強いの?何しろ長篠ではあの武田の騎馬衆が手も足も出なかったんだ。
これから武田のお家はどうなるの?さてどうなるかなあ。
今川様みたいな事にはならない?御屋形様は信玄公の立派な跡取り。
多分大丈夫だとは思うがなあ。
心配ですね…。
こっちには何と言っても松の父上がおられるのだから。
兄上姉上お見えでしたか。
これは。
源次郎。
いかがですか?新しい暮らしは。
もう慣れましたか?おかげさまで楽しくやっております。
ねっ?姉上は一段とお美しくなられたような。
(松)その手の世辞は聞き飽きました。
そんな事より源次郎!はい。
戦は?始まりそう?私に聞かれても困ります。
誰に聞けばいいの?織田信長に。
あ〜!ご安心下さい姉上。
もし戦になってもここは父上が御屋形様のために心血を注いで築かれた城。
いくら織田でも攻めようがありません。
ねえ兄上。
うん。
だから言うたろ。
心配ないと。
そうだとよいのですが…。
源次郎殿。
前々から聞こうと思ってたんだが…。
何ですか?おぬしら兄弟はどうして長男が源三郎で次男が源次郎なのかね?実は私も不思議だったんです。
(松)あれでしょ。
真田家は長男が早く死ぬ事が多くてそれで験を担いで最初の男の子を源三郎にしたって父上がそう…。
知らなかったな。
では源次郎は?源三郎の次なら普通は源四郎だろう?そこは次男だから源次郎だって。
ひねりなしか。
父上はいい加減なところがあるから。
細かいところは気にしない。
私はそんな父上が好きだな。
(笑い声)駿河に入ってみたところ安倍川の上で徳川の物見に出くわしました。
徳川は国境に迫っています。
恐らく西の織田の動きを待って一気に攻め込むつもりではないでしょうか。
こちらの構えを悟られぬよう物見だけでも潰しておきましょう。
何か?源次郎お前自分のした事が分かっているのか?誰の許しを得てさように危うい所まで出向いた?勝手なまねをするな!兄上は武田の人質。
しかし私は違います。
次男坊の私なら目をつけられずに自在に動き回れる。
ならばその立場を生かして…。
武田の存亡を懸けた戦はもう始まっているのだ。
一人一人が勝手な動きをしていては収拾がつかなくなる。
それは分かります。
しかし存亡の懸かった戦ならばなおの事先手先手を打つ事が大事なのではありませんか?それは真田の棟梁である父上がお考えになる事。
我々はお指図に従っておればよい。
何だ?その顔は。
勝手な振る舞い申し訳ござりませぬ。
しかし…。
「しかし」はもうよい!皆西の織田勢ばかり気にしているので南の事が心配になったのです!回想西も大事じゃが南が心配じゃ。
南が心配と思ったか?ええ。
この事いずれ父上の耳にも入る。
父上は俺よりもお怒りになられる。
その前に己の口で謝れ。
俺も一緒に謝ってやる。
ありがとうございます兄上。
源次郎。
はい。
ここが正念場だ。
いよいよ始まるぞ。
強敵織田との大戦だ!はい!開門!殿のお帰りじゃ!
(門が開く音)昌幸が家族と対面するのは1か月ぶりの事である。
(昌幸)いや〜みんな息災のようで何より。
ハハハハハ!茂誠殿。
はい。
(昌幸)松はしかとつとめておりますか?それはもう。
申し分のない嫁でございます。
ねっ?あ〜それは何より何より。
ハハハハハ!何じゃ?浮かぬ顔して。
せっかく久方ぶりに顔を合わせたというのに。
今朝木曽義昌様の母上とお子たちが連れていかれました。
むごくも磔にされたとの事。
木曽は寝返ったのだ。
しかたなかろう。
姫様は17嫡男千太郎殿はまだ13でございました。
人質とはそういうものじゃ。
殿は私たちも人質である事を分かっておいでですよね?もちろん。
大丈夫でございますよね?寝返ったりなさいませんよね?ばかを申すな。
母上。
父上は御屋形様を裏切るようなお人ではありません。
それにしても木曽義昌には驚きました。
信玄公にとっては娘婿武田家の身内ではないですか。
(とり)世も末じゃ。
信玄公が泣いておられるわ。
一体武田のお家はこれからどうなるのです?案ずるな。
織田は本当に攻めてくるのですか?母上はもう逃げ支度をされているようですよ。
ハハハ!それは気が早いのう。
笑い事ではありません!確かに今この地は三方を織田方の軍勢が囲んでおる。
やつらは信長めの下知を待ち一斉に襲いかかるつもりのようじゃのう。
ああ…。
まあ話を聞け。
新府城はこの真田昌幸が知恵の限りを尽くして築いた天下に聞こえた名城じゃ。
この新府こそが最も安全な場所じゃ。
母上私が言ったとおりではありませんか。
わしは真田の郷に帰りたい。
ばば様。
こんなとこで死にとうはない。
ですから今父上が申されたではありませんか。
ここが一番安全なのです。
はっ?ここにいれば大丈夫なのです!はっ?ばば様無理は言わないで下さい。
何が無理じゃ。
ばば様はそんな事は百も承知。
分かってだだをこねられておるのです。
ねっ?安心せい。
この真田安房守がいる限り武田が滅びる事は決してない。
武田は滅びるぞ。
えっ!?むろんぎりぎりまでわしが食い止める。
しかしそれにも限りがある。
それだけ織田勢の力は強いという事ですか?強い。
長篠の頃の比ではない。
源次郎。
父上。
実は源次郎勝手に南の様子見てきてしまいました。
差し出たまねを致しました。
お許しを。
しかしそのおかげで徳川勢の動きがいち早く分かりました。
どうか源次郎めを許してやって下さい。
申し上げよ。
私が見たところ徳川勢は…。
もういい。
えっ?興味なし!いやしかし…。
わしはこの城を捨てる事にした。
はあ!?ここにいても先は見えとる。
しかしここは天下に聞こえた名城と!誰が言ったんだ?父上が…。
いずれはそうなるはずであった。
しかしいかんせんまだ出来上がっておらん。
織田が攻めてくるのがちと早すぎた。
しかし…。
新府を捨ててどうされるのです?策がある。
策?源三郎源次郎よいか。
これは我が真田家にとって未曽有の危機。
一つ打つ手を誤れば真田は滅びる。
この苦難を我ら一丸となってどんな事をしてでもこれを乗り切る。
心しておけ。
(2人)はっ!たまに親父殿が分からなくなる時がある。
あまりにも器が大きすぎて俺にはついていけない時がある。
我らは棟梁の命に従うだけ。
父上についていけば間違いはありません。
そうかな…。
多分。
やっぱりこちらでしたか!三十郎よく分かったな。
ひどいですよ私に黙って!こいつたまに煩わしい時があるんです。
源次郎様あるところ三十郎あり!目を離すなと父に言われておりますので。
三十郎。
はっ。
お前も真田の一族としてこの眺めしっかりと目に焼き付けておけ。
えっ?どうやら見納めのようだ。
あれを見ろ。
(鐘の音)もし父上がご存命であったらこんな時どうなされていたであろうな。
そうか。
父上が生きておればここまで追い詰められはしなかった。
愚問であったな。
(障子が開く音)父上が築き上げたこの国をわしは滅ぼしてしまうのか。

(梅雪)ご案じなされますな。
御屋形様には信玄公の御霊がついておられます。
信長めの首をあげ徳川北条上杉が足元にひれ伏す日も決して遠くはございません。
のう真田殿。
御屋形様には我らがおりまする。
そうだな。
富士や浅間の山が火でも噴かぬ限り武田のお家は安泰にございます。

(噴火音)2月14日48年ぶりに浅間山が噴火した。
(噴火音)そりゃ火山ですからたまには火も噴きましょう。
(足音)父上!一大事でございます!殿!穴山梅雪の手引きにて徳川方武田ご領内に乱入の由にございます。
何!
(噴火音)穴山梅雪が突如織田軍に寝返った。
かなり以前から織田徳川と内通しての用意周到な裏切りであった。
(信茂)もはやこれまででござる!穴山梅雪は御一門筆頭!それが裏切ったという事はお味方の人数兵の手配り軍略それら一切が敵方に漏れたという事!もはやまともな戦はできませぬ!
(跡部)かくなる上はここ新府に籠城し敵を迎え撃つよりほかに手はございません!いや座して死を待つくらいなら華々しく散るべきでござる!全軍をもって織田勢に仕掛けましょう!誇り高い武田の戦を!
(昌幸)お待ち下さい。
まだこの戦負けと決まった訳ではございません。
(信茂)もはや命運は尽きた!尽きてはおりません。
武田の柱が敵に下ったのだぞ。
柱はもう一本ござる!
(昌幸)御屋形様。
是非我が岩櫃城へお越し下さりませ。
岩櫃?
(跡部)甲斐を離れると申すか?
(昌幸)さよう。
この新府城築城してまだ1年。
その守りいまだ盤石とは言い難い。
城に籠もるはもはや得策にあらず。
だからこそ城から打って出ると申しておる!無謀でござる!小山田殿は武田家を滅ぼすおつもりか。
我らの騎馬衆をもって突き進めば活路が開けるやもしれん!活路はさような事では開けん。
捨てばちにならず最後まで望みを捨てなかった者にのみ道は開けまする。
岩櫃の守りはこの昌幸が既に整え鉄壁でございます。
加えて東は沼田城を弟の信尹が守り西の戸石城を嫡男信幸に守らせれば信濃と上野を結ぶ道筋そのものが巨大な要害となりまする。
御屋形様ここはどうか岩櫃へおいで下さい。
そして力を蓄え再起を図りましょう。
この真田安房守がいる限り武田は滅びません!分かった。
岩櫃へ行こう。
岩櫃城は新府城の北東上野吾妻郡の山城である。
信州から上州にかけて広がる真田領の要となっている。
昌幸は勝頼を迎え入れるため一足先に岩櫃へ向かった。
源三郎。
御屋形様を頼むぞ。
かしこまりました。
岩櫃で待っておる。
源次郎よく兄を助けよ。
かしこまりました。
確かに岩櫃は織田を迎え撃つに最適の城。
ここにいるよりはずっとましです。
さすが父上だ。
(信茂)御屋形様岩櫃に行くのはよろしくありませぬ。
(勝頼)今更何を申す!
(信茂)岩櫃は危のうございます。
(跡部)真田は武田の家臣となってまだ日が浅うございます。
その言葉信じてよいものかどうか分かりません。
罠だと申すか。
そのおそれは十分にございます。
(跡部)しかも真田にはよからぬ噂がございます。
どうやら裏で北条とつながってる様子。
まさか…。
(跡部)文のやり取りをしているという噂もございます。
御屋形様には我が岩殿城にお入り頂きます。
岩殿?
(信茂)西に笹子峠北と南は絶壁に囲まれた天然の要害。
織田を迎え撃つには絶好の場所と心得ます。
家中の総意にございます。
御屋形様は甲斐の国主。
信玄公のご威光をとどめるこの甲斐の地をやすやすと見捨て上州の山に籠もるなどもっての外。
それで生き延びたとて亡きお父上が喜ばれるとお思いか!
(駒が落ちる音)あっ!兄上の番ですよ。
源次郎もういい。
何ですか?今やる事か?次いつできるか分からないから今やるんです。
ではせめてこんな子どもの遊びではなくきちんと将棋を指そう。
だって兄上と指しても楽しくないんですよ。
何だそれは。
兄上の手はまっとうすぎて何て言うのかな面白みに欠けるんです。
お前俺に勝てぬからといってそういう事を言うか。
山崩しもばかにはできませんよ。
兄上のお得意な定跡が使えぬゆえ意外に奥が深いのです。
降参ですか?ふざけるな!山崩しにだって定跡はある。
まずは決して無理をせぬ事。
(駒が落ちる音)プッ!アハハハハ!・
(三十郎)何者だ!御屋形様…。
(勝頼)明日わしはここをたつ。
我らもお供致します。
わしが向かうのは岩殿城だ。
岩櫃ではない。
岩殿…。
どういう事でございましょうか?わしには甲斐を捨てられぬ。
父上が築いたこの甲斐を。
しかし…。
昌幸には悪い事をした。
明日わしはたつ。
だがお前たちはわしに従う事はない。
岩櫃へ向かえ。
今宵限りにて武田の人質を免ずる。
明日からは好きにせよ。
いやしかし…。
証文じゃ。
道中織田勢に出くわすやもしれぬ。
護衛にわしの手勢100をつけよう。
少なくてすまぬな。
畏れ多い事でございますが…。
それからお前には姉がいたな。
ございます。
確か小山田信茂の一門に嫁いでおったな。
そのとおりでございます。
その者も一緒に岩櫃へ連れていけ。
しかし姉は小山田様の人質でございます。
真田で預かる訳には…。
わしが決めた事だ。
誰にも文句は言わせぬ。
以上である。
明日手の者がここに火を放つ事になっておる。
おぬしたちも早く立ち去れ。
かしこまりました。
武田家を思う安房守の言葉にうそはなかったとわしは信じておる。
そなたの姉を真田に返すはその証しじゃ。
お心遣いかたじけなく存じまする。
帰る。
御屋形様!源次郎!信玄公はもうこの世にはおられません!源次郎無礼であろう!お考え直し下さい。
やはり岩櫃へ参りましょう!我らと共に。
邪魔をしたな。
御屋形様!我らからも御屋形様へ餞を差し上げます。
御屋形様のお手勢100。
どうぞ岩殿へお連れ下さい。
無用と申すか?いえ。
御屋形様はまさしく真田の旗印。
生き延びて頂く事こそが真田の再起の道。
御屋形様を守る者を減らす事は我らの思いに背きまする。
おぬしたちだけで大丈夫か?真田安房守の子たる我ら兄弟。
そうやすやすとは討たれませぬ!我らの事はどうかご心配なく。
真田…よき一族じゃ。
御屋形様はお優しいお方だな。
優しくてそして…。
哀しいお方です。
御屋形様は岩櫃に来るべきなんだ。
また蒸し返すか。
岩殿では織田に攻められたら終わりですよ。
亡くなった信玄公に義理立てしたとて何になるんですか。
もう言うな。
兄上だって分かってるくせに。
佐助!御屋形様は信玄公のご威光を武田家の名誉を守る事を選んだのだ。
それもまた一つの生き方。
あ〜あ!一体この新府は何だったんでしょうね。
父上が1年かけてようやく城を築いたと思ったらもう灰になってしまうのか。
お呼びでございますか。
これを岩櫃の父上に。
はっ。
佐助達者であったか。
はい新しい技も覚えました。
急げ。
はっ!父上もさぞ驚かれる事だろうなあ。
よい知らせと悪い知らせがございます。
(薫)よい知らせから。
先ほど御屋形様がお見えになられて我ら人質を免ぜられました。
ええっ!?母上おめでとうございます!それはまことか?まことでございます。
姉上も私たちと一緒に帰るようにと。
まあ!織田勢が攻めてきたおかげですよ。
悪い知らせは?明日我らは新府をたち岩櫃にて父上と落ち合います。
岩櫃へ?我らだけで向かいます。
どこに織田方の軍勢がいるか分かりません。
野盗もいるでしょう。
百姓たちが落ち武者を襲うという話もございます。
私たちは落ち武者ではありません!武田のご威光はもうこうなっては効きません。
決して楽な道中ではないでしょう。
嫌じゃ。
母上。
ならばここに残ります!それはできませぬ。
もう少し暖かくなってからでは駄目なのですか!明日この新府城に火をかける事になっております。
何ゆえ?織田に奪われてしまわぬためじゃ。
もうここでは誰も守ってくれません。
急に気鬱になってきました。
さあ支度じゃ!大丈夫ですよ母上。
なんとかなります。
兄上もいれば私もいる。
父上のところまでしっかりお守りします。
頼みますよ。
また一家そろって暮らす日もそう遠くないという事ですよ母上!
(小声で)安請け合いにも程があるだろ。
(小声で)「念ずれば通ず」です。
こそこそ話をしない!我らにお任せ下され。
3月3日。
勝頼は新府城を出て岩殿城へ向かった。
どうして私はついていってはいけないの?よく分からんが御屋形様がそう仰せなんだから。
またすぐに会えますよ。
皆はどうされます?とりあえず岩櫃に向かいそこで父上と落ち合いその後恐らく皆で真田の郷に。
岩殿が落ち着いたら迎えに参る。
ほんの少しの間の辛抱だから。
兄上急がないと。
では行ってまいります。
はっ。
さあ我らも支度だ。
皆の者!時がない急げ!急げ〜!それは置いとけ!間もなく出立ぞ!急げ!
(一同)はい!あっ!母上急がないと。
皆待っております。
これ時がないぞ。
どんどん詰めよと申すに。
あっ!
(三十郎)遅いですね。
御屋形様が城を出た事はすぐに知れ渡る。
我らの出立が遅くなればなるほど危険が増す事母上様は分かっておられぬ。
源次郎は?その日の昼過ぎ真田家の人々は新府をたった。
ここから先は至る所敵だらけと思え。
急ぎましょう。
新府から岩櫃まで37里。
歩いていけば3日の行程である。
あれを…。
新府城が燃えている。
武田の新たな本拠となるはずの城であった。
勝頼がここで過ごしたのは僅かひとつき余り。
ついに諏訪の高島城が落ちましてございます。
高島もか…。
離反する者は後を絶たず新府を出る時600人近かった総勢は既に100人を切っていた。
御屋形様この先の峠を越えればじき岩殿でございます。
うん。
ここからは険しくなります。
御屋形様はゆるゆるとお越し下さい。
拙者は先に行ってお迎えの支度を。
お頼み申す。
行くぞ!はっ。
茂誠。
はい。
木戸を閉じよ。
は…?御屋形様を通してはならぬ。
仰せの意味が分かりませぬ…。
あの関を越えれば程なく岩殿城です。
(木戸が閉まる音)
(いななき)
(跡部)御屋形様のご到着である!木戸を開けよ!いかがした?小山田殿の岩殿城へと向かう一行じゃ。
速やかに通さぬか!
(跡部)これはどういう事じゃ?木戸を開ける事はできませぬ!
(跡部)何だと?我が主小山田信茂故あって織田方に加勢する事になりました!
(跡部)血迷ったか!一人たりともお通しする事はかないませぬ!どうかお戻りあれ!
(跡部)どこへ戻れというのだ?新府は既に燃え尽きたわ!お通しする事はなりませぬ!おのれ小山田信茂!もうよい!御屋形様!もうよいのだ。
お許し下され…。
(泣き声)どちらへ?分からん…。
甲斐の名門武田家の命運が尽きようとしている。
それは一つの時代の終焉でもあった。
やがて歴史は大きく動き出す。
甲斐信濃上野を舞台に戦国大名たちがしのぎを削る動乱の天正10年の始まりである。
(家臣)御屋形様越中へ押し寄せた織田勢が魚津城へと迫っております。
(家臣)その数4万。
敵の大将は柴田勝家佐々成政前田利家。
もはや包囲されるのは必定。
(家臣)御屋形様いかが致しますか?北には名将上杉謙信から越後を引き継いだ…東には希代の英雄北条早雲から数えて四代目…申し上げます!武田勝頼殿新府より落ち延びた模様にございます!南にはやがて真田一族の前に最大の敵として立ちはだかる…そして史上空前の領土を手にし天下人として名乗りを上げた…その中を真田家の人々は小さく寄り添って岩櫃へと進んでいる。
徳川家の大名として信濃松代藩10万石の礎を築く源三郎信幸。
そして後世真田幸村の名で知られる事となる源次郎信繁。
兄上。
走るぞ。
走りますよ。
走るそうですよ。
行くぞ!
(家来たち)おう!戦国という大海原に一隻の小舟が漕ぎ出した。
舟の名前は「真田丸」。
波乱万丈の船出である。
源次郎!姉上!御屋形様わしに何を託された?父は常に…。
黙れ小童!わしを誰だと思っとる。
真田の動きは筒抜けだ。
東国の覇者は北条である。
「弱きを助け強きをくじく」が当家の家風。
徳川はまだか?真田はどうなっておる?真田は。
もう一度申してみよ!おのれ!何をした!何をした!佐助!?お久しぶり。
助けに来てくれたのね!源次郎!源次郎様がご無事でよかった。
父上の子として生まれた事を誇りに思います。
武田が滅びたはめでたい事じゃがちっともうれしゅうないのはなぜだ?
(昌幸)どんな手を使っても真田を守り抜いてみせる。
大博打の始まりじゃ!
長野県上田市。
戦国時代に異彩を放った真田家拠点の地です。
上杉北条徳川など大きな勢力に囲まれながらこの地を守り繁栄の礎を築きました。
藩主屋敷跡に建つ上田高校。
校歌の中で真田家の雄姿が語り継がれています

この地で英傑真田信繁は育まれ乱世に飛び出していきます。
山梨県韮崎市。
真田が仕えていた武田家最後の城が築かれた土地です
新府城で立て直しを図った武田勝頼でしたが織田軍の侵攻を前に戦う事なくこの地を去ります
武田家の衰退により真田家は戦乱の荒波に投げ出される事になるのです。
およそ30年後大坂の陣。
信繁は真田丸という砦を築き徳川の大軍相手に見事な攻防戦を繰り広げます。
その戦いぶりは日の本一の兵とたたえられ真田の名を世に轟かせたのです
2016/01/16(土) 13:05〜14:05
NHK総合1・神戸
真田丸(1)[新]「船出」[解][字][デ][再]

1582年2月。真田家の主君・武田家は、織田信長の大軍の猛攻を受け窮地にあった。真田信繁(堺雅人)は兄・信幸(大泉洋)とともに、決死の逃避行へと旅立つことに!

詳細情報
番組内容
1582年2月。真田家の主君である武田家は、織田信長の大軍の猛攻を受け窮地に陥っていた。真田昌幸(草刈正雄)は岩櫃城で織田軍を迎え撃つよう武田勝頼(平岳大)に進言。しかし、武田家内部には新参者の真田家を蔑む者たちも多かった。そんなある夜、昌幸の息子・信繁(堺雅人)と兄・信幸(大泉洋)のもとに、勝頼が突然訪れ驚くべきことを伝える。そして、信繁らは決死の逃避行に旅立つことになる!
出演者
【出演】堺雅人,大泉洋,長澤まさみ,木村佳乃,平岳大,中原丈雄,藤井隆,迫田孝也,高木渉,高嶋政伸,遠藤憲一,榎木孝明,温水洋一,吉田鋼太郎,草笛光子,高畑淳子,内野聖陽,草刈正雄
原作・脚本
【作】三谷幸喜
音楽
【音楽】服部隆之

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
ドラマ – 時代劇

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
サンプリングレート : 48kHz

OriginalNetworkID:32080(0x7D50)
TransportStreamID:32080(0x7D50)
ServiceID:43008(0xA800)
EventID:14404(0x3844)

カテゴリー: 未分類 | 投稿日: | 投稿者: