「きょうの健康」です。
今日から3日間は「子どもの発達障害徹底解説」です。
初日の今日は「自閉症スペクトラム」。
そして2回目以降「注意欠陥・多動性障害」。
そして「学習障害」についても取り上げてまいります。
お話は…小児科医として長年発達障害を持つ子どもの医療に携わってこられました。
どうぞよろしくお願い致します。
よろしくお願いします。
発達障害本当よく聞くようになりましたけどそもそもどういうものなんでしょうか?発達障害というとみんな病気とかね障害というところにとらわれちゃうんですけどいわゆる一般に考える病気とか障害とはちょっと違う状態と考えた方がよくてですねむしろ個性とかねあるいは性格もうちょっと言うと癖といったようなそういうような状態と考えればいいと思うんですね。
こういう発達障害のお子さんたちというのはいくつかタイプがあるんですが生まれつきやっぱり人の気持ちを理解する事が下手だったりあるいは自分の気持ちをコントロールする事が下手であったりあるいは読み書きがどうもうまくいかない。
こういう特徴があるんですね。
今言ったような事というのは私たちの中にも…。
みんな思い当たりますよね。
…ある事なんですがその程度がやっぱりある程度強くてそのために日常生活の中で困難がある。
そういう状態に対して名前が付いてます。
ですから対応のしかたとしてはですねやっぱりそういうお子さんにうまくいかない苦手なところをサポートしてあげるという事が対応としては非常に重要なんですね。
私文部科学省の研究費を頂きましてですね日本全国の400人の学校の先生とか幼稚園保育園の先生から3,000通りのこの発達障害によく見られる行動に対してどうサポートしてあげればいいかという事例をそれも効果があった事例を集めたこういう本を実はまとめたんですけども。
さまざまな場面で対応が必要だという事で3,000通りあるんですね。
実際これ市販でこういう本になっております。
この中でどういうようにサポートすればいいかという事をですね考えていく。
一とおりじゃなくてですね一つのいろいろこう…適応が難しいあるいは困難な行動に対して何通りもの対応のしかたが…。
その事を知っておく事が必要だと思います。
今日はその事例もまたねお話ししたいと思います。
貴重な本当にね報告書になりますけれどもまずですねそもそも数といいましょうか発達障害の子どもさんどれぐらいいると考えていいんですか?全国の全ての子どもを対象にした調査はないんですがここにありますように2012年に文部科学省が日本全国の小中学校のお子さんを対象にこの発達障害の行動の特徴のあるお子さんがどのぐらいいるかという事をきっちり調べました。
その結果ですね今日のテーマの自閉症スペクトラムのお子さんは1%。
それから注意欠陥・多動性障害これが3.1%。
これはもうちょっと多いと思われますが。
学習障害。
これは読み書きがうまくできないというのですが学習が困難な子ども含まれてますが4.5%という事で一人のお子さんの中にこれがね重複してる場合もあるんですが全体の6.5%のお子さんつまり一つ30人クラスに2人ぐらいそういうお子さんがいるという事が分かってきています。
どうなんでしょうか。
病気ではないその原因としては何か分かってるんでしょうか?ここに出ておりますが発達障害の原因はですねここに書いてある脳の機能障害と書いてあります。
脳の働きがどこかに傷があるとかね何か病巣があるというんじゃなく脳の働きがどうもうまくいってない状態があるんじゃないかという事がいわれておりましてその脳の働きをつかさどっている…発達障害というと育て方とかしつけとかですね環境が悪いんじゃないかと考える方もいると思うんですがそうではなくて生まれつきの原因があるという事でございます。
どうしても親御さんたちね自分を責めたりという事もある場合もあると聞きますけどそうじゃなくて生まれつきのものという…。
本人自身が悪い訳ではないあるいはその親御さんとか学校の先生がうまくやってないためではないんですね。
今日は発達障害の中のその自閉症スペクトラムですけれどもこれはどういうものなのか詳しく教えて頂けますか?自閉症スペクトラムは全体にその総称として自閉症スペクトラムという名前が付いておりますが実際には分かりやすくその中に自閉症高機能自閉症アスペルガー症候群という程度によって少し違う3つの類型がある事を見て頂くと分かりやすいと思うんです。
この4つの項目コミュニケーション言葉の遅れ知的障害こだわりの組み合わせなんですが自閉症はやっぱりコミュニケーションが非常に困難が強いと。
言葉の遅れはありますし中には言葉がなかなか出てこないお子さんもいます。
知的障害があってこだわり独特のものにこだわるという特徴があって小さい時から言葉が出てこない。
それから何か非常に強いこだわりがあって言葉が出てこない。
あるいは理解が遅れるというような特徴のあるお子さんです。
それから高機能自閉症はこの中でこの4つのうちコミュニケーションの障害はあるんですが自閉症ほどではない。
言葉の遅れはございますが次第に追いついてくる事もあって後でなくなってくるんですね。
これがね。
知的障害がない。
こだわりは結構強い。
ある独特のこだわりがあってお友達関係ができないとか集団の場面でさまざまな困難を抱えたお子さんたちです。
もう一つはアスペルガー症候群ですがこれはやはりコミュニケーションが困難なんですが言葉の遅れや知的障害がないためにそれほど強い困難ではない。
こだわりがありますけどどちらかというと知的なこだわり…。
趣味のようなのが非常に強いというような特徴がありまして中には非常に強い芸術的才能など持った人もいるというのがアスペルガー症候群です。
しかしこれがあるために日常生活ではさまざまな困難があって生活も苦労してるというそういう状態になります。
それぞれですけれども共通してる点といいますと…。
これスペクトラムの全体の共通がこのコミュニケーション対人的なコミュニケーションがうまくいかない事と非常にこだわりがあるという事がこの共通の特徴になります。
あと言葉と知的障害についてはいろいろだという事がこれでお分かりだと思います。
今これをご覧になっていてどうもうちの子はどうなのかしら気になる方もねいらっしゃると思うんですけどももし気になったらどうしたらいいんでしょうか?この自閉症スペクトラムのお子さんは生活の全ての場面でその特徴が出てきます。
ですから例えば病気になって肺炎になったら入院して治療すればいいという事なんですが自閉症スペクトラムの場合は家庭社会学校さまざまな場で対応していくと。
ですから親御さん一人でできるもんじゃないんですね。
それで生活の中でさまざまな困難を抱えて生きていくお子さんなんですけど対応としてはですね非常に親に叱られたり仲間外れになる事が多かったりして二次障害という状態になるんですが二次障害にはですね不安障害とかあるいは社会に適応するのが非常に困難になるというようないくつかの種類のものがございます。
やはり全体チームとして対応していくという事が重要だという事が言えると思います。
脳の機能障害ですがそのサポートをする事によってこの二次障害をいかに防ぐかという事がポイントになると思います。
はい。
どうでしょうか本当に早く気付く事がね必要だと思うんですけれども心配がある時にはどうしたらいいんでしょう?ここに出てくると思いますが実際に心配がある場合は一番専門は小児神経科とか児童精神科のお医者さんに。
私はこれにあたる訳ですがお医者さんに行くのはちょっと気が重いという方は保健センターとか子育て支援センターとかあるいは児童相談所などで適宜受け付けて頂きますのでこういう心配があるという事をお話しされればいいと思います。
その病院出てまいりましたがそうすると薬をですね処方される事もあるという事ですか?病院では一つは診断というとあれなんですがこういう状態である見立てをする訳ですが更に薬を自閉症スペクトラムの場合は使う場合が2通りありまして一つはてんかんの発作ですね。
ひきつけなど。
これは4人に1人のお子さんに見られますのでそういうのがある場合にはそれに対応するために対処的に抗てんかん薬を使うと。
もう一つはやっぱり非常にパニックといいますか非常に興奮したりする事が多い事が分かっていますので感情を調整する薬を病院などで出す事。
そういうところで薬も使用する事がございます。
あくまでもこうした症状に対応しての薬という事になって…。
こういうのがない方の場合は必ずしも必要じゃないですね。
それでは具体的にどのようにサポートしていったらいいのか本当にお聞きしたいという方も多いと思うんですけどもね。
重要な事は日常生活のいろんな場面で起こる事と一人一人個性が違いますので一人一人いろんな対応のしかたをしていかなくちゃいけない。
それちょっと最初にお見せしたねこの中に3,000通りの対応のしかたがあるというのは実際に有効なしかたがね3,000通りあるというのは一人一人やっぱり合わせてやっていかなくちゃいけない。
あるお子さんについてはこのやり方はあるけど別のやり方でやってみようというような対応をしていく必要があると思いますね。
それでは具体的に本当にどういう例が挙がってるのかご紹介頂けますか?この本の中に出てる例えば極度に興奮するとございます。
自閉症スペクトラムのお子さんは非常に泣き叫んでしまったり非常に敏感なために泣き叫んでしまったり時には頭をドンドン打ってみたり時には自傷行為といって自分にかみついたりする…興奮する事があるんですね。
そういう場合にどういう対応をしたらいいかという事が実際に有効であった方法を集めますと17通り実際にこの中に書かれておりまして例えば落ち着くためのグッズを持たせる。
縫いぐるみ等ですねタオルとか…。
自分のお気に入りの縫いぐるみとか。
そうです。
別室に移動して落ち着くのを待つクールダウンといいますけどこういう対応とかですね…。
こういう場合になるとどうしても興奮してしまうという場合にはそういう事を避けるというような対応法17通りがこれに書かれてる訳です。
この中でどれがうまくいくかを試してみるという事が重要だと思います。
これは…一つ有効だったものを挙げてある訳ですからおっしゃったみたいに一つ一つじゃあうちの子の場合にはこれが有効かという事で試みてみる…。
この事例を見ながらやって頂ければいいと思います。
そういう具体例を伺ったんですがトータルとしてですね子どもをサポートしていく上で大切な事はどう考えていますか?自閉症スペクトラムのお子さんはどの場面でも何かこううまくいかなかったりパニックになったりあるいはその場の雰囲気が読めないという事がございますので非常にストレスも多いし成功体験がなくてどうも叱られる事が多いんですね。
そのために自信がなくなってってしまうという事がありますので大事な事はまず…よいとこ探しをしていいところをほめてあげようという対応が重要であると思います。
普通はねいいところではなくて割と悪いところといいますか…。
普通の場合はねいいとこはほめるけど悪いところは叱るのがしつけのある意味で常識だったんですね。
そうじゃなくていいとこを探してほめてあげるというような事がやっぱり重要であると思われます。
そのほめ方にも何かコツがあるんだそうですね。
ここに出てきますが先ほど言いましたけど手放しでほめるというのは本人自身が失敗した時に叱ってうまくいった時にほめるというんじゃ駄目で何かやっても本人が努力したと。
そのプロセスをですねほめてあげるという事でそのほめ方も簡単な言葉でストレートにほめてあげる。
「よくできたね」「がんばったね」という事を言ってあげると本人自身は自信もつくし自分は認められてるんだという感じで不安が少なくなります。
もちろん年齢が特に小さいお子さんの場合…本人をほめてあげる事でやる気も出てくるし自信も出てくるという事です。
これ自尊感情という私たちの心のエネルギーみたいなものがございますがそれを強めてあげるという対応法ですね。
これが必要だと思います。
叱られてばかりだとどうしても自尊感情ってなかなかこう芽生えにくいでしょうからね。
先ほどから申し上げましたけどそういう対応をすると非常に自信を持って中には非常に強い…優れた芸術的な才能を出したりするお子さんたちもこういうお子さんの中にいます。
無条件でほめてやるという事…。
もう一つあるんですねポイントが。
ここが大事な事で障害というと治してしまうという感じがあるんですが治すんではなくて先ほど言いましたように個性のようなものですのでむしろ「違い」だと「この子の個性である」「癖である」という捉え方をしてそれを治してやろうという考えで対応してはいけないと思うんですね。
本人のいいところがあったらほめてあげて本人に自信を示してあげると。
そういう形でやると本人も余裕を持って例えば親との関係ができてくると思うんですね。
これはなかなか非常にしゃくし定規にやってしまうと全部駄目なとこは駄目って言ってしまうのが大事じゃないかというんですがそうではない「違い」なんだと。
治すんではないんだと考えると明るい人と暗い人がいて性格を直してやろうという事は普通しませんけどそういう考え方でお子さんに接してあげるとお子さん自身もその自信を基にだんだん伸びていくという事が言えると思いますし二次障害のような事も少なくなると言っていいと思います。
そういう意味では本当にその発達障害自閉症スペクトラムは子どもだけの問題ではないという事ですよね。
実際人間関係ですので人間関係というのは子どもと周りの人の間にあるというように考えて頂いて子どもだけに変わる事を求めるんではなくて私たちの自身の対応を変える事によって本人自身の困難も少なくなっていくという事が非常に重要なポイントだと思います。
今日は自閉症スペクトラムについてお話を伺いました。
榊原洋一さんでございました。
次回はですねADHDですね。
注意欠陥・多動性障害についてお話を伺います。
どうもありがとうございました。
2016/01/16(土) 04:15〜04:30
NHK総合1・神戸
先どり きょうの健康「子どもの発達障害 徹底解説 自閉症スペクトラム」[解][字]
子どもの発達障害を正しく知る3回シリーズ初回の先行放送。「自閉症」「高機能自閉症」「アスペルガー症候群」の特性やサポートの方法などについて詳しく解説する。
詳細情報
番組内容
「自閉症スペクトラム」は自閉的な特性がみられるタイプの総称で「自閉症」「高機能自閉症」「アスペルガー症候群」に分けられる。共通の特性としてはコミュニケーションが苦手な「社会性の障害」、特定の物事に執着する「こだわり」があげられる。子どもの行動が気になって適切なサポートを受けたい場合は、発達障害の診断を専門に行う小児神経科や児童精神科、地域の保健センターなどに相談することが勧められる。
出演者
【解説】お茶の水女子大学大学院教授…榊原洋一,【キャスター】桜井洋子
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情報/ワイドショー – 健康・医療
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