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   冒頭部分の添削をお願い致します。 - 苦いネギ - 2016/01/15(Fri) 23:28:27 [No.10668]
Re: 冒頭部分の添削をお願い致します。 - クレメント - 2016/01/17(Sun) 14:49:45 [No.10674]
Re: 冒頭部分の添削をお願い致します。 - ちりめん問屋 - 2016/01/17(Sun) 15:30:31 [No.10675]
Re: 冒頭部分の添削をお願い致します。 - ちりめん問屋 - 2016/01/17(Sun) 11:49:24 [No.10673]
Re: 冒頭部分の添削をお願い致します。 - しや - 2016/01/16(Sat) 15:27:45 [No.10671]
Re: 冒頭部分の添削をお願い致します。 - 率 - 2016/01/16(Sat) 04:23:11 [No.10669]



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冒頭部分の添削をお願い致します。 (親記事) - 苦いネギ

 どうも、苦いネギです。
 今回もまた、制作中の作品の冒頭部分を添削して頂きたく書き込ませて頂きました。
 以下がその本文になります。

-------------------------------------------------------------------------

   序章

 遥か遠くの峰々に降り積もった雪も解け、木々の枝先に柔らかな緑が芽吹く頃。
 大陸の西に広がる大国――ホゥライ皇国へと続く山間の街道を、檜皮色の擦り切れた旅衣をまとった一人の男が歩いていた。
 古びた編笠を目深に被り、一人街道を往くその男は、名をジャンゴといった。
 男らしからぬ長い黒髪をうなじで束ね、痩せた体躯をすっかり垢じみた旅衣に包んだその出で立ちは、いかにも帰る宿なき無頼の流浪人といった風だったが、ジャンゴが左手に携えている代物が、そんな印象を裏切らせる。
 ジャンゴが左手に携えているのは、艶の失せた黒鞘に収められた一振りの長剣だった。
 切先から鍔元にかけて緩やかな弧を描くそれは、大陸の東に伝わる太刀≠ニ呼ばれる細身で片刃の刀剣であった。手垢に塗れた柄糸といい、錆の浮いた鍔といい、およそ銘刀の類でないことは容易に察せられたが、黒鞘に刻み込まれた無数の疵は、無銘でありながらも幾多の斬り合いを潜り抜けてきた、業物の証にも見える。
 剣の心得のある者が見れば、その太刀が経てきた熾烈な年月の程はもとより、それを携えるジャンゴが腕の立つ剣客であることをも即座に見抜いたであろう。
 黙々と山間の街道を歩き続けるジャンゴだったが、ふと、なにかに気づいたように、編笠の前をわずかに上げて立ち止まった。なぜなら、小さな薄桃色の華を咲かせた枝の向こうに、煌びやかに飾り立てられた雅な牛車が一台、朱い錦の幟を掲げた従者たちに囲まれて、ゆっくりと進んでくるのが見えたからだ。
「――ほう。どこぞのお大尽の行列か……」
 ジャンゴは思わず立ち止まって、近づいてくる行列を眺めた。
 その行列の主がいったいどこの誰であるかなど、流れの異邦人に過ぎないジャンゴは露ほども知らなかったが、貴人の行列を妨げれば、その場で打ち首になることくらいは知っていた。
 ジャンゴは街道の脇にどいて道を譲ると、編笠と太刀を置いて静かに額づいた。
「………………」
 やがて行列は、額づくジャンゴのすぐ傍までさしかかり、牛車の軸が軋む音を響かせながら、ゆっくりとジャンゴの前を通り過ぎて行った。――と、その時だった。
「――なにっ!?」
 突然、牛車を牽く牛が、背を弓なりに反らして暴れ出した。
 軛を砕き、角を振り上げた牛は、慌てて駆けよって来た従者を蹄で蹴り上げると、さらに牽いていた牛車に体当たりを食らわせ、狂ったように暴走し出した。
「鎮まれ! 鎮まれぇ!」
「う、うわああああっ!!」
 悲鳴を上げて逃げ惑う従者の一人が、背中から牛の角に串刺しにされ宙を舞った。辺り一面に血潮が飛び散り、高く放り上げられた従者の身体がどっと地に落ちる。
 猛り狂う牛はますます昂ぶり、次なる獲物を串刺しにせんと、蹄で地面を掻きながら、血に濡れた二本の角を振り上げてみせる。
 もはやこのままでは、従者もろとも車の主も皆殺しか――と思われたその時、ジャンゴは流れるような動作で立ち上がり、腰だめに構えた太刀を抜き放っていた。
「――――疾ッ!!」
 黒鞘から抜き放たれた雷光の如き一閃は、一条の残光を曳いて奔り、今まさに突進せんとしていた牛の首を、瞬きするよりも早く鮮やかに両断してのけていた。
 一刀の下に両断された牛の首が、わずかに一拍置いて地に落ちる。
 首を落とされた牛の巨躯が、地響きにも似た音を立てて倒れ伏すのを、尻もちをついたままの従者たちは、呆然とした表情のまま眺めていた。
「な、なんと……!」
「……すまない。無礼は承知の上だ。だが今は命が助かったことを喜べ」
 チン、と小さな鍔鳴りを響かせ、ジャンゴは握った太刀を鞘に収めた。
 噎せ返るような血臭が立ち込める中、未だ呆けたままの従者にそう声を掛け、ジャンゴはその場を立ち去ろうとした。
 もとより礼や報酬などは期待していない。むしろ、やむを得なかったとはいえ、貴人の車を牽く牛を切り捨てたことの咎を問われる前に、さっさとこの場を立ち去りたかった。
「なんじゃ!? いったいなにごとじゃ!!」
「……なに?」
 だが、ジャンゴが立ち去ろうとしたその時、横倒しになった牛車の中から声が聞こえた。
 思わず足を止めて振り返ったジャンゴは、牛車の前簾を撥ね退けて転がり出てきた、艶やかな着物姿の女子と目が合った。
「――む。そなた、よもやそなたがこれをやったのか?」
「………………」
 一見してそれと判る身分の高さ。庶民であれば目にすることすら稀であろう絹の着物。
 燃えるような朱い髪に挿された瀟洒な簪が、まさか皇族であることを示す雅皇簪であるとはジャンゴの知るところではなかったが、しかしどうやら相当な身分の貴人を目の前にしているらしいということは、異邦人であるジャンゴにもはっきりとわかった。
「……ああ。悪いが、首を落とすより他はなかった」
 返り血に塗れた衣を着ていては隠し遂せるはずもなく、ジャンゴはそう口にする。
 あの牛の首を落とさねば、今頃は従者もろとも仲良く串刺しにされ、蹄に踏みつけられ冥途の川を渡っていたであろうことは誰の目にも明らかだったが、かと言ってそんな道理をこの女子が弁えているとは限らない。
 なにしろジャンゴは卑賤の身だ。車の主とおぼしきあの女子が機嫌を損ね、牛が暴れ出したのもお前のような卑賤の輩がいたからだ、などと言い出せば、弁明を乞う暇もなくその場で打ち首にされるだろう。
 ――ところが、そうはならなかった。
「なるほど、これをそなたがな……」
 牛車から転がり出てきた朱髪の女子は、そう呟いて周囲の惨状を一瞥すると、牛を鎮めようと駆け寄り、角に貫かれた従者の下へ歩み寄った。
「……大儀であった。そなたの忠はしかと妾に届いたぞ」
 倒れた従者は既に事切れ、纏った衣を無残に血で汚していたが、朱髪の女子はそれを気にする様さえ見せず、そっと従者の傍らに膝をついて、虚ろに空の青を映すばかりの目を閉じてやっていた。
「……そいつは助けられなかった」
「――よい。そなたを責めるつもりは毛頭ない」
 どこか言い訳のようにジャンゴが言うと、朱髪の女子は立ち上がってそう答えた。
 そして、赤髪の女子はジャンゴの方へ向き直るとこう言った。
「妾はホゥライ皇が西ノ宮の娘、ベルカである。皆に代わって礼を言う。大儀であった」
「な――に……?」
 驚きに硬直したのも束の間、ベルカと名乗った朱髪の女子は、牛車の傍らに尻もちをついていた従者に何事かを命じると、やがてどこからともなく輿を担いだ男たちが現れ、ベルカはその男たちが担いできた輿に乗り込んでしまった。
「……ホゥライ皇の娘、だと……?」
 ゆっくりと遠ざかってゆく行列を、ジャンゴは呆然と見送った。
 今のジャンゴには知る由もなかったが、これは全ての始まりに過ぎなかったのである――。

---------------------------------------------------------------------------------

 以上が本文になります。
 どなたかお時間のある方がいれば、コメント・添削をお願いします。
 より具体的にご意見を頂きたいと思っているのは、以下の点です。

@文章および展開に不自然・不明瞭な個所は無いか。
A登場人物の容姿や性格がおおよそにでもイメージできるか。
B先行する類似作品(パクリになりかねないもの)があるか。
C単純に話の続きが気になるかどうか

 以上です。よろしくお願いいたします。


[No.10668] 2016/01/15(Fri) 23:28:27
Re: 冒頭部分の添削をお願い致します。 (No.10668への返信 / 1階層) - 率

細かいケチ付けが得意な私が答えさせて頂きたいと思います。

@文章および展開に不自然・不明瞭な個所は無いか。

丁寧に描写されている印象を受けましたが、丁寧過ぎて少し退屈でした。
物語は書き出しと終りで良し悪しが決まります。書き出しは大体の人が世界観の説明から入るのですが、それって世界観に自信がないからなんです。
「遥か遠く〜一人の男が歩いていた」まででも世界観は十分解ります。
この次に大行列に気づく描写や牛が暴れているところに遭遇する描写や男の立ち回りついでに剣のことを説明した方が解りやすく、動きがあるので読んでいてスピード感が出ると思います。
この作品は男の立ち回りが魅力の1つだと思うのでカッコいい主人公をいきなり見せてください。

A登場人物の容姿や性格がおおよそにでもイメージできるか。

容姿については描写されているのでイメージは簡単にできました。
個人的な感想ですが、ジャンゴは優しい人なんだなと感じました。
ベルカの性格と口調はテンプレな和風お姫様って感じで彼女の性格付けがいまいち突き詰められていないように感じ、そのせいでジャンゴまでもがつまらない印象となり、話もつまらないと負の連鎖になりました。

B先行する類似作品(パクリになりかねないもの)があるか。

和風ものは大体の主人公が剣使いだし、流れ人な設定もありがちですし、あまり気にする必要はないかと思います。

C単純に話の続きが気になるかどうか

ありきたりな勧善懲悪物語になるのかなと次のページを読みたいという期待感は少ないですが、変にこねくり回した展開にはならないだろうという安心感はあります。
実際はどういう物語になるのか解りませんが、少なくともスピード感のあるアクションよりゆったりとした日常ものに少し立ち回りがあるのかなと。


後、文章を読んでいて「あれ?」と思うところがありました。
「やがてどこからともなく輿を担いだ男たちが現れ、ベルカはその男たちが担いできた輿に乗り込んでしまった」の「どこからともなく」という表現です。

ベルカは行列を成して移動していたんですから、輿を担いだ男達は行列の後方からベルカのもとへ駆け寄ってきたんじゃないでしょうか?

本当に細かい部分ですが、裏を返せば細かい部分のみということです。
前回の近未来SFと毛色が違って書けるジャンルが多くて羨ましいです。


[No.10669] 2016/01/16(Sat) 04:23:11
Re: 冒頭部分の添削をお願い致します。 (No.10668への返信 / 1階層) - しや

こんにちは、しやです。

先日は私の駄文にコメントを頂きましてありがとうございました。
自身の考えの甘さを痛感することで、改めて制作の根底を見つめ直すことがてきました。
上手く伝わってるか分からなくてもどかしいのですが、かなり感謝しています。この場を借りまして、改めてお礼を言わせて下さい。本当にありがとうございました!!


さて、こちらの作品も読ませて頂いたので、それに対していろいろと失礼します。器でないのは分かっているのですが、今回は少し踏み込んでコメントせて頂きます。
ウザかったり、見当違いだったりしたら遠慮なく言って下さいね。



@文章・展開

全体的に、情報密度が高くて、読むのに疲れました。
印象で言うと、不明瞭な点をなくそうとするあまり装飾が増えてしまい、その文書から何を理解して欲しいのかが逆に不明瞭になっているというところでしょうか。結果、読解を強いられている形になり、疲れたのだと思います。また読解が必要ということは、一文毎に読み進めるのを一時止めて、(補足情報を整理しつつ、物語の筋を確認するという風に)思考しなければならなくなり、テンポよく読むことができませんでした。
あっ、あくまでも文章を飲み込むのが苦手な私の印象の話ですよ。
これは読者の傾向(というより資質)によるものだと思うので、そういった馬鹿もいるという程度に捉えて下さいね

この作品でいえば、展開がよい(特に姫様が出てきたときは「おぉ」と思った)だけに、『文章が私の適正にマッチしていればより楽しめたのになぁ』と惜しく思いました。


また『○○だったが、××である。』のように“が、”をはさんで2つの長文を結んでいる箇所が比較的多い印象を受けました。



それと誤字の報告です。
>遥か遠くの峰々に降り積もった雪も解け
ここは“解け”ではなくて“溶け”だと思います。


A登場人物

人物のほうは問題ないかと。ただ世界観の方は、(私の中では)ふんわりとしています。


B類似作品

特に思い当たるものはありません。


C続きが気になるか

気にならないわけではありませんが。実際書籍として渡されたら、ここまで読んだ疲労感からか、(区切りが付いたここで)一度本を置くことになると思います。続きを読むかどうかは、そのとき次第です。


ちなみに細かいところに関しては、直すときに文章を壊す原因になると思うので控えさせて頂きます。

今回、かなり不躾なことを書かせて頂きました。ただこれは、この作品が読みやすさを追求するだけで、かなり面白くなると思えたからです。もちろん余計なお世話だということは重々承知しています
なので、思うところがあれば遠慮なくぶつけて頂いて構いません。
ただ温かい心で許して頂ければ嬉しく思います。

それでは応援しています。執筆がんばって下さい。


[No.10671] 2016/01/16(Sat) 15:27:45
Re: 冒頭部分の添削をお願い致します。 (No.10668への返信 / 1階層) - ちりめん問屋

 厳めしさを感じる文体を狙っておいででしょうか。なかなか難しいですね。

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>  遥か遠くの峰々に降り積もった雪も解け、木々の枝先に柔らかな緑が芽吹く頃。
>  大陸の西に広がる大国――ホゥライ皇国へと続く山間の街道を、檜皮色の擦り切れた旅衣をまとった一人の男が歩いていた。
>  古びた編笠を目深に被り、一人街道を往くその男は、名をジャンゴといった。
>  男らしからぬ長い黒髪をうなじで束ね、痩せた体躯をすっかり垢じみた旅衣に包んだその出で立ちは、いかにも帰る宿なき無頼の流浪人といった風だったが、ジャンゴが左手に携えている代物が、そんな印象を裏切らせる。
>  ジャンゴが左手に携えているのは、艶の失せた黒鞘に収められた一振りの長剣だった。
>  切先から鍔元にかけて緩やかな弧を描くそれは、大陸の東に伝わる太刀≠ニ呼ばれる細身で片刃の刀剣であった。手垢に塗れた柄糸といい、錆の浮いた鍔といい、およそ銘刀の類でないことは容易に察せられたが、黒鞘に刻み込まれた無数の疵は、無銘でありながらも幾多の斬り合いを潜り抜けてきた、業物の証にも見える。
>  剣の心得のある者が見れば、その太刀が経てきた熾烈な年月の程はもとより、それを携えるジャンゴが腕の立つ剣客であることをも即座に見抜いたであろう。


------------
 大陸の西に広がる大国――ホゥライ皇国へと続く山間の街道。降り積もった雪が解け、木々の枝先は芽吹き、辺りは柔らかな緑に染まり始めていた。その街道を男が一人、やや急ぎ足で歩いている。目深に被った編笠、擦り切れた檜皮の旅衣。名をジャンゴという。
 長い黒髪をぞんざいに束ね、痩せた体躯を包む旅衣はすっかり垢染みている。その出で立ちだけなら、いかにも寄る辺なき無頼の徒といった風体だが、左手に携える得物が、そんな印象を揺るがせる。
 艶の失せた黒鞘に納まる一振りの長剣。細身で片刃の刀身は、切先から鍔元にかけて緩やかな弧を描く。遥か東に伝わる太刀≠ナある。手垢に塗れた柄糸、錆の浮いた鍔、おそらく刀匠も名を刻まぬ類と察せられるが、黒鞘に刻み込まれた無数の疵。無銘でありながら、幾多の斬り合いに耐えてきた業物にも見える。
 その太刀が経てきた熾烈な年月はもとより、携えるジャンゴがいかほどの剣客であるか、心得ある者なら即座に見抜くであろう。
------------

>  黙々と山間の街道を歩き続けるジャンゴだったが、ふと、なにかに気づいたように、編笠の前をわずかに上げて立ち止まった。なぜなら、小さな薄桃色の華を咲かせた枝の向こうに、煌びやかに飾り立てられた雅な牛車が一台、朱い錦の幟を掲げた従者たちに囲まれて、ゆっくりと進んでくるのが見えたからだ。
> 「――ほう。どこぞのお大尽の行列か……」
>  ジャンゴは思わず立ち止まって、近づいてくる行列を眺めた。
>  その行列の主がいったいどこの誰であるかなど、流れの異邦人に過ぎないジャンゴは露ほども知らなかったが、貴人の行列を妨げれば、その場で打ち首になることくらいは知っていた。
>  ジャンゴは街道の脇にどいて道を譲ると、編笠と太刀を置いて静かに額づいた。
> 「………………」
>  やがて行列は、額づくジャンゴのすぐ傍までさしかかり、牛車の軸が軋む音を響かせながら、ゆっくりとジャンゴの前を通り過ぎて行った。――と、その時だった。
> 「――なにっ!?」
>  突然、牛車を牽く牛が、背を弓なりに反らして暴れ出した。
>  軛を砕き、角を振り上げた牛は、慌てて駆けよって来た従者を蹄で蹴り上げると、さらに牽いていた牛車に体当たりを食らわせ、狂ったように暴走し出した。
> 「鎮まれ! 鎮まれぇ!」
> 「う、うわああああっ!!」
>  悲鳴を上げて逃げ惑う従者の一人が、背中から牛の角に串刺しにされ宙を舞った。辺り一面に血潮が飛び散り、高く放り上げられた従者の身体がどっと地に落ちる。
>  猛り狂う牛はますます昂ぶり、次なる獲物を串刺しにせんと、蹄で地面を掻きながら、血に濡れた二本の角を振り上げてみせる。


------------
 俯き加減で黙々と歩き続けるジャンゴがふと立ち止まり、編笠の前をわずかに上げた。小さな薄桃色の華を咲かせた枝の向こう、煌びやかながらも雅な牛車が一台、朱い錦の幟を掲げた従者たちに囲まれ、ゆっくり進んで来る。
「――ほう。どこぞのお大尽の行列か……」
 ジャンゴは思わず呟き、近づいてくる行列を眺めた。一行の主がどこの誰であるか。流れの異邦人には関係ないことだが、貴人の行列を妨げる下賤の者は、問答無用で打ち首くらいは知っていた。
 ジャンゴは道端に避けて座り、編笠と太刀を脇に置いて静かに額づいた。
 行列は、牛車の軸が軋む音を響かせ、ゆっくりとジャンゴの前を通り過ぎて行く。――と、その時。
「――なにっ!?」
 叫び声にジャンゴが顔を上げると、牛車を静かに牽いていたはずの牛が、暴れ出していた。背を弓なりに反らして前足を上げ、軛を砕き、角を振り回す。慌てて抱き付く従者を蹄で蹴り飛ばし、牛車に体当たりを食らわせて倒し、狂ったように暴れ続ける。
「う、うわああああっ!!」
 悲鳴を上げつつ、なおも牛車を庇う従者、その背に牛が角を突き立て、高く放り上げる。飛び散る血飛沫、どっと地に落ちる従者。
 牛はますます昂ぶり、蹄で地面を掻く。血に濡れた二本の角を振り上げ、次なる獲物も串刺しに欲するかのようだ。
------------

>  もはやこのままでは、従者もろとも車の主も皆殺しか――と思われたその時、ジャンゴは流れるような動作で立ち上がり、腰だめに構えた太刀を抜き放っていた。
> 「――――疾ッ!!」
>  黒鞘から抜き放たれた雷光の如き一閃は、一条の残光を曳いて奔り、今まさに突進せんとしていた牛の首を、瞬きするよりも早く鮮やかに両断してのけていた。
>  一刀の下に両断された牛の首が、わずかに一拍置いて地に落ちる。
>  首を落とされた牛の巨躯が、地響きにも似た音を立てて倒れ伏すのを、尻もちをついたままの従者たちは、呆然とした表情のまま眺めていた。
> 「な、なんと……!」
> 「……すまない。無礼は承知の上だ。だが今は命が助かったことを喜べ」
>  チン、と小さな鍔鳴りを響かせ、ジャンゴは握った太刀を鞘に収めた。
>  噎せ返るような血臭が立ち込める中、未だ呆けたままの従者にそう声を掛け、ジャンゴはその場を立ち去ろうとした。
>  もとより礼や報酬などは期待していない。むしろ、やむを得なかったとはいえ、貴人の車を牽く牛を切り捨てたことの咎を問われる前に、さっさとこの場を立ち去りたかった。
> 「なんじゃ!? いったいなにごとじゃ!!」
> 「……なに?」
>  だが、ジャンゴが立ち去ろうとしたその時、横倒しになった牛車の中から声が聞こえた。


------------
 このままでは従者も車の主も――とその時、風を切る音がしたかと思うと、牛の首が体を離れて地に落ち、続いて血を噴く巨躯が地響きを立てて倒れた。
「――――なッ!!」
 驚く従者たちが見たのは、すっくと立つジャンゴだった。手にした太刀をビュンと一振りして血を払うと、鞘に収める。チンと小さな鍔鳴りが響いた。
 彼は牛を鎮められぬと見るや、流れるような動作で刀を手に立ち上がりつつ、いったん腰だめに構えて抜き放ち、一刀両断したのだった。
 剣に秀でた者なら、黒鞘から抜き放たれた雷光の如き一閃が、一条の残光を曳いて奔り、突進せんとしていた牛の首を、瞬きするよりも速く鮮やかに落とすのが見えたであろう。
 尻もちをついたままの従者たちは、呆然とジャンゴと牛を交互に眺めている。何が起こったのか、全く分かっていない。
「なんじゃ!? いったいなにごとじゃ!!」
「……すまない。無礼は承知の上だ。だが今は命が助かったことを喜べ」
 噎せ返るような血臭さが立ち込める中、未だ呆けたままの従者に声を掛けたジャンゴは、そのまま立ち去ろうとした。
 もとより礼や報酬などは期待していない。むしろ逆だ。貴人の車を牽く牛を斬り捨てた以上、厄介なことになりかねない。
 だが、何者かがジャンゴを鋭く呼び止めた。
「そこな者、しばし!」
------------

>  思わず足を止めて振り返ったジャンゴは、牛車の前簾を撥ね退けて転がり出てきた、艶やかな着物姿の女子と目が合った。
> 「――む。そなた、よもやそなたがこれをやったのか?」
> 「………………」
>  一見してそれと判る身分の高さ。庶民であれば目にすることすら稀であろう絹の着物。
>  燃えるような朱い髪に挿された瀟洒な簪が、まさか皇族であることを示す雅皇簪であるとはジャンゴの知るところではなかったが、しかしどうやら相当な身分の貴人を目の前にしているらしいということは、異邦人であるジャンゴにもはっきりとわかった。
> 「……ああ。悪いが、首を落とすより他はなかった」
>  返り血に塗れた衣を着ていては隠し遂せるはずもなく、ジャンゴはそう口にする。
>  あの牛の首を落とさねば、今頃は従者もろとも仲良く串刺しにされ、蹄に踏みつけられ冥途の川を渡っていたであろうことは誰の目にも明らかだったが、かと言ってそんな道理をこの女子が弁えているとは限らない。
>  なにしろジャンゴは卑賤の身だ。車の主とおぼしきあの女子が機嫌を損ね、牛が暴れ出したのもお前のような卑賤の輩がいたからだ、などと言い出せば、弁明を乞う暇もなくその場で打ち首にされるだろう。
>  ――ところが、そうはならなかった。
> 「なるほど、これをそなたがな……」
>  牛車から転がり出てきた朱髪の女子は、そう呟いて周囲の惨状を一瞥すると、牛を鎮めようと駆け寄り、角に貫かれた従者の下へ歩み寄った。
> 「……大儀であった。そなたの忠はしかと妾に届いたぞ」
>  倒れた従者は既に事切れ、纏った衣を無残に血で汚していたが、朱髪の女子はそれを気にする様さえ見せず、そっと従者の傍らに膝をついて、虚ろに空の青を映すばかりの目を閉じてやっていた。
> 「……そいつは助けられなかった」
> 「――よい。そなたを責めるつもりは毛頭ない」
>  どこか言い訳のようにジャンゴが言うと、朱髪の女子は立ち上がってそう答えた。
>  そして、赤髪の女子はジャンゴの方へ向き直るとこう言った。
> 「妾はホゥライ皇が西ノ宮の娘、ベルカである。皆に代わって礼を言う。大儀であった」
> 「な――に……?」
>  驚きに硬直したのも束の間、ベルカと名乗った朱髪の女子は、牛車の傍らに尻もちをついていた従者に何事かを命じると、やがてどこからともなく輿を担いだ男たちが現れ、ベルカはその男たちが担いできた輿に乗り込んでしまった。
> 「……ホゥライ皇の娘、だと……?」
>  ゆっくりと遠ざかってゆく行列を、ジャンゴは呆然と見送った。
>  今のジャンゴには知る由もなかったが、これは全ての始まりに過ぎなかったのである――。


------------
 思わず足を止めて振り返ったジャンゴ。横倒しの牛車の前簾を撥ね退け、転がるように出てきた女子《おなご》と目が合った。朱髪に艶やかな絹の着物、行列の主か。周囲の惨状を一瞥すると、ジャンゴに問う。
「――む。そなた、よもやそなたがこれをやったのか?」
「………………」
 燃えるような朱い髪には不釣り合いな瀟洒な簪。実は皇族の証、雅皇簪だとは、ジャンゴには知る由もない。しかし、どうやら相当な身分らしいことだけはわかった。
「……ああ。悪いが、首を落とすよりなかった」
 ジャンゴはそう口にする。衆人環視、しかも牛の返り血が目立つ手。誤魔化しきれるわけがない。
 首を落とさねば、今頃は従者もろとも角に貫かれ、蹄に踏み躙られ、三途の川を渡っていたであろう。やむを得なかった。しかし、そんな道理をこの女子が弁えているとは限らない。
 なにしろジャンゴは卑賤の異邦人だ。一行の主とおぼしきこの女子が機嫌を損ねれば、牛が暴れ出したのはお前のような怪しき輩がいたからだ、などと言い出し、何の弁明の暇も与えず、この場で打ち首と喚くだろう。
 ――ところが、そうはならなかった。
「なるほど、そなたがな……」
 朱髪の女子はそう呟くと、牛車を庇って角に貫かれ、仰向けに倒れたままの従者へと歩み寄った。
「……大儀であった。そなたの忠はしかと妾に届いたぞ」
 従者は既に事切れ、纏った衣を無残に血で汚していたが、朱髪の女子は気にする様さえ見せない。そっと従者の傍らに膝をついて手を差し伸べ、虚ろに空の青を映す、見開いた目を閉じさせてやった。
「……そいつは助けられなかった」
 どこか言い訳のようにジャンゴが言うと、朱髪の女子は従者を見つめたまま立ち上がる。
「――よい。そなたを責めてはおらぬ」
 ゆったりとジャンゴへ向き直り、続ける。
「妾はホゥライ皇が西ノ宮の皇女、ベルカである。礼を言う。大儀であった」
「な――に……?」
 ベルカは、驚いて硬直したジャンゴを尻目に、牛車の傍らで呆然としたままの従者を叱り、何事かを命じる。間もなく、輿を担いだ男たちが現れ、恭しくベルカを招じ入れた。
 ゆっくり遠ざかってゆく輿を見送るジャンゴは、まだ唖然としている。
「……ホゥライ皇の、だと……?」
 今のジャンゴが知るはずもなかった。これが始まりに過ぎなかったのだとは――。
------------

> @文章および展開に不自然・不明瞭な個所は無いか。

 文章は重複が多いように思います。例えば、「編笠の前をわずかに上げて立ち止まった」→「ジャンゴは思わず立ち止まって」となっていて、いつ立ち止まったのか、イメージがブレます。
 似たようなものは他にもあり、「ジャンゴはその場を立ち去ろうとした」→「だが、ジャンゴが立ち去ろうとしたその時」もそうで、いつ立ち去ろうとしたのかが分かりにくく、その場で逡巡しているかのようなイメージになりかねません。
「街道の脇にどいて道を譲る」も、どちらかといえば重複のような印象です。個人的には避けた方がいいような気がしますが、意図しての文体ということでしたら、申し訳ありません。

 しかし、そういう文章上の特徴が、戦闘描写にも表れ、テンポが遅く感じる一因にもなっているように思います。それ以外に、戦闘経過を順々に追って詳述していることも、スピードを下げているように感じます。原文のように詳述するなら、スローモーションのように見えた、という描写を入れる手があるかと思います。命の危機で、ときどき起こる現象ですね。

 しかしこういった文章の特徴により、情報としては程よく詳しいため、不明瞭や分かりにくいということはないように思います。不自然と感じる部分は特にありませんでした。
(一点だけ、「無銘」の用法が多少曖昧かもしれません。「無銘・在銘」、「無名・有名」の使い分けということですが、原文に間違いがあるということではありません。)

> A登場人物の容姿や性格がおおよそにでもイメージできるか。
> B先行する類似作品(パクリになりかねないもの)があるか。
> C単純に話の続きが気になるかどうか


 添削依頼のために極めて短く、一部分だけをお示し頂いているため、これらはよく分かりません。申し訳ありません。


[No.10673] 2016/01/17(Sun) 11:49:24
Re: 冒頭部分の添削をお願い致します。 (No.10668への返信 / 1階層) - クレメント

はじめまして、クレメントと申します。


◆添削、および指摘。
>およそ銘刀の類でないことは容易に察せられたが、
銘は刀に彫られているから、鞘に入ったままで『容易に察せられた』は違和感がある。
実際のところ鞘に収められた状態だと、銘どころか、名刀、数打ちの区別もつかない。

>わずかに一拍置いて地に落ちる。
重言。
辞書には【一拍置く……ちょっと時間をあける。】とある。

>弁明を乞う暇もなく
弁明は”乞う”ものではないと思う。
――添削――
弁明の機会を与えられることなく
弁明の余地なく

>その場で打ち首になることくらいは知っていた。
時代考証云々の話だが、『打ち首』は刑罰だから変かな。
――添削――
その場で斬り捨てになることくらいは知っていた。

>隠し遂せる
隠し通せる

>牛車を牽く牛が、背を弓なりに反らして暴れ出した。
微妙。
オーバーな気もするが、そういった表現もあるし。

>牛車を牽く牛
『牽く』よく知っているなと感心した。

>黒鞘から抜き放たれた雷光の如き一閃は、一条の残光を曳いて奔り、今まさに突進せんとしていた牛の首を、瞬きするよりも早く鮮やかに両断してのけていた。
無駄に飾り過ぎな気がする。
――添削――
一条の銀光が宙を疾走(はし)る。
牛の頭がズルリと滑り落ちる。あとに続くは鮮烈な赤の飛沫。
雷光の如き一撃が、突進せんとしていた牛の首を、瞬きするよりも早く両断してのけたのだ。

>もはやこのままでは、従者もろとも車の主も皆殺しか――と思われたその時、
従者が何人もいるので、牛一頭に皆殺しはオーバーかと。

>驚きに硬直したのも束の間、ベルカと名乗った朱髪の女子は、牛車の傍らに尻もちをついていた従者に何事かを命じると、やがてどこからともなく輿を担いだ男たちが現れ、ベルカはその男たちが担いできた輿に乗り込んでしまった。
輿の登場に違和感がある。都合が良すぎるような。
あとなんで最初から輿じゃないのか?
雑に書かれているイメージがある。

> ゆっくりと遠ざかってゆく行列を、ジャンゴは呆然と見送った。
『ゆっくり』とはつけなくてもいいような。


◆気になった点
別の人の指摘になるが……。
>それと誤字の報告です。
>>遥か遠くの峰々に降り積もった雪も解け
>ここは“解け”ではなくて“溶け”だと思います。

誤用とは断言できないんですよね。(氷解、融雪など言葉があるので)
・雪が解ける
・雪が溶ける
・雪が融ける
辞書により差はありますが、一応間違いではありません。
「雪が解ける」と表記している新聞社もあります。たしか、NHKも雪は「解ける」だったはず。
「記者ハンドブック」にも、自然にとける場合は「解ける」をあてるとありますし。
この場合は『解ける』で良いと思います。

>擦り切れた檜皮の旅衣。
『檜皮色、桧皮色、ひはだいろ、ひわだいろ』
ほかの人の添削例だけど、色ではなく、檜の樹皮製にかわっている。ルビを振っていないから伝わっていないみたい。


◆回答
>@文章および展開に不自然・不明瞭な個所は無いか。
表現が適切ではない。難読漢字が多く、意味を理解しづらい。
読み手が時代劇好きならいざ知らず、ライト層なら問題かと。
無駄が多いので、一文が長い。
表現がまどろっこしい。
説明するより、既刊の小説と照らしあわせたほうが早いかと。

>A登場人物の容姿や性格がおおよそにでもイメージできるか。
時代劇で見たことのある人はわかるだろうけど、最近はそういったTV番組は少ない。ライトノベルの読者層がイメージできるか、甚だ疑問。
ジャンゴの衣装が、渡世人風なのか侍風なのか、はっきりとしない。

>B先行する類似作品(パクリになりかねないもの)があるか。
前のもそうだけど、既刊の作品に多い。時代劇でもないライトでもない、中途半端さが拭い切れない。読む限り真新しさは感じられない。
古い作品だと「カルファシード」(ルナルシリーズの番外編)あたりかな。
そのころは書店業界も某事件のせいか、消えた作品が多いですね。そのせいかアニメや漫画だと多いのに、小説になると激減するらしい。

>C単純に話の続きが気になるかどうか
まったく気にならない。
癖からして前回とちがう。


◆感想
難しい漢字、語句を多用している。
どの年代の読者に向けて書いた作品か、いまいち理解できない。
指示語が多い。


//////////////////////////
ついでに、削除された作品の分も。


◆添削、および指摘。
>欧州はバルカン半島の北西部に位置する小国、ボスニア・ヘルツェゴビナ。
これだけでバッサリするのもいいけど。馴染みのない国なので、舞台についてある程度情報を書いておいたほうがいいような気がした。
三段論法じゃないけど。@国名、位置 A国の特色 B政情が不安定な様子 くらいは記述しておいてもいいかと。
―― ? ――
欧州はバルカン半島の北西部に位置する小国、ボスニア・ヘルツェゴビナ。アドリア海を臨む三角形の国土は南北に分かれており、国土の大部分を占める北部は温暖なボスニアで、海に面した南部は地中海性気候のヘルツェゴビナだ。

>地上三四〇メートルの高みから見下ろす街並みは、まるでよく出来た玩具のようだった。
表現したい方向性はわかるが、玩具はすこし曖昧。どんな玩具? となる。
大抵『まるで玩具だ』ってのは威力の比較に用いられる。街並みをしてこの表現は連想させるにはすこし遠いかと。
それに見える景色に当てはめるのだから、『まるで』という余分な言葉も削れるかと。
――添削――
地上三四〇メートルの高みから見下ろす街並みは、精巧につくられた模型のようだった。

>観光資源たる景観を保護すべく、都市開発に対して条例による厳しい制限を課しているサラエヴォでは、一つの建物に複数の機能を集中させることが多い。
なんとなく気になった。好みの問題だと思うけど、二文に分けてみた。
なんだろうね。文章自体は変じゃないんだけど、一文が長いというか、理解する事が多いというか。伝えるべき事柄をちゃんと整理できていないように思えた。
――添削――
観光資源である景観を保護するため、ここサラエヴォでは都市開発に関しての規制が厳しい。そのため、一つの建物に複数の機能を集中させることが多い。

> 慣れた手つきで箱を揺すり、飛び出た一本を器用に口で引き抜くと、クロエはシュッとフリントを擦って、咥えたそれに火をつける。
『フリント』でライターを点火した描写が伝わるか? 喫煙者も一時に比べ減少しているし、知らない人には伝わりにくいかも。
キャラクター造形にこだわるのなら、なぜ未来でオイルライターを使うのか? 理由を書いてもいいかと思った。
――添削――
 慣れた手つきで箱を振って、飛び出た一本を器用に咥える。オイルライターで火をつける。

>クロエが立っている高層ビル
腰を掛けていたのでは?

>ヘビースモーカーもびっくりな、いっそ清々しいほどの見事な吸いっぷりで、
「綺麗な所作」みたいに抽象的過ぎるような。全体的に多い。無駄な文章を削るのも大切だが、魅せる場面はきっちりと描写した方がいい。
常人にはないような「一気に根本(フィルター付近)まで吸う」「一息でタバコを吸い切った」などがあれば、ヘビースモーカーもびっくりなんだけど。
『ヘビースモーカーもびっくり』な吸い方を描写してみては?

>制限を課している
この場合の課すは『制約を課す』かな。「課す」は責任や税金などどちらかというと人にかかる言葉なので、『都市計画に〜』の使われ方に抵抗があった。
ネットで探しても違いを定義しているサイトはないけど、ある程度使い分けされている。

>自身の身の丈
細かく言うと重言。強調すべき場面でないし、くどいかと。
「身の丈」に自身の身長という意味もある。

>スナイパー通り
なぜそういう名称がついたのか、由来の説明がほしいところ。読み手が置いてけぼりを食らっているような気がする。

>《――三〇〇秒後にライラプスTを突入させる。準備はできているな?》
> 念を押すようなオーギュストの声。
> 失敗は許されないと言外に告げるその声に、フィオナはあくまでも優雅に答える。

『念を押すような』とある。その前のセリフにに『準備はできているな?』とあるので、『ような』という記述が変に思えた。
また『言外に告げるその声』の部分で戸惑う。
  【言外(げんがい)――言葉に出さない部分。】
の意味で使用しているのなら、「言外にほのめかす」が一般的かと。

>眠たげに細められた両の瞼。
まぶたを細めても眠たそうには見えませんけど。
――添削――
眠たげに細められた両の瞳。
眠たげに細められた双眸。
起きるのが億劫そうに細められた瞼

>ワゴン車が、ミリアムの放った連結式地雷の爆風によって木っ端微塵に爆散する。
全体的に文章が長い気がする。無駄を削ぎ落としたほうがいいような。
――添削――
ワゴン車が、ミリアムの放った連結式地雷によって木っ端微塵に爆散する。

>肺癌に侵される憂いもなく
本来は「冒される」。文科省で認められてたか……記憶があやふやで自信は無い。



>地下八階、地上一〇七階建ての超高層複合ビル――『アヴァズ・ツインタワー・ビル』。
>医療、金融、行政、娯楽、商業など、文字通りありとあらゆる

複合であって、「文字通り」は間違った記述? アヴァズも実在にある社名なんで違うような。
【新聞社「ドネヴニ・アヴァズ (直訳するとデイリーボイス)」本社ビルである。】


>さながら女優のような見事な肢体は、弱冠十七歳にして既に大人の色香を放っており、その優雅でお淑やかな言葉遣いも相まって、見る人に良家の子女のような印象を抱かせる。
段落からフィオナの記述とわかるので、指示語で繋ぐなら短く切ってもいいかと。
――添削――
さながら女優のような見事な肢体は、弱冠十七歳にして既に大人の色香を放っている。しっとりとした美声と優雅な言葉遣いもあって、見る人に良家の子女のような印象を抱かせる。

>苦渋と諦念の滲むオーギュストの重い声。
語順かな。短文が少ないし。
――添削――
オーギュスト声は重かった。苦渋と諦めの念が滲んでいる。


◆回答
> @作品の舞台(年代・地理)などが伝わっているか。
最初のビルと「サラエヴォ」の単語だけ。情景が希薄。
舞台が馴染みのある学校などと違い、遠い外国なので、読み手の想像しやすい工夫が必要だと思った。
年代については、現代に近いことが文章から推測できる。

> A登場人物の容姿・性格などが伝わっているか。(また魅力があるかないか)
判断しようにも文章が短くセリフと説明ばかりなので、なんとも言えない。
文庫本換算で15Pほどに、1、2、3、と場面が変わり主となる人物が三人も出てくる。キャラクターのイメージを定着させる前にポンポン話が進むので、把握するのに大変。

> Bヒロイン三人の肉体が生身ではないことが理解できるか。
ある程度、機械化していると思っていた。
義肢、義体とあるので、臓器まで機械化できる世界なのか? 肢体だけ機械化できる世界なのか?(現代に近い未来か? かなり進んだ未来か?)判別がつかない。

> C文章が冗長でないか。また、描写にスピード感があるか(戦闘シーンなど)
冗長というか、節が短い気がした。ころころ場面が変わるので、スピード感以前に内容を把握するので精一杯。
説明の出し方が微妙。冒頭からして説明が多いのでうんざりする。

> D物語の展開や登場人物の会話に不自然な点や不明瞭な点はないか。
セリフにおかしな点がいくつかあった。
セリフならば問題ないと思うが、地の文だったら致命的かと。

> E設定や展開などから連想される類似した先行作品があるか。
かなりあるかと……。

> Fこの先の展開が気になるかならないか。
大幅な見直しをするのならば読むが、この調子だと読まない。
結構な文量だが、世界観がつかめない。


◆感想
好みの問題だが、文体が合わない。体言止めとか多すぎて台本を読んでいる気がする。
あと「ながら」文。
節も短く、ころころ場面が変わるので物語に没入することが難しい。
情景描写も乏しいのでイメージが湧かない。動作などは細かく書かれていてるのだが、人物の個性を引き出すには微妙に思えた。
演技指導付きの台本みたい。


◆補記
掲示板でいろいろと意見が飛び交っているので、批判にならぬよう補足を少々。
携帯小説のようにぶつ切りではない。
「ながら」文を指摘したが、それ以外の「そう言って」「そう言う」などの癖、こそあどの過剰使用もない。
一文一文は問題ないが、出来上がった作品(小説)に物足りなさを感じる。
いろいろ調べて書いている跡が見えるものの、読み解けるか、難解ではないか、など読み手に対する思慮が足りない気がした。




///////////////////////////////////////


簡易ではありますが、校正は以上です。


[No.10674] 2016/01/17(Sun) 14:49:45
Re: 冒頭部分の添削をお願い致します。 (No.10674への返信 / 2階層) - ちりめん問屋

 分析とご意見に大いに学ぶところがありましたが、一部ご指摘を頂いているようですので、そこだけ返信、説明申し上げます。

> >擦り切れた檜皮の旅衣。
> 『檜皮色、桧皮色、ひはだいろ、ひわだいろ』
> ほかの人の添削例だけど、色ではなく、檜の樹皮製にかわっている。ルビを振っていないから伝わっていないみたい。


 せっかくのご配慮に無礼を申し上げるようで恐縮ですが、原文の描写は理解できますし、意味も変えてはおりません。いくらなんでも、杉や檜の樹皮を着ているなどとは思いもしません。「雪がとける」はよくお調べなのに、檜皮の語義は確認されなかったのでしょうか。辞書の記載例を提示します。

・デジタル大辞泉:檜皮
https://kotobank.jp/word/%E6%AA%9C%E7%9A%AE-612151#E3.83.87.E3.82.B8.E3.82.BF.E3.83.AB.E5.A4.A7.E8.BE.9E.E6.B3.89
> 3 襲(かさね)の色目の名。表は黒みがかった蘇芳(すおう)、裏は縹(はなだ)色

・同:襲の色目
https://kotobank.jp/word/%E8%A5%B2%E3%81%AE%E8%89%B2%E7%9B%AE-461735#E3.83.87.E3.82.B8.E3.82.BF.E3.83.AB.E5.A4.A7.E8.BE.9E.E6.B3.89
> 平安時代以降、公家社会に行われた衣服の表地と裏地、また衣服を重ねて着たときの色の取り合わせの種目。

 このように「檜皮」は衣服の色(の組み合わせ)の意味もあります。同様なものを考えると、「橙《だいだい》」などもそうですね。樹木、果実という語義だけでなく、色も意味します。橙色と書かないといけないなんてことはありません。

 衣服に用いる伝統的な単語であること、作品の舞台や文体が古風な雰囲気であること、主人公の刀が日本刀らしいことなどを踏まえ、原文の「色」を削りました。後は、作者さんのご判断次第です。

 なお、もし疑問に思われたことがおありであれば、添削の拙文のほうへご指摘をお願いしたかったところです。


[No.10675] 2016/01/17(Sun) 15:30:31

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