[東京 28日 ロイター] - 金融庁は2015年度の税制改正要望で「ジュニアNISA」(仮称)の創設を盛り込んだ。しかし、注目された1人当たりの年間非課税枠は、120万円への引き上げにとどまり、麻生太郎・副総理兼財務金融担当相が言及した240万円に遠く及ばなかった。大幅引き上げへの財務省主税局の強い反対を想定し、「節度」ある要望にとどめた格好だ。だが、子ども枠を含めると大幅増になるという「したたかな戦術」も見え隠れする。
麻生金融相は7月1日の閣議後会見で、少額投資非課税制度(NISA)について、毎月20万円ずつ投資することを念頭に、年240万円までの拡大も改革の一案になるとの考えを示した。
甘利明・経済再生担当相、菅義偉官房長官とともに現行の年100万円から2倍以上の拡大を目指す姿勢を示した。
しかし、金融庁の税制改正要望で示された1人当たりの年間非課税限度額は、現行から20万円増の120万円。毎月10万円ずつ投資するとすれば使い勝手はいいが、「倍以上」と踏みこんだ閣僚の発言からは、かけ離れたものだった。
今回の税制改正要望におけるNISAの手直しで、金融庁幹部の念頭にあったのは、利用者の拡大とともに、家計による長期スタンス投資を促すことだった。
このため、年間非課税限度額の引き上げよりも、非課税対象者の拡大、年限の延長(現行は非課税期間が5年)が改革の焦点になった。
ジュニアNISAは、この目標に沿ったものだ。ジュニアNISAでは、未成年者の口座開設を可能にして、実際には親や祖父母世代が資金を拠出して運用。18歳になるまで払い出しできないように設計されている。
金融庁の調査では、今年3月末時点でのNISA口座開設数のうち、59.8%が60歳代以上だった。対照的に20歳代は3.2%、30歳代は7.7%にとどまり、若年層への浸透が進んでいないことが明らかになった。
金融庁幹部は、開始3カ月で1兆円超の資金がNISA口座を通じて投資に向かったことを評価しつつ、所得や投資経験が少ないことなどを背景に若い世代に普及していない現状に懸念を持ったようだ。
その結果、教育資金贈与の人気化を踏まえ、ジュニアNISAの実現性の有無について検討するよう、証券業界に働き掛けた。
<節度ある要求>
非課税限度額の大幅拡大機運が高まらなかった背景には、限度額の引き上げが長期投資促進や、すそ野の拡大に必ずしもつながらないだけでなく「政治的な理由」も挙げられる。
1つは麻生副総理が財務相と金融担当相を兼務していることがあるという。税制改正を要望する金融庁と、要望を査定する財務省の大臣に麻生副総理が就いているため、金融庁としては「何でもかんでも要望するわけにはいかず、自ずと節度ある要求が求められた」(金融庁幹部)という事情があった。
また、NISA発足後間もない時期に、非課税枠の増額を要求すれば、財務省主税局が強く反対することも容易に想定され、金融庁内では非課税限度額引き上げを最優先することに抵抗感もあったという。
<両親に子ども2人家庭なら「実質倍額」>
税制改正要望に向けた議論が本格化するまで、金融庁では、非課税限度額の安易な引き上げには頼らず、まずは証券業界が自らの努力でNISAの利用促進に努めるべきだとの声が多かった。
だが、最終的には非課税枠の増額要求に踏み切り、ジュニアNISAの非課税額を年80万円、成人のNISAの限度額を120万円とした。
両親2人に子ども2人という家庭をモデルケースとすれば、両親が子どもの分も含めて1人あたり年200万円まで非課税で投資できることになり、実質的に非課税限度額が2倍になる計算になる。このあたりに金融庁のしたたかさもにじむ。 (和田崇彦 編集:田巻一彦)
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