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コレなら回答しやすい!二択の性別欄改造計画 [多様なセクシュアリティ]
前々記事末尾の追伸部分で、国勢調査の性別欄が男女の二択なので住民の生活実態把握という調査目的が果たせない……旨に触れましたが、むろんこの問題は、たいていの[ 性別欄 ]について言えることです。
ただ、じゃぁ どんな性別欄がよいのかと言えば、コレはたしかになかなか難しい。
実際、今のままではいけないという認識を持った志の高い方々から、講演先などでしばしば尋ねられたりもするし、ちょうど記事公表直後にも、とある「今度おこなうアンケートの項目を作成中」という人とこの話題になったりもしていました。
で、まぁ、実在する“工夫された性別欄”としては、
例えば
【 男 女 その他 】
…なんてのがあったりします。
とはいえ、「その他」ってのも、なんかあざとい感じだし、ココに丸をつけるのもなんだかなぁという感じがしないではありません。
一方
【 】
…というような、まるっきり自由記入にするのもひとつの方法でしょう。
どのような“性別”にも対応できる柔軟性の高さは評価に値します。
しかし………面倒なのも確か(^_^;)
てか、ナニを書けっちゅーねん ――というか、いわば記入者への丸投げ感が、イマイチ釈然としない印象を与えかねません。
あと、選択肢を選ぶだけのほうが、記入者がラクなのはもちろん、集計するほうの手間もかかりません。大規模な調査で、集計を業者委託する際などには、自由記入の項目1コにつき幾ばくかの割増料金が発生するなんてゆー切実な事情も存在するでしょう。
※いわゆる「身体の性別」「心の性別」「性的指向」を分けたパターンも、欄が大きくなりすぎることから、この記事では検討から外しています。
4象限or立体8象限グラフタイプなども同様。
白紙自由記入を含めて、これらは、多様なセクシュアリティの存在を念頭に、その多様さを調べることこそが調査の主旨だったりする場合に採用すべきもの。
そもそも、じつはあんまり必要がないのに習慣でなんとなく性別欄があるケースも少なくないので、性別欄はその必要性をよく検討してむやみに設けないことが、もっとも重要というのも真理です。
ところが、その「男女の別にこだわらずに、個人個人が自分を発揮していける世の中をめざそう」、つまりいわゆる男女共同参画社会づくりにかかわるようなアンケートほど、その回答者が実際に男性として生活している人なのか、それとも女性として生活している人なのか、その別を集計したい・する意義がある……といった逆説的なニーズが存在するのもまた現実。
こうなると、もはや面倒なので、「もぅイイやっ」と、せいぜい
【 女 男 】
…くらいで手を打ちたくもなります。
それにこの二択パターンがいちばん慣れ親しまれていて、最大公約数的には最も無難だったり(^_^;)
そんなこんなで、巷には二択の性別欄があふれているわけですが、しょうがないので私などは、女か男かの二者択一を迫られるときには、相手がソレによって何を知りたいのかを慮って、より回答として適切なほうを選ぶようにしています。
例えば、身体がモンダイとなる病院など、あるいは何かの契約など法律上の行為にかかわるような場合には、身体的/戸籍上の性別である[ 男 ]。
生活上の実態に即した回答のほうに意味がある、ショッピングセンターの会員カードの申し込みのような際には、事実上の性別とも言える[ 女 ]。
そして――。
逆に言えば、このような使い分けを、記入者の自主判断に任せるのではなく、設問側でもっとアピールしてもらえれば、こっちとしても気がラクというものです。
つまり、【 女 男 】という二択の性別欄をもって、
何を聞きたいのか、
何を尋ねたいのか、
だからどういう基準の“性別”を答えてほしいのか
を、明確に注釈するのです。
⇒あなたの健康を診断するうえでの基礎データです。身体上の該当するほうをお知らせください。特記事項は備考欄にご記入ください。
⇒法律行為にかかわる正式な契約書面ですので、戸籍上の該当するほうを選んでください。
⇒生活の実態の詳細を調査し今後の施策の参考とするものです。実際の日常生活におけるより近いほうどちらかに○をお願いします。
⇒お客様の出会いたい相手がどのような方なのか、ご希望に合った方を紹介するためのマッチングデータです。出会いたい相手の属性として近いほうをお選びください。
……てな感じですネ(^^)
こんなふうに書いてあったら、「それじゃーこの場合は……」と、たとえ二択であっても割り切りやすいのは言うまでもありません。
というわけで、当面の暫定的理想の性別欄は、この「二択に注釈」(with任意の備考欄?)ということでどうでしょう?
ようするに、女か、それとも男か、を尋ねることが、その人の諸要素を推計するうえで、それ自体が最重要の要項だと思い込まれていることが問題なのですね。
本来は男女の別を問うことは、その人についての「何か」を捕捉するうえでのひとつの指標として調査対象に上っている、すなわち手段にすぎないのです。
なのに、その「何か」を忘れて、あたかも「男女の別」そのものが問うべき対象として自己目的化してしまう、そのようなことが許容される風潮こそが、諸悪の根源なのではないでしょうか。
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