4業者が仲介 箱にココイチ「信じた」
「カレーハウスCoCo壱番屋(ココイチ)」の廃棄カツが産廃業者から横流しされた事件で、一部のカツは四つの仲介業者を経てスーパーの店頭に並んでいたことが毎日新聞の取材で分かった。大手ブランドを信用し、廃棄物という認識はなかったと口をそろえて悔しがる。
判明したのは壱番屋(愛知県一宮市)が昨年10月、産廃業者「ダイコー」(同県稲沢市)に廃棄を委託した約4万枚の冷凍ビーフカツが消費者に届くまでの経路の一つ。
ダイコーは、カツ3万3000枚を、1枚33円(30枚1000円)で製麺業「みのりフーズ」(岐阜県羽島市)に横流ししたとされる。同社の実質的経営者(78)によると、ダイコーから「ココイチのビーフカツがあるけど、どうだ」と声をかけられたという。「わざわざ偽装してこんな安く卸すとは思わないし、ココイチだからと信頼していた」と主張する。
みのりフーズは愛知県春日井市の業者などに販売。この業者は名古屋市内の商社に「ココイチの規格外商品」と説明し、1枚50〜52円で卸した。仕入れた商社の社長(72)は「見本品は壱番屋の箱に入っていた。疑う余地などなかった」と肩を落とす。商社は名古屋市内の食品卸会社に1枚55円で販売。「損をしなければいいという値段。もうけはない」と話した。
食品卸会社は、市内のスーパーなどに1枚65円前後で卸した。代表(71)は「ココイチというブランドに疑いを持たなかった。お客に迷惑をかけて申し訳ない」と涙をぬぐった。
同市などに2店舗を構えるスーパーは、仕入れたカツを店頭で「ココイチのビーフカツ」との広告を付けて1枚80円(1袋5枚入りで398円)で販売。今月に入って事件が発覚するまでに大半を売り切っていた。
食品流通に詳しい福井県立大の加藤辰夫教授は「今回、壱番屋は被害者だが、処分を頼むメーカー側も商品が横流しされないよう、裁断してから渡すことなどが必要かもしれない」と警鐘を鳴らしている。
一方、愛知県警は16日、ダイコーからカツなどを購入していたみのりフーズを廃棄物処理法違反容疑で家宅捜索し、保管されていた食材などを押収。同社の実質的経営者の男性を任意で事情聴取した。県警は14日、同容疑でダイコーの家宅捜索をしている。捜査関係者によると、みのりフーズの捜索は、ダイコーの容疑を裏付けるため、としている。
男性はこれまでの取材に、ダイコーからカツなどを仕入れ、転売したことを認めているが「廃棄物とは思わなかった」などと説明している。【町田結子、野村阿悠子】