世間的にはマイナーだった…と思う。
誰にでも経験はあるだろう。第1話、あるいは第1巻を読んで「これは最高にヒットするぞ!」と思った漫画が、殆ど世に知られる事無くヒッソリと終わっていったという想い出が。
自分にもある。
特に多感だった思春期に、自分が面白いと思っている漫画を周りが誰も知らないというあの悲しさたるや筆舌に尽くしがたい。
自分はオタクではあるが、他人に「布教」するタイプの人間ではなかった。だから、「面白いからこれ読んでみなよ」と、無理やり友達に読ませたりするような事はしなかった。だから、余計にぼっち感が増していたのかもしれない。でも、無理強いすると逆に「うぜえ…」と思われる可能性もあって、わりと逆効果だったりする。
今回は、そんな「個人的には大好きだったけど、なんかマイナーで終わった(気がする)漫画をつらつらと書き連ねていこうと思う。
ゼルダの伝説・リンクの冒険/乱丸/全3巻(ゼルダの伝説1巻・リンクの冒険2巻)
その昔、「わんぱっくコミック」というゲームのコミカライズ作品がたくさん載っている雑誌があった。その中で連載されていたのがこの「ゼルダの伝説」だ。
この漫画は、当時ギャグか攻略漫画が中心だったゲーム漫画の中で、ひときわ異彩を放っていた。きちんとしたストーリー漫画として作られており、当時の貧弱なグラフィックスを見事に補完した傑作だったのだ。
途中でリンクがまだトライフォースを1枚しか持っていないのにガノンを倒しに行き、一度は死んでしまったり、ゼルダ姫が死んだ時にすでに魔力が切れた状態で復活の術を使い、「どうして生き返らないんだ…!」と、絶望するリンクなど、本当に子供心にグッと来る描写が多い作品だった。
この作品は、いまでは入手困難になっており、恐ろしくプレミアが付いている。しかも「リンクの冒険」の最終巻である第3巻はわんぱっくコミックが休刊になってしまったからなのか、発刊されなかった。
残念である。
宇宙英雄物語/伊東岳彦 /全5巻
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これは知っている人にとってはマイナーどころかむしろメジャーだろ!と言われそうな漫画だが、一般的にはそんなに有名とはいえない漫画だとおもうので挙げた。実際、沢山のイメージアルバム(いまはなんていうのこれ)とか、ドラマCDとかが出ていて、コアな人にはまったくマイナーではない。
高校生の頃、コミックコンプという雑誌があって、ジャンプとかメジャーどころに飽きていた自分は、そういうオタク方面の漫画を読むようになっていた。そこで出会ったのが「宇宙英雄物語」だ。
この漫画、一言で言えば暑苦しいギャグを織り交ぜたスペースオペラである。
並行宇宙からやってきた伝説の宇宙英雄の「ロジャー」を祖父に持つ、主人公「語堂十字(ごどうじゅうじ)」が、ヒロインの「椎原咲実」や、やたら野望をむき出しにしている担任教師「紅竜」、全宇宙チェーンすたーらーくの店長「ゴート」、古代民族の末裔「アゼル」、そしてごく普通の校長先生「クララ」…
一癖も二癖もあるキャラクターたちが日常でドタバタを繰り広げ、そして驚くべき事実が明かされて舞台は平行宇宙へ。そこにはロジャーの宿敵であり、全宇宙を我が物にしようと企む「星界王ブラス」が待ち受けていた…
往年のスペースオペラのパロディがそこかしこに散りばめられたギャグ漫画なのだが、途中で角川のゴタゴタに巻き込まれ、一旦連載が中断してしまう。その際に進行していたOVAの企画も頓挫してしまう。結局、ようやく完結したのは3年後にウルトラジャンプで連載再開できてからだ。
正直、あの角川分裂騒動がなければどうだったのかというのは、今でも時々思うことがある。
その後、伊東岳彦の作品は「覇王大系リューナイト」や「星方武侠アウトロースター」「星方天使エンジェルリンクス」など、いくつかアニメ化したりしている。むしろ、彼は「NG騎士ラムネ&40」のキャラデザの人とか、「幡池裕行」という別名義の方がある意味有名かもしれない。
ちなみに、自分は宇宙英雄物語が好きすぎて、そのパイロット版でもある「数多の星より大切な…」という作品が載っている「C-LIVE」という本も探しだして買った。今でも実家に保存してある。
おざなりダンジョン/こやま基夫/全17巻
これも知っている人は知っている漫画だ。 「月刊コミックNORA」という雑誌で連載されていた。発行していたのは学研である。看板漫画は長谷川裕一の「マップス」とこの「おざなりダンジョン」だった。
関西弁を話すめっぽう強い腕っ節の女戦士「モカ」、腕は確かだがいわゆる「いい人」的な性格のため盗賊としての名はそれほどでもない「ブルマン」、まったく言葉を発せず、手に持った看板に文字を書くことにより会話する魔法使い「キリマン」の三人が繰り広げる珍道中である。
この漫画は「プライベートバトルが結果的に世界を救う」という王道展開が満載で、しかもそこかしこに散りばめられたギャグの切れ味が鋭く、作者の才能を感じずにはいられない。
それでていて、世界を巡る壮大な物語が裏では進行しており、特に世界の守護者であるマジックアカデミーと、その使徒である「アストラル」という超越的存在の一人「エスプリ」、そして邪悪なアストラルである「ロゴス」が絡むバックストーリーは本当に素晴らしく、そこにモカの父親の話だとか、人間界の権力者であるギルドマスター「ヨナ」、その側近である「エルザ」、見た目はぼーっとしたおっさんのソードバスター「キートン」などのキャラクターが複雑に絡み合って、最後はすべてが一つに収束して素晴らしいエンディングを迎える。
惜しむらくは、コミックNORAを延命させるために無理やり「なりゆきダンジョン」という続編を作り、それがわりと蛇足だった事だろう。正直、おざなりダンジョンはあそこで終わっておいた方が良かったと思う。
その後に、「なおざりダンジョン」や「おざなりダンジョンTactics」などが出たが、どうも当時の切れ味が失われていて寂しかった。面白かったですけどね。
なおざりダンジョン コミックセット (CR COMICS) [マーケットプレイスセット]
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CLOTH ROAD/倉田英之・okama /全11巻
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ここ数年で最も設定に感心した作品が、「CLOTH ROAD」だ。
よくSFとかの設定で、高度に発達したテクノロジーが人間と融合したりゴーストが囁いたりする事があるが、この作品でテクノロジーと融合を果たしたのは「服」だ。
「着るコンピュータ」と化した服の仕立屋はプログラマーを兼任し、コンピュータメーカーはファッションブランドと同化して、その機能を最大限に活かすことの出来るファッションモデルは時代の寵児となった。やがて、人類は7つのトップブランドに支配されていくことになる。
作品の題名である「CLOTH ROAD」とは、その7つのトップブランドのモデルたちが覇を競う戦いの場だ。選りすぐりのデザイナーによって作り上げられたドレスと、類まれな身体能力を持つモデルたちが互いに実力を発揮して、世界で最も優れたブランドを決めるバトルロイヤルなのだ。
主人公である「ファーガス」は、そんなデザイナーを目指して貧民街で働いている。そこに双子の姉(本当は妹かもしれない)である「ジェニファー」が現れて、物語は動き出す。ファーガスのデザイナーとしての才能と、ジェニファーのモデルとしての才覚が、やがては世界の運命を左右することになる。
脇を固めるキャラクターも、口の悪いウォーキングクローゼットの管理オートマトン「ポシェット」や、ロイヤルカストラートのトップモデル「ジューン・メイ」、天才モデルの「ジュリエット」、そして物語の鍵を握る「アルジャンヌ」と「ガーメント」…
人により好き嫌いは別れるかもしれないが、疾走感のある画風と複雑な設定をそう思わせない脚本は本当に素晴らしい。荒唐無稽なお話をそうとは思わせないテクニックこそがSFの白眉なのだとするならば、まさにこのCLOTH ROADは極上のSFである。
全11巻とべらぼうに長いわけではないし、最後は綺麗に纏まっているので、お暇な方はぜひ読んでもらいたい。SFが苦手で無い人なら大いに楽しめるはずだ。
というわけで、個人的には好きだったけど、世の中ではそんなに評価された気がしないと個人的に思っている漫画を紹介するだけの駄エントリでした。