赤井陽介
2016年1月17日05時12分
6434人が犠牲になった阪神・淡路大震災から17日で21年。あの日から悩み続けた一組の親子が今、前を向いて歩き始めた。
神戸市長田区の清水凌(りょう)さん(21)と母嘉子(よしこ)さん(48)は17日、地元の追悼と防災の行事に参加する。阪神大震災の直前に生まれ、保育器の中で被災。軽度の知的障害がある。激しい揺れで負った可能性も指摘され、嘉子さんは自分を責め続けた。凌さんは昨春、ホームセンターに就職した。
21年前の17日早朝。神戸市内の産科病院で、嘉子さんは突き上げるような激震に襲われた。1月下旬だった予定日を繰り上げて、13日に帝王切開で凌さんを産んだばかり。赤ちゃんが……。暗がりの中をはうように階段を下り、ベビールームに。だが見つからない。「りょう!」。名前を叫ぶと、泣き声が上がった。保育器は、数メートルも飛ばされていた。
「頭を打ったり揺さぶられたりしたんじゃないか」と頭をよぎった。里帰りする予定だった長田区の実家は全壊。親族宅を転々とした。仮設住宅に入って少し落ち着くと、同年代の子どもとの差が気になり始めた。積み木、お絵描き。「何一つ同じようにできんかった」。相談した小児科医から「地震の揺れでの影響もあるかもしれません」と話された。「あの日に産んだ自分のせい」。出産時に聞いた「元気なお子さんです」の言葉が、頭の中をぐるぐると回った。
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朝日新聞社会部
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