2015年12月、長与町議会定例会がひらかれ、新図書館用地を買い取るための条例改正などが出されました。しかし、その手法、建設の財源、子どもたちの学校改修への影響懸念など、多くの問題が山積しています。今回、図書館問題に絞ってご報告します。
なぜ新図書館建設が政治問題化しているのか
老朽化が激しい図書館を新設することは住民の願いであり、議会でも「このままでよい」との意見は皆無です。
この間、関係団体や議会は、現地(町有地)での建て替えを軸に議論がなされてきました。
この場所に建設した場合、駐車可能数は約60台、複層階にならざるをえないなど、一定の制約はあるものの、町の中心地で平地、新たに土地代が発生しないなどの長所があり、住民も議会も夢をもって議論を重ねてきました。
状況一変
住民も議会も知らされない中、高台の民間の土地を、利用目的も決めないまま、町が税金で買い取る約束(覚書)が交わされていたことが発覚、後に図書館候補地となった事から、高齢者や障がい者の方から、「あの場所ならもう通えない(町実施アンケート)」という声が数多く出されました。
議会でも複数の議員から「住民不在、議会不在だ」「手続きがおかしい」と問題となりました。これが政治問題化している理由です。
建設のめど立たず
図書館の建設には多額の費用がかかるため、国の補助金を活用することが不可欠です。しかし現在、補助金も、自前の財源も見通しが立たず、計画は中断しています。
強引な手法で土地購入費捻出
このような中、12月議会に、土地を購入するための議案が出されました。教育委員会が持つ4つの基金を、文化振興基金(新設)へ一本化する条例。さらに、この文化振興基金から4億円を土地開発基金に繰り入れ、8億7600万円となった中から土地を購入(約5億4700万円)する内容です。
小中学校の整備基金まで巻き込み
四つの基金とは、小中学校の整備、図書の充実、、健康づくり、文化の普及のそれぞれ使途を限定していた基金です。
そもそも基金とは、住民の大切な財源を目的ごとに保護し充実させ、恣意的に流用できないよう設置しているものです。
今回の基金の統合案は、図書館建設にかかる財源の見通しが立たない中、強引に財源を捻出するための苦肉の策といえます。
学校の老朽対策、文化事業は縮小?
各基金の制約を解くと、当面する大きな事業が優先されることが想定されます。新図書館関連費用に充当できますが、これにより影響が心配されるのは、子どもたちの学校の安全対策費削減です。学校の耐震化は完了したとはいえ、外壁の剥がれなど、安全対策が必要なものは各校数多く残されたままです。
また、他の文化施設や文化事業を縮小しようとする動きが加速するものと考えます。
問題点指摘するも可決
これまで築いてきた基金の意義と目的を否定する内容になっていること、そして、子どもたちの安全対策予算に財源不足が生じるおそれが高いことなどの問題点を指摘する討論をおこない、関連する議案に反対する態度を表明しましたが、賛成多数で可決しました。
長崎新聞も「奇策」と掲載
長崎新聞12月27日付の記事で町議会の図書館に関連する議案を紹介し、今回の基金条例について「奇策を採用」と掲載。さらに「購入した土地に新図書館が建つのは何年後なのか、今は見えない」と報じました。