2016年1月16日(土)

上尾の摘田農具、国民俗文化財登録へ 農耕文化の変遷評価

国の登録有形民俗文化財に登録される「上尾の摘田・畑作用具」の摘田用具(県提供)

 国の文化審議会(宮田亮平会長)は15日、上尾市が所蔵する「上尾の摘田(つみた)・畑作用具」を登録有形民俗文化財に登録するよう馳浩文部科学相に答申した。3月にも答申通りに登録される。県内の国登録有形民俗文化財は「行田の足袋製造用具及び製品」(2015年3月登録)に次いで3件目となる。
  
 登録が答申されたのは、上尾市域で行われていた稲の直播(じかまき)栽培の摘田と、麦などの畑作に使用された農耕用具の資料群。同市文化財資料室に521点が所蔵されている。田を起こす田作りから、種まき、除草、収穫まで体系的に摘田用具がそろっているのは全国でも珍しい。
 
 県教育局生涯学習文化財課などによると、上尾市域の農業は麦などの畑作が中心。麦の収穫時期と稲の田植えの時期が重なることから、稲作は苗を植える田植えでなく、水田に種を直接まく摘田を行って労働の軽減を図っていた。また、大宮台地の上に位置し、川から用水路を引いてくることが難しかったため、台地の際の低湿地で稲の直播栽培を行っていた。
 
 全国的に明治時代までは直播栽培も広く行われていたが、水田開発や農業技術の進歩で摘田は消滅。しかし、上尾市では昭和40年代まで直播栽培が行われていたため、多くの用具が残っていた。上尾市教育委員会が市域の農具を後世に伝えるため、1980年から体系的に収集した。
 
 同課は「関東平野の中央部に位置する大宮台地で行われてきた農業経営の実態、畑作地域における稲作の地域的な様相を知ることができ、日本の農耕文化の変遷を考える上で評価された」としている。
 
 上尾市教育委員会生涯学習課では「子どもたちを含め、摘田を知らない市民も増えている。上尾の先人たちがどのように暮らしてきたのか、民具を通じて苦労や工夫を知ってほしい。農具を展示する企画も考えていきたい」と話している。

■登録有形民俗文化財

 2004年の文化財保護法改正により創設された制度。登録対象は原則として近代以降に普及し、生活用品や工業製品などの生活文化財。地域的な特色などを示し、保存や調査、研究が特に必要とされるもの。登録されると、整理や調査費として国から補助金が出る。

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