“やりたい放題”難民ら集団性犯罪で「寛容」メルケル首相窮地
2015年大みそか、独ケルンで発生した難民らによる集団性犯罪。国民感情を逆なでする容疑者らの言動は、くすぶってきた排斥機運に一気に火を付けた。難民への寛容路線を崩さないメルケル首相はこの窮地にどう動く?
《ドイツの難民受けいれ》
ドイツ内務省によると、2015年1年間に中東シリアなどから入国した難民の数は約110万人。このうち、難民として亡命申請を行った人は、約半数の47万人で過去最多を記録。難民を新たな労働力として期待する側面もあるが、居住を認められた難民の多くが、言葉の壁などに阻まれて実際には職に就けず、生活保護などを受給している実情も。〔FNN〕
難民ら、大みそかに集団で女性襲撃
酒に酔った男ら約1000人が痴漢や強奪行為…被害届500件超
12月31日、ケルン中央駅前の広場に集まり、酒に酔った男ら約1000人が、花火を人混みに打ち込むなどして暴れ、複数のグループが女性を囲み痴漢や暴行、盗難行為に及んだ。警察当局は1月10日、被害届が516件に達し、うち4割が性犯罪絡みだったと発表した。少なくとも女性1人が強姦被害に遭ったとされる。
容疑者の10人は亡命希望者、うち9人は9月以降にドイツに入国か
容疑者には、少数のドイツ人や米国人も含まれているが、ノルトラインヴェストファーレン州政府によると、その「ほとんど」が北アフリカやアラブ諸国からの移民という。事情聴取中の容疑者19人のうち14人はモロッコとアルジェリア出身。10人は亡命希望者で、うち9人が2015年9月以降にドイツに入国したされる。他は不法入国の可能性。
胸や股間まさぐりバッグ盗み…全裸にされた女性も
目撃者らによると、女性数百人が性的暴行などを受けた。男らに胸をつかまれ足の間をまさぐられたり、バッグを盗まれたりしたとする証言が報道された。「若い女性は全裸にされ泣いていた」(現地の警察官)との証言も。
事件発生当日の現場の様子を伝える映像〔RT〕
欧州各地で同時多発、「計画性あった」?
「被害は小規模ながら、ドイツ各地でも同様の事件」
独国内ではハンブルグ、ベルリンやフランクフルトなどでも同様の事件が発生。被害は小規模だったが、ハンブルクでの被害届は1月10日までに133件に達したという。
欧州各国で難民ら暴挙
- 【スイス】チューリヒで女性6人が「浅黒い肌の男数人」に囲まれるなどの被害
- 【フィンランド】主にイラクからの難民申請者約1000人が集まっていたヘルシンキ中央駅で3件の被害
- 【スウェーデン】南部カルマルで女性15人が集団に囲まれ身体を触られるなどの被害容疑者のうち2人が難民申請者
- 【オーストリア】ザルツブルクで男2人が女性に対する性犯罪に関与したとして訴追。23歳のシリア人の男には性的暴行などの疑い
独法相「何らかの計画性あったはず」
マース独法相は1月10日付のビルト紙に対し、事件には「何らかの計画性はあったはずだ」と述べた。ケルンの事件では、アフリカ系コミュニティーが現場への集合をSNSを通じて呼びかけたと報道。
“つけ上がる”容疑者、報道は自主規制?
「メルケル首相に招かれた、手荒く扱うな」!警察に楯突く容疑者も
ドイツ有力紙などによると、「俺はメルケル首相に招かれてシリアから来た。手荒く扱うな」と食ってかかった容疑者もいるという。ある容疑者は、警察の目前で居住許可証を破り、「おまえらは俺をどうすることもできない。許可証はまた明日新しいものを入手できる」と言ったとされる。ケルン地元紙は、容疑者らはすぐに釈放されたとも伝える。
Suspects in Cologne sex attacks 'claimed to be Syrian refugees'〔2016年1月7日 Daily Telegraph(英語)〕
ケルン事件、警察やメディアに“隠ぺい疑惑”も
シュツットガルト在住で拓殖大学客員教授、川口マーン惠美氏は、ドイツ国内でケルンの事件が報道されたのは発生から4日後の夜だったと指摘。事件はSNSで拡散したともいわれる。事件に関しては、ケルン警察の初動態勢にも批判が殺到。特に、容疑者情報を明らかにしなかったなどとして、1月8日に警察署長が更迭された。
「難民排斥の口実に使われる」と自粛?
国際ジャーナリストの木村正人氏は、対イスラム批判の動きが広がる中「(事件を報道すれば)難民排斥の口実に使われるという自粛の心理が人権派ジャーナリストや政治家に働いたのだろう」と分析。
強まる難民への逆風、メルケル首相窮地
難民による犯罪、選挙を控えるメルケル氏にとっては「不都合な真実」
ドイツでは2016年、4州で州議会選挙が、2017年には連邦議会選挙と3つの州議会選挙が行われる。1月7日に発生した、ドイツに難民として入国していた男によるパリ警察署襲撃も、メルケル首相率いる与党にとっては「不都合な事実」だったといえる。
右派政党が政権批判「事件は野放図に移民を受け入れた結果」
メルケル氏の政策に批判的な人々は、ケルンの事件こそ、難民を社会に融合させる明確な戦略も持たずに首相が火遊びに興じている証拠だと非難。右派ポピュリスト政党「ドイツのための選択肢(AFD)」は、「野放図に移民を受け入れた結果」、「難民流入時の管理不備が原因だ」と政権批判を展開する。
ケルン暴行事件の被害届500件超す、4割が性犯罪 計画的犯行かケルンの性犯罪事件、メルケル首相の移民政策に批判高まる〔2016年1月7日 AFP〕
流入直後の「歓迎」ムード一転、事件でさらに強まる難民への風当たり
現政権が大量の難民受け入れを表明した2015年9月上旬、国内では“人道支援の最前線に立つドイツ”というイメージが高揚感を生んだが、流入がさらに進むと世論の流れは変化。公共放送ARDの世論調査では、大量の難民を不安視する意見が、9月上旬の38%から月末には51%に増加。さらに、ケルンの事件後のADRの調査では、難民の流入はドイツに「不利益」との回答が41%、「有益」の38%を上回った。
市民の5割が懸念「集団暴行事件が自分の住む町でも起こりうる」
ビルト紙日曜版の世論調査では、回答者の39%がドイツ市民を保護する警察の対策は十分ではないとし、また、49%がケルンと同様の集団暴行事件が自分の町でも起こり得ると懸念していることがわかった。
メルケル氏、難民受け入れ姿勢崩せない理由?
メルケル氏、罪を犯した難民申請者「国外退去」方針を明言も、難民受け入れ姿勢は変えず
ケルンの事件を受け、メルケル氏率いる与党キリスト教民主同盟(CDU)は、3年以上の実刑を受けた場合などに難民申請者を国外退去させる規定になっている現在の制度を厳格化し政府に法改正を求めることで一致。同氏も、罪を犯した申請者は「居住する権利を失う」と明言した。一方で、同氏は1月9日、無制限の難民受け入れ継続の意向も示している。
与党は「寛容な難民政策を放棄すれば大票田のリベラル派の票を失いかねない」
日経新聞記者は、治安悪化は懸念するも、ドイツには「難民・移民排斥という極論に独社会が傾くのは好ましくないと受け止める有権者も多い」とし、保守系与党執行部は「票を狙って寛容な難民政策を放棄すれば、大票田であるリベラル派の票を失いかねない…と考える」と指摘。国民の「審判はひとまず3月13日(の州議会選挙)に下る」とみる。
一方で国民の7割が受け入れ数の「上限設定」を支持(12月調査)
2015年11月のパリ同時多発テロ後には、保守政党の求める難民数の上限設定を支持する声が拡大し、12月の調査では72%が上限設定を支持した。難民流入の玄関口となっているバイエルン州首相は、受け入れ数は「年間20万人が社会の限界」と主張する。
【ケルン事件受け各地で移民排斥デモ】
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