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書窓/日清紡ホールディングス社長・河田正也氏「興味深い『21世紀世界を考える』」
時間軸や空間軸を長く広く見て物事を捉えることが好きだ。究極的には、宇宙の始まりは何なのだろうという関心に結びつく。そこでまず、宇宙にかかわる書物では、スティーヴン・ホーキングの『ホーキング、未来を語る』を挙げたい。宇宙論をかなりやさしく書いているのだろうが、一つ一つの内容は極めて難しい。
お酒の席でこの話題を振ったら、学生時代に宇宙物理学を専攻した人には良かったけれど、化学や機械系の出身者は困ってしまい、迷惑をかけたこともあった。
時間軸の長い歴史関係では、『ルネサンス画人伝』が面白い。自らも16世紀に生きた画家ジョルジョ・ヴァザーリによるルネサンス期の画家たちの評伝で、ラファエロやミケランジェロ、ダ・ヴィンチといった画家にとどまらず、世間ではあまり有名ではない人物の記述もある。
当時の一流画家は、権力者との関係が深く、寵愛(ちょうあい)を受けたり、発言力もあったりした。たまに見返しては、当時の時代背景をオーバーラップさせながら楽しんでいる。
ダニエル・コーエンの『経済と人類の1万年史から、21世紀世界を考える』は、書店でタイトルを見て面白そうだと購入した。歴史を鳥瞰(ちょうかん)して、それを現代に当てはめて比較・検証している点が興味深い。
フリードリヒ・ハイエクの作品は、社会人になってから本格的に読んだ。私が日清紡績(現日清紡ホールディングス)に入社したころ、相談役になっていた桜田武が新入社員を前に、「日清紡は自由主義である」と強調した際、「ハイエクも自由主義の重要さを説いた」と話したことが印象に残ったからだ。
社員には私のお気に入りの本は薦めていない。読むことが負担になってしまっては、申し訳ないと感じるからだ。
ただ、自分の場合は人から背中を押されて読んでみて、有り難かったこともある。私もたまには、周囲に本を薦めて良いのかもしれない。
【英気養う】
マラソンや音楽、美術鑑賞など、豊富な趣味を持つ河田社長。読書もそれを映して多方面に及んでいる。「読書家ではない」と謙遜するが、「時間を気にする必要がなければ、書店に平気で1時間くらいいる」ことも。河田社長にとって読書は、思索を深めたり、英気を養ったりする貴重な時間になっているようだ。(浅海宏規)
[2015年11月25日]
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