「検査院に提出」通達…施行後1年出さず
内閣官房
特定秘密保護法に基づき秘密指定された書類について内閣官房が、会計検査院から要請があれば提供するよう求める通達を関係機関に出していたことが分かった。検査院は法案閣議決定前の2013年9月、秘密指定書類が会計検査に提出されなくなる恐れがあるとして「すべてを検査するとした憲法90条の規定上、問題」と法案の修正を要望した。内閣官房は応じず、代わりに「遅滞なく」通達を出すことを約束していたが、14年12月の法施行後1年以上出していなかった。
内閣官房によると、通達は昨年12月25日付で「秘密事項について検査院から提供を求められた際には、提供していると承知しているが、法の施行によりこの取り扱いに何らの変更を加えるものではない」としている。防衛省、外務省など特定秘密の指定権限を持つ20の行政機関に出した上で、今月8日に検査院に内容を説明した。
13年10月に内閣官房と検査院が合意した通達案では「検査院が特定秘密を利用するときには、『(秘密保護法が秘密提供をしなくてよい場合とする)我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれ』はないと解される」と明示していた。しかし、この部分は今回の通達に盛り込まれなかった。
内閣官房は「明示的には盛り込まなかったが、これまでの取り扱いと変更はないとしており、趣旨は含まれる。そもそも秘密保護法は憲法上問題があるとは認識していない」と説明。通達の遅れについては「実際の運用を見つつ、適切な時期に出そうと考えていた」とコメントした。
会計検査院法規課は「法令協議の過程で、検査院が内閣官房に伝えていた内容が反映されており、検査に必要があるとして要求した場合には、各省庁から特定秘密が適切に提供されると考えている」とコメントした。【青島顕】