社説 京都新聞トップへ

成人の日  民主主義の主役になる

 きょうは「成人の日」。京都府で2万6177人、滋賀県では1万4615人、全国では約121万人が大人の仲間入りをする。
 20歳になれば、飲酒や喫煙、競馬などのギャンブルも許されるが、その分、責任も重くなる。とりわけ新成人にとって大きな変化は、民主主義社会を形作っていく主権の行使者になることだろう。そのことをぜひ自覚してほしい。
 国民一人一人が自分たちの判断で正しいものとそうでないものを見分け、選挙などを通じて物事の決定に参加していく。そうした民主主義は、明日を担う若い人が加わってこそ生きたものになる。
 新成人は多くの人が、これから結婚して家庭を持ち、子育てに関わっていく。だが日本は少子高齢化に伴う社会保障費の増大や格差社会の深刻化などさまざまな問題を抱えており、明るい未来が見通しにくい。若い世代からは「絶望世代」という言葉も生まれているが、そうした状況を変えていくためにも、いろんな機会を通じて意思表示をしていくことが必要だ。
 昨年、国内では戦後の平和主義の流れが大きく転換され、自衛隊の海外での武力行使に道を開いた。一方、世界の各地では、内戦やテロが頻発し、おびただしい数の難民が行き場を失っている。平和や安全の守り方も、今後の大きなテーマとならざるをえない。
 今夏の参院選から選挙権が18歳に引き下げられるが、新成人にとっては初の国政選挙になる。憲法改正を争点にした重要な選挙となりそうだが、憲法の何をどう変えたいのか、本当に必要なことなのか、しっかり見極めてほしい。
 安全保障関連法をめぐり昨年は学生たちが中心になり各地で反対デモを繰り広げたが、「選挙に行こうよ」と訴えていたのが印象的だった。「お任せ民主主義」からの脱却に向けた主権者意識の芽生えと受け止めたい。
 明治期の自由民権運動家で、憲法私案「日本国国憲案」の起草者として知られる植木枝盛は「民権田舎歌」を作った。その一節を紹介しよう。
 <自由の権利は誰も持つ/権利張れよや国の人/自由は天の賜じゃ/取らぬは吾儕(われら)の恥ぞかし/お前見んかえ籠の鳥/羽があっても飛ぶことならぬ/おまえ見んかえ網の魚/鰭(ひれ)があっても游(およ)がれぬ/おまえ観(み)んかえ繋(つな)いだ馬を/蹄(ひづめ)があっても走られん/人に才あり力もあれど/自由の権利がない時は/無用の長物益がない>
 民主主義の主役になろう。

[京都新聞 2016年01月11日掲載]

バックナンバー