ドイツがついに中国を見捨てた!? 激変したメディア報道が伝える独中「蜜月時代の終焉」

2016年01月15日(金) 川口マーン惠美
upperline

抗日戦勝70周年パレードの巧みな報道

中国の経済成長が少し鈍り始めたという報道が頻繁に出だしたのは、去年のことだ。とはいっても、そこでは中国の発表した成長率7%という数字がそのまま伝えられ、前年から見れば落ち込んでいるので懸念材料とされた。

そのころ日本では、中国の経済成長は7%どころか、実際はゼロ成長か、あるいはマイナス成長にはまりこんでいるのではないかと言われていたのである。

ドイツではもちろん、中国金融の危うさや資本の海外流出といった情報にも、あまりお目にかかれなかった。中国人が海外で不動産からブランド品まであらゆるものを爆買いしていることも、市民は肌では感じることはあっても、ニュースとして目に飛び込んでくる機会は少なかった。何らかの理由で、報道されなかったのである。

さらに驚いたのは、去年の夏の上海株の暴落を深刻に取り扱ったのが、ドイツでは経済紙だけだったことだ。日本では大騒ぎになったが、ドイツの一般のテレビニュースはさらっと触れたに過ぎない。

それもARD(ドイツ公共放送連盟)は暴落の2日後(7月10日)、何を勘違いしたか、「中国 さらなる力強い回復」というタイトルの記事を、右肩上がりになっている取引市場の電光掲示板の写真とともに掲載した。私の友人などはそれを見たらしく、「今回の動揺で中国の株式市場は、かえって健全になって復活するんですってね」と明るく言ったものだ。

私がドイツの報道の中立さに疑問を持ったのは、常日頃の日本についての否定的な報道にもよるが、同時に、中国についてのあまりにもバラ色の報道のせいもあった。ドイツの報道は、ある一定の分野においてはかなり偏向していると思う。

ところが、前述のように、中国報道に関しては、その傾向がにわかに変わってきたのだ。最初の兆候は、2015年9月3日、抗日戦勝70周年の記念式典の報道だった。それは巧みなやり方だった。

ARDとZDF(第二テレビ)が両方とも、まるで申し合わせたように、天安門での大規模な軍事パレードを見せながら、そこに習近平国家主席の平和演説の訳を重ねた。すると、その言葉と軍事パレードの映像のあまりのミスマッチが、視聴者の脳にそこはかとなく不信感を芽生えさせることになった。

そのあとは続々と、中国の経済停滞、汚職、シャドーバンク、環境破壊などが報道され始めた。批判的報道は、北京の大気汚染で頂点に達した。同じ頃、インドのデリーも、同様か、もっとひどい大気汚染に悩まされていたが、その報道はほとんどなかった。

次ページ もう綺麗事を書いていられない
前へ 1 2 3 4 次へ

このエントリーをはてなブックマークに追加 RSS
関連記事


underline
アクセスランキング
1時間
24時間
トレンドウォッチ
編集部お薦め記事