<全町避難>浪江のバリケード撤去決定
東京電力福島第1原発事故で全町避難が続く福島県浪江町は、帰還困難区域を除く国道沿線の住宅前に置いたバリケードとゲートを4月をめどに撤去する方針を決めた。2017年3月以降の避難指示解除に向け、町民や復旧工事に携わる業者が立ち入りしやすいようにし、帰町準備を促進するのが目的。一方、不審車両の進入などを懸念し防犯面から異論もあり、16日の行政区長説明会では反発も出そうだ。
避難区域のバリケードとゲートは、帰還困難区域に限り国が設置・維持管理している。避難指示解除準備、居住制限の両区域にも設置しているのは浪江町だけで、国道6号と114号沿いの約400カ所に設置。大半のゲートで検問を行っている。
立ち入りは午前6時から午後7時に限定。町民以外は通行許可証の取得に約1週間を要する。避難指示解除が近づき、リフォーム業者などが出入りする機会が増加。現状のままでは復旧作業の妨げになりかねないとして撤去が決まった。
町中心部の権現堂地区の住民らは昨年9月、撤去を町に要望した。区長の佐藤秀三さん(70)は「立ち入り申請に手間が掛かり、リフォームの依頼を断る業者もいるという。町に入りやすい環境を整え、人の往来が増えれば自然と『帰ろう』という気持ちになる」と説明する。
一方で、撤去に反対の声も上がっている。帰還困難区域に隣接する谷津田地区の区長、原田栄さん(63)は、除染の加速で作業員の増加を心配する。「見知らぬ人が自由に行き来するのは不安。一律に撤去せず、地区ごとに合った対応をすべきだ」と訴える。
双葉署によると、町内で11〜15年に発生した刑法犯は計360件。富岡町(782件)や大熊町(591件)に比べて少なく、バリケードなどが一定の効果を上げているとみられる。
町は今後、防犯カメラを増設し、夜間のパトロールを強化する。帰町準備室の担当者は「一時帰宅の増加に伴い、火災などのトラブルが起きた際にもバリケードは障害になる。解除が迫り、防犯態勢を見直す時期に来ている」と理解を求める。
2016年01月16日土曜日