星野リゾートは、運営する複合型リゾート、星野リゾートトマム(北海道上川管内占冠村)の全株式を12月1日に中国の商業施設運営会社、上海豫園旅游商城(上海)に売却した。上海豫園は星野リゾートが20%、米系ファンドが80%保有する星野リゾートトマムの株式を計183億円で取得。運営は引き続き星野リゾートが担い、名称も変えない。
星野リゾートトマムは、夏の早朝に3日に1回の割合で眺められる「雲海テラス」が大人気。早起きしてゴンドラに乗る人が続出した。敷地と宿泊施設の一部を保有している占冠村との運営委託契約の更新期を迎え、米系ファンドが上海豫園や香港の大手開発会社に購入を打診。上海豫園が破格の価格を提示して買収したという。
上海豫園は発表文で「中国人観光客を引き込む力を強め、収入を増やす」としている。2014年11月期の星野リゾートトマムの純利益は7億円。買収額183億円は利益の26年分に相当する。投資資金を早期回収するために、富裕層向けのコンドミニアムや別荘の建設を進めるものとみられている。
星野リゾートトマムは道内最大規模のスキー場やツインタワーの高層ホテル群で構成される、北海道を代表するリゾート地だ。この巨大な施設はバブルの象徴といわれた。宮城県のデベロッパー、関兵精麦(せきひょうせいばく)が1983年、広大なスキー場とリゾートホテルを開業したのが始まり。
これがバブル期に大化けする。山岳地帯としては例のない超高層ホテルを竣工。もうひとつのツインタワーであるホテルは全室スイートルームという超豪華版だ。全天候型温水プールやさまざまなタイプのホテルなどを次々と建設。北海道はもとより、日本を代表する大規模リゾートの象徴的存在となった。
だが、バブルが崩壊して漂流が始まる。98年に施設の4割を所有するアルファ・コーポレーションが自己破産。施設は占冠村が買い取り、加森観光に運営を委託した。03年、施設の6割を所有する関兵精麦が民事再生法を申請して倒産。04年にその施設を星野リゾートが買収。加森観光に代わって星野リゾートが占冠村から運営を委託された。
そして今回、中国資本の上海豫園に売却した。二束三文の超安値で買収した施設を183億円で売却したわけだから、星野リゾートと米投資ファンド連合は多額の売却益を手にしたことになる。不良債権再生ビジネスの典型的な成功例となった。
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