【占冠】村内のスキーリゾート「星野リゾートトマム」内の約4割を占める村有施設の買い取りを求め、村が星野リゾートトマム社を相手取って調停を申し立てたのは、中国企業が同リゾートに進出する中で、交渉相手を見極める狙いがある。村と同社は2008年に売買を合意したが現在まで延期されており、村は「白黒付けたい」と解決に強い決意を示す。一方、村内の観光関係者からは今後の影響を懸念する声も上がっている。

 13日に札幌地裁へ申し立てた。08年の合意書などに基づき、村所有の建物と土地を速やかに買い取るよう求めている。 

 合意書は「(トマム社は)12年9月30日をめどに、施設を(村から)買い取る」としたが、同社が「(経営が安定するまで)買い取る状況にない」などとして期限の延長を要請。村は経営の見通しなど根拠の提示を求め、協議してきた。

 だが昨年12月、中国の大手民営投資会社が傘下企業を通じてトマム社の全株式を取得したことで、村では合意の実現性を危ぶむ声が高まった。同リゾートの運営を受託する「星野リゾート」(長野県軽井沢町)は村などに対し、「村との交渉は星野リゾートに任されている」、一部のホテルについて「トマム社として買い取るまであと一歩。新しいオーナーの合意も得られる」などと説明。だが星野リゾートがトマム社の役員構成から外れていることもあり、「交渉先はどこなのか、白黒つけるべきだ」(村議)との声が上がった。

 中村博村長は「リゾートへの入り込み客は増えており、経営状態も上向きのはず。行政としては、これまでの説明では納得できない」と指摘。調停の場で交渉相手を明確にするとともに、「今後トマムに投資するのであれば、水やごみ処理などインフラ整備も必要。村にとって(調停は)踏まなければならない段階」と強調する。

 村内の観光関係者も先行きを注視。村中心部の飲食店経営者は「買い取りの約束がある上、だいぶ前から議論されてきたことだ」と裁判所を介した解決に理解を示す一方、「トマムから観光バスで訪れる人や外国人客がいなければ商売は成り立たない。村とトマムには良好な関係を続けてほしい」と要望した。

 同リゾートは1983年、「アルファリゾートトマム」として開業した。村が所有するのはホテル「リゾナーレトマム」(200室)や造波プール「ミナミナビーチ」などの建物と、原野などの土地約48万4100平方メートル。98年に当時の同リゾート運営会社が経営破綻したのを受けて村が買い取り、05年からトマム社へ貸し出してきた。(松下文音)