NASA、衝突すれば破壊的影響を与える地球近傍天体のモニターを正式に開始
〔本記事の執筆者はEmily Calandrelli〕
先週、NASAは惑星防衛調整局(PDCO=Planetary Defense Coordination Office)と呼ばれる新組織を発足させたことを発表した。PDCOはもし地球に衝突すれば大災害をもたらすような地球近傍天体(NEO)を発見、追跡することを目的とする。必要があれば公衆に注意を促し、そうした天体との衝突を防止する方策を研究することも任務に含まれる。
太陽系のほとんどどの小惑星や彗星はごく小さく、その大部分は火星と木星の間の小惑星帯に集中しており、軌道は地球から遠く離れている。しかし中には地球に被害を与えるほど大きく、しかも地球の軌道と交差するような軌道をもつ天体も存在する。NASAはそういう存在に懸念を抱いている。NEOには地球に損害を与えそうな小惑星と彗星の双方が含まれる。
地球をNEOから守るために、PDCOには2つの役割が与えられている。一つは、NEOの捜索、発見だ。次に、もしNEOのうちに地球に被害を与える可能性があるものが発見された場合、他国やアメリカの関係機関の活動を含め、緊急対策を立案し調整することだ。
NASAは長年にわたってNEOから地球を防衛するテクノロジーを研究してきた。しかしこれまでのところ、大型NEOの進路を効果的に変えることができるような戦略は見出されていない。まして実用化の段階にはない。
それでもNASAは、欧州宇宙機関( European Space Agency)と協力して「もしこの方向が追求されるなら(つまり予算が認められるなら)、衝突防止策のデモを行うことができるだろう」としてきた。
もしNEOとの衝突が不可避と判明すれば、PDCOは連邦緊急事態管理庁(FEMA)、国防省などのアメリカ機関や国際機関と協力して対策の立案と実施の調整に当たることになる。
NEOとの衝突事態は比較的頻繁に起きている。しかし通常そういった天体はきわめて小さく、大気圏で燃え尽きてしまう。NASAはこうしたNEOとの衝突を下のようなチャートにまとめた。1994年から2013年の間に、NASAの推定では556回のいわゆるBOLIDE(爆発流星=小天体との衝突により明るく光る爆発現象)が起きている。
ほとんどのNEOとの衝突は無害だが、顕著な例外もある。 2013年にチェリャビンスク(地図ではロシアの大きな黄色い点で表示されている)付近で発生した大火球などがそうだ。恐ろしいのはNASAがチェリャビンスクに小天体が接近中であるとまったく気づかなかったことだ。なるほど小さい(直径19メートル程度)だったし、進路が太陽に近すぎたため発見が困難だったのだという。
しかしチェリャビンスク事件はあくまで例外であって、日々進歩しているテクノロジーをもってすれば現在はもっと小さい天体でもNASAは発見可能だという。これまでに1万3500個のNEOが発見されており、その95%は1998年以降、NASAが資金を提供したプロジェクトによって発見されたものだという。
【略】
チェリャビンスク付近に衝突した小惑星は直径わずか19メートルだったのにTNT0.5メガトン(50万トン)相当の爆発を起こした。チェリャビンスクはNASAの努力が地球の運命にとっていかに重要かを思いおこさせるものだ。
アメリカ政府も年とともに問題の重要性を認識し始めており、2016年にNASAはNEOの発見と防御方法の研究のために連邦予算から5000万ドルの資金を受け取る。2010年にこの予算の総額はわずか400万ドルに過ぎなかった。
大型小惑星との衝突は、ごく稀な事態ではあるものの、国家の安全保障に重大な影響を与える可能性がある。人類の存続にさえ影響があるかもしれない。深宇宙の暗闇に隠れているNEOをいち早く発見し、必要があればその進路を変えるテクノロジーが(十分な資金を供給されて)1日も早く確立されることを望むものだ。
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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+)