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» 2016年01月16日 06時00分 UPDATE

牧ノブユキの「ワークアラウンド」:「これじゃ日本では売れないよ」 海外のPC周辺機器にありがちな残念ポイント (1/2)

海外のPC周辺機器やアクセサリは、そのままでは国内で販売できないものも多い。色や形状、製品の特性など、思わぬところに日本のユーザーから敬遠されるポイントがあったりするからだ。

[牧ノブユキ,ITmedia]

海外ではOKだが、日本ではNGな製品とは?

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 海外のPC周辺機器やアクセサリの中には、そのままでは国内では販売できないものが多い。技適をはじめ国内で使うための認可が取れていない、電圧やコンセント形状などの規格が合わない、また本体が日本国内で販売されておらず、そもそものニーズがないといった明確な理由もある。しかし意外に少なくないのが、色や形状といった主に外見上の特徴が、日本のニーズにマッチしていないという問題だ。

 色や形状などの特徴と書くと、いかにも好みレベルの問題に思えるが、各国の文化風俗に直結したクリティカルな問題だったりするので侮れない。例えば中東のある国では、ピンク色の玩具は全く売れない。というのもその国ではピンクは下着の色と決まっているためだ。これを好みの問題で片付けてしまっては、いつまでたってもその国で売上は伸ばせない。世界中にはこのような問題がゴロゴロしている。

 製品の輸出入を手掛ける商社は、こうしたさまざまな情報を仕入れに反映させているが、前述のような国単位でよく知られたNGラインならまだしも、裏付けがそれほどあるわけではなく、その商社や担当者個人の知見に基づくものも多い。明文化されたルールでないゆえに製造元にはなかなか理解されず、「なぜ日本で取り扱ってくれないのか」と交渉の過程で怒り出す海外メーカーもあるほどだ。

 今回は、海外ではOKだが国内ではNGとなりがちな、色や形状、さらに製品の特性について、海外製品でよくある典型的なパターンを見ていこう。なお、日本以外の国をひとくくりに扱っている以上、細かい点を見ていくと例外は少なからずある点は、あらかじめお断りしておく。

「縦置き」が想定されていない

 一般的に、日本国内では縦置きが可能なPC周辺機器のほうがよく売れる。具体的にはルーターやHDDがこれで、宣材写真では縦置きの写真をメインにしたほうが引きが明らかによい。横置きの写真がメインだと、必ず「縦置きでは使えないのか」という問い合わせが来るほどだ。

 なぜ縦置きが売れるのか。これは住宅事情による。つまり横置きにするほどのスペースがなく、縦置きの状態で棚に押し込むしかないというわけだ。こうしたことから、外付けの光学ドライブのような、縦置きにすることで騒音が増しかねない製品であっても、スタンドの付属を強いられるほどだが、この感覚は海外ではあまり理解されない。「なぜわざわざ光学ドライブを縦置きにするのか」と驚かれるほどだ。

 サードパーティーが海外ベンダーに製品のデザインを発注した場合も、この問題がよく起こる。複数のデザイン案が提示される中、縦置きが可能なデザインが皆無だったり、縦置き可能な筐体を条件にしたところ、縦は縦だが面積の広い側が正面を向くデザインが上がってくるといったケースだ。なぜ縦向きでなくてはいけないのか、その理由を説明しなかった発注側のミスだが、いずれにせよ国内ではまず考えにくい話だ。

 海外、主に欧米ではこうした周辺機器を棚の中に押し込むのではなく、スタイリッシュに見せようとする意識が少なからずあるが、対して国内はコンパクトに収納することが優先されるために、このような食い違いが起こる。デザインを見せることに関しては、Appleのように日本でも受け入れられているケースは皆無ではないが、Appleが日本で成功しているのはデザインにとどまらない複合的な理由によるもので、他の海外メーカーが「見せる」デザインを採用しても、全く受け入れられなかったりする。

ケーブル類がゴツい

 一般的に海外メーカーの製品はケーブルが太く、かつ硬い。これは電源ケーブルのほか、USBケーブルやLANケーブルなども同様だ。これは前述の縦置きの問題と同様で、海外では日本のように細く取り回しのよいケーブルが必要ではないという住宅事情と、原価が安くて済むという理由がある。

 ケーブルは単純なようで奥が深く、ノイズの干渉を防止するシールドや、折り曲げに強いヨリ線構造、また長期間使用してもベタつかない被覆など、日本製には他にマネのできないノウハウが多く存在する。レアなところでは、被覆の材質によってネズミなどの動物にかじられやすかったりそうでなかっとりという違いもある。

 これらをクリアし、かつ細く強靱(きょうじん)なケーブルを作れるのが国内メーカーの強みで、この辺りの工夫がないぶん量産効果も含めて安いのが海外メーカーの製品、ということになる。もっともこのことによって、ケーブルだけを買い替える市場が出来上がっていたりもするわけだが、それでも最低限の柔らかさがないと、ユーザーから不評を買う。

 なので例えばルーターなどをOEMで扱う場合も、本体は海外から仕入れるのに、ケーブル類だけは国内ベンダーから調達するというケースが発生する。海外から仕入れたほうが安価なのだが、太く硬いケーブルを添付すると、途端に「海外から買ってきて売っている製品」っぽくなってしまうので、やむなくそうしているというわけだ。

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