代替案を了承 医・住「一体型」と「併設型」
厚生労働省は15日、高齢者が長期入院する療養病床の一部廃止(2017年度末予定)に伴い、新たな施設創設の方針を決めた。住居と医療の機能を併せ持つ「一体型」と、住居の近くに医療機関がある「併設型」の2種類。療養病床を持つ医療機関からの移行を促す。新施設は療養病床よりも「住まい」の機能を重視し、日常的に医療や介護を受けながら暮らせる施設を想定している。同日の厚労省検討会で了承された。
療養病床の患者は一般病床に比べ医療的ケアの必要性が低く、入院しなくてもよいのに退院先の介護施設が見つからなかったり、家族が自宅で介護できなかったりして長期入院する高齢者が多い。厚労省は、療養病床のうち介護保険が適用される約6万床を17年度末で廃止する方針を決めた上で、退院先の受け皿作りを進めてきた。
一体型は「医療を受けられる介護施設」のイメージ。医師らが当直体制をとり、休日や夜間に容体が急変しても、すぐに診察を受けることができる。療養病床の患者の中でも医療の必要性が高く、容体急変のリスクのあるケースを想定している。併設型は容体の安定している患者向け。いずれも医師の日常的な診察や介護に加え、終末期には心身の苦痛を和らげる「みとり」のケアを受けることができ、最期まで暮らせる「住まい」を目指す。
厚労省が新たな施設を創設するのは、介護型療養病床廃止を促すためだ。厚労省は当初、11年度末で全廃し、既存の介護施設などに移行させる方針だった。しかし、移行は進まず、退院後に行き場を失う「介護難民」の大量発生が懸念され、廃止を「17年度末」に延期した経緯がある。
移行が進まない背景には、療養病床の患者に必要な医療が想定よりも高度で、既存の介護施設では十分に対応できない事情があった。また、医療機関側も移行に伴う費用や、転換後の経営不安などがあった。
新施設に対しては、従来の介護施設より、たん吸引など日常的な医学管理の機能の強化が求められる。療養生活が長期にわたることを踏まえ、プライバシーの尊重や、みとりやターミナルケアも実施できる機能を持たせることとした。医療機関からの移行が進むよう既存施設の有効活用も考慮することとした。
具体的な制度設計については、今年度末から同省の社会保障審議会で検討。17年の通常国会への関連法案提出を目指す。【細川貴代】
療養病床
長期療養が必要な患者のための病床。医療保険が適用される「医療型」(27.7万床)と、介護保険を使う「介護型」(6.3万床)がある。利用者はともに75歳以上の人が大半を占める。厚労省は医療費削減のために、全ての「介護型」と、「医療型」の一部を2017年度末で廃止する予定で、廃止後の高齢者の受け皿が課題となっている。