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『WIRED』VOL.20
 
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「スネイプ先生」がSF映画で示した役者の矜持

アラン・リックマン。映画「ハリー・ポッター」シリーズのセブルス・スネイプ役で広く知られる彼は、出演した映画のなかに独特の存在感を残し、69歳で亡くなった。

 
 
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TEXT BY K.M. MCFARLAND

WIRED NEWS (US)

catwalker / Shutterstock.com

デヴィッド・ボウイの死は、世界に長い影を落とした。そして、まだ明るくはならないようだ。映画『ダイ・ハード』(1988)や「ハリー・ポッター」シリーズで知られる英国人俳優アラン・リックマンが癌との闘病の末、69歳でこの世を去った。

リックマンは、ロイヤル・シェークスピア・カンパニー、ロイヤル・コート劇場で舞台俳優としてのキャリアをスタートさせ、「Les Liaisons Dangereuses(危険な関係)」での演技でトニー賞とドラマ・デスク・アワードにノミネートされた。『ダイ・ハード』のハンス・グルーバー役で米国で広く知られるようなったが、人気を博すことになったSF/ファンタジー映画2作品において演じた重要な役によって、人々の記憶に残っていくだろう。

ハリー・ポッター。J・K・ローリングによる小説とその映画で育った世代にとって、彼は永遠に、陰気で悪意に溢れていて悲劇的な最期を迎えるホグワーツの教師、セブルス・スネイプとなるだろう。

真偽のほどは不確かだが、プロデューサーたちは当初、その役をティム・ロスに演じてもらおうとしていたそうだ(しかし、ロスはティム・バートンによる「猿の惑星」のリメイク作品で特殊メイクを施した悪役ボスになる道を選んだ)。

だが、いまとなっては、あの黒装束の姿で、“選ばれし者”ハリー・ポッターへの嫉妬に狂い、毒が込められた言葉を放つ役には、リックマン以外に考えられない。エマ・ワトソンやデヴィッド・セウリス、マギー・スミスやジョン・ハートなど、ほぼすべての有名英国人俳優に声をかけたと思われる脇役たちが登場するこのシリーズで、リックマンは際立って目立っていた。

映画監督や脚本家が本に対して行う変更を不満に思う「原作主義者」はいくらもいるが、リックマンの役づくりに対して欠点を見つける者はいない。

SFに関しては、風刺ものの傑作『ギャラクシー・クエスト』(1999)で最高の役を演じた。「スタートレック」のパロディ映画のなかでも最高の出来で、同シリーズの大部分よりも、実は優れた作品だ。

故レナード・ニモイ(言わずと知れた「スタートレック」のミスター・スポック役)の“代役”であるアレクサンダー・デーンとして、リックマンは知的なエイリアン、ドクター・ラザルス役を演じる元舞台俳優を演じている。

劇中のデーンが銀河同士の陰謀に渋々従うシーンは、スケプティックな観客が映画にのめり込んでいく過程を反映しているようで、リックマンのもつコメディーの才能にぴったり合っていた。その演技は、スポックを演じて以降、ニモイにまとわりついたポップ・カルチャーの苦境を表現すると同時に、多くの笑いを取ることもできたのだから。

リックマンは、『ロビン・フッド』や『スウィーニー・トッド』、『いつか晴れた日に』、『ラブ・アクチュアリー』などでの演技も、多くの称賛を集めた。しかし、「ハリー・ポッター」シリーズと『ギャラクシー・クエスト』での役柄こそ、映画俳優としての彼の能力を最もよく表現している。

彼の才能は非凡だった。その真面目かつ風刺的な態度は、大きな力のなかにあっても、独特な鋭い切れ味を一度だって失うことはなかったのだ。

※この翻訳は抄訳です
 
 
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