九州電力が「川内原子力発電所」の1・2号機を相次いで再稼働させたのに続いて、関西電力の「高浜発電所」の3・4号機と四国電力の「伊方発電所」の3号機も国の原子力規制委員会による適合性審査を通過して、2016年内の早い時期に再稼働する見通しだ。このほかにも21基の原子力発電設備に対して適合性審査の申請が出ている(図1)。
中でも関西電力は合計7基の審査を申請済みだ。すべての設備が稼働すると発電能力は659万kW(キロワット)に達する。管内の電力需要は2015年の最大が2556万kWで、そのうち25%に相当する発電能力になる。需要が小さくなるゴールデンウイークの期間中には50%を超えて、原子力発電の依存度が非常に高くなる可能性がある。だが、このまま再稼働が順調に進んでいく状況にはない。
関西電力の原子力発電所が集まる福井県に隣接する滋賀県では、安全性と安定稼働に対する不安から県知事の直轄組織を中心に対策に乗り出した。原子力に依存しない社会の早期実現を目指して、「しがエネルギービジョン」を策定中だ(図2)。2030年度までに再生可能エネルギーなどによる電力の自給率を県全体で30%以上に高めて、関西電力から供給を受ける電力を減らしていく。
東日本大震災後に電気料金を2回も値上げしたために、関西電力の顧客離れが加速している。4月に始まる小売の全面自由化で家庭の利用者の離脱も想定される。関西電力は燃料費を削減するために原子力発電所の再稼働を急ぐが、放射能汚染のリスクを危惧する自治体や市民の反発を招くことは必至だ。たとえ電気料金を値下げできたとしても、いったん離れた顧客が戻ってくる保証はない。
滋賀県が策定中のエネルギービジョンでは、原子力発電設備が運転開始から40年で原則廃止になることを前提に、2033年に関西電力の原子力発電がゼロになると予測する。国全体でも原子力発電所の設備容量は2030年の時点で半分以下になり、新設や増設が認められなければ2049年に原子力発電はなくなる(図3)。
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