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 派手な金ピカのカラーリングに、大きくせり出したオーバーフェンダー。低い車高に、ワインレッドのチンチラを敷きつめた内装――。まるで昭和時代の暴走族がタイムスリップしてきたような「族車」が、千葉・幕張メッセで15日に始まった改造車の祭典「東京オートサロン」に出展された。作ったのは専門学校生の若者たち。当時の不良スタイルを再現しつつ、車検を取得して公道を走ることができる、「極めてマジメ」な卒業制作だった。

 名付けて「若馬(わかば)」。「若い馬鹿どもの集大成」と自嘲しながら、日本自動車大学校(千葉県成田市)の学生6人が昨年夏から制作に取り組んだ。ベースにした車は、80年代前半に売られていた日産自動車のブルーバード(910型)。鹿児島県内の中古車店が売り出しているのをネットで見つけ、約8万円で購入。輸送に10万円ほどかかったという。パーツ代も含めて制作費100万円以内、という学校側の課題をクリアした。

 インテリアには、族車の定番だったワインレッドのチンチラ生地をあしらう。内装を全部はがして、シートやフロアマット、ドアの内張を総チンチラ仕上げにするこだわりようだ。車名にかけて、たばこの「わかば」の箱や吸い殻が添えられる。全席に灰皿が用意され、分煙意識も乏しい時代ならではの小道具だ。

 外装、内装とも、制作した二十歳前後の若者たちは当時の写真でしか見たことのないような古いテイスト。その過剰な造形が、「すごいインパクト」に感じたという。

 とはいえ、細部を見ると、ところどころに今風のエッセンスを取り入れている。オーバーフェンダーが切り壊しになっていたり、リアバンパー下に羽根状の出っ張りがあったりするのは、ここ最近の空力を考慮したレーシングカー特有の造形だ。ヘッドライトはLED照明。給油口はSNSの吹き出しコメント形状に加工され、ジョークっぽく「LINE」と描かれている。スマホ世代ならではの時空を超えた演出だ。

 こだわったのは、きちんと車検を受けて、合法的な改造にとどめることだった。

 とんがっているウィング類は角を丸めて、バンパーよりも長さがはみ出ない大きさに調整。オーバーフェンダーは、荒れた路面を走ってもタイヤがこすって破損しないように、鉄板を曲げて取り付け、強度を保っている。「ルールを守りながら、見た人に懐かしさとインパクトを感じてもらいたい」との思いからだ。

 給油してナンバーを付ければ公道を走れる「マジメな族車」。制作メンバーは実際にこの車に乗り、3月に卒業旅行するのだという。違法改造と誤認したパトカーに止められたら? 内装を担当した小堀翔太さん(21)は「『車検証見せて』とお巡りさんに言われたら、ドヤ顔で見せたいです」と、いたずらっぽく笑った。(北林慎也)