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西成は好況、山谷は不況!?
現場取材で見えた景気の現実

秋山謙一郎
2016年1月15日
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山谷の景況感は西成と正反対
「とても好景気とは思えねえよ」

山谷の労働者のブルーシート内の様子 Photo by Kenichiro Akiyama

 南千住駅南口から歩くこと数分、「涙目橋」を超え、「マンモス交番」と呼ばれる日本堤交番を東側に行けば、そこに労働者やホームレスが集う場として知られる公園がある。ここからは東京の新名所、「東京スカイツリー」が望める。西成から見える「あべのハルカス」を思い起こさせる。

 「仕事? 滅多にないね。アブレ手当*1を貰える人でも、ほとんど仕事はないと聞くよ。実際、俺たちもいつ仕事に出てもいいように準備はしているけれど声はかからないね」

 今年60歳になるというホームレスの日雇い労働者男性は語る。ホームレスといっても、その根城であるブルーシート内は自家発電機を完備。パソコンも使えばテレビも見られる。仕事先からの連絡をいつでも受けられるようにスマホも持つ。仕事道具の電動ドリル、ドライバーの整備を欠かさず作業服のアイロンも怠らない。近くの銭湯で汗も流す。

 西成では、手に職のある職工はその多くが「ドヤ」と呼ばれる木賃宿、簡易宿泊所や月額家賃3万5000円から3万9000円程度の「福祉アパート」に住む。対してここ東京・山谷では、職工でも住まいを持たない。いつでも全国の現場に赴けるよう、常日頃から身軽であるほうが都合がいいからだという。だが仕事先と連絡がつくという点においては自宅を持つ者と何ら遜色ない。西成の日雇い労働者たちと大きく異なるところだ。西成のホームレスにはスマホや携帯電話を持つ者は極めて少ない。

 「雑工や土工をしている人はもっと深刻だと思うぜ。西成のほうがずっとましだと聞くよ。仕事には恵まれていると言うね」

 公園に住むホームレスの人たちは異口同音にこう語る。そこで雑工や土工と呼ばれる仕事に就く人が集まることで知られる「公共職業安定所上野玉姫労働出張所(ハローワーク)」に足を運んでみた。

 「ただ寝ているだけだよ。何も仕事がない。世間では好景気というけど嘘だね。とても好景気とは思えねえよ」

 東北出身で現在62歳だという労働者は、昨今の日雇い労働者市場の冷え込みをこう嘆く。昨年11月の1ヵ月で見ると、この労働者が仕事にありついたのはわずか7日に過ぎない。その間、金があれば1泊1700円の簡易宿泊所で寝泊まりしたが、ほとんどは“アオカン”と呼ばれる野宿で過ごした。持ち物は下着と3着ある作業服、そして布団だ。もちろん、預貯金など一切ない。

*1:日雇労働被保険者手帳(通称・白手帳)を持つ労働者が、就業できなかった場合、就業できなかった日に属する月の直前2ヵ月の間、通算26日分以上の雇用保険印紙保険料の納付日数に応じて1ヵ月間に最低13日から最高17日分まで「日雇労働求職者給付金(アブレ手当)」が支給される。その額は第1級給付金7500円、第2級給付金6200円、第3級給付金4100円となっている。

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