川口市のはずれの小さな工場地域。
ここに一度は倒産しながら復活を遂げた町工場があります。
工場を率いるのはその無骨な手に刻まれているのは職人として歩んできた彼の歴史。
その手で長年作ってきたものは…。
こっちが前こっちが後ろ。
軽い。
飛行機はね…。
飛行機に求められる軽さと精度。
その技術を活かしてこの工場では新たな商品を生み出しました。
ディスプレーされていたのは東京青山のセレクトショップ。
軽量化の穴精密なアルミ加工。
工場の技術をそのまま形にしたブランドさまざまな革と組み合わせたスタイリッシュな名刺ケースやカバン。
飛行機の部品同様とにかく軽くて丈夫。
そんな菅野さんが生み出したブランドは今多くの人を魅了しているのです。
ちょっと言いすぎかなと思うんですけどでも私はそこがすごい気に入ってます。
その人気は日本だけにとどまらずあのミラノコレクションにも使われたほど。
今や世界から注目される男。
しかし20年前彼はどん底にいました。
バブル崩壊後多額の負債を抱え3代続いた工場は倒産。
その町工場をどうやって復活させエアロコンセプトにたどり着いたのか?そんな小さな町工場に突如舞い込んだオーダーは世界的ロックスターに贈るギターケース。
しかしその新たな試みは問題山積み。
そこには9か月におよぶ職人の汗がありました。
うだるような暑さの去年8月。
おはようございます。
菅野さんはとびっきりの笑顔で現れました。
甲子園行けないからさテレビ見て応援してた。
夏の甲子園の母校の勝利。
上機嫌のなか撮影は始まりました。
菅野さんの工場は精密板金加工の町工場。
平均年齢54歳8名の職人が昔ながらの手作業で製品を作っています。
年齢を伺うと…。
おいくつですか?37で。
いつもそう答えるこの道60年の大ベテラン。
担当は飛行機部品のアルミ板の加工。
機械を使って直角に折り曲げます。
しかし作業はそんな単純なものじゃない。
天気や湿度気温によって曲がる角度が微妙に変わるアルミ。
90度見て試し曲げっていって曲げるところ。
機械で加工しては目で確かめる。
それを何度も繰り返すのは飛行機部品ならではの理由がありました。
これとこれをこう合わせるとここでここからここまで柔らかいアルミの板は正確に90度に曲げなければ隙間ができ強度が落ちてしまうのです。
求められる精度はなんと100分のミリ単位。
更に飛行機の部品に欠かせないのがこの無数にあけられた穴。
軽い。
これもやっぱり穴があいてるんですね。
飛行機はねその飛行機部品の技術をベースに作られたのがエアロコンセプトの商品です。
菅野さんが描くエアロコンセプトの設計図もすべて飛行機の構造体をヒントにしたもの。
店舗で購入する以外にサイズや革の色など自由に組み合わせられるオーダーメイドもありこれがまた人気の秘密でもあるのです。
熟練の職人の技術と経験から生み出されたアタッシュケースは飛行機部品と同じレベルの軽さと丈夫さを誇ります。
しかしそれはさまざまな用途で使えるカバンではありません。
そこにこそ菅野さんの信念があるのです。
最後の組み立てはね…。
この日カバンをオーダーしたお客さんが商品を受け取りに工場にやってきました。
その仕上がりを見るなり…。
うわぁすごいなこれは。
通常よりかなり大きなアタッシュケース。
実はこれプレゼン用のA2サイズの資料などを折り曲げずに収められるカバンだったのです。
いいですか持って。
嬉しいな!お客さんに折り目のないきれいな資料を届けて喜んでもらいたい。
そんな思いで作ったカバン。
似合うね。
これいいですよね。
たくさん物は入らないけれどたった一つの物を大切にする気持を入れてほしい。
菅野さんのカバンにはそんな思いが込められているのです。
喜んでくれたね。
たまの休日家族と一緒に過ごす菅野さんの姿がありました。
えっ違う…。
結婚35年目の奥さんと2人の娘さんの4人家族。
更に…。
1人増えるね。
そうなんです…。
年末に増えます…。
女の子。
女の子。
おじいちゃん…。
おじいちゃんだよ。
放送される頃におじいちゃん。
孫の誕生に目を細めるよきお父さん。
しかし奥さんから見れば…。
想像にお任せします。
家庭を顧みず仕事ひと筋。
しかし菅野さんはそうせざるをえなかったのです。
工場は14年前までこの麻布にありました。
よそうよ。
彼が6歳のとき祖父が立ち上げたのが菅野製作所。
2代目の父に続いて3代目となったのは40歳のときでした。
しかしその2年後…。
うんどうしようもない。
どうしようもないね。
すべてを失った菅野さんしかしただひとつ残ったのが工場で働く職人たち。
倒産したとき誰1人工場を離れようとはしませんでした。
川口に移り借地の工場で飛行機部品を細々と作る日々のなか菅野さんを救ったのはその技術をベースにした自分用のカバンでした。
これが行く先々で話題となりオーダーが急増。
工場再建の突破口となったのです。
生まれなかったかもしれないね。
生まれてなかったかもしれないね。
今思うことただ一つ。
仕事の合間の息抜きでしょうか。
5曲目が有名なの?セットしたCDから聴こえてきたのは…。
〜あっこれ聴いたことある。
聴いたことある。
CD売り上げ1億5,000万枚を誇るロックバンドなんと世界的ロックバンドエアロスミスのギタリストジョー・ペリーに贈るギターケースを作ることになったのです。
この日菅野さんはある人を訪ねました。
金属を叩いて加工する鍛金という技術で国展で賞を受賞するほどのアーティストです。
菅野さん彼にギターケースを一緒に作りたいと持ちかけました。
デザインに取りかかったのは…。
従来のエアロコンセプトとは違った曲線。
そして凹凸のある形状。
今回のギターケースはエアロコンセプトが作る寸法精度の高いフレームに冨森さんの鍛金技術で作る曲線のボディーを組み合わせるという菅野さんにとって初めての試みです。
いよいよギターケースのボディー作りが始まりました。
金属を何度も叩き菅野さんのデザインを形にしていきます。
一方菅野さんの工場でも熟練の職人たちを筆頭にそのボディーをつなぐフレーム作りに追われていました。
エアロコンセプトの象徴軽量化の穴が開けられたフレーム。
ここに冨森さんが作る曲線のボディーがどう収まるのか。
菅野さんのデザインをもとに冨森さんの作ったボディーがようやく工場に届きました。
いよいよそのボディーと菅野さんたちが作ったフレームを組み合わせる作業が始まります。
しかし相手は設計図などない自由なアーティストの作品。
それを考慮したはずのフレームなのに思いもよらない問題が発生したのです。
精密な加工を行ってきた菅野さんにとって初めての経験。
大きな壁にぶつかりました。
ねじれが発覚したギターケース。
ベテラン職人とともに214箇所とめたネジをすべて外し一から調整し直します。
複雑な形状の本体に引っ張られ相当の負荷がかかりフレームがゆがんでしまったのです。
ボディーを調整するため冨森さんも駆けつけました。
どうすればボディーとフレームがぴたりと合うのか。
100分のミリ単位を見極める町工場の職人。
金属を紙のように自由に描くアーティスト。
真逆にあるはずの互いのプロたちの技。
それを一つにするために菅野さんは戦っていました。
しかし…。
ギターケース製作が佳境を迎えているにもかかわらず菅野さん1人工場を離れ山へとやってきました。
よっこいしょ。
煮詰まったときのここがいつもの指定席。
原点というかね…。
追い込まれるほど確認したくなる。
自分の存在なんてちっぽけなもの。
だからこそまだまだ可能性があるのだと。
何度もボディーとフレームを調整し蓋のしまり具合を確認しながら一つひとつとめていく214本のネジ。
残りあと数本まできたところで…。
もっと自由になったね音が。
そしてこれが最後の1本。
6か月に及ぶ戦いの結果は…。
職人とアーティストがひとつになった瞬間です。
菅野さんの手にすべての作業を終えたあのギターケースがありました。
その中には今か今かと首を長くして待っていたギターがおさめられていました。
鍛金という手法で描かれたエアロコンセプトならではの軽量化の穴。
アーティストと板金職人。
日本が誇る互いの技術があってこそ誕生した世界でただ1つのギターケースです。
海の向こうのジョー・ペリーさんへ。
ギターケースとともに届けたいのはそんな思い。
思いを形にするあなたのものづくりを応援します。
2016/01/09(土) 22:30〜23:00
テレビ大阪1
クロスロード【菅野敬一/精密板金加工職人】[字]
職人気質溢れる真摯なモノづくりで世界中から注文が殺到している、精密板金加工の技術をもつ町工場「渓水」の社長であり職人の菅野敬一に密着。
詳細情報
出演者
【ナビゲーター】
原田泰造
番組内容
埼玉県川口市に一度は倒産という憂き目にあいながらも復活を遂げた町工場がある。その工場の主力商品は「エアロコンセプト」というブランド。精密板金加工の技術をもつ町工場「渓水」の社長で職人の菅野敬一が生み出した。そんな菅野に新しいオーダーが届いた。それはロックバンド「エアロスミス」のギターリスト、ジョー・ペリー氏へ贈るギターケースの製作。それは手作業でつくる「世界に一つだけのギターケース」だった。
番組概要
様々な分野で活躍する、毎回一人(一組)の“挑戦し続ける人”を紹介。彼らが新たなる挑戦に取り組む今の姿を追う。挑戦のきっかけになったもの、大切な人との出会い、成功、挫折、それを乗り越える発想のヒントは何からつかんだのか?そして、彼らのゴールとは?新たにどこへ向かおうとしているのか…。そんなクロスロード(人生の重大な岐路)に着目し、チャレンジし続ける人を応援する“応援ドキュメンタリー”。
音楽
【エンディングテーマ】
「youth」竹原ピストル
(JVCケンウッド・ビクターエンタテインメント)
ホームページ
http://www.tv-tokyo.co.jp/official/crossroad/
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – その他
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