林家正蔵の演芸図鑑「山田洋次、マギー司郎、春風亭一朝」 2016.01.10


おはようございます。
「演芸図鑑」のお時間です。
今日からは私林家正蔵がご案内役を務めます。
どうぞよろしくお願い致します。
さて皆さんどうなんでしょう。
近頃あまりね若い方がことわざというものを使わなくなった。
そんなような気が致しますね。
いいことわざはたくさんあるんですけれどもね是非とも会話の中に入れて頂くとその会話が1つも2つも実のあるものになるんじゃないかなっていう気が致します。
そこであまり使われていないことわざをご披露しましょう。
落語の中でよく出てくるのは…これ「たらちね」なんかでも出てきますね。
え〜隠居さんのところに八っつぁんが来て「よそにおかみさんを持て。
所帯を持て」という事を勧めます。
どうなんでしょう。
やはりね信用というものもつきますし所帯は持った方がいいなあとは思いますけれども実際私の友人の中でも二人口になっても食えないなって友人が多いかな。
要するに相手次第かもしれません。
さて今日の演芸のご案内を致しましょう。
本日の出演者まずはマジックです。
マギー司郎先生。
もうねこのしゃべりといい語りはたまりませんね。
そして落語。
江戸前のいい話を聞いて頂きましょう。
春風亭一朝師匠の高座です。
それではお楽しみ下さい。

(拍手)すいません。
いやいやいやいや。
よろしくお願いします。
あの〜あ〜ありがとうございます。
本物です。
(笑い)今日はちゃんとしたやつ見て頂きます。
何ですか?それ。
ふだんちゃんとしてないみたいじゃないですか。
ちゃんとしてるんです。
ね。
こうでしょ?こういうハンカチね。
これにマグカップね。
これハンカチをマグカップにこう掛けます。
よいしょ。
これがもし消えたらすごいじゃないですか。
ちゃんとしてるじゃないですか。
いきますよ。
ワンツースリーと。
ほら。
すごいじゃんほら。
(拍手)いや〜もうちゃんとしてるんですから本当に。
ね。
(笑い)ちゃんとしてるじゃないですか。
じゃあ次はですねえ〜こういうのがあるんですけど何か葉っぱだけっていうのは寂しいじゃないですか。
これねお客様の好きな色の花がこう咲くってのができるんです。
これはもうこの時間帯じゃないとできませんからね。
じゃあ一番前の奥様。
ね。
好きな色言って下さい。
それがこう咲きますから。
何がいいですか?黄色。
黄色。
黄色休みなの。
(笑い)黄色って元気ないと休みなの。
黄色以外だったら何でもいいですよ。
水色?水色?水色ってさ若い人言わないよね。
水色って普通何て言うの?ブルーですか。
ブルーでしょう普通は。
「ブルー」って言えばねブルーの花が咲いたんですけどねそういうのはやってないんです。
(笑い)じゃあこちらのおかあさん。
ブルーは駄目だからね。
それ以外だったらほとんど大丈夫。
ピンク。
ピンク。
ピンクどう?そんな事言ってると「また先月で終わった」とかって言われる。
「何よ」と言われるからね。
1つの枝の中からいろんな色の花が咲くっていうそういうのってないもんね。
手品はねそれができるんですよ。
これに花がバッと咲いたら後ろの方ボ〜ッとしてる方拍手をすると元気になりますから。
いいですか?まだ咲いてませんからね。
じゃあいくよ。
ジャンジャンジャン。
お〜。
ほら。
(拍手)ね。
もうほらすごいじゃない。
よく出来てるのよこれは。
じゃあ次はですねいろいろあるんですけどここにねこういうのもあるんですよ。
こっちが表。
(笑い)やる前からその…。
(笑い)何かしまいたくなっちゃうじゃんそうしたら。
こっちが表だよ。
こっち裏。
縦じま。
ね。
この縦じまのハンカチをですね手の中に入れて軽くもむんです。
そうするとこれが一瞬にして横じまになるという。
ね。
(拍手)ありがとうございます。
でもあの…これで何で拍手して頂けるかっていうのが分からないんです僕。
だから同じぐらいの何か歓声なんでしょうね多分ね。
じゃあ次はですねここでもうちゃんとしたやつやらないとね駄目ですよね。
これ手品用の半紙。
艶が違うのよ。
もう全然違うよ。
ほら。
ね。
もうどこが違うかっていうとねこれ真ん中からちぎるとね音がするのよ。
破いた。
本当に。
ほら。
(破く音)ほら。
ここが違うんですよ。
手品用の半紙を破くとこういう音がするの。
ほら。
(破く音)すごいでしょ?え?すごくない?まだすごくないかも分かんない。
もうちょっと。
(破く音)ほら。
間違いなく破きました。
これぐらい破くと破いたよねっての分かりますよね。
でこれねコツがあるんですけど真ん中辺から折るんですこう。
で…拾ってくれる?悪いね。
本当。
ね。
こういう感じで。
これね「拾ってくれる?」って言わないとね僕の弟子たちは拾ってくれないの。
本当に大変だよ。
これをね丸めていくんです。
こういうふうに。
間違いなく破きましたよね?丸めていって手の中に入れて軽くもむの。
そうするとねこの破いた紙が手品用の紙がなんとつながらないってのは知ってますよね?
(笑い)つながらないんです。
じゃあこの辺でねもう決めますから。
最後やっぱり手品師っていったらトランプですよね。
トランプの手品でバッと決めないとね。
こうでしょ?ほら。
ね。
普通にバラバラですから。
何となく。
ね。
それではどなたがいいでしょうかね。
「ストップ」って言いたい人っています?参加したいっていう人。
あ〜じゃあそちらの方ね。
ああいう人まずいんだよね結構ね。
変なストップって言い方しちゃ駄目よ。
お願いしますね。
演芸ってお互いに努力しないと駄目なの。
本当ですよ。
こうやりますからストップね。
…あれ?大きい声で言わなきゃ駄目。
速くて…。
なにわがまま言ってんの。
(笑い)「速くて」って何よそれ。
だからさっき言ったじゃん。
「努力しなきゃ駄目」だって。
いきますよ。
(女性)ストップ。
ここね。
じゃあこの辺。
これだよ。
僕分かりませんからこれ。
ちょっと持って皆さんによく覚えてもらって下さい。
皆さんよく覚えて下さいね。
しっかり見て。
大丈夫?僕の前来なきゃ駄目じゃない。
来過ぎだよ。
じゃあこれ僕見てませんのでこれ当てればいいですもんね。
じゃあはい。
ここに入れて。
ちゃんと。
よし。
これでまぜちゃいますから。
(笑い)「アハハ」じゃないから。
まぜちゃったら分かんないでしょこれ。
あの…何で笑ってるか気持ち分かるんですよ。
大きさ違うじゃんって。
手品師はね大きさとか色で当ててませんから。
技術で当てますから。
こうやってほら。
ね。
すごく不満そうですもんね。
分かりました。
分かりました。
「ストップ」って言ってくれた方が本当にね不満そうだもんね。
今の冗談だからね。
こうやってねここにさっきの残りあってまぜちゃいますよ。
これでもう分かんないでしょ?これで。
実はねトランプの手品で締めようと思ったんですけどね僕本当にね手品師で一番不器用なんですよ。
トランプの手品なんて自分でやっても当たんないのでえっとねこれ。
ね。
スケッチブックがあるんですけどここにねちょっと隠れてるんですけどねこれ…これ何?これは。
カメレオンですね。
カメレオン。
久しぶりでしょ?カメレオンが当てるんです。
今お客さんが「ストップ」言ってくれたトランプを。
ここにこう入れちゃいますから。
バラバラに。
まあこんな感じかね。
はい。
こうやって。
これでパラパラッとやるとカメレオンって舌がピュ〜ッて出てくるじゃないですか。
これで当てますから。
ほらほらほら。
おっすごくない?この辺まで来るとあっAか10だな。
どっちか。
おっ。
もし途中でも拍手しても全然困りませんから。
ほら!これ?大丈夫?
(拍手と歓声)おっおっほら。
うわ。
うわ〜。
これですかね。
はい大成功〜!
(拍手)ありがとうございますどうも。
(拍手)
(拍手)
(拍手)ご来場で御礼を申し上げます。
春風亭一朝でございます。
名前が一朝でございますので今日は一生懸命
(一朝懸命)にやりますのでどうぞひとつよろしくお願いを致します。
(拍手)ありがとうございます。
のんきな商売でございます。
まあ落語というね何だか訳の分かんない商売でございますけれども。
お芝居というのがございますね。
お芝居。
昔は大変にこのお芝居というのがはやったんだそうですね。
今芝居といいますと歌舞伎座演舞場それから国立そんなもんしかないですね。
昔はもういくらもあったんですよ。
昔木挽町に山村座という大きな芝居小屋がありましてねそこが今日みたいにいっぱいのお客様大入り満員。
昔はねお膝送りってするのお膝送り。
これはどういうものかというとお客様をね前へ詰めちゃう。
今は駄目ですよ。
椅子ですからね。
昔は全部桟敷ですから。
ですからどんどんどんどん前へ詰めちゃう。
後ろが空きます。
そこへ新しいお客様を入れると同時に半畳改めというものをするんです。
半畳改め。
これはどういうものかというとつまりお客様が木戸銭つまり入場料を払って中へ入ると名入りの小さな座布団を貸してくれます。
我々が敷いてるこんな大きな座布団じゃないですよ。
こんなもんです。
つまりこれが半券代わりになる。
この座布団を敷いて見物をしているお客様がつまり正規のルートで入ってきたお客様。
ところが中には伝法というのがいる。
伝法。
これはどういうものかというと顔パスで入ってきちゃったりね楽屋口から入っちゃうのいるんですよ。
こういうのを伝法といいましてねお客様がいっぱいの時には遠慮して立ってもらうかあるいは出てってもらうような訳でねお膝送りをすると同時に半畳改めというものを致します。
「はいどうもお客様。
ありがとう存じます。
今日はこのとおりいっぱいでございます。
まことに恐れ入りますがお膝送りをお願い…あっどうもいつもすいませんねありがとうございます。
お膝送り。
どうもいつもすいませんね。
お膝送り。
はいありがとうございます」。
お膝送りをお願い致します。
花道の七三までやって来る年頃23〜24。
唐桟の着物を着て同じく唐桟地のはんてんを着て頭へ手拭いを載っけて天井の天幕をジ〜ッと見ているいなせな男がおりましてね。
「にいさんすいませんねちょいとお膝送りをお願いします。
にいさんお膝…。
あら?にいさんどうしました?え?半畳敷いてませんね。
えっと誰かに貸しちゃったんですか?それともはなからねえんですか?」。
「はなからねえんだよ。
腰が突っ張らがってしょうがねえんだこの野郎本当に。
5〜6枚持ってこい!5〜6枚!」。
「何だこの野郎えばってやがる。
ちょいと悪いけどよ伝法の人は出てっつくれ」。
「何をこの野郎!」。
「この野郎。
忙しいんだからどけ!」。
「あってめえ何しやがった。
客を突きやがったなこの野郎!こっち来い!」。
「痛え!痛え。
てめえやりやがったな。
何だこの野郎…」「何…」。
「ばか野郎!お客様が大勢いる中でお客様と喧嘩すんじゃないよ!」。
「客じゃない客じゃない。
伝法伝法」。
「何を?伝法?この忙しいさなかに伝法なんぞ入れやがって。
よし!構う事はねえ。
はり倒せ!」。
芝居者がやって来るってえと若いのみんなでもってはり倒しちゃった。
殴られた方は怒りましたよ。
「この野郎畜生!何が伝法だ!俺はちゃんとな銭を払って見に来てるんでい!それが証拠にあそこ見ろ!お茶子が半畳持ってうろうろしてんだろ。
あれはな俺を捜してるんだこの野郎。
てめえの方でドジをしやがって。
おう!おうおうおうおうおう!俺を一体誰だと思ってやんでい!幡随院長兵衛の子分でもってな雷の重五郎ってもんだ!こんなまねされてな俺はもう親分に合わせる顔はねえ。
どうにでもしやがれ!殺しやがれ畜生!」。
「フフフ…。
ちょっと喧嘩喧嘩。
喧嘩が始まった。
うわ〜いいな〜。
この幕あいが長くて退屈してたんだけど面白えのが始まっちゃったねおいこれ芝居者が悪いよ。
だってさ銭を払った客みんなではり倒しちゃった。
ねえ。
第一名前がすごい名前。
聞いたかよ?え?雷の重五郎だってよ。
なあ!雷は怖いねえ」。
「なるほど」。
(笑い)「見ろばか野郎本当に。
お前がいきなり小ばなしなんかやるから一瞬客席が凍りついちゃったじぇねえか」。
今の小ばなし入れたんですよ。
まだ首をかしげてる方が何人かいらっしゃるようで。
その「分からないよ」というお客様だけのためにただいまよりリピートをさせて頂く。
よ〜く聞いて下さい。
よろしいですか?「雷は怖いねえ」「なる
(鳴る)ほど」。
やっぱよせばよかったな。
(拍手)わ〜わ〜わ〜わ〜やっている。
東の桟敷を借り切っておりましたのが四谷六方白柄組。
ご存じ水野十郎左衛門の一党でございます。
この四天王の一人金時金兵衛という侍がトントントントン。
下りてくる。
大の字になって寝ている雷の重五郎をつかみ上げるってえと横っ面はり倒した。
「ばか野郎!何しやがんでい!」。
「黙れ!無礼者めが!人様が大金かけているこの興行を邪魔をせいと言われて来たが拙者を一体誰だと思う?水野十郎左衛門四天王の一人金時金兵衛と申す者だ。
貴様のようなひよっこが話になるか。
幡随院長兵衛を連れてこい!長兵衛なら相手になってやる。
さあこっちへ来い」。
ズルズルズルズル引っ張ってかれるってえと鼠木戸からおととい来いとばかりにド〜ンと突き出された。
「畜生。
やりやがったなこの野郎。
てめえ水野の家来だな。
覚えてろ畜生!」。
「強い!強い!見た?今の。
え?あの金時という侍が出てきたら雷が消えていなくなっちゃった。
すごいね。
あれ何かね金時という侍が強えのかな?それとも雷の方で油断をしたのかな?」。
「うん。
金時だけに甘く見たんじゃねえか?」。
(笑い)
(拍手)まあまあまあまあまあ。
「この金時金兵衛が出てくれば幡随院長兵衛なぞひねり殺してくれる。
もっともあんなふぬけが来られる訳がないがな」と言っております脇をス〜ッと立ち上がった町人風の大きな男これがいきなり金時金兵衛の横っ面をバコ〜ン!はり倒しちゃった。
首根っこをグッと押さえつける。
「やいこの野郎!」。
「今何つった?親分に何つった?俺は唐犬権兵衛って生き仏だ。
てめえじゃ話にならねえ。
おう水野!てめえが相手だ!てめえが下りてきやがれ畜生」。
「ハハハ…。
ますます大きくなっちゃったよ。
今度は金時がひっくり返されちゃったよ。
あの唐犬ってのが出てきた。
すごいね。
今度はあの唐犬って人をひっくり返す人が出てくるかしらね?」。
「さあ検討
(犬唐)がつきません」。
(拍手と笑い)もうやりませんから大丈夫大丈夫。
そのうちにやはり四天王の一人渡辺綱右衛門という侍がこの唐犬権兵衛の後ろへ回る。
「町人そこを動くなよ」。
「あれ?おいちょっと見ろ。
嫌なやつだな。
あいつあの人後ろから斬っちゃったんだぞ。
大丈夫かな?」。
言っておりますってえと客席の真ん中でほっかぶりをした男がヌ〜ッと立ち上がるってえと「にいさんすいません。
ちょいとごめんね。
ちょいとごめんね。
ちょいとごめんね。
ス〜ッと出てきて今まさに刀を抜こうとしたところを後ろから鞘ごとエイッと突いたもんですから鞘ごと刀が抜けちゃった。
「あら?」。
後ろを振り向くところ横っ面をバコ〜ン!ゴロゴロッと転がっていくところを足でもってグッと踏んづけると「やいっこの野郎!汚えまねをするな!俺を一体誰だと思ってやんでい。
幡随院長兵衛の子分でもってな浮世は夢の50年夢と悟った市郎兵衛面ぁ見知ってぇもれえてぇ〜!」。
(拍手)「音羽屋!フフフ…。
いい役者」。
「違うよおい。
あれ本物の喧嘩だよ」。
さあ怒ったのが水野十郎左衛門の一党でございます。
水野十郎左衛門筆頭にして近藤登之助大久保典膳大久保彦六長坂血槍九郎なんという侍が「無礼な町人だ」ってんで刀を抜くとみんな下へ下りてきた。
「ああおい大変だ。
みんな下りてきた。
早く逃げろ早く!」。
「ばか野郎!むやみに押すんじゃないよ。
前がつかえて出らんねえんだよ」。
「出らんねえったっておめえ大変だ」。
そのうちに客席からピョコピョコピョコと立ち上がった町人が「おうみんな立つんじゃねえ。
危ねえから座ってろ。
俺たちに任しとけ。
俺は赤鬼のき平だ」。
これ幡随院長兵衛の身内です。
「俺はしろいの権左だ」。
「俺は釣鐘の弥左衛門だ」。
この釣鐘の弥左衛門ってのがすごいんです。
あのお寺の釣り鐘。
釣り鐘ですよ?あんな重い物をワ〜ってんで持ち上げちゃうところから釣鐘の弥左衛門という名前がある。
この人の子分でもって半鐘の七右衛門ってのがいる。
そのまた子分で風鈴の源兵衛ってのがいる。
そのまた子分で仏壇の鈴ってだんだん小さくなっちゃう。
これは町やっこでございます。
刀抜くってえと…。
「野郎やっちまえ!」。
大入り満員の客席の中で旗本と町やっこがちゃんちゃんばらばら血の雨が降るという。
これからが面白いが今日はこの辺で。
(拍手)早速お客様をお招きしていろいろとお話を伺いたいと思います。
今回お迎えするのは私にとっては先生でもあり師匠でもあり本当に大切な恩人です。
ご紹介致しましょう。
映画監督の山田洋次監督です。
監督お願いします。
おはようございます。
おはようございます。
おはようございます。
よろしくお願い致します。
はい。
(2人)どうも。
ハハハ…。
改まってこうやって監督と膝を突き合わせてお話を伺うとものすごくどきどき致します。
監督20年ぶりに喜劇をお撮りになられる?ええ。
また私も出させて頂いております。
何で監督20年ぶりに喜劇をお撮りになられたのか伺ってもよろしいですか?特別に何て言うのかな…これは喜劇でこれは喜劇じゃないっていうふうには僕の中でそんなに分けてる訳じゃないんですよ。
描く人がとてもおかしな人だったら喜劇になりますし描く人がとても悲しい体験をしてる人ならば悲劇になる訳ですわね。
だからそんなに「今度は喜劇だ」って僕張り切ってる訳じゃないんだけどもたまたまこういう家族が…つまり両親の離婚問題を巡って大騒ぎするっていうのは何か楽しいなと思ったんですね。
(笑い声)「家族はつらいよ」ですよね?そうですね。
また「つらいよ」って言葉をお付けになられたのも…。
そうですね。
まあねどんなタイトルにしようかと思って。
「東京家族」っていう映画を僕は前に撮りましたよね。
その前に「東京物語」って小津さんの映画があってそれのいわばオマージュのつもりで「東京家族」というほとんど「東京物語」と同じストーリーで作ったんですよね。
それでその時の家族がみんな…橋爪さん吉行さんはじめとする一家の家族がとても一緒に仕事して楽しかったんでもう一回今度はもっと滑稽な話としてこの家族を見られないかなと思ってそんなところから始めたんでタイトルも今度は「東京家族」から変わって「東京家族2」でもよかったんですけどもちょっと待てよと。
「男はつらいよ」っていう映画僕は作ったんだからそれにちなんで「家族はつらいよ」にしてみたんですね。
家族ってつらいですよね?つらいですよね。
そんなにね家族はいいもんだとか家族が全てだとかそんな事を僕は思えないですよね。
むしろ家族だからとても困ったり嫌だったり悲しかったり家族なんて面倒くさいと思う事の方がどっちかといったら多いんじゃないんでしょうかね。
監督うちも家族はつらいです。
そうですか。
(笑い声)監督よくね監督の映画特に「男はつらいよ」をご覧になった皆さんが笑ったけどもちょっとほろっと来たっていう気持ちになるんだというような声を聞くんですけれども笑いというものと涙とか悲しみっていうそこら辺は監督どうお考えになられていますでしょうか?ダジャレみたいのがあるでしょ?はい。
そういうのはねいわばクスッと笑って「ああおかしい」って事でおしまいなんだけども僕たちが作る映画とかあるいは噺家の演ずる落語に登場する人間のおかしさっていうのは何て言うかな観客が見ててとても共感できるおかしさっていうか本当にそうだよなと思う…。
本当に人間ってそうだなって思うからつまり身につまされてつい笑ってしまう。
笑いながら笑いながら「でも俺もなそういうところあるんだよな。
俺はこんなゲラゲラ笑ってるけども俺だって結構あほだな」と思ったりもする。
そうすると何かちょっと悲しくもなるっていうかな。
人間って滑稽だなって思う自分もその人間の一人だと思うとちょっと悲しくなる。
だから裏腹じゃないんでしょうかね。
このおかしいと悲しいとは。
あの〜監督キャスティングってどういうふうにされるんですか?よく映画の…。
う〜ん…。
まあひと言で難しいですね。
キャスティングっていうのはつまり監督にとっては演出の仕事のかなり重要な部分ですね。
もう3割ぐらい占めるんじゃないでしょうかね。
このキャスティングによって大体映画が決まる訳ですから。
キャスティングの才能ってのはあるんですよね。
あの役者にこういう役やらせる。
その事でその役者が今までにないものがフワッと出てくるとかねそういう事ができるかできないかっていうのは監督の才能ですよね。
前に監督に「頓馬の使者」の落語のお稽古をつけて頂いた時があります。
その時に今でも覚えてるんですが稽古が終わったあとに「正蔵さんこの『頓馬の使者』のキャスティングはどのように考えてますか?」って。
「落語もちゃんとキャスティングをしてなさってるんですか?」って。
「ひとつどうなんでしょう。
今度から落語をやる時にこれは例えば近所のおじさんこれは近所の鳶の頭。
あなたの知ってる人でも例えば芝居で見た誰かでもいいからキャスティングをして落語を組み立ててみるとひとつまた違った深みが出たり面白みが出るんじゃないか」ってあの言葉が今でも残ってるんです。
やっぱり語る人その噺家のイメージの中にまじまじとそこにおじさんがいたり娘がいたり息子がいたり熊さんがいたり机があって茶わんがあってここに急須があってどんな種類のお茶の葉があって。
そういうイメージはまじまじとなきゃいけないんじゃないんでしょうかね。
そうですね。
その事によって観客もその細かい描写するって事は別ですよ。
別にして何かその人の話聞いてるうちに本当にその茶の間に自分もいるような気持ちになってくる。
それはその噺家がどんだけ具体的に細かなディテールに至るまでイメージを持ってるかっていう事が大事なんじゃないでしょうかね。
そうですね。
監督が一番最初に落語に触れたのはおいくつぐらいの時なんですか?う〜ん…。
僕はね小学校の1年の頃から落語が好きでしたね。
2年3年の頃は一番夢中だったんじゃないんでしょうかね。
その当時は寄席場に行かれたんですか?それともラジオ?いえいえ。
僕はねそのころ満州にいたんですよ。
戦争中の話ですね。
だから瀋陽とか長春みたいなとこいたんですけどもだからラジオですほとんど。
めったに噺家なんか満州に来ませんからね。
ほとんどラジオです。
当時のごひいきっていうとどの落語家さんだったんですか?やはり金馬師匠ですか?そう。
やっぱり金馬金語楼それから三木助とか柳橋なんていましたね。
はい。
落語の本買って夢中になって読んだりねそしてついに覚えて教室で一席やってみせたりしてね。
監督がですか?ええ。
へえ〜。
「落語全集」をお持ちだったんですか?そうなんですよ。
それがね僕4年の時にね入院しちゃいましてね病気で。
ジフテリアっちゅうかなり危険な病気ですよ。
おやじも心配して病院に来て「何か欲しいもんあったら何でも買ってやるぞ」って言った。
チャンスだと思ってねいつもよく行った古本屋の店の奥にあった「落語全集」があるんですよね。
「あれ欲しい」って言ったんですよね。
それまで買ってやくれませんよ。
落語の本なんて。
さすがにおやじもね変な顔したけどやっぱりひん死のせがれが言うんだからって買ってきた。
僕にとっては宝物でしたねこれはねもう。
へえ〜。
だってね古本屋に行くでしょ?その奥の方の棚にちょっと黄色のクロス張りの表紙が見えるんですね。
そこからもう笑い声が聞こえてくるような気がしましたよ。
子どもだからめったに開けたり見たりできないんですよ。
でもジ〜ッと見てるだけでね面白いんだろうなおかしいんだろうなってこの…。
だからあれが手に入ったらどんな幸せかと思って。
(笑い声)へえ〜。
監督スタッフの方が捜してきたんですがこれですか?この本ですか?多分これじゃないかって。
そうそう。
この色ですよ。
はあ〜。
古い本ですよこれは。
あ〜まさにこれですね。
この上中下。
昭和4年ですね出版が。
この本が並んでるだけで監督はもうこっから笑い声が聞こえたり…?ええ。
これ見るだけでねちょっと幸せだったんですよね。
今どうですか?ご覧になって。
ハハハ…!今は本物がここにいるから。
そうですか。
2016/01/10(日) 05:15〜05:45
NHK総合1・神戸
林家正蔵の演芸図鑑「山田洋次、マギー司郎、春風亭一朝」[字]

落語家・林家正蔵が、演芸界のよりすぐりの至芸をナビゲートする。演芸はマギー司郎のマジック、春風亭一朝の落語「芝居の喧嘩(けんか)」。対談のゲストは山田洋次

詳細情報
番組内容
落語家・林家正蔵が、演芸界のよりすぐりの至芸をナビゲートする。演芸はマギー司郎のマジック、春風亭一朝の落語「芝居の喧嘩(けんか)」。対談のゲストは山田洋次
出演者
【出演】山田洋次,マギー司郎,春風亭一朝,【ナビゲーター】林家正蔵

ジャンル :
バラエティ – お笑い・コメディ
劇場/公演 – 落語・演芸
バラエティ – その他

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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