美の京都遺産 2016.01.10


(ナレーション)
日本画

洋画
漫画
南画
88年の生涯で幾度となく作風を変化させた
自由奔放融通無碍
画家小川千甕とは
京都市中京区にある…
初期から晩年に至るおよそ140点の作品を集めた小川千甕の回顧展が開かれている

明治15年千甕は六角通麩屋町の一角に生を受ける
本名を多三郎といった
生家は仏教書や漢籍の出版を手がける書店であった
15歳多三郎は家業の縁で仏絵師に徒弟奉公
仏画の基礎をたたき込まれる
以後70年に及ぶ画業の第一歩であった
奉公を務め上げると20歳で仏画の通い職員となり仏具店に勤務
だが型にはまった仏画制作に飽き足らない多三郎はある人物を訪ねる
日本近代洋画の父…
左京区岡崎にある…
浅井が創立した画塾を前身とする
多三郎は画塾の第一期生として浅井に洋画を学んだ
同窓に梅原龍三郎や安井曾太郎など後の巨匠がいた

昼は仏画の下請けで収入を得夜は人体デッサンに明け暮れた
そして折を見ては写生に出かけ空間や質感描写を学んだ
最初に仏画を修業したっていうのはすごく細緻な仏画を筆で描いてるんですけれどもそういう訓練ですね徒弟修業の徹底した訓練っていうのが後の千甕の画業の幅広さの根本になっていると思いますしそのあと洋画で物を見てしっかり描き込むという訓練をしているっていうのもその二つがその後のいろいろなものを描くことができる千甕の画技の幅広さの源になっているのではないかと思います。

陶器の町…
明治40年多三郎は浅井の紹介でかつて五条坂にあった京都市立陶磁器試験場に勤める
本意ではなかったが器の図案や絵付けの技術を磨いた

このころ焼き物の甕から思いつき自らを「千甕」と号した
読み替えると「千」の「甕」…「千甕」
それは極度の近眼であった多三郎自身のユーモアが含まれていた
小川千甕は洋画と並行し日本画の修業にもいそしんだ

明治43年28歳
画家としての成功を夢見新聞記者の兄の誘いもあって上京
まずは生活のため出版関係の仕事に携わる
文芸誌「ホトトギス」や絵本の挿絵
更に時事漫画の連載を手がけ挿絵画家漫画家として人気を博した

千甕は無類の旅好きだった
息子の三郎さんは度々写生旅行に同行した
(小川さん)終戦直後だったんで東京はそれこそ焼け野原だったんで地方の方行ってそこで絵を描いたりしていまして。
そのときに私中学ぐらいだったんですが食糧事情が東京も悪かったもんですから連れてってもらってごちそうを食べさしてもらったっていうか。
晩年になっては77歳のときに初めて入院しましてね仕事もできないのじゃないかって感じたときもあったんですが病気治りまして…ただその後も体があちこち不自由だったんですが制作意欲が非常に盛んでそんなところを脇で私見てたと。
千甕にはヨーロッパを旅し見聞を広めたい夢があった
関西美術院の同窓生安井曾太郎が渡欧していた影響もあった
大正2年念願叶い半年間の遊学
イギリスフランスオランダ
イタリアでは宗教画ドイツでは装飾画に感銘を受ける
旅の終わりに印象派の巨匠を訪ねた
「椅子に凭れた老爺がある何だか今にも死に相ないや死体の様な老爺これがルノアールだ」
帰国後千甕の絵が変わった

繊細なタッチは影をひそめルノアールやゴーギャンら印象派を思わせる濃密な色彩と筆遣いで油絵や水彩画更には日本画を描いた

だが千甕の心は揺れていた
日本画家洋画家挿絵画家漫画家…
自分は一体何者なのか
(植田さん)ジャンルを飛び越えていろいろなものに手を染めながらやってきたところその一つにくくれないところに面白さがあると思っています。
この幅広さっていうのは浅井忠にも見られることでして浅井忠も日本画も描くし図案もやるし大津絵も描いていたしそういう点ではある時期まで浅井忠がやっぱりすごく影響を与えていたと思います。
それでそういった浅井忠の影響を乗り越えて南画の世界に自分の独自性を見いだしたんじゃないかと私は考えています。
鞍馬の火祭を南画風に描いた…
昭和5年の「院展」に入選した作品である
千甕50歳の言葉である
自由な筆運びで山河を描く
書と絵が一体となった南画は幼い頃に生家である京都の書店で親しんだ世界であった
(植田さん)「日展」に「楽只」という作品を出品するんですがそのときに自分の作品はちょっと時流とずれているようなことに気付いてしまった。
南画というのがもうその時代には衰退しはじめている一方だったのでただ自分はそれでも南画をやっていく。
晩年千甕は展覧会に背を向け個展を中心に作品を発表する

素朴で機知に富みぬくもりに満ちた独自の画境をひらいた

昭和46年他界
享年88であった
仏画に始まり日本画洋画漫画南画
次々と作風を変えた画家小川千甕
自らの人生を振り返った書を残している

縦横無盡
2016/01/10(日) 06:15〜06:30
MBS毎日放送
美の京都遺産[字]

「画家・小川千甕(せんよう)の世界」

詳細情報
◎この番組は…
古都1200年の歴史の中で守り続けられてきた寺社仏閣・祭り・伝統工芸などの中より「美の再発見」をテーマに、ハイビジョン撮影による高画質映像でお送りする「映像美術館」。
 
音楽
久石譲
 
公式HP
【番組HP】
http://www.mbs.jp/kyoto/

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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