古くからブナの森として知られています。
ブナは森のダムと言われ山に水を多く蓄え私たちに豊かな実りを与えてくれます。
ところが…。
ブナっていうのは漢字で書くと木へんに「無い」って書くわけで…。
木じゃないっていう意味ですね。
ブナは水分を多く含むため木材としては使い道の少ない木だったんです。
豊富にあるブナをなんとか生かせないか。
薄い板を細長いテープ状にして巻く事でブナが美しい製品になるんです。
使うのはなんと湯呑茶碗。
BUNACOの曲線はまさに芸術品。
そのデザインは国内外から高く評価されています。
『日本のチカラ』今週は津軽から世界へと発信され続けるBUNACOに迫ります。
春は桜秋は紅葉が楽しめる弘前公園。
石垣修理のため天守を曳屋で移動した事で話題となりました。
古くから栄える城下町弘前。
BUNACOが生まれた町。
そんな弘前を感じながら製品を見て欲しいとあえて地元にショールームを構えます。
県内外からお客さんが訪れるんです。
あたたかみのある色と美しい曲線を生かした製品。
デザインの自由度も高くでこぼこした触り心地も特徴の一つです。
スピーカーは音のよさと見た目のかわいらしさで少々値が張りますが人気商品です。
売り上げNo.1はティッシュボックスケース。
美しい曲線と木のやわらかさがポイント。
こちらのお皿も人気です。
手頃な値段でBUNACOの質感を味わえます。
サラダなんかを入れてもいいですね。
質感ですね。
あと雰囲気と…。
津軽平野にそびえる霊峰岩木山。
ここ弘前にブナコ株式会社の工場があります。
なんと築80年の建物。
外の壁も窓枠も木造。
土台は頑丈にれんがで造られています。
旧日本陸軍の厩舎ですね。
馬小屋ですね。
奥行86メートルに伸びる平屋が工場です。
創業以来ずっと使ってきました。
従業員は25名。
分業制なので縦長の工場のほうが次々商品が流れていって都合がいいんです。
古くなっても建て直す事なく大事に使ってきました。
BUNACOは薄い1ミリほどの板から作られます。
創業当時は青森のブナがほとんどでしたが材木店が少なくなり現在は国内各地から仕入れています。
ブナは水分量が多く他の木のように削ったり彫ったりして加工するには不向き。
古くからあまり役に立たない木とされてきました。
しかし豊富にあるブナ。
なんとか活用出来ないか。
そこで考えられたのがテープ状にして加工する方法でした。
1枚の板をテープ状にカット。
細く薄くする事で弱点を克服しています。
さらに他の木材にはないブナならではのしなりも生かした技法です。
このテープ状のブナ材巻いて使うんです。
常に一定の力で巻いていきます。
全て手作業。
力を入れずに巻けばすぐほどけてしまうため強すぎず適度な力で巻きつけていきます。
まさに職人技。
隙間がなくなるほどギュッと巻きつけてあります。
この作業から名前の由来がきています。
ブナを巻くブナとコイルでブナコという名前になったそうです。
津軽弁で「うまっこ」とか「べごっこ」とかって後ろに「っこ」をつけるっていう…。
津軽では「っこ」をつける事でどこかあたたかみのある言葉になる方言。
ここ津軽から全国に発信という意味でもあります。
ここからどうやって立体的な形にしていくのでしょうか?使うのはなんと層になったブナを湯呑茶碗で少しずつずらして形を作ります。
一つ一つの間隔が均等になるように木の摩擦でギュッギュッと音がするんです。
(摩擦音)専用の道具もありますが湯呑茶碗が一番この作業に適しているそう。
職人たちは自分の手に合ったものを探してくるこだわりようです。
くり抜いたり削ったりする事なくボウルが出来上がりました。
段々にずらしたブナはどこをとっても一定の間隔。
さらに一度形を作ってもまた元に戻せるんです。
こうして独特の曲線美が生まれるんですね。
この道50年のベテラン石田さん。
簡単そうに見えますが結構力が必要なんです。
(石田さん)曲がってらべ?これ湯呑さ入るようにほら。
(スタッフ)ちょっとあてがってもらっていいですか?手が湯呑の形に沿って曲がっています。
この手がいくつものBUNACOを作ってきました。
BUNACOは製品になるまでとにかく手間がかかります。
何度も表面を研磨し塗装をして出来上がります。
まさに職人の心意気が感じられる芸術品です。
およそ50年前BUNACOの技術が出来た当時主に作っていたのはボウルやおぼんなどの食器でした。
贈答用にたくさん売れ百貨店に次々と出荷されました。
98年ぐらいから一気に売り上げが下がるようになって…。
(倉田さん)やっぱり会社としてはかなりもう倒産の危機になってですね…。
高度経済成長も手伝って飛ぶように売れたBUNACO。
しかし暮らしが豊かになるにつれ食器だけで勝負していたBUNACOは売れなくなりました。
(倉田さん)商品自体がお客様に飽きられているんじゃないかという事も言われて…。
何か売れる新商品を…。
試行錯誤しているうちにひらめきました。
ひょっとするとBUNACOって照明器具にするとまた売れるのかもしれないというふうに思って…。
ブナを照明に使うと他の木材より赤く透ける事に気づいたんです。
白い電球をかざしても赤く光って木目がきれいに浮かび上がります。
しかしそれまで食器しか作った事がなかった職人は特殊な形状のランプを作ろうとはしませんでした。
それならと社長は一人で作り始めたのです。
それで私が四苦八苦してこうやろうとするとやっぱり周りで見ているわけだから職人みんな見てられない。
そばに寄ってきて「いや社長そうじゃないよ」って…。
「そこってそうじゃなくてこうやってやりゃいいと思うよ」とかってやってくれるわけね。
じゃあちょっとやってよって…。
「こうやってやりゃあいいんだよ」ってやってくれるじゃない。
BUNACOの曲線と透ける赤い光が美しいランプ。
社長と職人たちが一つとなった瞬間でした。
これをヒントに次々とランプを販売。
あたたかみのあるデザインが高い評価を受けます。
木材を透けて灯るずっと眺めていたくなるランプです。
業績は回復し今では1億7000万円の売り上げに。
BUNACOが再評価されるようになりました。
2015年新しく出来たウッドデザイン賞。
木に関する優れた製品や取り組みを表彰する賞です。
BUNACOのペンダントランプが見事に入賞を果たしました。
青森県の団体としてはうちが初めてもらった特別賞なので…。
(倉田さん)元々BUNACOは生まれも育ちも青森でそれがこういうふうに認められて皆さんの家の中で使ってもらえるような商品だという事を認めてもらったのでそれが一番うれしいですね。
津軽の厳しい冬。
朝の工場。
従業員が出社してきます。
ベテラン石田さんもやって来ました。
今は週に2回だけブナコに来ています。
御年72歳。
もう引退してもおかしくない年齢ですがブナコへ通う理由がありました。
現場に若手が入ってきたんです。
今教えに来ている。
週に2回。
石田さんのもとで教わるのは入って数カ月の新人。
工業高校出身でスーパーマーケットに就職。
昔から夢だったものづくりの仕事をしたいと転職してきました。
奥さんは最初心配していましたが今ではお父さんを家族みんなで応援しています。
(藤田さん)製品とか見てたらすげえオシャレじゃないですか。
今やってる照明とか。
これ自分で作れたらかっこいいなと思って…。
石田さんのもとで技を学んで10カ月。
まだまだベテランにはかないません。
同じボウル状の食器を作りますが…。
速さと美しさが違います。
石田さんもう出来上がりました。
新人藤田さんはまだ途中。
見るなり一目で駄目なところを直す石田さん。
難しいです。
(スタッフ)何が難しい?色々言葉で教わってもやっぱり手の動きあるじゃないですか。
経験ないとやっぱりちょっとした動きがわからないんで…。
ただ2人の手さばきをじっと見つめる石田さん。
(スタッフ)まだですか?お昼休憩。
みんな1つのテーブルでお弁当を食べます。
結婚8年目藤田さんは愛妻弁当を楽しみにしています。
(スタッフ)手作りの愛妻弁当。
(スタッフ)違うんですか?
(スタッフ)いつもあるんですか?うんフフフフ…。
おかんからハートきたらやばいでしょう。
家族の支えあってのBUNACO職人です。
だいぶ慣れてきた藤田さん。
まだ作った事のない新しい商品に挑戦していました。
BUNACOでは定番商品のおしぼり受け。
値段も手頃で人気の商品です。
型に押し当てて形を作っていきます。
一方の石田さんはなんと型を使わなくてもきれいな形が出来てしまいます。
見るよ見るよ。
なんとか形になったようです。
BUNACOの夢を見た藤田さん。
現実ではうまく出来たんでしょうか?製品は現場リーダーが細かくチェックします。
高さや段差が均等になっているかチェック。
果たして…?1つ高さの合わないものがあったようです。
本当?夢見る…うん。
つかの間の一服。
湯呑茶碗談議に花が咲きます。
(スタッフ)なじむかどうかですね。
うん。
こうやって見てよ…。
もう一人の新人奈良さんも全く違う職種から転職してきました。
奈良さんは子供4人のお父さん。
家族を支えるため手に職をつけたいと入ってきました。
手仕事でまさに職人技のBUNACO。
体で覚える部分が多く手も痛くなります。
早く子供たちに自慢出来る職人になろうと日々腕を磨きます。
美しいデザインのBUNACO。
東京をはじめ全国のホテルやレストランカフェなどで採用されるようになりました。
メイドイン津軽が誇らしげに明かりを灯しています。
BUNACOのランプが全国で使われる原点となった場所。
社長がやって来たのは映画館。
ここを訪れるのは8年ぶりです。
ユナイテッド・シネマ豊洲。
一番大きい10番劇場にBUNACOの照明が使われています。
入れ替わりの激しいインテリア業界。
8年前につけた照明がまだ使われていました。
いや…ここの照明が多分うちが今まで作った照明で一番苦労して作った照明器具なので懐かしいですね。
BUNACOが苦手な四角形のランプ。
この形を作るのに苦労しました。
みんなで毎日深夜まで作業して作った照明だったんです。
そうです。
感動しました久しぶりに…。
でもこれをやれたんだからなんでも出来ますね。
本当にそう思います。
いやあきれいだな。
あれも透けて見えてるし。
本当最近…何かスピリッツを忘れていましたね私は。
会社に戻った社長はある大きいプロジェクトに取りかかっていました。
毎年パリで行われるヨーロッパ最大級のインテリア&デザイン見本市メゾン・エ・オブジェに出展が決まったんです。
津軽で生まれたBUNACOが世界へと広まるビッグチャンス。
今年の新作は難しい形のランプ。
今までにない一風変わったデザインです。
社長が任せたのはなんと入って4カ月の奈良さん。
最近腕を上げた彼に成長してほしいと抜擢しました。
自分もそうだったように若手にチャレンジさせたかったんです。
専用の型に当てながら作りますがなかなかぴたりとははまりません。
どうしても隙間が出来てしまうみたいです。
(スタッフ)なかなか難しいですか?今まで覚えてきたものを全て出して形にします。
ここです…やっぱアールですね。
完全な円形ではなく極めて難度の高いデザイン。
なんとか形になったようです。
このあと真ん中に電球が入ると完成です。
奈良さんが作ったのは上についている笠。
社長に完成品を見せる日がやって来ました。
新人が作ったランプ。
果たして評価は?BUNACOの代表として今年パリに展示されるランプ。
入社4カ月の奈良さんが作りました。
(倉田さん)いいと思います。
大丈夫だと思います。
実はまだ完成して光っているところを見た事がなかった奈良さん。
満足げに眺めます。
BUNACOの特徴を最大限に生かした照明が出来上がりました。
でもそれはそれで楽しいっていうか…やりがいはありますよ。
この弘前で生まれて育った技術なので青森県のすごく大事な技術だと思っているのでぜひその発信は青森からしたいし…。
(倉田さん)地元の若い人にこれからもこの技術で作ったものを世界発信してもらって担ってもらいたいと思っているので…。
『日本のチカラ』次回は長野県。
完全燃焼にこだわり続ける燃えるおやじの物語です。
2016/01/10(日) 06:00〜06:30
ABCテレビ1
日本のチカラ[字]
ブナの森として有名な世界自然遺産「白神山地」…このブナの魅力をとりいれた木工品を大特集!美しい曲線を描くお皿や、優しい光を放つ照明器具…人気の秘密を探ります。
詳細情報
◇番組内容
ブナは古くから使い道のない木とされてきました。水分を多く含み、乾燥させて使っても狂いが大きい…青森に豊富にあるブナをなんとか活用できないか…そこで生まれたすごい技術があります。厚さ1ミリのブナ板を細長いテープ状にして、そのブナ材を隙間なくコイルのように巻きつけます。さらに一層ずつずらしてボウルの形状に成型。なんと使うのは湯呑茶碗!この道50年のベテラン職人がその手で曲線美を生み出すのです。
◇番組内容2
創業から食器のみのラインナップで展開していたこの会社は、1998年頃売上が激減、倒産の危機に。なんとか売れる商品をと模索していたとき、社長がひらめきます。ブナ材は光を当てると他の木材より赤く光る…ランプです。ブナのランプは人気となり、業績はV字回復。そして津軽から世界へ…さらなる進化を目指し、ベテランから新人まで一致団結、発信していく姿を追いました。
◇番組内容3
全国各地の「魅力あふれる産業」を通して、地域の歴史や文化・人々の英知や営みを学び、日本の技術力・地方創生への道・温かいコミュニティー、生きるヒントを描き出す、教育ドキュメンタリー番組。
◇ナレーション
筋野裕子(青森放送アナウンサー)
◇音楽
高嶋ちさ子「ブライト・フューチャー」
◇制作
企画:民間放送教育協会
制作著作:青森放送
協力:文部科学省/中小企業基盤整備機構
◇おしらせ
☆番組HP
http://www.minkyo.or.jp/
この番組は、朝日放送の『青少年に見てもらいたい番組』に指定されています。
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
趣味/教育 – 生涯教育・資格
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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