昔むかしあるところに小さな村があった。
その村の長者様が家を建て替えることになった。
立派になった家を前にして長者様はいいことを思いついた。
どうだろう村の者を招いて新築祝いでもしようじゃないか。
いいじゃないですか。
早速使いの者を出しその旨を伝えると村人たちは大喜びした。
だがなにやら困り顔の者も。
祝いの席ってどうしたらいいんだ?俺もよくわからんて。
羽織袴で行かなきゃいけねえんだろ?そんなもん持ってねえぞ。
それに行儀作法ってもんがあるんじゃねえのか?なんだそれ?飯食うだけじゃないのかい?わしも知らんぞ。
誰もそんな席で飯食ったことなんかねえべ。
(みんな)こりゃ困った!というわけで寺の和尚さんのところへ相談に行くことにした。
ん〜なるほど皆が心配するのも無理はないな。
といって今から行儀作法を教えていては間に合わん。
(みんな)はぁ〜。
困ったのう。
う〜ん。
そうじゃこうしてはいかがかな。
(みんな)お〜。
もっと近くに寄ってくれ。
なにやら和尚さんからいい考えを授かった様子。
なるほどその手がありましたか。
それならなんとかなるべ。
助かった。
これで安心してごちそうが食べられる。
あそうだ羽織袴はどうする?誰も持ってないぞ。
心配するな寺に皆の分くらいある。
すぐに着替えて出かけるぞ。
(みんな)お〜。
早速羽織袴に着替えることに。
こんなんでどうでしょう?さっ行きましょう和尚さん。
上下さかさまだ。
とまあいろいろあってなんとか長者様の屋敷へ向かうこととなった。
おぉ和尚様お待ちしておりました。
ささどうぞこちらへお座りください。
ゴホン…ヘーックション!
(みんな)ゴホン…ヘーックション!本日はお招きに預かりありがとう存じます。
まことに立派なお住まいを新築なされ心よりお祝い申し上げます。
(みんな)お祝い申し上げます。
皆様そろってお越しいただき厚く御礼申し上げます。
では…。
ささやかながら祝いの膳を用意いたしました。
ささどうぞお召し上がりください。
ではありがたくちょうだいいたす。
(みんな)ちょうだいいたす。
アチチチチ。
どうやら和尚さんのいい考えとはみんなで和尚さんがやるとおりすべて真似をするということらしい。
なんとかここまでは格好がついたが小鉢のいもを食べようとしたとき…。
うっかりいもを落とした。
これもきっと行儀作法に違いないと思った。
《これはいかん行儀よくせんと》うぅ…。
見ていた長者さんたちこれにはびっくり。
《こりゃまずいぞ》《なんじゃいもにくぎづけになっておる》プックックック!
(みんな)プックックック!《いかん!やらんでいいことまで真似しておる》
(2人)あっあっあっ…。
ちょ長者さん顔顔が…。
アハハハハハ!
(みんな)アハハハハ!《なんとかせねば》これ笑うのは真似せんでいい。
これ笑うのは真似せんでいい。
これ笑うのは真似せんでいい。
これ笑うのはごませんべい。
これ食うのはごませんべい。
これ食ったらごまかせん。
これ…わっ!オラ誰に言えばいいんだ。
(村の人たち)クッ…アハハハハハハ!とうとう行儀作法どころではなくなってしまいました。
和尚さんしかたなく長者さんに訳を話した。
アハハハハ。
いやそうでしたか。
お気をつかわせて申し訳ありません。
ではここからは無礼講ということに。
(みんな)やった〜!ここからはお酒も入って楽しい宴会となった。
どうぞどうぞ。
どうもどうも。
さあどうぞどうぞ。
あそれあそれそりゃそりゃ。
無礼講もいいけど少しは行儀作法も教えておいたほうがいいですよ和尚さん。
昔森のそばにカエルの棲む沼があった。
グワグワ〜。
カエルの大将はひときわ体の大きなガマガエル。
虫をもらう代わりに薬の入った貝殻を渡した。
あとは明日だ。
ガマガエルはカエルの傷を治す名医だったけれど傷に効くという薬の作り方は秘伝とされ誰にも明かさなかった。
うわっ。
ゴクゴク。
うわ。
こりゃすまん。
フンフンッ。
ところがある夜戻ってくると家の前が何者かに荒らされていた。
だ誰だ!どいつの仕業だ!!ん?何の足跡じゃ。
さっきまでタヌキの親子がうろうろしてただ。
なに?だいたい森のやつら偉そうにやってきて魚は獲る水浴びはする。
やりたい放題だ。
ガマの大将放っておいていいんですか?でも森のやつら体がでかい。
でかいから偉いのかよ。
偉いのは森の獣よりオラたちカエルだ。
やつらには負けぬ。
(カエルたち)偉いのは沼だオラ負けないぞ!
(鼻歌)うん?
(カエルたち)帰れ!なななに?あ〜あら〜。
カエルがそんなに乱暴だなんて。
キキッ森の獣より偉いなどとたわごとを。
フンガマの大将などと威張っておるがしょせんカエル井の中の蛙よ。
あっクマさん。
クマさんあんたが大将。
うむ向こうが沼でいちばんでかいガマならこっちは森一番のクマさんが大将だ。
はあ?カエルのやつらを懲らしめてやるだ。
(サルたち)そうだそうだそうだ。
いつの間にかクマが森の獣たちの大将になり沼のカエルと森の獣の争いが始まった。
あ〜あいつまで続くだ。
そりゃ相手が降参するまでじゃ。
(カエルの鳴き声)キーッセミよりやかましい。
もうこんなことはやめたいよ。
ふわ〜。
この地を護る神様はすっかり寝不足。
争いは一度始めたらやめるのが難しいものじゃて。
やれやれ。
こういたせ大将同士競争するのじゃ。
勝ったほうが沼と森双方を治めよ。
(2人)はは〜。
道順はこの丘から川まで下り更に上流のあの赤岩まで。
先に着いたほうが勝ちじゃ。
よ〜いドン。
早くもガマを引き離すクマだが…。
あっ!イテテテ。
ヘヘ足もとにゃ気ぃつけなお先に。
おっと。
ガマよひとつ頼まれてくれんか?何じゃ?お前は傷を治す名医だそうな。
タヌキの子供のケガ治してやってくれんか。
タヌキじゃと?なかなか治らんで母親が心配してのう。
《それであの晩タヌキが来たのか》それを荒らしにきたと早合点して…。
《オラのせいだ申し訳ねえ…》己を深く恥じ入り脂汗がタラタラと流れた。
その脂汗はクマの傷口に流れて。
おぉ痛みが消えた。
ほほうさすが傷の名医噂どおりじゃ。
言うな。
ガマガエルは恥ずかしかった。
《オラ薬を作る姿を見られたくなかった。
それを秘伝の薬だと偉そうに》
(サルたち)クマさん頑張れ。
負けるなクマさん。
(カエルたち)ガマさん頑張れ。
ガマさん頑張れ。
あっ。
(みんな)あっ。
この土地の大将が誰だってかまわねえ。
オラいつもどおり暮らせれば満足なんじゃ。
森に降った雨が沼をつくり沼のおかげで森は元気になる。
上も下もない。
生き物はみんな助け合っておるんじゃよ。
オラ大将になる値打ちなんぞねえ。
沼の大将もやめる。
お願いですこの子の傷を。
お前にはみんなを助ける立派な力があるじゃろ。
がまの油じゃよ。
ちょっとの間目をつぶっててくれ。
グググワ〜アグワ〜。
ああやって薬作ってただか。
男らしい。
よかったね。
ありがとう。
その後がまの油は人間の世界にまで広まったという。
さてお立ち会い。
御用とお急ぎでない方はゆっくりとお聞きなされ。
ガマは己の姿が鏡に映るので己の姿を見て己と驚きたらりたらりと脂汗を流す。
昔むかし金剛山の南の荒坂峠に城のような大きな屋敷がありました。
そこにはたいへんな大金持ちが暮らしていました。
ふもとで暮らす村人たちはその人のことを荒坂長者と呼びたいそうけちんぼうなことで有名でした。
長者は屋敷の見晴らし台に立ち眼下に広がる稲穂の海を眺めては上機嫌になっていました。
アハハハハ満足満足大満足じゃ。
長者はこの辺り一帯の大地主でふもとの田んぼもそこでできる米もみな長者のものと昔から決まっていました。
村人たちはすずめの涙ほどの賃金で長者の蔵へ納める米を朝から晩まで作らされていました。
(いななき)豊作じゃ豊作じゃ。
運べ運べ足を止めるな。
長者には1人の息子がいました。
こらその池の水はオラがうちのもんだ触るでねえ。
この子は昨日から何も食べていないのです。
どうかお許しくださいませ。
ダメだダメだ1滴たりとも飲んではならねえ。
どうしても飲みたければ小判1枚で1杯だ。
長者の息子は長者に輪をかけたどケチでした。
米の収穫時には村からの年貢米が運び込まれ5つもある大きな蔵が満杯になるほどでした。
あ〜また雑炊か。
山のように米が届いたってのに。
お腹が空いてかなわねえよなまったく。
米は腐るほどあるにもかかわらずこの屋敷で暮らす下男下女たちの食事でさえ近頃は稗や粟豆を煮た雑炊ばかりでした。
バカ者が!米など食べていたらカネがたまらんではないか。
まったくじゃなおっとう。
長者と息子は屋敷が豊かになればなるほどどんどんケチになっていきました。
め…飯飯を。
おとうしっかりしろ。
うぅ…。
母ちゃんお腹空いたよ。
夜が明けるまでの辛抱だよ。
蓄えた食糧もいよいよ底をつき村人たちは長者にすがるほかありませんでした。
長者様少しでもいいから米分けてくれろ。
このままでは皆死んでしまいます。
この頃になると人に情けをかけるといった優しい心は爪の垢ほどもなくなっていました。
まったくうるさいやつらじゃ。
米を分けるなどとんでもない。
こちらの食べる米がなくなってしまうわ。
おっとうお日様が昇って夜が明けるからああしてうるさくやってくるのじゃ。
あの弓矢でお日様を二度と昇れないように射落としてやればいいんじゃ。
2人はすでにものの道理というものがわからなくなっていました。
朝早く息子は杉の木の上からまだほの暗い山の尾根を眺めて夜が明けるのをじっと待ちました。
今じゃ。
そのときです。
まっすぐにさした強い光が息子をのみ込みました。
う…うわ〜!息子は目がくらんだ瞬間足を踏み外して地面に真っ逆さまに落ちて死んでしまいました。
(雷鳴)長者は息子の死を知り屋敷の隅でブルブル震えていました。
あぁ…お日様のたたりじゃ。
息子がえらいことをやってしまって申し訳ありません。
天罰は息子だけでこらえてください。
あっ…。
ひゃ…100両でございます。
これ差し上げますからどうかお許しを。
(雷鳴)わかりましたあと100両いや200両でご勘弁を…。
これからは村の者たちにも少しだけ米を分けてあげますから命だけはお助けをお助けを!長者は必死になって謝りましたが。
うわ…。
ギャー!
(雷鳴)悪いと気づくのがすでに遅すぎたのです。
屋敷はあらかた焼け落ちました。
大量の米を蓄えた5つの蔵は無事でしたがそこに長者の姿はありませんでした。
ほら見てごらん炊けたよ。
うわ〜しろまんまじゃじいちゃんしろまんまだよ。
焼け残った蔵の米は村人たちで分け合いました。
ひと粒の米も分け与えずにため込んだ長者は自らのケチのために滅びました。
そしてやがてそのことも少しずつ忘れ去られこの村で荒坂長者の呼び名を知る村人は1人もいなくなりました。
2016/01/10(日) 09:00〜09:30
テレビ大阪1
ふるさと再生 日本の昔ばなし[字]
「いもころがし」
「ガマガエルの油」
「荒坂長者」
の3本です。お楽しみに!!
詳細情報
番組内容
私たちの現在ある生活・文化は、昔から代々人々が築き上げてきたものの進化の上にあります。日本・ふるさと再生へ私たちが一歩を踏みだそうというこの時にこそ、日本を築いた原点に一度立ち返ってみることは、日本再生への新たなヒントになるのではないでしょうか。
この番組は、日本各地に伝わる民話、祭事の由来や、神話・伝説など、庶民の文化を底辺で支えてきたお話を楽しく伝えます。
語り手
柄本明
松金よね子
テーマ曲
『一人のキミが生まれたとさ』
作詞・作曲:大倉智之(INSPi)
編曲:吉田圭介(INSPi)、貞国公洋
歌:中川翔子
コーラス:INSPi(Sony Music Records)
監督・演出
【企画】沼田かずみ
【監修】中田実紀雄
【監督】鈴木卓夫
制作
【アニメーション制作】トマソン
ホームページ
http://ani.tv/mukashibanashi
ジャンル :
アニメ/特撮 – 国内アニメ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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