情熱大陸【上坂克彦/世界が注目する、“沈黙の臓器”のがんに挑み続ける外科医!】 2016.01.10


がんは肝臓に巣くっていた
(上坂克彦)頑張って取りましょう
9時間にも及ぶ難手術だった
さすがにおなか減りましたね
命の修羅場を乗り切ってようやく愛妻弁当にありつくことができた
肝胆すい外科医上坂克彦はそう言ってうまそうに玄米ごはんを頬張った
聞き慣れない言葉だが肝胆膵とは肝臓胆のうおよび胆管そしてすい臓を指す
これらは「沈黙の臓器」と呼ばれがんになっても自覚症状が少ない
ために患者の多くが切迫した状況で上坂の元にやって来る
さて…ベストコンディション?
ベストコンディションどころではない
すい臓がんがもうかなり進行していた
ということは活動が活発になってる?そうですねしかし…
上坂の日常はいつもギリギリの勝負だ
霊峰・富士を間近に望む…
上坂はこの病院の副院長でもある
だが毎朝の光景は「白い巨塔」の総回診とは程遠い
若い医師たちと言葉を交わしながら病室へ
表情には副院長のいかめしさなど感じられなかった
もうねぇ本人が耐えられそうもなくて
患者の要望は自らスタッフに頼み込む
すばらしいよしじゃあ戻そうちょっと…この部屋だけごめんなさい
入院患者は常に30人を超える
(スタッフ)一とおりですか?このあとすぐ外来ですか?
つい回診に時間をかけ過ぎてしまった
医局の奥にある上坂の部屋
ドアはいつも開けっ放しだ
(ぶつかる音)あぁ…これもいいですか?はいいいですどうぞどうぞいいですか?すいません
(スタッフ)昨日は長かったんですか?手術昨日はね…
上坂が率いる肝胆すい外科では
年間実に380件以上の手術を手がけている
え〜っと忙しかったのは7月ですね7月のノートはこんなんです真っ黒
(スタッフ)うわ〜12345678910…この週は11
全国でも飛び抜けた手術数は一刻を争う患者の多さを意味していた
ぐ〜っとこう…
ベストコンディションと口にしていた吉岡正明さんは上坂を頼って神戸から転院してきた
すい臓がんが悪化している
すごい…ちょっともう…先生が言われた…あっ先生どうもお世話になりますはいどうもよろしくお願いします
すい臓がんは手術以外治す術がない
だが吉岡さんのケースは手術ができるかどうかのボーダーライン上にあるという
がんはすい臓の頭の部分膵頭部に巣くっていた
ちょっと複雑になるので…
ポイントはがんの間近を走る太い動脈
(吉岡さん)動脈にかかっている可能性が?動脈に…黒い部分がありますよねこれががんの所です…でこれが上腸間膜動脈です動脈は辛うじて隙間が…ここの所ですね
(吉岡さん)あいてる……かな?っていうところなんですね
確かに隙間はほんのわずかだった
測っても1.19mm
がんが動脈に食い込むと手術をしても必ず再発してしまう
これ以上大きくなるともう取れなくなりますからそういう意味ではラストチャンスおはようございます
待ったなしの手術が始まろうとしていた
体の奥深くにあるすい臓は周囲に血管も多くメスを入れることが難しい場所だ
吉岡さんの場合更にやっかいだった
がんがある膵頭部は十二指腸や胆管とつながっている
周辺を含めて丸ごと切除し後からつなぎ直さねばならない
午前9時50分執刀開始
患部に至るまでに無数の血管が立ちはだかっていた
失われても影響のない血管を一本一本絹糸で縛り止血したうえで切断
一方で重要な血管にはゴムをかけておく
傷つけてはならない
ここはいいよあぁいいよ
出血だ
すい臓の裏側見えない場所なので指で探って止血する
(アラーム)はい3分です
止まった
幸いごく小さな血管だったようだ
よしさあいこうか
(一同)はい
いよいよすい臓がんが動脈に接近している問題の場所
わずかな隙間を切り離すことが最大の難関だった
硬いね
過去に受けた放射線治療のせいで通常よりも組織が硬くなっていた
がんと動脈を切り離すのに2時間近く
これが上腸間膜動脈こちら側ががんですこういうふうに完全にがんが剥がれたじゃあ取り出すよ
こうしてがんと周辺の胆管や十二指腸がまとめて切除された
今度は切り離された臓器をつなぎ合わせる
まず小腸を引き上げそこに残ったすい臓を縫い付けていく
繊細を極める針仕事
続いて胆管と小腸をつなげる
最後に胃を小腸につなげば手術はほぼ完了する
手術時間のおよそ半分はこうした臓器を縫い合わせる作業に費やされた
8時間18分で手術終了
朝から飲まず食わずだった上坂は冷えたお茶を立て続けに飲み干した
(スタッフ)5杯目ぐらい…一応…はぁ〜
(スタッフ)「神の手」…あ〜…
(スタッフ)ご自身も言われたことあると思うんですけど…いや〜…
吉岡さんは手術の翌日にもう歩くことができたという
来週の後半ぐらいかな…に退院多分できますのであぁそうですかはいそれぐらいの心積もりでいてくださいちょっと寂しくなりますね寂しい?
すい臓がんはかつて術後の生存率が極めて低い病だった
抗がん剤を併用しても…
だが上坂は新しい薬にも注目し全国の病院に臨床試験を呼びかけた
その結果治療成績が大きく向上することが分かり5年生存率は今45%にまで高まっている
おはようございます
(スタッフ)おはようございます
上坂の多忙さは手術だけにとどまらない
はい
土日も病院で回診を行っていた

(カーオーディオ)
車内にあふれたのはチャイコフスキーの「交響曲第4番」

サラリーマン家庭に生まれた
親戚にも医療関係者はいない
不器用だった少年時代
図工の成績が2だったこともあるそうだ
実は体育も苦手科目の一つ
体力勝負の外科医が心掛けているのは土日の回診を終えたあとのウォーキング
病院の周囲をひたすら歩く
この辺りゴルフコースも多いのだが…
全然…
理系が得意で医学部に進み何となく外科を選んだという
今や日本屈指とも言われるようになった上坂の技術
手がけてきた30年分の手術記録にその秘密が隠されていた
複雑な臓器や血管の配置は全て自身が描いたものだ
その手法は患者の症例を検討するカンファレンスで部下たちに引き継がれている
こうもっとこちらに入るよねこんなに中枢じゃなくてこういう所に入ってるから
この時上坂はまたしても困難な患者と向き合っていた
肝臓内部に隠れている胆管の根元をがんがむしばんでいた
胆管の周囲には網の目のように血管が巡っている
消化器外科で最も難易度の高い手術だった
患者は九州で開業する現役の…
地元の大病院で手術を断られていた
岡田さんの場合がんにむしばまれた部分を切除すれば肝臓は全体の23%しか残らない
その大きさで生命を維持することは不可能だという
だがセカンドオピニオンを求められた上坂は可能性に懸けようと決めた
でもそこの誰が見てもできる誰が見てもダメの間の…
上坂のプランは残す肝臓を大きくしてから手術を行うというもの
がんに侵された部分の血流を一部止めると残すほうの肝臓は機能を取り戻そうと大きくなる
サイズが全体の30%になれば手術ができるはずだ
おはようございますおはようございます
入院して1か月
岡田さんは同じ医師として上坂の熱心な回診に舌を巻いていた
(岡田さん)入院したのが10月ですから…
趣味は俳句
「名医とはかくなる人や秋の空」とかですねそういう気持ちになりましたねえぇ…
希望を託した肝臓は少しずつ大きさを増していった
どう?ボリューム自体は…100ほど増えて380ぐらいあぁボリュームはいいね
サイズは30%を超えた
あとは肝機能が安定するまでもう少し待ちたいところだが…
やろうもうこれ延ばしたらもうやれなくなるわ
上坂は手術を決めた
この黒いがんのへりがこの所まで来ちゃうともう手術ができないんですよだから…ここの所ですね
それがギリギリの選択であることを丁寧に伝える
まさかこんな…そこのところはご了解いただいて来週の火曜日に手術というふうに
手術の朝
懸念された肝機能も前日の検査でクリアした
執刀開始は午前10時
緑で示した胆管は肝臓の内部に走っている
枝分かれした茶色い部分ががんだった
一部を残し肝臓の70%を切除する
処理しなければならない血管の多くが大きな肝臓の裏側にある
そこには血管の立体交差
ここ…ここからここからここまでの奥の所にがんがくっついてるんですここからは剥離ができない
更に別の大きな静脈にもがんが食い込んでいた
大量出血に備え血液製剤が準備された
心臓の手前にある人体で最も太い静脈
そこに食い込んだがんを慎重に引き剥がす
脈動する心臓の間際でがんの下に鉗子を通していく
よかった通ったよし
がんにむしばまれた肝臓がついに切り離されようとしていた
あらゆる血管に気を配りながら上坂はついにがんにむしばまれた肝臓に手をかける
よいしょっと
がん切除
9時間かけて手術は無事終わった
息苦しさがあるみたいで…えっ?今ちょっと息苦しさが…息苦しさがある?分かりますか?分かる?うまく取れましたからねありがとうございます今血圧上げてます目もしっかり開いてたのでありがとうございましたもういいのかな?大丈夫?いいですか?緊張が取れたのか…9時半で
けれど仕事はまだ終わらない
(スタッフ)先生どうするんですか?9時半からカンファ
(スタッフ)カンファレンスやるんですか?やります今日やっとかないとやれなくなっちゃうんです
上坂克彦をまた難手術が待っていた
冬の味覚の王者たんと召し上がれ
金沢の名料亭
あるじは独りごちた
「こりゃあうまいわ」
2016/01/10(日) 23:00〜23:30
MBS毎日放送
情熱大陸[字]【上坂克彦/世界が注目する、“沈黙の臓器”のがんに挑み続ける外科医!】

肝胆すい外科医/上坂克彦▽自覚症状の乏しさから未だ治療が困難とされている肝臓・胆道・すい臓がんの治療に挑み、生存率を飛躍的に高めている外科医の怒濤の日々に密着

詳細情報
番組内容
「良い癌医療をしたい」の一念で開業からまだ13年の静岡がんセンターを全国トップレベルの治療拠点にまで牽引した手腕の持ち主の上坂。そんな彼のもとに、難易度の高い肝臓内部の癌の患者が駆け込んで来た。地元の病院では手術を断られたという71歳の患者。聞けば当人も現役の医師だという。上坂は何とか手術が出来るよう事前治療を施し、1ヶ月後ついに手術にこぎ着ける。“治らないがん”を“治るがん”へ挑戦する彼を追う。
プロフィール
上坂克彦/肝胆すい外科医
1958年愛知県出身の57歳。
名古屋大学医学部卒業後、当時の国立がんセンター病院(東京)に勤務した後、2002年にオープンした静岡県立静岡がんセンターの肝・胆・膵外科部長に就任。すい臓がん切除後に抗がん剤治療を行う全国的な大規模臨床試験で代表研究者を務め、患者の2年生存率70%、5年生存率45%という驚異的な数字で世界から注目された。趣味は音楽鑑賞で小澤征爾の大ファン。
制作
【製作著作】MBS(毎日放送)
【制作協力】メディア・メトル
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おことわり
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ドキュメンタリー/教養 – 宇宙・科学・医学
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