■中国、THAAD発言に敏感な反応
THAADの韓国配備は米中の認識差が際立つ安保懸案だ。米国は、北朝鮮の脅威から在韓米軍と韓国を守るにはTHAADが必要だと主張している一方、中国はTHAADを構成するレーダーなどが自国の監視に用いられるとみて配備に猛反対してきた。この問題が外交争点になることに負担を感じた韓国政府は、これまで「THAAD配備について米国からの要請はなく、協議もしていない」と明確な答弁を避けてきた。
中国は即座に反応した。中国外務省の洪磊報道官はこの日の記者会見で、朴大統領のTHAADをめぐる発言を念頭に「自国の安全を追求するときには他国の安全も考慮すべきだ。朝鮮半島情勢は非常に敏感で、慎重に対応するよう希望する」と述べた。THAAD配備の可能性に警戒感を示した形だ。
朴大統領がこの日、北朝鮮核問題で中国に「行動」を求め、これまで言及を避けていたTHAADまで持ち出して圧力をかけたのは、中国が制裁に積極的に動かないことに失望したためと受け止められる。中国外務省は、米軍が先ごろB52戦略爆撃機を韓国に派遣したことや、韓国政府が拡声器を使った対北朝鮮宣伝放送の再開に踏み切ったことについて「自制」や「慎重な行動」を促すなど、事実上、懸念を表明した。また、中国の常万全・国防相は1週間にわたり韓民求(ハン・ミング)韓国国防部(省に相当)長官の電話協議要請に応じていない。
韓国政府の周辺では、対中外交の失敗を指摘する声が高まっている。朴槿恵政権はこの3年間、「対中傾斜」と言われつつも中国重視外交を続けたが、肝心の助けが必要なときに中国は手を貸してくれないという批判が出ているのだ。こうした批判を意識したためか、朴大統領はこの日「困難で苦しいときに手を取ってくれるのが最上のパートナーだ」とも述べた。