「衆議院選挙制度に関する調査会」がきのう、「一票の格差」の是正策や、定数削減などについての検討結果を大島理森衆院議長に答申した。

 格差是正策としては、(1)10年ごとの大規模国勢調査をもとに、都道府県の人口比に基づく「アダムズ方式」で都道府県単位の定数を配分する(2)大規模調査の中間年の簡易国勢調査で格差2倍以上の選挙区が生じたときは、内閣府に置かれた「衆議院議員選挙区画定審議会」が各都道府県内の選挙区割りの見直しを行う――などを挙げた。

 衆院選の一票の格差をめぐっては、最高裁がこの4年間に3度、「違憲状態」の判決を出している。

 判決を受け各党間で検討を進めたが、まとめることができずに調査会に議論を委ねた経緯がある。答申に真っ向から反論することなど、いまさらできないはずだ。速やかに合意形成を図り、いまの国会で法改正を行うべきである。

 答申は、定数については小選挙区で6、比例区で4減らすとした。ただ「衆院議員の定数は、国際比較などから多いとは言えず、削減する積極的な理由や理論的根拠は見いだし難い」とも明記している。

 有権者の代表である議員は、単に減らせばいいというものではないだろう。それでも、消費税率の引き上げにあたり自民、民主の両党首が「身を切る改革」として約束した以上は、受け入れるほかない。

 答申通りに改革すれば、一票の格差拡大という「出血」は止められそうだ。だが、日本の代表制民主主義が抱える「病」の根本に手がつくわけではない。

 いまの小選挙区比例代表並立制は、政権交代可能な二大政党制の実現をめざし、民意の「反映」よりも「集約」に重きを置いている。このため死票が多く、過去3回の衆院選では、第1党はいずれも5割に満たない得票率で、小選挙区の7割超の議席を獲得した。

 議席数と民意との乖離(かいり)が政治へのシニシズムを育て、いっそうの低投票率を招く。そんな側面があるのは否めない。

 しかし、答申は「新たな制度を検討せざるを得ないほど深刻な事態にあるとは考えられない」と、制度の見直しには踏み込んでいない。国民の議論を喚起するような積極的な検討が行われなかったのは残念だ。

 もちろん、議論を深める一義的な責任は国会にある。選挙制度の不断の見直しを怠れば自らの代表性が揺らぐ。議員はこのことを肝に銘じるべきだ。