こんにちは。
主婦をしながらある事をしています。
差し入れ。
それは刑務所や拘置所などの施設にいる人に品物を届ける事。
瑠美さんは家族の依頼を受け本や生活必需品などの差し入れを代わりに行っています。
もしもし。
依頼は多い日で一日10件ほど。
「るるぶ」ね。
OK。
出所を間近に控えた夫に差し入れしてほしいという依頼。
差し入れは甘えにつながると周囲から反対されているといいます。
法律では刑務所への差し入れは原則として親族が行う事が定められています。
誰にも言えない事情を抱えた人たちが代行を依頼してくるといいます。
差し入れの品を瑠美さんに選んでほしいという依頼も少なくありません。
家族や友人に手紙を書くためのレターセットも人気があります。
届けるのはごくありふれたものたち。
差し入れの品に込められた人の気持ちを見つめます。
依頼者のほとんどは見ず知らずの人。
ホームページを見て連絡してきます。
中にはすぐ会いたいという人も。
いつも待ってる時は飲んでるもんの味がしないから…。
こんにちは。
やって来たのは刑務所にいる幼なじみの男性に手紙を送りたいという女性です。
返事を受け取って受刑者の友人がいると知られる事が怖いといいます。
何かしてあげたい。
でも周囲には知られたくない。
頑張りや。
3時間女性は揺れる思いを語りました。
瑠美さんが代行した差し入れを受け取って気持ちが変わった人がいます。
4年前に少年院に入りました。
出院を控えたある日両親が逮捕され大地君は帰る場所を失いました。
その時の状況の時にほんまに首つろうとかほんまに死んだろうとか何回も考えたんですよ。
ほんまにもう今生きとっても一緒やなみたいな。
そんな時瑠美さんを通して刑務所にいる父親から差し入れられたのが4冊の本でした。
人が選んで持ってきた訳じゃないですか。
どういう気持ちでとかどういう意味を持ってとかいろいろ考え出したらやっぱり泣けてくるっていうかね。
刑務所にいる父親の気持ちをくんで瑠美さんが選びました。
あんまりね下向いてばっかりであれやったけどそうやって一緒に応援してくれる人がいてるって事に気付いて。
「頑張り。
頑張らなあかんやん」って自分に言い聞かして。
とりあえず頑張る方向に持っていったね。
今大地君は町工場で働きながら家族がそろう日を待っています。
瑠美さんが月に一度必ず訪れる場所があります。
自分の子どもの一人が少年院に入っているのです。
入院して2年。
反省してほしいという思いから当初は何も差し入れをしませんでした。
仮退院を控えた今は情報誌を差し入れようと決めています。
今からはあの子の社会復帰の応援。
応援しようかなと思って。
「タウンワーク」。
実は瑠美さんもまたかつて12年間刑務所に服役していた過去があります。
(瑠美)こんにちは。
お願いします。
ご苦労さん。
(瑠美)ほんま?早いな。
終了します。
(瑠美)ありがとうございます。
頑張りや。
子どものもとに欠かさず訪れるのには長年そばにいられなかった事への償いの思いがあります。
瑠美さんは10歳の時両親が離婚。
母と2人で暮らし始めました。
みんなこの毛糸の帽子をかぶってたんですけどそうじゃなくてこう耳からバチッと下の方でね綿がついてるやつがあるんですよ。
それを持っていった時に学校の先生に「あんたは母子家庭やからこんなん持ってこんでいいのよ」っつってそれを預かられて…中学校を卒業すると家を出てシングルマザーに。
子ども3人を授かりました。
しかし思いを寄せていた男性との恋に破れお酒に溺れるようになります。
つらさを家族に打ち明けた瑠美さん。
厳しい叱責の言葉しか返ってきませんでした。
わんわん言われる筋合いもないわって思って。
逃げた方向悪いけどね。
でももうそこしか逃げられんくて。
もういい覚醒剤いこうと思って。
覚醒剤パッとスタートして。
子どもの世話はせず知人の家を転々とする日々。
母とは絶縁状態になりました。
4年間の服役。
瑠美さんは人恋しさから母に手紙を出し続けました。
しかし返事が届く事は一度もありませんでした。
「はあ〜」と思いながらね。
結構あの時間はつらい。
やっぱりこう毎日来てる人もいりゃあ1週間に1回でも親と話…手紙を出すその手紙に対しての返事が来るっていうやり取りをやってるのを見てていいなとは結構羨ましかって。
「『帰っておいで』って言って」って。
「『おり』って言って」って思ってんねんけどなかなかその気持ちも届かず。
その間子どもたちは母が預かり育てていました。
出所後。
子どもを母に取られたと感じ家には帰らず公園や車で寝泊まりしたといいます。
その後再び薬物に溺れ結局12年間刑務所に服役します。
瑠美さんが差し入れの代行を始めるきっかけになったものがあります。
これ。
「今ママがいなくてさみしいです。
俺の誕生日に来なかったし運動会にも来なかったし。
卒業式は今年で最後なので絶対ママに見てもらいたいです。
最後にこれ以上ママと離れて暮らすのは嫌なので一日も早くママに帰ってきてもらいたいです」。
字が書けるようになった子どもたちから届いた手紙。
子どもたちがこうやってちょっとでもお母さん帰ってきてこうやってほしいとか…。
法律を全然知らないからこうやって一生懸命書いたら帰ってきてくれるんじゃないかなっていう…。
言うたら七夕の願い事みたいに願いがかなうと思って書いてくれてる気持ちがすごい自分自身に刺さってね。
これが一番自分の人生変えてくれた手紙かなと思って。
このまま何もなくサラッと子どもの気持ちも耳だけで聞いて終わってる分やったら流れていって忘れてたかもしれへんけども。
「ああ自分は一番楽やった」って。
捕まってね。
「楽やったけど待ってる方の方がしんどかったんやな」って思って。
だからもう…そうやね。
待ってる人が一番しんどいんやろうないろんな思いで待ってんやろうなって思う手紙やねこれ。
手紙を受け取ってからの服役が最後の刑務所になりました。
ちょっと…ちょっと助けられたかな家族にね。
そういう救われてんのをあぐらかかんと本当に大事にしていかななって思えるようになった。
長男に言ってるんですよ。
「おかんが死んだらね」ってこれ見せたのよ。
「これ何よ」って言うから「あんたは見んでええよ」っつって。
「死ぬ時これ持ってってや」って。
「棺おけ入れてや」って言ったら「何で」って。
「これがママのスイッチやから」っつって。
「これがなかったら死んでからもスイッチボタンなかったらまたおかしなったらあかんからな」とか言って。
こいつやろうね人生変えたの。
3年前に差し入れの代行を始めた瑠美さん。
かつての自分のように気持ちを通じ合えない人たちへの手助けをしたいと考えています。
やっぱり夢もって…夢が崩れる時多いけどもね夢ないよりはいいかなと思って私は入れ続ける。
9月。
瑠美さんと長年のつきあいがあるという常連の一人を訪ねました。
娘が覚醒剤取締法違反の容疑で逮捕。
病気で外出制限があるため瑠美さんに代行を依頼してきました。
生活保護を受けながら娘の代わりに孫とひ孫を育ててきました。
そうです。
今年3月。
娘が覚醒剤を使用している事を自ら通報しました。
逮捕されるのは5回目。
これまでは更生を願い差し入れをしてきましたがやめる事にしました。
瑠美さんがミエ子さんの元を訪ねました。
(瑠美)「おいで」。
来たよ。
ミエ子さんに娘から手紙が届いていました。
(瑠美)読んでいい?
(ミエ子)いいよ。
読み。
(瑠美)「おかん元気か?相変わらず元気でっせ。
おかんの体はもう大丈夫なのか。
体は気を付けなあかんよね。
分かってますか」って。
「この手紙は何で書いたんかな?」と思って。
こんなふうに普通に。
(ミエ子)知らん。
一回会ってこようか?
(ミエ子)えっ?会ってこようか?一回。
瑠美さんはミエ子さんの代わりに言葉を届けようと考えました。
5回も6回も入ってみお前…。
おばあちゃん何が言いたい?本気で何が言いたい?瑠美さ…瑠美お母さんとさこんなんやってん昔な。
うちお母さん瑠美がどこに行ってたか分からんかった。
何で行ってるかも分からんかった。
すごいやろ。
(ミエ子)ああそう。
知らんかってで結局帰ってきた時に瑠美言うてん。
「お母さん何で連絡も差し入れもくれへんかった」って言うたら「お母さんもあんたどこ行ったか泣きたいぐらい捜したよ」って…。
家族がみんなかばっちゃってお母さんに言わんかって4年間娘は行方不明やった。
で言葉の行き違いとかもできひんよな。
話し合いとかもできひんかっておかんの人生半分ぐらい十何年瑠美全部潰してもうたから。
あの人楽になる人生が子ども3人引き連れてやってもうて今やっと思うんや。
だから絶対なお互いに後悔するやろ。
死んでからもおばあちゃん死に切れんやろ。
何やねんて。
何で娘と心気持ち通じ合わんと終わるねんって思う。
気付いてほしいねん。
こんな瑠美でも気付いたから。
グッチャグチャや。
(ミエ子)現実に気付いてないからこういう事になってるんや。
まだもう一回気付けるチャンスはあると思う。
気付かなあかんやろ。
チャンスちゃう。
気付かなあかんねん。
(ミエ子)もう50やもんね。
年関係ないよおばあちゃん。
(瑠美)いいところも知ってるから腹立つんやな。
帰るわ。
ありがと。
(瑠美)やっぱりおばあちゃんの気持ちだけは代行として伝えていこうかなと思って。
気持ちだけ伝えるのと伝えへんのは全然違うと思うから。
スルーするかもしれへんけども多分心に残ってると思うから今まで考えていなかった事もちょっと考えてくれると思うしまあそれを願っておばあちゃんの気持ちの…代弁しに行こうかなって。
伝わればいいな。
ちゃう伝えなあかんなと。
もしもし。
待っている人がいる。
かぼそいけれど確かに思いをつないでいきます。
いい感じに書いてみる。
どんな事伝えたいん?2016/01/14(木) 13:05〜13:35
NHKEテレ1大阪
ハートネットTV「誰かが私を待っている〜差し入れ代行 中野瑠美さん〜」[字][再]
刑務所への「差し入れの代行」を請け負う大阪の主婦・中野瑠美さん。様々な事情で代行を依頼してくる人々を通して塀の内と外をつなぐ差し入れに込められた思いを見つめる
詳細情報
番組内容
刑務所への「差し入れの代行」を請け負う大阪の主婦・中野瑠美さん。自らも受刑者として刑務所で12年間過ごした経験がある。一日に多いときで10件を超える依頼。幼なじみの男性を励ましたいものの受刑者の友人がいると周囲に知られたくないと悩む20代の女性。娘が覚せい剤を使用していることを自ら通報した70代の老女。様々な事情から代行を依頼してくる人々を通して塀の内と外をつなぐ差し入れに込められた思いを見つめる
出演者
【出演】差し入れ代行業…中野瑠美,【語り】杉浦圭子
ジャンル :
福祉 – 障害者
福祉 – 高齢者
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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