(長瀬)病理医っていうのはなかなか表舞台に出ない…。
きっと今まで皆さん見たことのないホントに見てて爽快なヒーロードラマだと思うのでこのまま行っちゃいましょう。
(武井)はい。
『フラジャイル』の第1話スタートです。
(武井)どうぞ!
(医師)またあいつ?
(医師)今日は皮膚科を荒らしに行ったそうだよ。
(医師)本当に厄介な男だね。
(看護師)宮崎先生外来始まっちゃいますよ。
(宮崎)あっ。
(医師)でもさ俺たち臨床医は結局あいつの言うことを聞くしかないんだよ。
あなたががんかどうかを診断するのは外科医ではない
病理医である
医師たちは岸京一郎についてこう語る
「強烈な変人だが極めて優秀だ」と
(由里子)大学受かってくれてホントにほっとしたわ。
(花梨)私も〜。
(由里子)さすが花梨。
(花梨)まあね。
フフフ。
(由里子)だからね…。
(花梨)うん。
(由里子)4月になったらお父さんとこ行こうと思うんだ。
単身赴任してもう5年になるし花梨だって大人だからね。
(花梨)いいじゃん。
行った方がいいよ。
私も一人暮らししたかったし。
(由里子)うん。
私もさみしいけど娘離れしないとね。
(花梨)そうだよ。
あっレオの散歩しなきゃ。
ちょっと先行ってるね。
(由里子)うん。
レオの水取り換えといてね。
(花梨)うん。
(由里子)花梨!花梨!花梨!救急車!救急車呼んでください!脳の写真も特に問題ないですね。
(宮崎)心配ないですよ。
でもテレビでやってたのと同じ症状だから。
同じ症状でも脳梗塞とは限らないですからね。
(女性)テレビ見てて私ぴんときちゃった。
すぐ病院行かなきゃって。
まあ検査してこれで違うって…。
(女性)検査してても手遅れになる人っているじゃない?それって先生が見落としてたってこと?分かりました。
ではもう一度説明させていただきますね。
(高坂)どれだけ外来にかかってる。
すいません。
(高坂)そんなやり方じゃ終わるものも終わらないって言ってんだろ。
はい。
(看護師)高坂先生救外お願いします。
頭部外傷の18歳の患者です。
(高坂)ほら来た。
全部こなせるようにほどほどの力で回せ。
はい。
(高坂)頭のCTは奇麗ですね。
脳の出血は心配ないでしょう。
ありがとうございます。
(高坂)顔色良くなったね。
痛みはどう?
(花梨)軽くなりました。
(高坂)腰は?まだ変な感じする?あっ…はいちょっと。
(高坂)腰の写真も…大きな問題はないですね。
下肢の不快感は椎間板変性の可能性が高いです。
(由里子)椎間板変性?背骨には骨と骨の間に椎間板と呼ばれるクッションのような役割をする軟骨があるんですがその軟骨がもろくなったりしたために腰に痛みが出たと考えられます。
景山さんおはようございます。
気分はどう?はい大丈夫です。
痛みや何か気になることある?あっありません。
あの私もう退院できますか?どんなささいなことでも言ってみて。
はい大丈夫なんで。
高坂先生あの昨日入院の景山花梨さんですけど…。
(高坂)あっ椎間板変性疑いの。
あっはい。
あっあの…もう少し他の検査をしてみてはどうでしょう?MRIとか…。
(高坂)部長おはようございます。
(部長)あっおはよう。
(高坂)景山花梨さん18歳女性。
主訴は頭部外傷発熱悪心下肢の不快感。
(医師)女子高生見た?カワイイ?
(医師)まあまあかな。
(高坂)対症的にイブプロフェンを投与。
頭痛悪心発熱は軽快しました。
ただ…下肢の不快感は残りました。
椎間板変性の疑いです。
(医師)腰か。
(部長)転んだおかげで偶然見つかったとはラッキーだったな。
腰仙椎は撮ったの?
(高坂)あっはい。
撮りましたがはっきりとした骨性変化は見れませんでした。
MRIは…。
そこまでしなくていいんじゃない?
(高坂)ですよね。
えっ?
(高坂)レセプト突っ込まれたら厄介ですもんね。
(部長)あとは整形外科で診てもらおう。
(高坂)はい。
退院の手続きをして整形外科に回します。
(部長)OK。
じゃあこれで…。
あの!何か?えっ…あの…。
何でもありません。
(部長)はい!これでカンファを終了しま…。
これは岸先生。
何かご不満でも?
(岸)いや〜すごいですね。
僕にも教えてくださいよ。
だって椎間板変性の根拠が何もないように聞こえましたから。
つまり僕の知らない新しいエビデンスが出たんですよね?どこのジャーナル?
(部長)岸先生もう時間が…。
えっ?まさか単に腰が痛いから椎間板変性?
(高坂)外傷や脳の異常がないかぎり疑いは強いと思います。
じゃあ発熱や悪心はどう説明するわけ?薬で抑えられてますから。
あんたバカなのか?
(医師)何言ってんだよ。
ひどいもんだな〜。
(医師)おいお前な…。
(医師)何様のつもりだ。
ずいぶん乱暴な診断だって言ってんの。
何年医者やってんのか知んないけどさ。
(医師)言い掛かりはやめろ。
(医師)病理の案件じゃないだろ。
君たち臨床医の一番の仕事は何?検査データを基にびしっと治療方針を決めることだよね?なのに何なのかなこれは。
これだけの検査データでよく椎間板変性って言えるよね。
こんなに医者がたくさんいるのに誰もおかしいと思わないわけ?それとも思ってても言わないだけかな?まあどっちでもいいけどさこういうのやめてもらいたいな。
同じ医者として恥ずかしいから。
黙って聞いてりゃお前!
(部長)もういい!うちで腰のMRIやって椎間板変性を確定させよう。
高坂先生予約取って。
(高坂)はい。
これでご納得いただける?ご清聴誠にありがとうございました。
あ〜疲れた。
朝から世話の焼けるやつらだ。
(森井)またどこかの先生を打ち負かしたんですね。
当たり前だろ。
病気には必ず原因とメカニズムがあるんだよ。
それをあいつらは無視したんだからな。
(森井)珍しいことじゃありませんよ。
大抵の医者はそんな感じじゃないですか。
診断待ちの組織診です。
他の科に殴り込みに行ってる間にどんどん仕事たまってます。
ペース上げてください。
相変わらず仕事早いね森井君。
(森井)そうじゃなきゃ回っていきません。
この規模の病院で病理に医者1人検査技師1人だなんてあり得ませんから。
まあまあまあ…とにかくコーヒー一杯飲んでねえ一息つこうよ。
これ今日中ですから…。
分かってるよ。
分かってるから。
いいですか?今日中ですから。
いいですか?失礼します。
検査申し込みはそこのケースに入れといてください!コーヒーぐらい入れてよ森井君。
あの…神経内科の宮崎です。
あの…岸先生にお願いがあります。
けさのカンファの景山花梨さん私も椎間板変性じゃないと思うんです。
状態も気分も話したがらなくて何かを隠してるんじゃないかなって。
景山さんの診断に疑問を持ってるのは私と岸先生だけなんです。
ですから先生に景山さんを診ていただけないかと思いまして。
はっ?えっ?僕に患者に会えってこと?はい。
お願いします。
フッ。
患者に顔を合わせなくて済むことが病理の特権なんだけど。
まあでも会っていただいた方がデータだけじゃ見えないこともあると思いますし…。
君たち臨床医はさ患者の見た目にとらわれ過ぎるから失敗するんだろ?あの…病理は体の中で起きていることを調べるじゃないですか。
患者さんには会わずに組織や細胞だけを見てなぜそうなったのか今どうなってるのか。
何とか会っていただけないでしょうか?僕の話聞いてます?私はっきりさせたいんです。
あの…患者さんのためにお願いします!ふ〜ん患者のために?はい。
ならどうしてお前が自分で言わなかった?えっ?診断に疑念があるってご注進しなかったのは何でだ?いやそれは…。
診断したのが先輩医師だったから言えなかった。
疑念だけで証拠がないことを言う度胸もなかった。
患者のためが聞いてあきれんな。
お前が心配してるのは自分のことだけだ。
待ってください。
あの…先生のおっしゃるとおりだと思います。
私自分で言えなくて…。
患者は何で転んだ?えっ?ホントに転んだのか?どういう意味ですか?転倒前後そばにいたやつがいたらすぐに確認しろ。
転ぶ前どんな様子だったか。
息苦しくしてなかったか。
急激な頭痛はなかったか。
あの何なんですか?転んだのではなく崩れ落ちたのだとしたら…。
崩れ落ちた?鎮痛剤で症状が軽快したのではなく単に急性症状が落ち着いただけだとしたら…。
何らかの理由で脳内の血流が短時間止まりまた再開した。
それでいったん症状が消えたにすぎない。
えっそれって…。
最初に疑うのはTIA。
えっ一過性脳虚血発作?いやでもまだ18歳です。
TIAは考えられないんじゃ…。
100%否定できんのか?えっ?万が一TIAだとしたら再発する可能性が高い。
すぐに血流が戻らなかったとしたら?あっ…すぐに母親に確認してきます。
(森井)珍しいですね。
普通の医者は岸先生に関わるの避けるのに。
あっ今日薄いよ森井君。
(森井)今日中ですからね?はい今日中ね〜。
壮望会第一総合病院神経内科の宮崎と申します。
・
(足音)やっぱり下肢が脱力するように落ちたそうです。
18歳の若さでTIAを起こした原因は?えっ?心房細動はないし…。
あっウィリス動脈輪閉塞症?その場合必要な検査は腰じゃなくて脳のMRIだ。
あっすぐにMRIの予約を…。
遅過ぎる。
えっ?もう崩れ落ちてから18時間もたってるだろ?ただの疑いで予約を入れても実施はあした。
症状が残ってるとすれば出血や梗塞を起こす可能性が高く時間がない。
下肢の脱力のことを言えば今日予約を入れてもらえるんじゃ…。
あの高坂先生と部長が認めると思うか?患者はもう神経内科全員の合意で椎間板変性のラインに乗ってるんだ。
じゃあどうすれば…。
腰のMRIは何時からだ?1時間後です。
脳のMRIに書き換えるか。
えっ?高坂先生のIDからMRIの予約にアクセスして…。
えっ誰がですか?はっ?他に誰がいる。
無理です。
明確な院内倫理違反です。
懲戒ものですよ?その検査は適応外だしレセプトに書けない。
つまり保険分が国から出ません。
部長にぶっ殺されちゃいます!ご託はいいから簡潔に言え。
怖いです。
できません。
責任負う覚悟はなく努力する気もございません。
でもパソコンのログインパスワードだって分かりません。
分からない?いえパスワードが書かれたメモが引き出しの中にありますけど鍵が掛かってます。
鍵を開ければ済むことだ。
そんなの無理です。
できません!時間がないんだ。
分かってんだろ?TIAが再発し血流が停止したらたった4分で脳細胞は回復不能のダメージを受ける。
さあどうする?えっ?お前がやるなら手伝ってやるよ。
患者のためじゃない。
お前のためにやってやる。
えっ?共犯になってやるよ。
・
(花梨の泣き声)どうしたの?景山さん。
ねえ隠してることない?頭の痛みは?
(花梨)私これから1人で頑張らなきゃいけなくて…。
お母さんお父さんの所に行く準備もあるし私が病気なんてことになったらお母さん…。
(花梨)心配かけたくないんです。
だから…。
景山さん大丈夫よ。
(花梨の泣き声)大丈夫。
(高坂)何ですか?いったい。
けさのカンファ何か悪かったね。
仲直りしようと思ってさ。
乾杯〜。
《患者のためが聞いてあきれんな》
(花梨)《心配かけたくないんです》《時間がないんだ。
分かってんだろ?》医者なんていつでも辞めてやるわ。
あっ高坂先生!
(高坂)何だ?景山花梨さんのMRIの結果すぐに見てください。
(高坂)えっ?お願いします。
何で脳のMRIなんだ?おい…。
すいません。
これ新しい脳梗塞が見られます。
こっちが異常血管でウィリス動脈輪閉塞症でした。
どういうことだ?景山さんは転倒したとき下肢の崩れがあることが母親の話で分かりました。
TIAの疑いでしたがとにかく時間がなかったので…。
自分が何をしたのか分かってんのか?申し訳ありません!懲戒解雇もんだぞ!高坂先生!景山花梨さんが激しい頭痛を訴えてます。
失礼します。
(由里子)あっ。
急に頭が痛いって言いだして。
景山さん!
(高坂)ちょっと見ますよ。
(看護師)血圧測りますね。
(由里子)昨日の検査は大丈夫だったんですよね?頭の中に出血はなかったって…。
(高坂)先ほど新しい検査結果が出て急激な頭痛は新たな出血を起こした可能性があります。
(由里子)えっ?すぐに手術になると思います。
放射線科と脳外に連絡。
はい。
(由里子)花梨大丈夫だからね。
お母さん待ってるからね花梨!
(部長)高坂先生の機転で脳のMRIに変更。
ウィリス動脈輪閉塞症が発見され脳出血の緊急手術も無事に終わりました。
高坂先生よくやった。
(高坂)あっいや…いえいえいえ。
部長のご指導のおかげです。
(部長)いやいやいやいや…。
ハハハハハ!《患者のためじゃない》《お前のためにやってやる》《共犯になってやるよ》・
(戸の開く音)・失礼します。
先日はお世話になりました。
(森井)お疲れさまでした。
あの岸先生…。
お疲れさ〜ん。
私を病理に入れてください!えっ?嫌だよ。
えっ?嫌ですって。
いやお願いします。
お願いしますって。
知るか。
私神経内科に辞めるって言ってきました。
えっ?いやもう言っちゃったんであっさり引き返すわけにはいかないんです。
ちょっと岸先生何とかしてくださいよ。
これ貸してやるよ。
えっ?何の疾患か当ててみろ。
それができないようなやつはうちにはいらない。
あっ…あっ。
ありがとうございます。
顕微鏡触るのなんて医学部以来です。
何の疾患か分かったか?あっえっと…。
医学部で何習ったんだよ。
いや病理なんて国家試験終わったら忘れちゃいますよ。
私医者になりたかったんですから。
病理も医者じゃないですか。
ああ…患者さんを治療する医者っていう意味です。
(佐藤)ああ…気持ち悪い。
(里美)つらいね。
(佐藤)うん。
(藤原)佐藤さんお加減いかがですか?
(里美)先生。
覚悟はしてましたがやっぱり抗がん剤はつらいです。
(藤原)よく頑張りましたね。
これでがんが縮小したはずですからあとは手術でがんを取るだけです。
(佐藤)はい。
早く元気にならないと。
(里美)うん。
(藤原)早く見つかってよかったですよ。
藤原先生のおかげです。
・
(戸の開く音)おかえりなさ…。
嫌!ちょっ…。
(中熊)おっ。
ついにここも人が増えたか。
えっ?あの…。
若いね〜。
何年目の先生?あっ2年目です。
ここもさああいう男が指導医じゃ大変だろ?えっ?あっあのどちらさまです…。
あっはい…。
あのさ俺とデートしちゃう?はい?あっ岸先生…。
えっ?トイレ行きたい。
(森井)先生逃げないでください!何だよてめえ邪魔すんじゃねえよ!何ですか?もう。
(中熊)だいたい俺聞いてねえぞ。
新人が入ったなんて。
入れてませんよ。
(中熊)えっ?
(森井)あっ宮崎先生が押し掛けてきたけど岸先生は認めてないってことです。
ちょっとどいてください。
(中熊)何だよ。
人を邪魔者扱いしやがってよ。
早く。
どいて。
(中熊)コーヒーぐらい飲ませろや。
なっ?森井ちゃん。
(森井)入れろってことですね。
また理事長と悪巧みですか?
(中熊)人聞きが悪いじゃねえか。
ほら理事長からですよ。
森井君コーヒーキャンセル。
(森井)えっ?
(中熊)はいはい。
(森井)はい…。
あの…どなたですか?
(森井)慶楼大学病院病理の中熊教授です。
慶楼の教授?はい。
あれでも多くの病院や医師たちに大きな発言力と人事権を持ってるんです。
てっきりあっちの筋の人じゃないかって…。
それと中熊教授は岸先生の元指導医です。
へ〜。
病理っていったいどういう所なんですか?森井君コーヒーまだ?頼まれてません。
うっそ〜。
・あっ。
(せきばらい)はい病理です。
はい。
ああ…あっはい。
ちょっとお待ちください。
岸先生呼吸器内科の藤原先生です。
はい代わりました。
番号は?はい。
あんたバカか?ふざけんな。
それでも医者か。
えっ?あっ。
いつもの殴り込みです。
殴り込み?はっ殴り込み…。
いってらっしゃい。
・間違いなくがんだ。
クロマチンの量類円系の裸核状細胞がんの細胞そのものだ。
血液マーカーのNSEの値が高く肺原発の小細胞がんの疑いが高いが100%の診断じゃない。
がんが原発なのか転移性なのか何のがんかを特定するための新たな検査が必要。
生検の報告書にそう書いたはずだ。
病理ががんだって言ったから肺小細胞がんを想定して術前の化学療法をやってやったんだよ。
だけどまったく効果が見られなかった。
だから肺炎?ああ。
どう責任取ってくれんだよ。
患者は院内を元気に歩き回ってたのに化学療法やったおかげで負担をかけてしまったじゃないか。
責任を病理に押し付けんのかよ。
(藤原)そもそも私は最初っから肺炎だって思ってたんだよ。
がんだ。
それは絶対に間違いない。
絶対?おっ出た。
まるで病理の診断が100%みたいな言い方だな。
何のがんかを特定する検査をするべきだ。
もう十分だ。
患者を殺す気か?
(藤原の笑い声)
(藤原)いいかげんにしてくれよおい!これ以上患者に負担はかけられない。
検査内容を決めるのも治療方針を決めるのも臨床医である私だ。
(藤原の笑い声)まずこの辺からやってみよう。
気が遠くなりますね。
必ず腫瘍はある。
はい。
あの…。
何だ?そもそも肺炎とがんって間違えるものなんですか?間違えねえよ。
間違えますよ。
どれだけ肺がんと肺塞栓の患者が肺炎って診断を受けて手遅れになってることか。
えっ?間違えるんじゃない。
分かんないんだ。
分からない?肺炎はごみ箱診断っていってな要するに患者がどう悪いか分からないときに付けられやすい診断名なんだ。
それって適当っていうことですね?そうですね。
必ずがんを特定する。
このままじゃ患者が死ぬ。
(細木)ハロー。
はい乳がん断端。
(森井)迅速病理診断の依頼です。
乳がんで切除した組織の断端にがんがあるか調べてその結論で乳房の切除の範囲を決めます。
はあ…。
(森井)手術室では今手術を中断しているので10分以内に結論を出します。
あっはい。
(細木)誰?
(森井)あっ宮崎先生です。
外科医の細木先生。
あっ宮崎です。
(細木)へ〜変わった子。
えっ?病理は患者を治療しないのにどうやってモチベーション保つの?いやそれは…。
(細木)だってここで診断して意見を言っても治療の決定権は担当医でしょ?はあ…。
何で病理に入ったの?いや何でって…。
(細木)ていうかよく岸先生が許してくれたわよね。
ねえ何であの子入れたの?あっ。
ったくあの野郎…。
どの野郎?呼吸器内科の藤原って野郎に診断疑われたよ。
ああ…あの藤原先生ね。
あの?
(細木)あの先生目の前の事象にとらわれていて違う角度からものを見ないの。
それで何度も失敗してる。
えっ失敗?怖いでしょ?患者は全然気付かないけど。
標本できました。
うん問題ない。
えっもう終わりですか?閉じて大丈夫だ。
ありがと。
オペに戻るね。
えっ?
(細木)またね〜。
(森井)お疲れさまでした。
藤原の患者の件免疫染色加えてくれるか?
(森井)まだブロックはあります。
森井君の腕の見せどころだな。
(森井)あしたの朝までにはやっておきます。
じゃああした。
えっもうお帰りですか?定時に帰れんのが病理の特権だ。
お疲れさん。
お疲れさまでした〜。
あっお疲れさまでした。
患者さん診ないですもんね。
あっ蹴った。
(里美)今日元気だよ。
あっそう。
(里美)さっきからすごい動いてる。
・
(藤原)どうですか?
(佐藤・里美)あっ。
はい。
このとおり元気です。
(藤原)うん。
一度退院しましょうか。
手術は?
(藤原)経過がとてもいいんでね。
抗がん剤効果があったんですね?退院して様子見てみよう。
よかった。
よかった。
(里美)うん。
肺のがん細胞なのは間違いない。
(森井)あ〜…。
まだ帰らないんですか?もう1時ですよ。
あっ…この時間病院にいること多いので。
真面目ですね宮崎先生は。
えっ?いや森井さんこそいつもこんな遅いんですか?週2日ぐらいですかね。
検査技師の仕事って大変なんですね。
ホントは技師が5人必要なんですけど僕一人だけなんで残業させられちゃってるんです。
2人目が来ても仕事が多いし岸先生があんな感じだから続かないんです。
はい。
あっ…すいません。
あっそれを1人でやるってすごくないです?うん…岸先生に鍛えられました。
ああ…。
あっじゃあ私みたいな新入りの医者が来ても意味ないってことですね。
フフフ…いやいや。
岸先生の相手僕一人だけじゃ大変ですから。
ハハハ…。
あっどうして病理の検査技師になろうと思ったんですか?あれ…聞いちゃいけませんでした?別に理由なんてないですよ。
手に職つければ食いっぱぐれないだけで。
じゃあちょっと仮眠とりに帰って明け方には戻ります。
あっお疲れさまでした。
お疲れさまでした。
あいつは?分からなくて音上げたか。
何か藤原先生の患者が気になるみたいでしたよ。
行ったのか?たぶん。
患者が好きだな。
・
(里美)何食べに行く?・
(佐藤)あ〜。
・
(里美)好きな物…。
・
(佐藤)豚カツ。
(看護師)佐藤さん。
(里美)ああ…。
(看護師)今日いつでも退院できますからね。
(里美)ありがとうございます。
(佐藤)こんなに早く退院できるとは思ってませんでした。
手術もせずに済んで。
いい先生に出会えてよかったです。
あっ。
あっ!あっ。
あっ…。
あっあの…。
(里美)はい。
あっ何カ月ですか?臨月です。
お大事になさってください。
岸先生!佐藤さん今日退院するそうです。
先生佐藤さん喜んでます。
がんかもしれないのに退院しちゃいます!神経内分泌腫瘍の線も消えた。
(女性)具合が悪いんですけどまだ呼ばれないんですか?
(看護師)すいません…。
(藤原)何なんだよいったい。
がんでも特定できたのか?まだだ。
でもがんは確かにある。
(藤原)困るよ。
こっちは病理と違ってたくさん患者待たせてんだよ。
患者に何て説明したんだ?
(藤原)ハァ…。
診断が確定していない患者を置いておくわけにはいかない。
手術が必要でベッドの空きを待っているがん患者がどれぐらいいると思ってるんだよ。
話をそらすな。
がん患者を放り出して手遅れにさせて殺す気か?利益が上がらない病理と違ってこっちはコストも考えなきゃならないんだよ!患者を直接治療しない病理ごときが無責任に口を出すな。
(藤原)いいか?病理のがんの診断なんか不確かだ。
病理医の間でも意見が違うことだってあるだろ?診断に100%なんかないんだよ。
ハッ!
(佐田)岸先生ホント困ります他の科で暴れてもらっちゃ。
申し訳ありませんでした。
(佐田)ハァ…。
どうでしょう取りあえずあの…白衣を着てみるっていうのは。
白衣。
そこから気の持ちようも変わってくるかもしれませんよ。
白衣のサイズLで大丈夫ですかね?んっ?いやちょっと待てよこれやっぱLLかな?失礼しま〜す。
(佐田)これ以上院内を引っかき回すようだったら病院の方にも考えがありますから。
病院で行ってる病理検査を全て外に出して病理をなくすことにもなりかねない。
(佐田)中熊教授も納得してくださるはずです。
(佐藤)おすしでも。
(里美)いいの?お肉じゃないよ。
(佐藤)フフそうだね。
(里美)えっでも豚カツじゃなくていいの?
(佐藤)豚カツやっぱ重いわ。
お帰りですか?いいですねえ病理は定時で帰れて。
やぶ医者が。
岸先生!あのちょっとあの…ちょっと待ってください。
どうするんですか?何を?えっあの…藤原先生にあんなふうに言われてあっさり引き下がるしかないんですか?でも佐藤さんの命に関わるんですよね?私に倫理違反までさせた岸先生とは思えません。
あのな検査内容を決めんのも治療方針を決めんのも臨床医だ。
じゃあ病理は何もできないんですか?お前だってそう言ってただろ?患者を診る臨床医こそが医者だって。
患者を救えるのは臨床医だって。
(森井)あれ?まだ帰らないんですか?今夜こそ疾患名を特定したいので。
(戸の開く音)
(細木)ハァ…お疲れ〜。
お疲れさまで〜す。
(細木)森井君コーヒー。
たまには自分でやってくださいよ。
(細木)森井君が入れてくれるコーヒーが飲みたいの。
(森井)作ってるのはコーヒーメーカーですから。
何してんの?私全然分かってませんでした病理のこと。
あのとき…。
《うん問題ない》《えっもう終わりですか?》岸先生は簡単に言ってたけどすごく責任のある一言ですよね。
そう。
患者の命が懸かってる。
(細木)がんを診断するのは外科医じゃなくて病理医。
優れた病院を探すなら優れた病理医のいる病院を探すべき。
岸先生のこと信頼してらっしゃるんですね。
あの人は何があっても自分の診断を譲らない。
絶対にブレない。
プライベートはしょっちゅうブレてるけどね。
フフ。
フフ…。
あ〜その岸先生とはその…。
(細木)んっ?医学部から一緒。
付き合い長いわよ。
ああ…。
色々とね。
えっ色々?聞きたい?あっ…。
(細木)1昔の男。
えっ?
(細木)2体だけの付き合いだ。
体?えっ?あっ…。
(細木)フフフ。
よし…。
末梢型肺腺がんか腺扁平上皮がんか。
う〜ん…。
・
(ノック)・開けてくれ。
・
(ノック)おはよう。
(宮崎・森井)おはようございます。
藤原の言ってることを証明するものなんてどこにもない。
一晩無駄にした。
(森井)できてます。
30分寝ます。
お疲れさん。
あ〜。
(藤原)佐藤真一さん35歳肺炎の疑い。
経過良好なので昨日退院しました。
(部長)じゃあ今日も一日よろしくお願いします。
(一同)よろしくお願いします。
・
(ドアの開く音)
(部長)これはこれは岸先生。
何か?いや〜すごいですね。
問題が起きる前にさっさと退院させるなんて。
問題がないから退院させるんだ。
問題がない?いやいや大問題でしょ。
はっきり診断がつけられないから肺炎ってことにしたなんて。
(藤原)フフ…。
嘘がバレたらやぶ医者って言われちゃいますよ。
フッ部長。
今日のカンファレンスはここまで。
Ki−67の陽性率が高いのはどう説明する?肺炎で…出てるリンパ腫だろ。
シナプトフィジンが陽性なのは?
(藤原)でも小細胞がんの治療をしても効かなかった。
TTF−1は陰性なんだけど。
(藤原)あっそれは…。
デスミンCD99陽性。
つまりDSRTCだ。
線維形成性小円形細胞腫瘍。
がんは肺原発ではなく転移性のものだった。
おそらく腹部のどこかにでかい腫瘍がある。
病理としての意見は腹部CTの検査を追加することだ。
腹部のCT撮るんだよな?
(部長)もちろん。
これは普通分からないなあ。
肺炎で進めてもしょうがなかったよ。
いや〜この患者さんはラッキーだった。
(藤原)今なら過剰な検査にならないからな。
たまたま見つけただけで偉そうに!医者の仕事って命を救うことだよな?君たちさコストだの何だの言ってるとそのうち人殺すよ?だからよ〜く覚えといてほしいな。
いいかい?君たちが医者でいるかぎり…。
僕の言葉は絶対だ。
よかったな人殺しにならないで。
(藤原)くそ〜!
(ドアの開閉音)
(藤原)くそ〜!
(ドアの開閉音)
(藤原)触るな!大丈夫。
絶対うまくいく。
ああ。
絶対に治す。
岸先生。
先生から預かったプレパラートですけど解けませんでした。
末梢型の肺腺がんか腺扁平上皮がんだとは思います。
けどどちらかを選ぶ決め手がありません。
私には診断をつけることができませんでした。
すいません。
私何も分かってませんでした。
何も考えずに来ちゃって病理のこと甘く見てて自分が情けないです。
患者さんを治療することだけが命を救うってことじゃありませんでした。
私にはとてもじゃないけど病理は無理です。
申し訳ありませんでした。
合格だ。
合格?あれを見てどちらか鑑別するようじゃ駄目だろ。
丁半選んだ鑑別なんてただの賭けだ。
診断じゃない。
自分の鑑別にとことん責任を持てる自信がないならそれは分からないということだ。
だから答えはそれでいい。
病理医は臨床医と対立することはあっても患者に感謝されることはない。
あるのは責任だけだ。
誰も診断を助けてくれない。
さあどうする?お前がやるなら病理に入れてやる。
やります。
私を病理に入れてください。
後悔しないか?はい。
ありがとうございます!あっそのクリームパン…。
岸先生に頂きました。
僕が頼んだパンなのに。
あの…どうして白衣着ないんですか?着たら医者って一目瞭然だろ。
あっ景山さん。
(花梨)あっ先生。
気分はどう?私すごくラッキーだったんですね。
んっ?担当の高坂先生が脳梗塞を見抜いてくれて。
すごい先生でよかった。
そうだね。
ホントに名医だね。
・
(エレベーターの到着音)じゃあお大事に。
(花梨)ありがとうございます。
あの岸先生は患者さんに感謝されたいって思ったことありますか?ない。
いやでもちょっとくらいはね…。
ねえよ。
いやでもホントは?うるさい。
2016/01/13(水) 22:00〜23:09
関西テレビ1
[新]フラジャイル #01[字][デ]【ニュータイプ・ヒーロー誕生!!】
主人公は、天才偏屈病理医・岸京一郎!命を救うためなら、相手が誰であろうと降伏させてしまう取扱い要注意人物!医療の正義を貫き、暴走する医師と一騎打ち!!
詳細情報
番組内容
壮望会第一総合病院病理診断科の岸京一郎(長瀬智也)は一癖も二癖もある病理医。医師たちに煙たがられる厄介者だが、岸の判断に逆らえるものはいない。“強烈な変人だが極めて優秀”と評される男なのだ。
岸と同じ病院で働く新米の神経内科医、宮崎智尋(武井咲)は先輩医師の高坂英利(平岳大)に小言を言われる毎日。仕事の効率を優先する高坂に疑問を持つ宮崎だが、反論出来ない。そんな時、転倒して頭を打った
番組内容2
女子高生、景山花梨(上白石萌歌)が入院。腰痛を訴える花梨に、椎間板変性の可能性を伝える高坂だが、宮崎は納得出来ない。宮崎は詳しい検査が必要だと思っていた。
翌日、神経内科のカンファレンスが行われ、高坂は花梨の症状を報告。他の医師たちが高坂に同意する中、宮崎は自分の意見を言えずにいた。すると、スーツ姿の男が発言を求める。岸だ。岸は初期的な検査だけで病状を決めつける高坂の診断に猛反論。ついには、
番組内容3
神経内科部長から椎間板変性確定のために花梨の腰のMRI検査を約束させた。
病理診断科に戻った岸が検査技師の森井久志(野村周平)と仕事を始めようとすると宮崎が来た。花梨が椎間板変性ではないと疑っていた宮崎は、岸に直接患者を診てほしいと頼むが断られてしまう。宮崎は自分の疑いをカンファレンスで言えなかったことを岸に責められる。それでも食い下がる宮崎に、岸は花梨が転んだ理由を探るよう指示すると…。
出演者
長瀬智也
武井咲
野村周平
・
小雪
・
北大路欣也
他
スタッフ
【原作】
「フラジャイル」原作・草水敏 漫画・恵三朗(講談社「アフタヌーン」連載)
【脚本】
橋部敦子
【編成企画】
成河広明
池田拓也
【プロデュース】
小林宙
【演出】
石川淳一
城宝秀則
【音楽】
林ゆうき
橘麻美
【主題歌】
TOKIO「fragile」(ジェイ・ストーム)
【制作】
フジテレビ
【制作著作】
共同テレビ
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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