最終回はこれまでのまとめ「サーキットトレーニング」をご紹介します。
「代表的日本人」には2人の改革者が登場します。
巨額の負債を抱えた米沢藩を立て直した上杉鷹山。
荒廃した農村を再興した二宮尊徳。
試練を乗り越えるため2人は民の心と向き合いました。
いやかっこいい指導者ですねこれは。
内村鑑三「代表的日本人」。
第2回は鷹山と尊徳からリーダーが持つべき視点を探ります。
(テーマ音楽)「100分de名著」司会の…さあ前回に引き続き「代表的日本人」を読んでいきますが。
何か僕の中では教科書に写真で載ってる人というイメージだった西郷隆盛がより身近にと同時によりすごく感じられるような。
うまい事おっしゃいますねほんとそんな感じ。
指南役は批評家の若松英輔さんです。
どうぞよろしくお願いいたします。
今日読み解く「代表的日本人」はこちらの2人でございます。
まず米沢藩主上杉鷹山。
そして農政改革者の二宮尊徳。
クイズによく出てきます。
上杉鷹山は倹約で藩を立て直すみたいな。
すごい。
二宮尊徳はいわゆる二宮金次郎像でおなじみの薪をしょって…あの感じですね。
今日はこの2人を並べて若松さんは読み解くとおっしゃるんですがその2人を並べる意味はどういうところに?時代はそんなに大きく変わらないわけですけども立場はまるで違う2人ですよね。
一人はもう藩主ですから王様ですね。
こちらの方はたたき上げって言ってもいいぐらいですけどこの真ん中にですねちょうどこう仕事ですね。
仕事においてそれぞれの役割をやった2人ですよね。
何かキーワード「ピンチ」というのが。
そうですね。
よくピンチをチャンスに変えろとか言いますよね。
フリップ一枚お出ししたいと思うんですけども我々というのはピンチになるとわっとこう恐れますでしょう?でも本当はこちらの方の「恐れ」じゃなくてもう一つこちらも「畏れ」という字がありますね。
これは畏敬だったり畏怖だったりしますけども。
この2人の生涯は我々に教えてくれるんじゃないかなと思うんですね。
ピンチイコール左のイメージですけどね。
その怖いという方のイメージですけど。
若松さんがまた投げ込んできますね。
それではまず上杉鷹山の物語お聴き頂きましょう。
内村が紹介したのは若き日の上杉鷹山が改革者として目覚めてゆく姿です。
九州の秋月家から上杉家の養子となり17歳で東北米沢藩の藩主となった上杉鷹山。
当時藩は巨額の負債を抱え領民は貧困に苦しんでいました。
自分が治める事になる荒れ果てた領地を見て鷹山は心を痛めます。
家来が駕籠の中をのぞくと鷹山は火鉢の炭を懸命に吹いていました。
「新たな火をくべましょう」と言われても鷹山は断ります。
その時彼はある大事な教訓を消えかけた炭に見ていたのです。
その晩鷹山は家来たちにその教訓を伝えました。
でもまあいい文章ですね。
何か僕はもう聞いててカメラワークがすごいきれいな。
見てきたみたいにそして書いてるし。
ねえ。
その駕籠の中の枠の外にちょっと貧しいさみしい感じの景色がずっと見えてて今度は駕籠の中をのぞく方の画があって…。
何かものすごいいい文章だなと思って聞き入っちゃった。
西郷のところで「動詞に注目してみましょう」とお話をしたと思うんです。
前回は「待つ」という事でしたけど今回は「見る」という事ですね。
さっきの炭火のお話がありましたけどもパッと見た目にはもう何ももう消えかかっていて何もない。
しかし息を吹きかけるとそこに何かこう脈々と燃えてるものが見えてくるという事ですね。
今ここで注目したい「見る」というのはそういう感じなんですね。
ただ眺めてるって事ではなくてそのきちんと見ないと見えないものを見てるという。
そうですね。
「味を見る」とかそうですもんね。
そうです。
「風を見る」とか「味を見る」とかそういうふうな使い方。
鷹山はその炭火を見てハッと何か教訓を得るわけですけどそれを見ながらどういう事を気付く…?なるほど。
あの弱き者のための改革を目指した上杉鷹山。
まず農業の立て直しに励むために「籍田の礼」という行事をするんだそうですね。
これは鷹山自らがくわを持って大地に感謝するという儀式なんですけどねやっぱり鷹山が人々に示したのは全てのものは自然からくるんだという事なんだと思うんです。
大地と共に民を大切にした鷹山に内村は東洋の美徳を読み取りました。
あの改革者としての鷹山の姿勢として重要なキーワードを若松さん2つ挙げて下さいました。
これやっぱり託されたってとこが大事だと思うんですね。
「天」は今までお話ししてきた大いなるものって事ですけども大いなるものから預けられてるという事なんですね。
預けられてるというのはどういう事かっていうとそれを自分の自由にしてはならないって事だと思うんです。
そしてあわよくばよりよくして預けられたものに返すというのが託されるって事のとても大事な事だと思うんです。
これ大事ですね。
自由競争社会の中で弱者というか敗者は捨てていくという選択ってありますよね。
今ニートです。
もうしょうがないよ君は能力がないんだからという。
君が努力しなかったんだからって捨ててく世の中だと思うんですけどそれは許されないわけですよね。
託されたものだから。
そうなんです。
それはもう絶対にあってはならない。
そしてもう一つのキーワードが…。
「経済」というのは我々の生活ですね。
「道徳」というのは我々の人生だと思えばいいかもしれません。
生活というのは日々のごはんを食べたり寝たりというような生活ですね。
人生というのは何て言うんでしょうその人にとって掛けがえのない何かですね。
それがちょうど縦軸と横軸にこうなってるような感じだと思うんですね。
それは分けられない所だと思うんです。
これ鷹山もすごいですけどやっぱり内村はすごいですね。
僕その世の中が今真逆の方に行ってるような気がするんですよね。
その効率のいいものがよい仕事とされてしかもその仕事にありつけなかった人は切り捨てられるという事で両方とも真逆の方に行ってて僕はそれはもしかしたらある程度西洋から来たスタイルだと思うんですね。
それは違いますって日本のやり方と違いますって事をこの時に言ってるんですね。
そうですね。
要は我々はなぜ仕事をするのかと。
それは我々が幸せになるためだという事で本当の意味での幸せをつかみ取るために我々は仕事をするのだという事ですね。
幸せになるために仕事をしてるのにその仕事自体が自分を不幸せにするという事のその矛盾ですよね。
そうなんですね。
それが現代が抱えてるとても大きな問題だと言えるかもしれませんね。
この鷹山は本当に民に愛されて70歳で亡くなりました。
彼の最期を内村はとても美しい文章で書いています。
どうぞ。
う〜ん…これもあったかい文章だな。
大事なのはやっぱりみんなが泣いた事な気がするんですよね。
成し遂げた事のよりすごさみたいのがちょっと伝わってきましたね。
そういう意味でとても美しい場面だと思いますけどもね。
上杉鷹山というのを一人の個人の名前として我々は読みがちなんですけどねもうこの最後の場面まで来ると…それは単に深く…嘆きの涙だけではなくて何かもう少し深い所にある…何ていうんでしょうかね。
あとここで今「山川草木」というとても日本らしい言葉が出てきますけども生けるもの全てがここに力を貸してそして共に悲しみ共に喜んだんだという事だと思うんですね。
キリスト教徒のそれこそ教科書では代表みたいに僕は習ってた内村鑑三がこれをこう書くんですね。
そうなんですね。
これはとてもすばらしいところですよね。
ビジネス書として引用されてきた上杉鷹山像ってちょっとコストカットの面とかがすごくクローズアップされてるような気がするんですけどそれと同時に覚えとかなきゃいけないのは見捨てないっていう。
そうです。
内村さんの書いた鷹山像を見るとそれ僕ちょっと。
内村さんにとってはだから…ここで訴えかけてるんだと思うんですよね。
ちょっと次の「見る」の人。
そうか2人だ今日は。
続いての「見る」のキーワードの人は二宮尊徳さんでございます。
農家に生まれた少年。
勤勉と倹約に努めて没落した生家を再興し更には荒廃していた農村をよみがらせる指導者となっていた人なんですね。
内村は二宮尊徳どういうところに注目したんでしょう?尊徳というのは普通のうちに生まれた。
それが時代をリードするような改革者になっていくわけですね。
ですのでこの二宮尊徳の生涯を読むというのは我々に宿っている可能性をどう発見していくのかという物語になっていくんじゃないかなと思いますね。
それでは二宮尊徳の物語をお聴き下さい。
二宮尊徳は相模国の農家に生まれました。
少年時代に川の氾濫で生家と田畑を流され家は没落。
尊徳は汗と泥にまみれて一生懸命働きながら勉強に励みました。
勤労と倹約の日々を経て二十歳で田畑を再興。
生家も建て直します。
その手腕を見込まれ荒れ果てた農村を指導する公務を授かります。
尊徳は厳しい覚悟で引き受けました。
へ〜。
しかも当時の家ですもんね。
頑張って頑張って再興したしかも家を捨てるんですもんね。
何もかも捨てて。
そうなんですね。
「何もかも捨てて」という言い方もできるんですけどもやっぱり本当に自分を得るという事でもあるんだと思うんです。
捨てる事で。
要は自分は捨てようがないですよね。
最後まで捨てられないものが自分という事なんだと思うんです。
そこが大事なんですけどもそれを二番にするというのがこの人の人生なんですよね。
もう本当に捨てられない自分というのが最後に残りますね。
それを一番にしたくなるのが人生ですけどそれを民のために二番にしてみるというのがこの人のスタートなんです。
ここがとても大事なところだと思いますね。
言いかえるとその捨てられない自分が民のために生きる自分という事だから。
そういう事なんです。
うわ〜もう何か何重にもすごいな。
いやかっこいい指導者ですねこれは。
何か他者とその自分の境目がないというか。
まあ無私という事。
ほんとに無私ですね。
俺ちょっと頭でちらちらしてるのが「夜と霧」。
人生に期待をするな人生に何を期待されるかだみたいな言葉ここで聞いた時にはぼんやりだったんですけど何かそんな感じです。
同じですね。
自分が天に期待するんじゃないと。
そうです。
天が自分に何をさせたいのか期待してるのかという事。
とても近いと思いますね。
でも二宮尊徳からそこにつながるというのはやっぱりすごい普遍的なメッセージが。
それはもう要するに東洋西洋関係なくある程度大事な事を受け取ってるんですねきっとね。
小田原藩の荒廃した農村をよみがえらせた二宮尊徳。
内村が紹介したのはリーダーたる人が持つべき視点を教えてくれる逸話でした。
それは農村の開墾指導をしていた尊徳が村人の働きぶりを見て回っていた時の事です。
すばらしい。
すばらしい。
まあ何か今世の中的にはこういう人たちがちょっと軽んじられてる気がするんですね。
俺高速道路の入り口のおじさんとちょっとひと言ふた言「寒いね」とかは割と大切な事だと思ってるんだけどなくていいって考えちゃうじゃない。
だけど多分二宮尊徳は何かそこにある事故防止効果なのかもしれないしね高速道路の入り口が無人じゃない事に対する彼が何かに貢献してるって事をちゃんと分かってくれるところが。
すごく大事なのは仕事というのはいつの間にか上下優劣というのはランクがついてきますでしょう。
何となく。
分かります。
尊徳はそこをもう決定的に壊していくわけですよね。
仕事というのは仕事で優劣ではないのだ上下ではないのだという事だと思います。
もっと言うと優劣上下をつけたところから問題が発生してるんだという事なんだと思うんです。
そこを打ち砕いていくのはとても大事な事じゃないですかね。
リーダーになったこの尊徳村の再興を成し遂げるんですね。
しかし彼の仕事の本当の成果はその田畑をよみがえらせる事ではなかったと内村は書いているんです。
最も大きな尊徳が成し遂げた事は「誠実」という事だったんだという事だと思うんですよね。
道路を造ったとか田畑を改良したとかそういう事ももちろんそうなんだけどもそういう誰もやりたがらない仕事というのはそこに誠実というものがなければ決してなしえないんだという事なんですよね。
ぐっとやっぱり鷹山とセットになりましたね。
いや近いですよね。
でもやっぱり西郷ともつながってるんですよね。
つながりますね。
何かこう自分を捨てて弱い人もしくはどこにでもいるような人の事から考えてみたいな。
何か分かってきました。
まだ2夜目ですけど。
心に刻みました。
「100分de名著」「代表的日本人」。
次回はまた好対照な2人を取り上げます。
若松さん今日も面白かったです。
ありがとうございました。
2016/01/13(水) 22:00〜22:25
NHKEテレ1大阪
100分de名著 内村鑑三 代表的日本人 第2回▽試練は人生からの問いである[解][字]
「代表的日本人」で描かれる、偉大な改革を成し遂げた米沢藩主・上杉鷹山と農民聖者・二宮尊徳。彼らの生き方から、試練を好機に変えていく「誠意」の大事さを学んでいく。
詳細情報
番組内容
「代表的日本人」には、試練を好機ととらえることで、偉大な改革を成し遂げた日本人が描かれている。米沢藩主・上杉鷹山と農民聖者・二宮尊徳だ。彼らはどんなすさんだ民の心にも誠意をもって向き合い、道徳的な力を引き出そうとした。その結果、途方もない公共事業を次々と成し遂げていった。第二回は、上杉鷹山と二宮尊徳の生き方を通して、試練を好機に変えていく「誠意」の大事さを学んでいく。
出演者
【講師】批評家…若松英輔,【司会】伊集院光,武内陶子,【朗読】筧利夫,【語り】小口貴子
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 文学・文芸
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
趣味/教育 – 生涯教育・資格
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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日本語(解説)
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