(江本晴美)うちがあの子と関係してたとでも思うてるんですか?
(音川洋子)もしかして振られた?
(稲葉捜査一課長)あなたの処分は決定しています。
(鎌田一郎)俺は俺のやり方でやる。
(井上伸子)歩けないだけじゃなくて心のほうもね。
殺されたのは俺の息子だ!ああーっ!
(音川音次郎)おはようさん。
(一同)おはようございます。
おっす。
(草森刑事)あれ?今日休みちゃいますの?いや昨日夜勤やったさかいなこれから仕事や。
予定表公休になってまっせ。
えっ?公休って課長これどないなってまんねや?
(稲葉)秋山管理課長からあなたが働きすぎだという苦情が出てましてね。
(秋山管理課長)うん。
お前な公休が山のようにたまっとんのじゃ。
ちぃと使うてもらわんと労働基準法に触れるさかいな。
さあ行こう行こう。
ははっ。
さあ早よ行こう。
渋井はん。
今日なちょっと用があるさかい。
頼むわ。
なっ?ははっ。
さあさあ。
野菜どうどすー?採れたてのネギありまっせ。
大根どうどすー?
(秋山)このおばんざい屋な。
わしが最近行きつけの店や。
(森口早苗)まあ秋山さん!おいでやす。
早苗はん連れてきましたで。
ほなこちらが?音川音次郎。
森口早苗です。
よろしゅうお願いします。
音川です。
(秋山)どや?べっぴんさんやろな。
ホンマきれいな人でんなぁ。
そうやろなぁ!・
(早苗)お越しやす。
どうぞ。
音やんのタイプやとなわしゃずーっとにらんどったんじゃ。
こんにちは。
洋子何やお前どないしたんや?いやどないしたも何もやね秋山のおっちゃんが用事があるから出てこいって電話くれはったんよ。
ねっ?課長あんた何か企んでますやろ?実はな今から音やんに紹介したい人がおんねや。
紹介って誰ですねん?その人はな7年前に病でご主人を亡くさはった未亡人やけどもまあ女手ひとつで立派に2人のお子さん育ててはるしっかりしたお人やねん。
ちょっと待って秋山のおっちゃん。
うん?もしかしたらその人とお父ちゃんをこれからお見合いさせるつもり?そうや。
そのつもりで洋子ちゃんにも来てもろたんや。
それやったらそれで最初からちゃんと言うてもらわな困りますがな。
けどこうでもせんとお前いつでも尻込みして会わずじまいに決まっとるやないか!でその人これからここに来はりまんのか?いやもういてはる。
えっ?お前はんの目の前に。
どうぞ。
あっ。
そちらはな音やんの一人娘で洋子ちゃん。
まあ初めまして。
初めまして。
どうやろ?こいつ見てくれはこんなんやけどな中身はわしが保証するさかい。
ひとつ真剣に付き合うてやってもらえんやろか?もう音川さんさえよろしかったらうちのほうは。
音やんはどうや?急に言われてもでんなぁ…。
辛気臭いなぁ。
さっききれいな人やって言うたやないかい。
あれは嘘やったんか?そりゃまあ嘘やおまへんけど…。
ええやないの。
お付き合いするぐらい。
うんそりゃまあな…。
ホンマに照れ屋で。
あのふつつかな父ですけどどうぞよろしくお願いします。
いいえこちらこそ。
ああ和彦君と若菜ちゃんは?いてます。
2人共出ておいで!ちゃんとごあいさつしなさい。
あの長男の和彦が高校2年生。
妹の若菜が中学1年生です。
こんな大きなお子さんがいてはりましたんかいな。
ええ人やのに惜しいなぁ。
何が惜しいねん?だってあんな大きな子が2人もおるんよ?うん…まあな。
けど家族が増えたらにぎやかでええがな。
その分苦労も増えるやないの。
苦労も増えるけどもまた楽しみも増えるがな。
あら?えらい乗り気やないの?えっ?ひょっとして一目ぼれ?アホな事言うな。
(パトカーのサイレン)近くやな。
おう。
何や?うわっ。
神出鬼没ですね音川さん。
秋山はんと1杯飲んだ帰りやがな。
どないしたんや?傷害ですわ。
というても殺人に切り替わるやろ思いますけど。
ねえ?
(小杉刑事)うん。
刃物で腹刺されてもうあきまへんわ。
せやけど殺生な話でっせ。
こんなとこに1時間以上も倒れてんのに誰一人として気にもせえへんかった。
あんさんかてもうちょっと何で早う救急車呼ばなんだ?すんません酔っ払いかと思ったんで。
こんな人通りの多いところにほったらかしでっせ。
ホンマに信じられませんわ。
まあこの辺りはなぁ暗うなったら酔うたにいちゃんがようひっくり返ってるさかい。
無理ないわ。
ま〜た無駄遣いしくさってしょんない奴やなぁ。
おいお前らもできるだけ自分の足で歩いてや!はい。
ホンマにもう…。
何をぶつぶつ言うてまんねや?草森やがなもう…。
あいつ電車に乗らんとタクシーばっかり乗り回してけつかんねんいっぺん怒ったらなあかんわもう…。
課長。
えっ?昨日はいろいろお世話になりまして。
どうや?もう腹くくったか?たった一晩で腹くくれまっかいな。
何でやねん?気に入ったんやったら素直にプロポーズしたらどうやねん?ホンマに…。
まあバタバタせんとゆっくり考えさせてもらいますわ。
けったいな奴や。
それはそうと昨夜の被害者京南大の学生やったんやなぁ。
鎌田浩平でっか。
う〜ん…。
京南大っちゅうたらお前国立で日本でも1〜2の学校や。
そんな立派な学校へ入ってやで?コロッと逝かれてしまうやなんてまあ親御さんにしたらホンマにやりきれんで。
ホンマですなぁ…。
課長。
今度の事件なんですがね…。
まあこのヤマはあなたに任せますので好きなようにやってください。
ええと私は朝のコーヒーを失礼します。
ああ…。
(稲葉の鼻歌)課長。
今度の課長でっけどえらいのんびりした方でんなぁ。
あれはなわいらみたいな叩き上げとは別世界の人間や。
次の異動ではもう警視庁へ戻る事が内定してはるエリートはんやからな。
ほな今の席はほんの腰掛けっちゅう事でっか?そやからあない新聞ばっかり読んでコーヒー飲んで暇つぶしとんのや!ふ〜んうらやましい限りでんなぁ。
わいらとは全然待遇が違うねや。
あっご苦労さん。
検視終わったそうやな?はい。
根室から親御さん駆けつけて今遺体と対面してはります。
・
(ドアの開く音)この度はご愁傷さまです。
犯人は捕まえたのか?今捜査が始まったばっかりですんで。
すいません。
2〜3お伺いしたい事があります。
息子さん何ぞトラブルを抱え込んでいませんでしたか?
(山田刑事)何か悩んでおられたというような事は?誰かに恨まれていたという事は?俺の息子は…人から恨まれるような人間でねぇ!そうですか…。
北海道からおいでになりましたん。
ご苦労さんでした。
置いてもう…。
・
(ドアの開く音)
(高村友子)ごめんなさい。
鎌田君のお父さんですね?私高村友子っていいます。
(友子)鎌田君とは大学の友達でアパートにも何度か…。
あの…。
ここへ行くにはどういうふうに?さっきも鎌田さんのお父さんっちゅう人がおいでやしたんですけどねぇ。
そうですか。
あっ音川さんご苦労さまです。
おうどないしたんや?さいぜん課長に連絡したら捜査の指示音川さんにあおぐように言われまして。
ああそうか。
大学のほう回ってたんやったな。
どやった?事務局でもいろいろ調べたんですけどガイシャの鎌田浩平頭はよかったみたいですね。
(土井刑事)高校時代の成績は北海道でトップクラス。
大学でも成績は上位のほうですわ。
まあですが決して真面目な学生とは言えんかったみたいですわ。
と言うと?講義の出席数は最低で2年3年と単位ギリギリで進級してます。
大学も全然行かんとね金儲けに精出してたみたいですよ。
ふ〜ん。
金儲けなぁ。
がっちり貯めてるがな。
貯めてますねぇ。
学生にも当たってみたんですけど株やってたり友達に金ヨイショしたりえらいこまめに稼いでたみたいでっせ。
ふっ付いたあだ名が小商い君。
ほお。
これからガイシャのバイト先当たってみよう思うてるんですが。
バイトやっとったのか?これがねとても学生とは思えんいかがわしい場所なんですよ。
一緒に行きます?うん。
この辺りだと思うんですけど…。
(吉岡俊也)お客さんありがとうございます!どうぞまた寄ってください。
おおきにありがとうございました!あっお客さん。
今サービスタイムで30分3000円でっせ。
3000円で触り放題でっせ。
ええ娘揃うてまんねん。
(店内の音楽)すんませーん!料金先払いになってますねん。
責任者に会いたい。
事務所はどこですか?事務所あの奥やけど何の用件でっしゃろ?何やおっさん!イチャモンつけに来たんかい!えっ?こらっ!ああーっ!きゃーっ!あんたが責任者か?
(福島達郎)あっいえ。
私は…。
責任者って店長の事でしょうか?ああそうだ。
店長は鎌田浩平ですけど…。
浩平…?浩平が店長?
(一郎)それはどういう訳なんだ?こらおっさん!どういうつもりやねん!?こら!何の用事があんねん!?こら!こらくそ!何の用があんねん!?こら!ええっ?おいやめなさい!何を言ってるんや!やめやめ…!おとなしくせえ!やめんか!京都府警や。
このおっさん急に暴れ出してむっちゃくちゃしますねん!落ち着けこら!おとなしくしなさい!傷害罪の現行犯ですがな!その人にはな暴れる理由があんねや。
暴れる理由って何ですねんな?亡くなった鎌田浩平さんの父親やさかいな。
えっ?昨夜の事件知ってるか?はあ。
まっどうぞ。
どうぞ座ってください。
まあ落ち着いてください。
亡くなった鎌田さんやけども昨日ここへ出勤してたんか?はあ。
昼過ぎから店に。
何時頃まで?ええそれが昨日はあいつ閉店まで勤務する予定やったんですけどそれが6時頃出て行ってそのまま…。
6時か。
はあ。
それから1時間ばかり経った7時頃になこの近くの路地に倒れてるのをラーメン屋のにいちゃんが発見したんや。
6時から7時までの間どこ行ってたか何か心当たりないか?う〜ん出かける時に食事してくる言うてましたけど。
いや飯は食うとらん。
胃の中のものは完全に消化されとる。
客ともめたような事なかったか?福ちゃんそんな事あったかいな?いえ!そんな事はいっぺんも…。
う〜ん…。
仕事の事で何かトラブルがあったとか?何や?ええ…実はあいつ店の金使い込みまして。
どういうこっちゃ?ええ。
昨夜閉店してから店のママがその金庫開けたら金がごっそりなくなってたんですわ。
金額は?2百万。
あいつ普段から金にはガツガツしてますやさかい。
魔が差したんでしょうな。
俺の息子を泥棒呼ばわりする気か!?泥棒を泥棒と呼んで何が悪いねん!?おいちょっと…!やめろ!あかんあかん!イッテ…!鎌田さんが盗んだっちゅう証拠でもあんのか?金庫の暗号知っとんのは店のママと店長のあいつだけですねん。
あんたの息子以外に金盗める奴おれへんやん。
くそ…!
(草森)おいちょっと…やめろ!鎌田さんあなた息子さんに最後に会われたのはいつの事ですか?2年前の夏根室へ戻ってきた時。
そうですか。
2年前から比べると息子さんだいぶ人間が変わったみたいですな。
もう調べて回らんほうがええのと違いますかな。
親として耳に入れとうない事もいろいろ出てくるでしょうしな。
人が何と言おうと俺は息子を信じてる。
・
(リポーター)「私は今昨日腹部を刺され殺害された京南大学学生鎌田浩平さんがアルバイトをしていたファッションサロンの前に来ています」「地元北海道での高校の成績も大学での成績もトップクラスだった彼がなぜ風俗店で働かなければならなかったのか」「なぜ殺されなければならなかったのかを徹底的に取材したいと思います」えらい災難やったな。
笑い事ちゃいまっせ。
あの根室のおっさんどうかしてますわ。
訴えたろうか…。
けどまあ親にしてみたらや一生懸命働いて一流大学へ入れた息子が学校行かんとファッションサロンでアルバイトしてたって言うんやから頭にもくるわいな。
かなりショックやったでしょうな。
田舎から出てきた子が都会の軽薄の風潮に流されるっちゅうのはこれようあるパターンですからな。
調べたらまだまだいかがわしい事が出てくるかもしれんぞ。
殺されたのもこれ案外身から出た錆っちゅうやつちゃいますのこれ。
ねえ?いずれにしても問題はガイシャが午後6時に店を出て7時に発見されるまでの空白の1時間ですな…。
その間鎌田浩平がどこにいたかが捜査の重要なポイントになると思われます。
ええその点に留意して捜査を進めてください。
以上。
(秋山)ちょっとちょっと課長。
大事な事忘れてはりまっせ。
金庫からのうなった2百万どないなりまんの?そうか…その点について何か…。
店の者が金の紛失に気がついたんは昨日の閉店後や。
それまで金庫の中身は変わりはなかった。
そうやな?音やん。
ええそのとおりです。
ちゅう事はや鎌田浩平が2百万持ち出したのは昨夜店を出る時。
つまり殺される直前やったっちゅう事になりまへんか?
(小杉)しかしおかしいですな。
ガイシャは何で5百万以上も預金があるのに店の金に手つけたんでしょう?その点もはっきりさせなきゃいけませんねぇ。
とりあえず暴力団当たってみ。
ああいう店にはよう出入りしとるわい。
やあ秋山さん。
さすがは現場一筋ですな。
伊達に歳はとっとりまへんわ。
いやいや…。
ええ?まあまあおかけください。
何でんねん?いえいえ…。
いやぁさすがお似合いですね。
あの私これから懇親会行ってきますんで後はよろしく。
(稲葉の鼻歌)
(秋山)何やあいつ。
捜査に身も入れんと飲む事ばっかり考えとる。
課長あんたやっぱりこの席が一番似合うてますわ。
ははっアホな事言うなお前。
これちょっと見てもらえまへんか?何や?従業員の名簿やないか。
ええ。
経営者江本晴美となってますやろ?住所ですわ。
(秋山)何や?店の近くやな。
ええ。
犯行現場から歩いても10分の距離ですわ。
(チャイム)
(チャイム)江本晴美さんですか?そうですけど…。
京都府警の音川と申します。
ちょっとお時間いただけますかな。
鎌田浩平さんを雇われたんはいつ頃の事ですか?半年ぐらい前です。
ほう。
相当浩平さんには目を懸けておられたようですな。
いいえそれほどでも。
いやいや。
しかしでっせ大学生のバイトが半年足らずで店長になるっちゅうのはよっぽどの事やありませんか。
そらまあ…あの子にはそれだけの力ありましたし。
力言いますと?一流大学の経済学部に籍を置いてるだけあってコストの減らし方から帳簿のつけ方まで何でもできますねん。
しかしそれだけやありませんやろ。
何がです?浩平さんに目を懸けられた理由ですわ。
おっしゃってる意味がようわかりませんけど。
浩平さんあなたの部屋へ行った事ありますわな。
あります。
店の事でいろいろ相談もあるし。
相談だけでっか?他に何の用事があるんですか?男と女やったらいろいろありますやろ。
うちがあの子と関係してたとでも思うてるんですか?せやなかったら金庫の暗証番号まで教えまへんやろ。
(ため息)それがうちの一生一度の不覚や。
お陰で2百万も損したわ。
うち用事ありますしもうよろしいやろ。
ああそれからもう1つ。
一昨日の夜6時から7時までの間あんたどこにいはりました?家にいてました。
その時浩平さん訪ねてきませんでしたかな?記憶にございません。
(店員)ありがとうございました。
(鎌田浩平)歳だよ。
はははっ。
俺が引き継がなきゃ。
もしもし。
伸子さんかね?わしだ。
うんうんわし。
織江の具合はどうかね?うん?大丈夫?ハーモニカ吹いて…うん。
すまねぇがもうしばらく織江の世話を…。
うん?いや…まだ帰れねんだわ。
何としても蹴りつかねばならねぇ事あってな。
こんちは。
今日学校休みか?ごめんやす。
どうぞ。
ああどうも。
いや久しぶりのサバのみそ煮おいしゅうおした。
おおきに。
和彦君ですけどもバイク好きなんですか?ええ。
去年原付きの免許取ってからもう夢中で。
はあそうですか。
この頃あの子学校さぼって悪い仲間と付き合うてるようなんです。
悪い仲間言いますと?それが暴走族みたいな。
何ぞ問題でも起こしましたんかいな?いえそっちのほうでは。
けど万引きで補導された事が…。
ああそうですか。
こんな大事な事言わんと黙っててすいませんでした。
いやいや気にせんといてください。
お母さん一人で何もかも大変ですわな。
困った事があったら何でも言うてください。
ホンマですか?ええ。
まあ私にできる事やったら力になりますさかいに。
ああそない言うていただけると心丈夫です。
お客さんからもろたお芝居の招待券2枚あるんですけど。
ああ。
おお〜南座でっか。
チケットが2枚。
あっははっ。
あっ…。
あんたに訊きたい事がある。
あんた知ってんだろ?浩平が殺される前にどこへ行ったか。
ええっ?言えよ!あの日電話がかかってきて…。
浩平にか?誰から?ああっ!誰から!?ママから…!ママ…?店のママか?ええっ?あっ…!今月分です。
まいど。
あんたが江本晴美か?何なの突然。
あんた誰?浩平の父親だ。
あんた浩平を電話で自分の家に呼んだそうだな。
何の事やら。
浩平が殺された晩の事だ。
何で呼んだ?どんな用事で呼んだんだ。
教えてくれ。
えっ?離して…ちょっ!どんな用事で呼んだんだよ!おいおっさん。
ほら。
教えてくれ!こらおっさん!浩平は…!なめんな!おら!おらー!
(悲鳴)
(瓶を割る音)やあっ!
(秋山)何や南座?いえ何でもおまへん。
へえ〜。
・
(草森)あっ音川さん。
おう。
えらいこってすぜ。
あの根室のおっさん逮捕されましたで。
根室のおっさんて鎌田はんがか?ええ。
何でや?また。
例のファッションサロンにまたぞろ押しかけて行ったらしいんですわ。
間の悪い事にちょうど花岡組の若い者がショバ代の集金に来てたとかで…。
殴り合いの大ゲンカ。
うん。
鎌田はん引っ張ってったのは四課か?はい。
(刑事)次小指な。
よいしょ。
薬指…。
はい中指。
人差し指…。
お願いですわ課長。
釈放してもらえませんかなぁ。
あの親父さんは息子さん殺されて今一生懸命なんですよ。
何かやってんと気が落ち着かんのですわ。
いやぁ私は子の親としてあの親父さんの気持ちが痛いほどわかるんですわ。
(捜査四課長)そう言われてもな。
告訴状は?いや。
店のほうも訴えるつもりはないようやしな。
じゃあ初犯という事で…。
被害者の遺族という情状もある事ですしね。
課長お願いですわ。
もう課長にはもう絶対迷惑かけまへんさかい。
しゃあないな…ええやろ。
そこまで言うんなら顔立てよ。
そうですか。
ありがとうございます。
恩に着ます。
(ため息)洋子さん。
ごめんなさい。
お父ちゃん急に仕事で来られへんようになってしもて。
ああそうなの。
本当にごめんなさいね。
そのかわりあのうちが代役務めさせてもらいますから。
ちょっとチケット買いますから。
あっ洋子さん!洋子さん!はい?お食事まだなんでしょ?ええ…。
それやったらお芝居もう始まってるしどっかおいしいもんでも食べに行きましょ。
あっ…ええ…。
(店主)お待っとうさん。
あのお店の経営者…。
江本晴美さんかいな。
調べたのか?調べた。
浩平は殺される前にあの女と一緒にいた。
どういう事なんだ。
浩平はあの女と…そういう関係だったのか?教えてくれ。
なあ鎌田はん。
あんたもうぼちぼち根室へ帰ったほうがええのとちゃうかな。
このままずーっと京都におってもつろうなるばっかりや。
帰ってどうする。
(ため息)一人息子を殺されて訳もわからずただ悲しんでろっていうのか?捜査は警察に任せて明日根室へ帰るとわしと約束してくれんかな。
警察なんぞ当てになるか。
俺は俺のやり方でやる。
・
(引き戸の開閉音)すまん。
すまん。
すまんかったな。
このとおりや。
なっ。
ほんまにもう…。
早苗さん怒ってはったか?それがね怒るどころかうちにかえって気を使ってくれはって余計気の毒になったわ。
悪い事してしもうたなぁ。
点数だいぶ下がったね。
あかんか…。
落第やろなぁ。
ふふっ冗談。
えっ?あの人ね刑事の仕事が大変やってちゃ〜んとわかってはるしお父ちゃんにはぴったりな人やね。
そう思うか。
あんなええ人絶対逃がしたらあかんよ。
うん。
なあ洋子。
うん?やっぱ電話で謝っといたほうがええかな?当然よ。
そうか。
よっしゃ。
ええ…。
わっ…ひっ!あんたにまだ訊きたい事がある。
金の事だ。
金…?金庫からなくなった金だ。
あんた…本当に浩平が盗ったと思うのか?ええ?本当に浩平が盗ったと思うのか?あいつは浩平が盗んだって言った。
俺あいつに会って本当の事を聞きたいんだ!あいつの家を教えてくれ。
ああっ!どこにいるんだ?あいつは。
教えてくれ!ああっうう…!えっ!?吉岡が山根組に借金してたって事ですか?うん。
おい鈴木!はい。
で吉岡は何ぼ借金してましたんや?百万以上は。
博打でこさえた借金のようです。
ああさよか。
取り立てかなりきついんでっしゃろなぁ。
でしょうなぁ。
山根組はケツの毛までむしるって評判ですさかい。
そうですか…。
どういう事でっしゃろ?借金してたのが殺された鎌田浩平ならつじつまが合うんですが。
うん。
まあとにかく吉岡と山根組洗ってみてくれ。
わしちょっと他当たってみるから。
任せといてください。
頼むで。
高村友子さんですか?はい。
鎌田さんとはどのくらいのお付き合いやったんですか?知り合ったのは3か月くらい前です。
彼がファッションサロンでバイトしてたっちゅう事はご存知やったんですか?全然…。
この間初めて知って本当にびっくりしました。
実はですな彼が店の金庫から金を盗んだと証言してる人がおるんですがね。
そんな!彼そんな事する人じゃありません!しかしですな学生の割りには随分まとまったお金を貯めてたようですしそれがどうも引っかかりましてね。
彼がお金を貯めていたのはちゃんとした真面目な気持ちで…。
ほう。
何か目的でもあったんですかな?お母さんのためにお金を貯めてるって。
お母さんの?それどういう事なんでしょう?私もそれ以上の事は…。
彼家族の事あんまり話したがらなかったので。
ただお母さんのためだって。
(電話)ああもしもし?音川です。
(小杉)「小杉です。
えらい朝早うすいません」いやぁそれはええのやけど何やねん?吉岡俊也が自分のマンションの屋上から落ちて死にました。
ええ…!?「で事故か他殺かどっちや?」
(小杉)死体には殴られた形跡も残ってますし屋上には血痕も残ってます。
まず他殺と見て間違いありません。
ここが片付き次第山根組のほうを当たってみます。
(ノック)鎌田さんのお父さんやったら根室帰らはったようですわ。
帰らはった?はい。
何か変わった様子ありませんでしたか?何かね知らん間に郵便受けに鍵放り込んで帰らはったんですわ。
課長判お願いします。
うん?根室?ええ。
鎌田一郎に会うて確かめたい事があるんですわ。
(秋山)課長!そらあきまへん!それでのうても今月うちの予算オーバーしてんのにそう簡単にハンコポンポンつかれたら管理課長としてのわしの立場がおまへんがな!お願いします。
あきまへん!どっちなんですか?課長。
土産物やったらちゃんと買うてきまんがな。
いやわしゃな土産物が欲しいてイチャモンつけてんの違うんじゃ!じゃあいりまへんのか?いらん事はないけども…。
何?いるのかいらんのかはっきりしなはれて。
(秋山)ううう…。
ちょっと待っとれ!はいいらっしゃいませ。
根室行きのバスは何時に出るんですかね?はいあちらから11時30分に出発いたします。
あっそうですか。
おおきにどうも。
あっこんにちは。
鎌田一郎さんのお宅どちらでしょうか?鎌田さん?
(放送の音楽)
(ハーモニカの音色)
(鎌田織江)早く帰らないと学校から浩平が。
そうか。
浩平が帰ってくるな。
今朝浩平がカレー食べたいって。
そっか…じゃあ早く帰って作らないとな。
(リポーター)「ここは立て続けに殺害された現役京南大学学生店長鎌田浩平さんと従業員吉岡俊也さんが勤めていた風俗店です」「連続した殺害事件の被害者が同じ風俗店の従業員だった…」あっ先ほどはどうも。
はいいらっしゃい。
一郎さんに会えたかね?ええお陰さんで。
しばれるっしょ。
ここさ座って。
温まったら?ええ。
どうも。
ラーメンか何か食べるかね?じゃあ味噌ラーメンお願いできますか?はい!あの…女将さん鎌田さんとはお親しいんですか?ああそれはまあ近所だからね。
お客さん何か鎌田さんの事で調べてるんですか?ええまあ…。
したらあの漁業関係の?いえそうやないんですが。
(客)警察の人だべさ。
警察!?あれまあ!じゃあ浩平ちゃんの事いろいろ調べてるんですか?えっええまあ…。
そうですか〜。
あたしゃね〜あのニュース見た時はたまげたよ〜!何であんないい子が殺されたんだべね〜。
(客)親孝行ないい息子だったけどな。
ホントだよ〜。
あんないい子が何で殺されたんだろうね〜?
(客)親父と一緒によく船さ乗ってたべ。
母親の面倒もよく見て一郎さんが留守の時は自分でご飯作って織江さんに食べさせてたんだよ〜。
ああ…。
あの奥さん車椅子に乗ってはりますなぁ。
何ぞ事故でも?いえ。
それが何年も前にひどいショックを受けたとかで。
ああそれで歩けんようになった訳ですか。
歩けないだけじゃなくて心のほうもね。
だんだん子供みたいになって。
何でもね人間あんまりひどい目に遭わされるとそのショックを忘れたい一心で子供に戻ってしまう事があるんだって。
子供に戻るて…何ぞあったんですか?鎌田さん一家が釧路に住んでる時の事だからあまりよくはわからないんだけどもその頃織江さんが働いてた缶詰工場で盗難事件があったらしくて。
あの人疑われて逮捕されたんですって。
それで警察に何日も何日もさんざん調べられた揚げ句あの人犯人じゃなかったんだって!あららら…。
でね犯人でもないのに白状しろ白状しろって警察に責められたんだからね〜。
そりゃおかしゅうもなるわな。
そん時ね一郎さんはマグロ船に乗ってインド洋に行ってたらしいんですよ。
それでひと月ぶりに我が家に帰ってきたらまあ奥さんは口もきけなきゃご飯も食べられない。
そんな有り様だからたまったもんじゃないですよね。
はあ…。
(客)ひでぇ話だよ。
(伸子)ほんで一郎さん達は釧路にいらんなくなってこっちさね〜。
刑事さんも気ぃつけたほうがええわ。
あの人は警察に恨み持ってっから。
そんならあの奥さんまだ息子さんの事は…。
何も知らされてませんよ。
織江さんはいつも黙ってハーモニカばっかり吹いてるんだけど浩平ちゃんの事だけはときどき思い出すんですよ。
それがあの人の生きてく支えなんだからね!殺されたなんて言えませんよ。
(伸子)浩平ちゃんのお骨だってお寺に預けたまんまで葬式も出してないんだからね〜。
一郎さんもなんまらつれぇべなぁ。
つらいよね〜!警察は何やってんだろうね!ホントに!ああ…どうも。
あっ…。
部屋の予約をさせていただいた京都の音川っちゅう者ですけど。
お待ちしておりました。
こちらのほうにお名前ご住所お電話番号ご記入いただいてもよろしいでしょうか。
・
(ドアの開く音)ああどうも。
お呼びしてすんまへんな。
ちょっと女将さんにお訊きしたい事ありましてね。
はい。
どのような事でございましょうか?女将さん鎌田一郎さんって方ご存知やおまへんやろか?はい鎌田一郎さんでしたら樺太からの引き揚げ者でうちの両親と一緒ですのでよく存じ上げておりますが。
はあ…。
樺太からいうたら終戦直後の事で大変やったでしょうな。
はい。
ソ連兵に追われて命からがら引き揚げて来たそうです。
そうでしょうなぁ。
・
(電話)ちょっと失礼いたします。
(電話)はい?あっ音川様に。
はい。
京都からお電話が入ってるそうです。
あっ。
あっすんまへん。
はいかわりました。
(稲葉)「いやぁちょっと厄介な事が起きましてねぇ」はっ?吉岡俊也の墜落死したマンションの屋上から鎌田一郎の指紋が検出されたんです。
鎌田一郎の?「それでできれば明日にでも本人の身柄を同行してきてもらいたいんですが」ちょちょ…。
音やんお前四課に掛け合うて鎌田一郎釈放させたそうやな。
お前えらい勇み足や。
もし鎌田がホンボシやってみぃ!「始末書ぐらいでは済まんぞ!」ああ…。
(和太鼓の演奏)鎌田さん。
ええ船ですな。
これは鎌田さんの船ですか?ついさっき売っ払った。
もう俺の船じゃねぇ。
鎌田さん。
あなた人が何と言おうと息子さんを信じる。
そう言われましたな。
あなたのおっしゃるとおりでした。
浩平さんがお金を貯めていたのはお母さんのためやったんです。
お母さんのためならどんなとこに身を置いてでも何かをせずにはおられんかった訳です。
バカな奴だ。
鎌田さん。
あなたに逮捕状が出とるんです。
殺人の疑いがかかってます。
京都まで同行願えませんか?吉岡を殺した事は認める。
だが女房には何も言わんでくれ。
俺の事も浩平の事も…。
(ハーモニカの音色)伸子さんまたしばらく京都へ行く事になった。
申し訳ないんだが織江の世話を頼むわ。
うん。
それは構わないけど。
織江。
また浩平に会ってくるわ。
浩平。
うん。
だから大人しく伸子さんと留守番しててくれ。
なっ。
私も!私も!いやぁ一緒に連れて行く訳にはいかねぇんだわ。
辛抱してくれ。
なっ。
留守番しててくれ。
伸子さんと。
わっ私も!
(織江)私も!
(鎌田)土産買ってくっから。
京都から。
うん。
今度は何がいいかな?うん?私も!私も!待っててくれや。
鎌田一郎の拘留手続きを取ってきました。
ご苦労さまです。
彼はだいぶ疲れてますので今夜はゆっくり寝かしてやってください。
いやぁ…あなたも今夜は帰ってゆっくりしてください。
ありがとうございます。
大変ご迷惑をおかけしました。
私が彼の釈放をお願いしたばっかりに…。
ほな鎌田は犯行を認めたんやな?はい。
認めてます。
自分は警察官として重大なミスを犯しました。
処分をお願いします。
あなたの処分は決定しています。
はい。
向こう3か月間給与の1割をカットする。
(稲葉)減俸処分です。
あの…たったそれだけですか?不服でもあんのか?いえ滅相もない。
じゃあそういう事で。
私は懇親会行って来ますんでよろしくお願いします。
はあ…。
あの課長はん案外大物かもしれんで。
と言いますと?ほんまはお前は停職処分やったんや。
それを…違う。
そういう意見が大半やったんや!それをあの課長がな部下の失敗は自分の責任や。
音川が停職なら自分も停職にしてくれって粘って粘って…。
とうとう減俸処分にしてしまいよった。
そうやったんですか…。
そやども見かけによらんわい…。
鎌田さん一体何がありましたんや?何で吉岡を殺したりしたんですか?あいつは金庫から2百万盗んでその罪を浩平におっかぶせてた。
しかし吉岡はどうして金庫の暗証番号を知ってたんでしょうな?あいつはヤクザから借金しててそれで必死で覚えたそうだ。
人が開けるところを伺ってて。
しかしあんた何でそんな細かい事まで知ってるんや?あの福島という従業員から聞き出した。
それで俺はあいつが自分の罪を逃れるために浩平を殺したんじゃねぇかと…。
俺はあいつのマンションに行って帰りを待った。
何時間もずーっと待ち続けた。
(鎌田)あいつは俺の顔を見ると逃げ出した。
俺は犯人はあいつに間違いないと思った。
俺はあいつに屋上で追いつき問い詰めた。
するとあいつは…。
あいつは…。
こう言った…。
死んだ人間はな盗みの罪を被ったかて痛い事もかゆい事もないんじゃ!うわぁー!で吉岡を屋上から突き落としたんですな?いや…。
あいつはもう死んでた…。
死んでいた…。
それどういう事ですか?あいつは倒れたまんま動かなかった。
だから俺はそのまんま置き去りにした…。
屋上に置き去りにしてですか…。
ホシは鎌田一郎じゃないんですか?鎌田さんはですね自分が殺ったと思い込んでるだけなんですわ。
じゃあ誰が吉岡を…。
おい山田。
はい。
事件現場からボタンが1個発見されてるな?ええ。
あれは一体何のボタンや…。
今それを当たってる最中ですわ。
ガイシャが突き落とされた時に相手の服からむしり取ったものやと思うんですわ。
うん…大至急当たってみてくれ。
はい。
草森。
はい。
何すか?ちょっと頼みたい事あんねん。
(草森)はい。
(電話)
(土井)はい捜査一課。
わかりました。
ああ。
(土井)少々お待ちください。
音川さん少年課から電話ですわ。
少年課?はいかわりました。
あっすんません。
あっご連絡しようか迷ったんですけど音川刑事と知り合いだって言うもんですから。
何や和彦君やないか。
何してん?万引きです。
カーショップでオートバイの点火プラグを。
僕ホンマは整備工になりたいんです。
車やバイクいじんのが好きやから。
お母さんは君の将来の事を考えて言うてくれてるんや。
整備工なんのやったら大学出てからでもええやないか。
けど…僕の成績じゃ国立は無理やし。
それやったら私立行ったらええやん。
けど私立はお金かかるし…。
お母さん一人で頑張ってるのに苦労させるのかわいそうやから。
そうか…。
あの子がそんな事を考えてたやなんてちっとも知りませんでした。
まぁ和彦君の心の中には早い事自立してお母さんに楽をさせてやりたい。
そういう強い願望があるんです。
その気持ちだけは酌んであげたほうが…。
けどうちはやっぱり大学だけは…。
いや大学へ行く事だけが子供の幸せになるとは限りませんからな。
何や泣きたい気分ですわ…。
音川さんお疲れさまです。
ちょっとおもしろい事見つけたんでね大急ぎでタクシー飛ばして帰ってきました。
またタクシー使うたんかい!何で電車に乗らん。
すんまへん。
私がこいつに急な用を頼んだもんですさかい。
タクシー使わんならんほどの用事かい?例のファッションサロンにですな福島っちゅう男が勤めてるんです。
そいつの身辺調査を。
そいつ怪しいところでもあんのか?鎌田さんはですなその福島っちゅう男にいろいろ教わって吉岡のマンションに行っとるんですがそれがちょっと気になりましてね。
音川さんの勘ビンゴ当たってましたで。
うん?ちょっとこれ見てください。
福島達郎の戸籍抄本です。
何や…。
(秋山)福島やのうて佐藤になっとるやないか…。
せやからこっちが本名。
佐藤達郎なんですよ。
本籍が福島県福島市になってるさかい福島っちゅう偽名名乗ってたんでしょうな。
何で本名名乗らんのや?そりゃあ本名を知られとうないからでしょう。
何でや?決まってまんがな〜。
そうかそうか…。
そういう事か!ちょっとすんません。
あったあった音やん!ちょいちょいちょい…。
はあ?佐藤達郎はな業務上横領罪で懲役3年6か月くらっとる。
はあ…。
2か月前に出所しとるわ。
で事件の内容は?そこまでは検索できへんな…。
パソコンも当てにならんですな。
横着せんと捜査資料借りて来いちゅうこっちゃ!そういう事ですな。
わかりました。
・
(稲葉)音川さんちょっと。
はっ?それは都信用金庫の横領事件でしょう。
現金貸付担当者が1億3千万円を横領したという。
ほう…。
そういやそんな事件ありましたな。
その担当者の名前が佐藤達郎だったと記憶しています。
で横領した金は一体何に使うたんですかな?捜査本部も厳しく追及したんですが佐藤は最後まで口を割らなかったようです。
いやしかしそんな詳しい事ようそらで覚えてますな?新聞だけは毎日読んでますからね。
なるほど。
火の用心!・サンマ焼いても家焼くな!・火の用心!・火の用心!そうや…。
女や。
ごめんやす。
お仕事中えらいすんまへんな。
ちょっと時間いただけますかな?どうぞ。
従業員に2人も死なれてうちはもうてんてこ舞いですわ。
で今日は何です?吉岡の事ですか?いや福島達郎の事で伺うたんですわ。
どうぞ。
はいおおきに。
福島達郎でっけどいつからここで働いてるんですか?2か月ぐらい前です。
ああ2か月いうたら刑務所出てすぐにここへ訪ねて来たっちゅう勘定になりまんな。
刑務所?えっ?福島が刑務所入ってたんあんた知らへんかったんかいな?ええ。
ああさよか。
福島でわからへんねやったら佐藤と言い直してもよろしいんやけどな。
あんた佐藤達郎とどういう関係や?別に。
関係はありません。
ただの雇用主と従業員という以外。
ああさようか。
あんたホンマに腹の底から冷たい人やね。
江本さんあんた4年前まではこのファッションサロンで働いてるおねえちゃんの1人やった。
それが今は立派な経営者。
この店をオープンするための資金はどこで調達しはりましたんや?それはいろいろです。
いろいろとは?貯金やら何やらいろいろです。
ああ…その「いろいろ」の中に都信用の1億3千万も入ってたんと違うんかいな?何の事でしょう?佐藤達郎はなあんたのために横領罪で3年6か月も服役してたんや。
その佐藤をあんたどういうふうに迎えました?えっ?あんたに惚れて人生棒に振った男に対してただの雇用主と従業員の関係とはちょっとひどいのとちゃうんかいな。
今の話が仮にホンマやったとして私に何の責任があります?男から金もらうのはうちらの商売や。
そんな事もわきまえんとのぼせる男がアホなんや。
あんた佐藤にも同じ事言うたんか?えらい邪魔しました。
福島はんこれから仕事でっか?はあ…。
福島はん袖のボタン取れてまっせ。
あれ?いつ取れたんやろ…。
すまんが女房がどんな様子か訊いてみてはくれんか?奥さんの事は心配いりません。
井上伸子さんがちゃんと面倒を見てくれてます。
さっき電話したらハーモニカの音が聞こえてました。
鎌田さん空港まで送っていきますわ。
殺人の疑いが晴れたんや。
あんた根室へ帰れるんや。
一体どういう事なんだ?吉岡は屋上から突き落とされて死んだんや。
あんたが殺したんやない。
いやそんなはずはない。
俺が殺したんだ。
俺が浩平の恨みを晴らすために…。
鎌田さんあんた勘違いしてるんや。
浩平さんを殺したんは吉岡やない。
じゃあ誰が犯人なんだ?えっ!?誰が殺ったんだ!?あんたそれ聞いてどうするつもりや?教える訳にはいかんのや。
あんたにも子供がいるだろう?その子が殺されても平気でいられるか!?いや平気ではおられへんやろな…。
この手で犯人を殺しとうなるやろな…。
だったら教えてくれ!えっ?鎌田さんそうはいかんのやがな。
犯人を殺してあんたの心が晴れるか!?むなしさだけが残るだけやないか。
復讐したらそれであんたの恨みは晴れるんか?辛抱する以外手はないやないか。
じっと辛抱してあとは法律に委ねるしか手はないんや!法律?そんなものが何の役に立つ!?そんなもんに俺の苦しみがわかってたまるか!殺されたのは俺の息子だ!私はあんたに罪を犯してほしないんや。
あんたにはまだ大切な人がいてるやないか。
根室であんたの帰りを待ってる人がおるやないか!佐藤さん警察や。
鎌田浩平ならびに吉岡俊也殺害容疑で逮捕する。
逮捕状。
たっ…たばこもらえませんか?私がホンマに殺したかったのは江本晴美です。
あいつは私の目の前で鎌田浩平にベタベタくっついて…。
男から金もらうのはうちらの商売や。
そんな事もわきまえんとのぼせる男がアホなんや。
2か月の間私はずっとそれ見せつけられて…。
で辛抱しきれんようになった訳か?
(佐藤)あの晩ナイフを持って店を抜け出しました。
最初は晴美を殺すつもりでマンションへ行ったんです。
だけど…。
店長…。
はっ?で吉岡は何で殺そうと思ったんや?浩平君を刺した後店に戻って指に付いた血洗てるところを見られてしもて…。
なら吉岡はあんたの犯行を黙認してたっちゅう訳やな。
黙ってるからその代わり俺のする事も黙ってろって…。
そう言うてあいつは店の金庫から2百万盗み出して浩平君に罪を…。
けどそんな事警察にはすぐにばれます。
で逮捕されたらあいつは私の事も吐くやろうと心配になって…。
けど…。
吉岡はまだ生きてまして…。
せやから最後のところは私がひと思いに…。
犯人を逮捕しました。
今日はその報告に伺うたんです。
もういい!せっかくだがその事はもう…。
だがあんたには随分迷惑をかけた。
俺はどうしようもなかったんだ…。
浩平は実にいい息子だった。
あいつは勉強もやって野球もやって俺を手伝って漁にも出た。
何でも一生懸命やった。
俺と女房にとってはかけがえのない宝だったんだ。
だから俺はどうしても俺の手であいつの…浩平の恨みを…。
わかります。
ようわかります。
女房の事があってから俺はどうしても警察を信じる気になれなかった。
でもなあんたには本当に申し訳ないと思ってる。
厳しい色した海ですな。
こっから3キロ先はもうロシアの海だ。
鎌田さんは樺太におられたと聞きましたが…。
終戦の時5つの子供でした。
引き揚げの船に乗って1人でこの海を渡って来た。
ご両親は?戦争で死にました。
大変なご苦労やったでしょうな。
・
(ハーモニカの音色)
(ハーモニカの音色)あんたにこんな事を訊いてもいいかな?女房に浩平が死んだ事を話すべきかどうか…。
いや…おっしゃらんほうがいいでしょう。
浩平さんは今でも奥さんの心の中にしっかり生きてるんですから。
(ハーモニカの音色)あっ課長。
うん?えらい遅うまでに精が出まんな。
お前待っとったんやないか。
よいしょ。
何やそれ?えっ?土産ですわ。
土産ってお前どうせまた中身は宍道湖みたいなしじみやろ?アホな事言いなはんな。
何で北海道でしじみ買いまんのやがな。
去年買うて来たやないか。
ええ…正真正銘の花咲ガニですわ。
ホンマに買うて来たんか?いやぁ今度ばっかりは課長にはえらい迷惑かけましたさかいな。
いやいや…おおきにおおきに。
いやちょっと。
あんたが礼言う事おまへんのや。
なっ何で?いやいや…。
このカニはこっちの課長の土産ですわ。
ちょっとちょっと!稲葉課長心ばかりの花咲ガニです。
それはなかろう…。
フンッ!まぁカニの内子やありませんか!うちの大好物ですわ。
そうですか。
いやいや買うてきた甲斐がありました。
おおきに。
あっ和彦君その後どうしてます?ええ相変わらずバイクいじってますけど学校だけはきちんと行くようになりました。
そうですか。
それはまぁ一安心ですわなぁ。
ええみんな音川さんのお陰です。
いえいえ…。
どうぞ。
どうぞ。
はいおおきに。
どうです?今度和彦君や若菜ちゃん連れて天神さんの梅でも見に行きませんか?梅ですか?よろしおすなぁ。
はあ…。
けどうちは梅より桜のほうが…。
そんなら暖かこうなったら嵐山の桜でも…。
けどうちはどっちか言うたら嵐山の桜より高雄のもみじのほうが…。
高雄のもみじ…。
そらだいぶ先の話になりますな…。
この間音川さん和彦の事でいろいろアドバイスしてくれはったでしょう?はあ…。
あのアドバイスうちが素直にきけたのは音川さんがよそさんの人やからです。
夫婦やったらきっとケンカになってましたわ。
そうかもしれませんな。
そやからうちはあんまり慌てんとこと…。
ホンマに大事な人とは親密になりすぎんと付かず離れずお付き合いしたほうが…。
そやありませんか?えっ?ええ…。
そらまぁそのほうが長う続くかもしれませんわな。
そやからね音川さん急がんと楽しみは先にとっておいたほうが…。
それで嵐山の桜より高雄のもみじでっか…。
桜はきれいやけど散るのも早うおすやろ?
(洋子)ちょっとちょっと…気ぃつけてよお父ちゃん。
大丈夫?ちょっと…ホンマに…どないしたん?いやぁ早苗さんとこでな悪酔いしてしもて…。
さっぱりやもう…。
ほんで?早苗さんとはうまい事いってんの?うんまあぼちぼちやな…。
ぼちぼちって手ぐらい握ったん?アホな事言うなお前。
ええ歳してそんな事できるかい。
何言うてんねんな。
あんなきれいな人ほったらかしにしとったらね他の男の人にすぐに取られてしまうよ。
まぁそうなったらそうなった時のこっちゃ。
お父ちゃん。
うん?もしかして振られた?振られてはおらんのやけどな…。
おらんのやけど何やの?つまりや嵐山の桜よりも高雄のもみじのほうがええねんて…。
それはどういう事?人生そう甘うないちゅうこっちゃ…。
ああ…。
ちょ…ちょっとお父ちゃん。
何て何て?高雄のもみじが何て?ようわからん人やな…。
8月の4日間四国・徳島は多くの人の熱気に包まれます
2016/01/13(水) 14:00〜15:51
ABCテレビ1
京都殺人案内25[再][字]
根室、納沙布、慟哭の海!北限に響くハーモニカ
詳細情報
◇出演者
藤田まこと、萬田久子、夏八木勲、小松みゆき、あき竹城、鈴木史朗、遠藤太津朗、吉井基師 ほか
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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日本語
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