(同人誌『JAGUARNOTE』#1原稿の再録・一部加筆)
戦隊物の遺伝子
『Wake Up,Girls!』のOP映像には、東映「スーパー戦隊シリーズ」でおなじみの演出手法が用いられている。
すなわち、
①メンバーを象徴する動物エンブレム
②メンバーの日常の一幕の紹介
(戦闘能力の高さや、お茶目な一面を示すもの等)
③氏名のテロップ表示と決めポーズ
(時にはスマイルやサムズアップ、背景にエンブレム)
この①~③が人数分、連続する見せ方である。
監督の山本寛氏は、過去に戦隊物パロディの自主制作映画『怨念戦隊ルサンチマン』('97)を手がけている。『Wake Up,Girls!』のOP演出がその作風の延長線上にあることは間違いないだろう。
ただ、本作ではそれを単にパロディとして用いるのではなく、「グループアイドル物」という別ジャンルのメンバー紹介演出に越境させたところに驚きがあった。また、本編の内容にも合致している。
ひとりひとり出自の異なる少女たちが、芸能事務所にスカウトされ、統一されたデザインのステージ衣装を身にまとい、グループアイドルへとチェンジする。この変貌は、戦隊ヒーローの「変身」と見事に重なりあうものだ。
もちろん、彼女たちは、直接その手で悪と戦うプリキュアのようなグループではない。だが、『七人の侍』の登場人物になぞらえた苗字を持ち、巨大組織に立ち向かう7人の勇士ではある。
劇中では、白木プロデューサー率いる国民的アイドル集団「I-1club」が、「人間である前にアイドルである」という非情な理念でアイドルを育成し、全国制覇に突き進む。そこに波紋を生じさせる存在として浮上するのが「Wake Up,Girls!」だ。その対立構図に、幼き日の記憶に刻まれたヒーロー達の勇姿と、困難に立ち向かう「Wake Up,Girls!」メンバーの姿が重なる。
こうして、僕の血潮をたぎらせるのに、このOP映像は一役買っているのだ。
(画像は『電子戦隊デンジマン』('80)と『鳥人戦隊ジェットマン』('91))
多色の帯
OPのファーストカットでは、白地の背景上を踊った虹が、仙台の街を見下ろす青葉城址展望台に舞い降りる。この躍動的な多色の帯は、5色の流星が尾を引く『秘密戦隊ゴレンジャー』('75)のOP を髣髴とさせる。
また、メンバーとイメージカラーを配置した5分割の画面は、『鳥人戦隊ジェットマン』OP や『電子戦隊デンジマン』ED に見られるレイアウトだ。本作では、今まさに踏み出そうとする脚をクローズアップしたところが格好いい。
(画像は『秘密戦隊ゴレンジャー』と『鳥人戦隊ジェットマン』)
振り向き動作
僕は、島田真夢の「振り向き」の中にも「戦隊らしさ」を見る。
戦隊物のOP における振り向きは、「メンバーの日常の一幕の紹介」内の一動作として『電子戦隊デンジマン』時代から見られた。
しかし、80 年代に様式化する。『光戦隊マスクマン』('87)では5人中3人、『超獣戦隊ライブマン』('88)では前期OP、後期OP ともにフルメンバーが振り向きを決め、スタイルとして確立された。翌年の『高速戦隊ターボレンジャー』('89)にもその演出が引き継がれ、強い印象を残した。ヒーローは、振り向くのだ。
そのため『Wake Up,Girls!』OPでも、島田真夢の振り向きの、その小さな動きの中にも、秘められた大きな力を感じるのである。
(画像は『超獣戦隊ライブマン』)