日本経済新聞社と英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は14日、都内で共同シンポジウム「グローバリゼーション 2016 ~世界と競う、世界と生きる~」を開いた。基調講演でFTのライオネル・バーバー編集長は「西側諸国が主導した『グローバリゼーション1.0』は過ぎ去り、非西洋の特徴を持った様々な個性や文化が相互に依存し合う『グローバリゼーション2.0』の時代に入った」と述べた。日本については「世界に対してどこまで門戸を開く用意があるのか、選択を迫られている」と指摘。「アベノミクスが完全に実施されれば、停滞する西側世界のモデルになる」と述べた。
バーバー氏は「Globalisation 2.0」と題して講演。過去500年にわたって「西側諸国」が世界で台頭し続けた歴史をひもとき、1970年代から2007年にかけて自由貿易や情報伝達、技術の広がりなどがピークを迎えた時代を「グローバリゼーション1.0」と呼んだ。
「西側」の定義は、日本やオーストラリアなども含む「自由主義に基づいた民主的な価値観」を指すと説明。冷戦終結後は、その「勝者」である米国など「西側」の処方箋である世界貿易機関(WTO)、世界銀行、国際通貨基金(IMF)が世界を主導。EUに体現されるようなカネ・モノ・サービス・ヒトに関する規制撤廃が進んだと振り返った。
これに対し、中国など非西洋の特徴を持つ新興国が台頭する今日のグローバリゼーション2.0では、かつて西側主導で普遍的なものとして想定されていた「単一のグローバル文化」は存在しなくなったと述べた。
重要な地政学的な変化として中東での過激なイスラム勢力の台頭を挙げ、西側諸国にとって「明確に差し迫った危険だ」と指摘。また、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の創設などを推し進める中国は「戦後の国際経済秩序をも変えようとしている。従来の秩序が米国や西側に不当に有利だと考えているためだ」と述べた。
2008年の世界金融危機を契機に強まった規制強化の流れは、金融分野だけにとどまらず、情報など様々な分野に広がり、「切れ目のないグローバルなインターネットの時代は過ぎ去った」とも述べた。
最近の世界の動きでは、米連邦準備理事会(FRB)による利上げに言及し、「ついに異例の金融政策の終わりの始まりが来た。金融政策がすべての面倒を見る時代から、政治家が責任を持って構造改革を進めるポスト危機時代に移った」との見方を示した。
その上で「世界はその準備ができているだろうか」と懸念を表明。欧州ではギリシャ、ポーランド、フランス、スペインで改革に消極的なポピュリストの政治家が台頭していると指摘。米大統領選へ向けてドナルド・トランプ氏が人気を集める現状は「多くの米国民がグローバリゼーションで置き去りにされ、政治のエリートサークルから除外されていると感じている証拠だ」と語った。
日本の今後については、女性の活用など「すでに成果が出ている」としてアベノミクスを評価。構造改革も含めた政策が完全に実施されれば、「今年のG7のホスト国としてその経済力、政治力を見せつけるチャンスがある」と述べた。
バーバー氏はグローバリゼーション2.0の今後のシナリオを2通り提示。悲観的なものは、ポピュリストが政治に影響力を持ち、改革の抵抗勢力が勝利。中東から欧州にかけて分断派が力を増し、ロシアや中国、その他アジアでもナショナリズムが強まり、1914年以前のグローバリゼーションと似てくる。
楽観的なシナリオでは、改革派が勝利。北京、東京、デリー、ブリュッセル、ロンドン、ワシントンでグローバリゼーションと改革開放が進む。日本で改革が迅速に進み、インドも主要プレーヤーに仲間入り、西側は引き続き建設的な役割を担う。
「未来の世界はだれにも分からない」としたうえで、バーバー氏は「日経とFTによる新しいグローバルメディア連合もグローバリゼーションの一環だ」と語った。
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