まず「未婚の母」は妊娠中から、養子縁組を希望する女性(養親)の名前で産婦人科に通院し、検診を受ける。出産すると、養親になる女性の名前で出生証明書を発行してもらう。官公署に出生届を提出する際に、産婦人科の発行した出生証明書が必要になるからだ。赤ちゃんが生まれる前から、養親になる女性が実の母親に成りすますため、法的な養子縁組手続きを踏む必要がないわけだ。A氏は「この方法で未婚の母の子どもを2-3人紹介した。子どもを生む側の女性には『子どもと養親には絶対に連絡しない』という念書を書いてもらい、後のことは私がきちんとやるので、生みの親との関係悪化などは心配しないでほしい」と話した。
このような闇ルートでの養子縁組は、養子が大きくなったときに、養子縁組の事実を本人に明かしたくない場合に主に利用されるという。合法的な養子縁組手続きを踏むと、子どもの住民登録謄本に「転入」と表記され、後に子どもが大きくなったときに自分が養子だということに気づく可能性があるからだ。
また、個人同士で子どもをやりとりするため性別・血液型などを選んで養子縁組できる、という点も違法な養子縁組を希望する理由の一つだ。出産したことを両親などに隠したい未婚の母たちも違法な養子縁組を希望するという。出生届などの痕跡が残らないからだ。
専門家たちは、このような違法な養子縁組が広範囲で行われていると指摘する。インターネットのポータルサイトにも、違法な養子縁組を「個人養子縁組」と称して養子を希望する書き込みが一日に何十件も寄せられる。
A氏も「養子にしたい子どもの性別や血液型を教えてくれれば、条件に合った子を選んで紹介することもできる」と話した。実際にA氏は初め、記者に対し「大邱に住む妊娠30週の妊婦を紹介する」と言っていたが、記者が「女の子がいい」と伝えたところ、出産予定日が近いソウル・江西区在住の妊婦を新たに紹介してきた。
2014年に韓国で合法的に養子縁組された子どもは637人。ある養子縁組機関の関係者は「養子縁組機関を訪れる未婚の母の場合、違法な養子縁組にトライしたものの養親を見つけられずに当機関にやって来るケースも多い」と話した。