2016年01月13日
新種牡馬辞典 - スマートファルコン
新種牡馬辞典、第五弾はスマートファルコン。グレードレース19勝はもちろん、5歳から7歳にかけて達成した重賞9連勝も日本記録ですが、その中でも個人的に最も印象に残っているレースは5歳時の東京大賞典ですね。ダート2000mを2分台というとてつもない記録で逃げ切った姿を見て、この馬なら海外でも通用するのではと思ったものでした。7歳にしてようやくかなったドバイ遠征は残念な結果に終わりましたが、その雪辱は産駒に果たしてもらいましょう。
スマートファルコン
岡田スタッド産 2005年生 栗毛 父系：サンデーサイレンス系
父ゴールドアリュールは通算16戦8勝。フェブラリーSや東京大賞典などダートではGI4勝を含む9戦7勝の成績を残した。種牡馬としての代表産駒はスマートファルコンのほかにフェブラリーSなどダートGI9勝のエスポワールシチー、フェブラリーS連覇のコパノリッキーなど。自身はダービーでも5着に入っており、皐月賞2着のタケミカヅチなど芝をこなす産駒もそこそこ送り出している。
母ケイシュウハーブは通算26戦2勝。川崎の下級条件で2勝をあげただけだが、母としてスマートファルコンのほかに、東京大賞典の勝ち馬でドバイ遠征(6着)も果たしたワールドクリークを出している。母父*ミシシッピアンはGI仏グランクリテリウム(T1600)の勝ち馬で、種牡馬として目黒記念2着のベルクラウンのほか、多数の地方重賞の勝ち馬を出している。
祖母キョウエイシラユキは通算27戦3勝。中央で3勝をあげているが、重賞実績はない。母として小倉3歳S2着のキョウエイコロナなどを出している。
＜競走成績＞
芝初挑戦のジュニアCを快勝し、3歳春はクラシックに挑戦するも皐月賞でシンガリ負け。以降はダートに専念することになる。白山大賞典で古馬を蹴散らして重賞初勝利を飾ると、ここから怒涛の勢いで重賞勝利を積み重ねていったが、出るレースはほぼ交流GIIIもしくはGIIで、そのローテーションに「弱い相手を求めてのドサ回り」と揶揄されることもあった。転機が訪れたのは5歳時のJBCクラシック。武豊Jを鞍上に迎えての2戦目、後続を7馬身千切る圧倒的な内容でGI初勝利を達成すると、そこからGI6勝を含む9連勝を達成し、名実ともに日本のダートチャンピオンに登り詰めた。7歳時にはドバイ遠征も果たしたが、不利も重なって大敗し、結局このレースを最後に引退することとなった。
＜供用実績＞
引退後は社台スタリオンステーションにて種牡馬入り。実績に比べると比較的安価な種付け料もあって初年度から160頭を超える牝馬を集めた。父ゴールドアリュールは内国産ダート種牡馬としては規格外の活躍をしているが、さらに父内国産馬のダート馬がここまで厚遇を受けるとは時代も変わったものだ。2年目以降は新種牡馬らしく一旦種付け数は落ち込んでいるが、今年は一度減額された種付け料がさらに増額されての供用となるようで、これは産駒のできの良さを反映してのものだろうか。
＜注目の産駒＞
母系がやや弱いので、繁殖牝馬側に影響力の強い血を持つ馬を選びたい。*ビーチフラッグはいかにもパワーあふれるアメリカンな血統で、早い時期から活躍できそう。モンヴェールは5代母が名牝 Special で、父の貧弱な牝系を支えるには十分すぎる血統だろう。ジェイケイコンドルの母父*エルコンドルパサーはクリソライトと同じで、Nureyev のクロスが効果的に働きそうだ。プラセンティアはそのクリソライトのいとこにあたり、母父がノンコノユメを出した*トワイニングというここ最近のダート界の縮図のような血統だ。ロゼカラーはご存知薔薇一族で、21歳時の産駒ながら芝での活躍も期待できそう。
それ以外にも*コーレイ(ブラジルGI3勝)、ルナースフィア(兄メイショウトウコン)などがいる。
＜傾向予想＞ 芝：△ ダ：◎ 距離：短〜中 ピーク：3歳〜
まさにダートの申し子のような馬で、付けられている牝馬のラインナップからも地方での活躍馬を多く出しそう。ただ東京大賞典を芝並みのスピードで逃げ切っているように、時計のかかる芝なら十分こなす可能性はある。自身は2000mを越える距離でも結果を出したが、母系から来ると思われるスタミナが子供に受け継がれるかは微妙なところで、基本的にはスピードの勝ったタイプだろう。仕上がりはあまり早くない。兄ワールドクリークも4歳の暮れから本格化してドバイ遠征を果たすまでになったように、完成するのは古馬になってからだろう。
かつて内国産のダート馬といえばアブクマポーロやウイングアロー、トーホウエンペラーなどほとんど種牡馬として重用されることなく廃用となることが多かったが、その流れを明確に変えたのは父ゴールドアリュールであったと思われる。*サンデーサイレンス産駒の良血馬だったというのも大きかったが、種牡馬として期待以上の結果を残し、ダート馬に種牡馬としての可能性を広げた意義は非常に大きい。この先もエスポワールシチーやコパノリッキーといったところが種牡馬入りしてくる中で、その流れを次世代に繋げることができるだろうか。
岡田スタッド産 2005年生 栗毛 父系：サンデーサイレンス系
| ＜血統構成＞ 5代内クロス： | Vaguely Noble 5×3 |
| ゴールドアリュール 栗毛 1999 | *サンデーサイレンス | Halo |
| Wishing Well | ||
| *ニキーヤ | Nureyev | |
| Reluctant Guest | ||
| ケイシュウハーブ 芦毛 1988 | *ミシシッピアン | Vaguely Noble |
| Gazala | ||
| キョウエイシラユキ | *クラウンドプリンス | |
| *アリアーン |
父ゴールドアリュールは通算16戦8勝。フェブラリーSや東京大賞典などダートではGI4勝を含む9戦7勝の成績を残した。種牡馬としての代表産駒はスマートファルコンのほかにフェブラリーSなどダートGI9勝のエスポワールシチー、フェブラリーS連覇のコパノリッキーなど。自身はダービーでも5着に入っており、皐月賞2着のタケミカヅチなど芝をこなす産駒もそこそこ送り出している。
母ケイシュウハーブは通算26戦2勝。川崎の下級条件で2勝をあげただけだが、母としてスマートファルコンのほかに、東京大賞典の勝ち馬でドバイ遠征(6着)も果たしたワールドクリークを出している。母父*ミシシッピアンはGI仏グランクリテリウム(T1600)の勝ち馬で、種牡馬として目黒記念2着のベルクラウンのほか、多数の地方重賞の勝ち馬を出している。
祖母キョウエイシラユキは通算27戦3勝。中央で3勝をあげているが、重賞実績はない。母として小倉3歳S2着のキョウエイコロナなどを出している。
＜競走成績＞
| 年 (歳) | 戦 | 勝 | 主な実績 |
| 2007年 (2歳) | 3 | 2 | 1着 500万下 D1800 1着 新馬戦 D1600 |
| 2008年 (3歳) | 10 | 5 | 1着 浦和記念(GII) D2000 1着 白山大賞典(GIII) D2100 1着 兵庫ゴールドT(GIII) D1400 1着 KBC杯(OP) D1700 1着 ジュニアC(OP) T1600 2着 ジャパンダートダービー(GI) D2000 2着 JBCスプリント(GI) D1400 |
| 2009年 (4歳) | 7 | 5 | 1着 ブリーダーズゴールドC(GII) D2000 1着 佐賀記念(GIII) D2000 1着 名古屋大賞典(GIII) D1900 1着 かきつばた記念(GIII) D1400 1着 さきたま杯(GIII) D1400 2着 マーキュリーC(GIII) D2000 |
| 2010年 (5歳) | 7 | 5 | 1着 東京大賞典(GI) D2000 1着 JBCクラシック(GI) D1800 1着 浦和記念(GII) D2000 1着 かきつばた記念(GIII) D1400 1着 さきたま杯(GIII) D1400 3着 日本テレビ盃(GII) D1800 |
| 2011年 (6歳) | 5 | 5 | 1着 東京大賞典(GI) D2000 1着 帝王賞(GI) D2000 1着 JBCクラシック(GI) D2000 1着 ダイオライト記念(GII) D2400 1着 日本テレビ盃(GII) D1800 |
| 2012年 (7歳) | 2 | 1 | 1着 川崎記念(GI) D2100 |
| 計 | 34 | 23 | 2010 ダートグレード競走特別賞 2011 ダートグレード競走特別賞 |
芝初挑戦のジュニアCを快勝し、3歳春はクラシックに挑戦するも皐月賞でシンガリ負け。以降はダートに専念することになる。白山大賞典で古馬を蹴散らして重賞初勝利を飾ると、ここから怒涛の勢いで重賞勝利を積み重ねていったが、出るレースはほぼ交流GIIIもしくはGIIで、そのローテーションに「弱い相手を求めてのドサ回り」と揶揄されることもあった。転機が訪れたのは5歳時のJBCクラシック。武豊Jを鞍上に迎えての2戦目、後続を7馬身千切る圧倒的な内容でGI初勝利を達成すると、そこからGI6勝を含む9連勝を達成し、名実ともに日本のダートチャンピオンに登り詰めた。7歳時にはドバイ遠征も果たしたが、不利も重なって大敗し、結局このレースを最後に引退することとなった。
＜供用実績＞
| 年度 | 種付料 | 種付数 | 生産数 | 登録数 | 供用場所 |
| 2013 | 60万円 | 164 | 102 | 99 | 社台スタリオンステーション |
| 2014 | 60万円 | 135 | − | 81 | 〃 |
| 2015 | 50万円 | 142 | − | − | 〃 |
| 2016 | 80万円 | − | − | − | 〃 |
引退後は社台スタリオンステーションにて種牡馬入り。実績に比べると比較的安価な種付け料もあって初年度から160頭を超える牝馬を集めた。父ゴールドアリュールは内国産ダート種牡馬としては規格外の活躍をしているが、さらに父内国産馬のダート馬がここまで厚遇を受けるとは時代も変わったものだ。2年目以降は新種牡馬らしく一旦種付け数は落ち込んでいるが、今年は一度減額された種付け料がさらに増額されての供用となるようで、これは産駒のできの良さを反映してのものだろうか。
＜注目の産駒＞
| 母名 | 性 | 備考 |
| ジェイケイコンドル | 牡 | 藤川ファームの生産馬。母は*エルコンドルパサー産駒で、中央未勝利。半兄に中央3勝のジェイケイラン、中央2勝のニューロザリオがいる。 |
| *ビーチフラッグ | 牝 | 社台ファームの生産馬。母は Boundary 産駒の米国産馬で、バイオレットSなどオープンを2勝。GIIIでも2着が2度ある。半兄にジャパンダートダービー4着のノースショアビーチがいる。 |
| プラセンティア | 牡 | カミイスタットの生産馬。母は*トワイニング産駒で、中央未勝利。いとこにジャパンダートダービーの勝ち馬クリソライトなどがいる。長谷川守正氏が400万円で落札。 |
| モンヴェール | 牡 | ノーザンファームの生産馬。母は*フレンチデピュティ産駒で、中央4勝。関東オークスで3着がある。Special の5×5のクロスあり。 |
| ロゼカラー | 牝 | ノーザンファームの生産馬。母は Shirley Heights 産駒の持込馬で、デイリー杯3歳Sの勝ち馬。半姉にフィリーズレビューのローズバド、半兄に金鯱賞のローゼンクロイツなどがいる。サンデーレーシングにて1600万円で募集されている。 |
母系がやや弱いので、繁殖牝馬側に影響力の強い血を持つ馬を選びたい。*ビーチフラッグはいかにもパワーあふれるアメリカンな血統で、早い時期から活躍できそう。モンヴェールは5代母が名牝 Special で、父の貧弱な牝系を支えるには十分すぎる血統だろう。ジェイケイコンドルの母父*エルコンドルパサーはクリソライトと同じで、Nureyev のクロスが効果的に働きそうだ。プラセンティアはそのクリソライトのいとこにあたり、母父がノンコノユメを出した*トワイニングというここ最近のダート界の縮図のような血統だ。ロゼカラーはご存知薔薇一族で、21歳時の産駒ながら芝での活躍も期待できそう。
それ以外にも*コーレイ(ブラジルGI3勝)、ルナースフィア(兄メイショウトウコン)などがいる。
＜傾向予想＞ 芝：△ ダ：◎ 距離：短〜中 ピーク：3歳〜
まさにダートの申し子のような馬で、付けられている牝馬のラインナップからも地方での活躍馬を多く出しそう。ただ東京大賞典を芝並みのスピードで逃げ切っているように、時計のかかる芝なら十分こなす可能性はある。自身は2000mを越える距離でも結果を出したが、母系から来ると思われるスタミナが子供に受け継がれるかは微妙なところで、基本的にはスピードの勝ったタイプだろう。仕上がりはあまり早くない。兄ワールドクリークも4歳の暮れから本格化してドバイ遠征を果たすまでになったように、完成するのは古馬になってからだろう。
かつて内国産のダート馬といえばアブクマポーロやウイングアロー、トーホウエンペラーなどほとんど種牡馬として重用されることなく廃用となることが多かったが、その流れを明確に変えたのは父ゴールドアリュールであったと思われる。*サンデーサイレンス産駒の良血馬だったというのも大きかったが、種牡馬として期待以上の結果を残し、ダート馬に種牡馬としての可能性を広げた意義は非常に大きい。この先もエスポワールシチーやコパノリッキーといったところが種牡馬入りしてくる中で、その流れを次世代に繋げることができるだろうか。
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この記事へのコメント
1. Posted by ムトト 2016年01月13日 22:26
初めましていつも楽しく拝見させて頂いてます。
地方で圧勝を続けながら中央のレースには（中央馬なのに）全然出てくれなくてガッカリした記憶があります。
中央のG�気世汎┐可戮譴覯椎柔�が高かったのかもしれませんが、全盛期にフェブラリーSやジャパンカップDでその走りを見てみたかったです。
地方で圧勝を続けながら中央のレースには（中央馬なのに）全然出てくれなくてガッカリした記憶があります。
中央のG�気世汎┐可戮譴覯椎柔�が高かったのかもしれませんが、全盛期にフェブラリーSやジャパンカップDでその走りを見てみたかったです。
2. Posted by コング 2016年01月13日 23:57
あらためて見てみると、5歳夏まで徹底してG�気鯣鬚韻討�り、グレード別定の多い地方交流路線ならではのローテでじっくり育てられたという印象です。
JDDの勝ち馬などは早いうちからG�犠，素呂箸靴討龍堽未鯒愽蕕錣気貘海韻襪海箸砲茲蠖�び悩むケースが多いんで、この馬も三歳時のJDDやJBCで勝っていたら後の栄光はなかったかも。
ドバイ遠征は私も待ち望んでいたのですが、しかしこれが現役最後のレースとなってしまいました。ずっと国内で走っていればあと2年くらいはたっぷり稼げたでしょうから馬主さんには気の毒で、海外遠征のリスクというものを考えさせられます。
JDDの勝ち馬などは早いうちからG�犠，素呂箸靴討龍堽未鯒愽蕕錣気貘海韻襪海箸砲茲蠖�び悩むケースが多いんで、この馬も三歳時のJDDやJBCで勝っていたら後の栄光はなかったかも。
ドバイ遠征は私も待ち望んでいたのですが、しかしこれが現役最後のレースとなってしまいました。ずっと国内で走っていればあと2年くらいはたっぷり稼げたでしょうから馬主さんには気の毒で、海外遠征のリスクというものを考えさせられます。
3. Posted by なろなまし 2016年01月14日 01:36
ワールドクリークとスマートファルコンが兄弟だと知った時はびっくりしました
マジックミラーとゴールドアリュールから名馬を出す母馬はすごいなあと思った覚えがあります
スマートファルコンには
種牡馬になれなかったワールドクリークの分まで成功してほしいですね
マジックミラーとゴールドアリュールから名馬を出す母馬はすごいなあと思った覚えがあります
スマートファルコンには
種牡馬になれなかったワールドクリークの分まで成功してほしいですね
4. Posted by ゼロウィン 2016年01月14日 02:14
ダート種牡馬の需要はゴールドアリュールに対する期待が高かったのは確かですが、それと同時に既存の外国産ダート種牡馬が軒並み引退してダート種牡馬そのものが少なくなったのもあるんじゃないかと思っています。
ウイングアローやメイセイオペラが種牡馬入りした２０００年代初頭はデュラブやアサティスが人気のピークでしたし、地方はアジュディケーティングとパークリージェントとカコイーシーズがリーディングを争って多数の種付頭数を確保していました。
ちょうどこれら外国産ダート種牡馬が高齢で引退する頃にティンバーカントリーと一緒に大ブレイクしたのがゴールドアリュールだと思っています。
ウイングアローやメイセイオペラが種牡馬入りした２０００年代初頭はデュラブやアサティスが人気のピークでしたし、地方はアジュディケーティングとパークリージェントとカコイーシーズがリーディングを争って多数の種付頭数を確保していました。
ちょうどこれら外国産ダート種牡馬が高齢で引退する頃にティンバーカントリーと一緒に大ブレイクしたのがゴールドアリュールだと思っています。