住民の足となる路線バス事業を地域ぐるみで立て直そうという動きが関西各地で広がってきた。路線バスは、人口減少や鉄道など他の公共交通との競争激化を背景に、苦戦を強いられていることが多い。地域の官民が協力し、利便性の向上や利用促進に取り組むケースが目立つ。
兵庫県の中西部で鳥取県と接する宍粟(しそう)市は昨年11月、市や住民代表、バス事業者らが共同で策定した「公共交通再編計画」に基づき、市内の路線バス網を再編した。鉄道が通っていない同市では、民間の路線バスを大幅に拡充する一方、競合による無駄な利用者の奪い合いをなくすため、公営のコミュニティーバス6路線を廃止した。主要道路を走る4路線には大型のバスを、集落を巡る25路線には小型バスを走らせる。
同市では路線バスの利用者数が14年時点で11年より4割減った。従来は乗り継ぐと市内を移動するだけで最大1360円かかっていたが、再編後の運賃は一律200円とした。市の補助金は年間520万円から4000万円に増える見通しだが、「今やらなければ、地域の衰退が加速する」(市民協働課)。利用が少ない路線は3年後をめどに減便か廃止の可能性があるため、市民からは「自家用車があってもバスを使う」という声も聞こえてくるという。利用者数は年間15万6000人(14年度)から20万人への増加を見込む。
市営バスの経営が課題となっていた兵庫県尼崎市では、今年3月下旬、市が事業を阪神バス(同市)に移譲する。不採算路線維持のための補助金が年間5億円強から半分以下になるなど、市としては財政負担の軽減を見込む。
移譲にあたって市は、3年間は路線と運行本数は減らさないといった条件を付けた。16年度中には市内の交通ネットワークの指針となる「地域交通政策」を策定する予定。「市民の足の確保には市が責任を持って取り組む」(同市政策部まちづくり企画・調査担当)との姿勢は堅持する。市営バスの経営については大阪市も課題となっている。1日平均の乗客数はピーク時の1964年度の119万人から2014年度には20万人と6分の1まで減少。民営化を求める声が出ている。
そんな中、広域での路線バスの利便性向上を目指す動きもある。奈良県では、昨年10月から、大淀町と下北山村を結ぶ走行距離約60キロメートルと日本で最も長いコミュニティーバスの運行を始めた。県が助成する全国的にも珍しい沿線2町3村の共同運行だ。
奈良交通(奈良市)からの路線リストラ提案をきっかけに、13年に県と県内全市町村長、奈良交通などが参加する「地域交通改善協議会」を設置。各路線について現状維持、減便、廃止といった検証を始めた。廃止路線については地元の自治体がコミュニティーバスを運行するなどして対応している。
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