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ジョン・クインシー・アダムズは…

 ジョン・クインシー・アダムズは第6代米国大統領を務めた後マサチューセッツ州選出の下院議員になった。ところが、折からの議席配分法案によって同州の議席が減らされようとしていた▲「この配分法案は下院の議席配分を全く不公正に行ってしまう。これは正に罪悪だと思うと、眼(め)を閉じることができなかった」とアダムズは自叙伝に記している。そこで彼は議席を計算する際に小数点以下の切り上げ方式を提唱する。時は1830年、日本では大塩平八郎(おおしおへいはちろう)の乱などが起きた天保(てんぽう)年間にあたる▲それから186年の時を隔ててアダムズ方式がよみがえった。この方式を採用した衆院選挙制度改革の答申がきょう衆院議長に提出される。都道府県別の人口を特定の数で割った答えが「1・1」の場合、切り上げて2議席にするのが特徴だ▲途中ではアダムズ方式を含む9種類の計算式が比較の対象になった。うち八つには米国人の名が冠されている。米合衆国憲法が1条で下院議席の「人口比例」を定めていることの反映だろう。投票価値の平等をめぐる米国の長い経験があって「7増13減」の答申が生まれた▲とはいえ、自民党では早くもこの案を拒む声が出ている。しかも現状放置の衆参同日選までおおっぴらに語られる。先の衆院選からまだ1年あまり。かつて言われた「2年過ぎれば常在戦場」の合言葉は、安倍政権になって「1年」に短縮されたかのようだ▲人口が増える地域では、いつの間にか1票の価値が減っていく。せっかく投じた1票の有効期間もだんだん短くなる。これは何かに似ていないか。そうだ、デフレ、民主主義のデフレだ。

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