井上充昌、久永隆一
2016年1月14日01時55分
厚生年金に入る資格があるのに年金額の少ない国民年金に入っている人が約200万人と推計され、政府が対策に乗り出す。厚生労働省は13日、保険料負担を逃れるため、違法に厚生年金に入っていない可能性がある約79万事業所を対象に緊急調査すると表明。加入対象と判明すれば重点的に加入を指導し、「低年金」の予備軍を減らしたい考えだ。
この問題は、民主党の長妻昭氏が13日の衆院予算委員会で取りあげた。安倍晋三首相は「200万人の件は確実にやるように(塩崎恭久)厚労相に指示する」と答弁。厚生年金の未加入対策に本腰を入れる考えを示した。
厚生年金は会社の正社員のほか、労働時間や日数が正社員の4分の3以上のパートでも適用される。平均的な収入で40年間会社勤めすると厚生年金を月約15万6500円受け取れるが、自営業者や非正規社員らが入る国民年金は保険料を40年間満額納めて月約6万5千円。将来の年金額が本来より少なくなる人が続出する可能性がある。
保険料は国民年金なら月1万5590円で、厚生年金なら平均的な収入の人で月約3万9千円を払い、雇い主も同額を負担する。この負担を逃れるため、厚生年金の適用を年金事務所に届けない事業所がある。
日本年金機構は加入逃れの可能性がある約79万事業所に対し、早急に調査票を送る。従業員数や労働時間などを尋ね、回答内容から厚生年金の加入対象の可能性が高ければ、訪問して加入指導をする。必要なら立ち入り検査も行い、検査を拒否すると罰則もある。
厚労省は年金事務所で加入に必要な手続きをしていない事業所の所在地を登記簿などで割り出してきたが、休眠会社も多い。そこで今年度からは従業員に給与を支払っている事業所の名称や所在地情報の提供を国税庁から受けており、今後、さらに連携を強める。
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