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 モノのやり取りで世界最大を誇る中国の貿易額が昨年、リーマン・ショック時以来となる減少に見舞われた。国内景気の減速に悩む中国にとって輸出の不振は最大の誤算だ。輸入の急落は世界経済にさらなる混乱を広げている。

 「経営不振で資金繰りがつかず、全従業員に解散を告げざるを得ない」

 広東省深圳市。スマートフォンやテレビ機器の生産を請け負う従業員3千人規模の「中天信電子」の工場にある掲示板に、昨年10月の社内イベントで仮装して笑顔で歌う従業員らの写真を覆い隠すように、12月25日付の「解散通知」が貼られていた。

 寮を去る準備をしていた元従業員の男性は語る。「工場が多すぎるんだ。海外の注文も減り、製造業はいま、真冬だよ」

 「世界の工場」の最先端として知られる深圳では、高い伸びが期待できる新分野があると、各社が一斉に工場をつくる。需要減は、増えすぎた工場の淘汰(とうた)を引き起こす。スマホなどのハイテク関連でも、昨年は世界市場の伸びが見込みを下回り、液晶など関連メーカーが次々と倒産した。

 深圳の最低賃金は過去10年で約3倍になった。輸出に有利だった「安い人件費」という条件は失われ、中国メーカーですら工場をインドなどに移す。周辺の「珠江デルタ地帯」では昨年、大型・中型に限っても80近い工場が閉鎖されたと報じられた。