■眉間で連結された私
”座って”、40分ほどがたった。
自分の肉体が、
ふんわりとした気体のようなものに感じられるようになった。
体の「左半分」に、注意が向いた。
左側が、ひとつの「箱」として認識された。
その空間の広さと奥行きを、くまなく感じた。
底は果てしなく深く、まるで
立体高速道路が交差し合う未来都市のようだ。
その空間に、自分の意識をめぐらせる。
と、左側はクリーンになった。
次に、体の左と右のバランスが気になりだした。
しかし、自分の「右側」を感じることは、できにくかった。
そうこうするうち、眉間のあたりで、
自分の左と右が連結されているという感覚を得た。
その、つながり部分である眉間に集中していると、
徐々に体の右側の感覚がつかめてきた。
右側も、深い深い箱状になっている。
私は、意志の力を自分の右側に行使した。
するとこちらも、クリーンになった。
あるいは浄化された。
その時点での私の感覚は、
自分の右と左が、
自分の眉間のところで連結して
両サイドにぶら下がっている、という認識。
しかしまだ、何かが不安定で物足りなかった。
すると、私の股あたりから、
ものすごい力が体内を一気に、爆弾のように上昇し、
私の「喉」のあたりで止まったようだ。
それは、真っ赤な火のボールのようだった。
私は、意識を使って非物理的な呼吸をおこない、
喉のところにあった赤いボールを、
私の頭部方向に昇るよう、誘導した。
これは私の中でほとんど無自覚に、
自然におこなわれた。
すると、私の視界は一気に白っぽくなった。
喉から上に昇ったカタマリが、
視界に影響を与えたのだろうか。
その結果、
「二」であるものが「一」となったと、感じた。
そして、”右でも左でもない”。
私は聖堂のような建物の中にいた。
その天井まで舞い上がり、天井をつき抜け、
てっぺんから、フワーッと空に舞い上がった。
自由だ!と感じた。
飛び立てた!と感じた。
しばらくフワフワと昇ると、
「淵」だか「縁」のようなものがあった。
中央が開いたタイヤのような形で、
周囲は菊の花弁のようだ。
私は少しの努力をして、菊座の花弁をくぐり抜け、
さらに上空へと、舞い上がった。
あとはなりゆきにまかせ、
フワーッ、フワーッと、たなびくように浮遊した。
気づくと、広場のようなスペースにいた。
明るく、あたたかみのあるスペースだ。
はるか下のほうには、
自分がそれまで住んでいた世界が見える。
そのとき、天に、
われがねのような声が響いた。
「人の成長のために、
天の意思において、
<痛み>というものを与える!」
瞬間、私は、ものすごいショックを受け、
下界にある私の胸に向かって、
どんどん、どんどん、ずんずん、ずんずん、
ものすごいスピードで一気に落下し、
吸い込まれていった。
そして私は
私の肉体と
ふたたび、結びついた。
(痛みを持つ自分の体へと戻った)
NEXT・・・・
NEXT・・・・
夜明けに
私は水晶を手にする。
私の全身は軽いショックを受け、
私の内部に満ちるものは
てんでばらばらに、ぶつかり合いながら、
先を争うようにして
私の手足の末端へと向かう。
ひとしきり、その時間が続く・・・。
しだいに内部の事態は鎮まってくる。
ほぼ鎮まったと思えたとき、こんどは、
私の中に
別の「何」かが満ち始める。
満ちるにしたがって、私は軽くなる。
空気と溶け合った私になる。
いつしか私は、私の皮膚を感じることなく
世間に広がる。
私と世間の境目はない。
私と「全て」の境界はない。
鳥が鳴く・・・・それは私の声。
私から発せられる。
風。それは私の体。
私が、そよぐ。
私は、「全て」となって広がる。
全ての上に。
しずかに、なだらかに、
<それ>が起こるとき、
<それ>は、神秘体験などではない。
奇跡などでは、ない。
水晶によって導かれる
単なる日常の延長である。